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【秘】 陽葉 シロマ → 奔放 クリス帽子を見つけ、幾つか見回った後。 少女の姿は、屋根の上にあった。 遠くにある夜明けの気配を見つめ、ふう、と息を吐く。 数え切れない程の夜明けを見た。 しかし、これ程充実した夜は無かっただろう。 「…………どうだい、栗栖。 探し物は見つかったかな」 何処へともなく、語りかける。 (-215) 2022/07/13(Wed) 18:02:46 |
【秘】 奔放 クリス → 陽葉 シロマ「そっちこそ、終われそうかい」 相馬栗栖に未練などない。 聞こえる声に現実性はない。 しかし、絶対でもない。 その言葉に、都合よく言葉が聞こえるから、何を疑ってもいい。 だが、確かに。消え去る前と同じ姿と、声で。 その声は答えた。 「犯人はわかってるのに、やり方も、動機もわかりゃしないよ。満たされないことぐらいはわかるけどね」 声は、響いた。 (-216) 2022/07/13(Wed) 18:16:57 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「終わりなんて無いさ。 寧ろこれから始まるんだ」 響く声に、何ら疑うことなく答える。 自身が死者として在るが故に、驚くべきことというものは数少ない。 「満たされたら、成仏?するのかなぁ……」 口振りはどこか他人事のようだった。 僅かに明るくなり始めた夜空のお陰で、少女の表情は良く見える。 しかし、その足元に影は伸びない。 「でも予想は幾つかあるんじゃない? それとも、死者の気持ちは想像も付かないかな」 東の空へ、血潮の無い手を透かした。 (-217) 2022/07/13(Wed) 18:45:45 |
【秘】 奔放 クリス → 陽葉 シロマ「あのねえ、見えていない物を断定するのは、それはただの妄想だろう?」 なんて、呆れたようにこぼす。 だけれど、相馬栗栖は探偵には向いていない。 だから、それを出来る。まるで見てきたかのように。 この場じゃなければならなかった。 「だから僕は、世界の在り方すら疑える」 では、言ってあげよう。予想とやらを。 きみの目的は見えない。だが、手段は見える。 そしてそれが、決して 最良 なんかではないことを。「きみは、きみの目的の為に」 「 ほかに手段など、残されていなかった 」きみは、亡者になったらしい。未来などないらしい。 だから、それだけしか道がなかった。前提など、まるですべて無視して! 相馬栗栖は、自分の記憶すら、世界の在り方すら。疑って見せて。 きみの在り方すら、疑って見せた。 (-218) 2022/07/13(Wed) 19:25:00 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「正解。 手段に関しては、模範解答だ」 手を翳しているというのに、少女の眼孔へ薄明かりが差し込む。 眩しそうに目を細めた。笑ったようにも、見える。 「私だって、生きて教師になりたかったさ。 勿論、平和な世界でね。 でも時代がそうはさせてくれなかった」 その言葉は、この亡者の生きた時代を示していた。 少女にとっての最良の結末は、時を巻き戻しても実現できない。 戦争という数え切れない程の因果を持つ歴史を変えることなど、不可能だ。 ───何かを憎むこともまた、難しい。 原因が多岐に渡る大きな歴史の渦を、渦中から観測するようなものである。 「……足りない調査は妄想で補おう。妄想で構わないのさ、筆者の気持ちなど。 他に尋ねたいことがあれば答えよう。 流石に答えを尋ねられたら誤魔化すけれどね」 (-222) 2022/07/13(Wed) 20:41:39 |
【秘】 奔放 クリス → 陽葉 シロマ「それしかない奴の言葉なんか、つまらないと言わなかったっけ」 全く。少し煽ってみたつもりが全くかすりもしない。 自覚症状ありきの、人形。 つまらない。 「全く。妥協案を選ばないのはきみのおもしろいところだと思ってたんだけどね」 さて、どうあっても動きはしないだろう。なれば、この声は、ただ確認するだけの言葉に成り下がる。最初からそうだったように。幻聴は幻聴に。幻覚は幻に。 いつしか、それに意味等無くなる様に。 だから、これが幻聴かどうか。それすら分からなくなる。 「──僕には、一つの憧れの形があった」 しってたかい。 質問には答えずとも。 問いかけられる言葉。 (-223) 2022/07/13(Wed) 20:59:27 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「悪いね、変化は生者の特権だ。 これ以上にもこれ以下にもなれないのさ」 死とは、停滞だ。 朽ちるのは生者の記憶であり、死者は歩き出すことなどできない。 だからこそ往々にして、彼らは生者と対立し、否定され除かれてきた。 「ふむ、なんだい。 君が何かに憧れるなんて、あまり想像もしていなかったけれど」 屋根の棟に上り、そこに腰を下ろす。 立てた両膝に肘を付き、顎に両手を添えて。 雑談でも聞くような姿勢になった。 「形があるということは。きっと理想や夢物語ではなく、実在していたのだろう」 (-230) 2022/07/13(Wed) 21:44:54 |
【秘】 奔放 クリス → 陽葉 シロマ「いいや、なれるさ」 「僕の常識を覆したのはきみだろう?」 死とは、停滞だ。 朽ちるのは生者の記憶であり、死者は歩き出すことなどできない。 だからこそ。そもそもとして。死者は、存在すら許されない。 供養され、埋葬され、思い出にされる。 屁理屈さ。 きみは、まだ。死ねてすらいない、と。 「そうだな。最初は、存在していた」 原典がそこにあった。だからこそ挫かれた。 憧れなど。自身の中で築き上げるものだ。 どこにいるのか。 どこにもいないのか。 それはきっと、この憧れと似ている。 「僕が目指すべきものはすでに失われた」 「だから、僕が続けている」 「それがどこまでも稚拙なのだと理解しながら」 「既に、僕の人格に成り下がっている」 それはきっと、悪魔とでも呼んで見せよう。 人の中にある、人が成りえる、人が理解しえない、お話の中にあるような。物語は挫けていく。 (-233) 2022/07/13(Wed) 22:12:53 |
【秘】 奔放 クリス → 陽葉 シロマきみのことを、似ているな、と思ったあの記憶は。 欺瞞に満ちたものであったとして。 それはきっと、そこまで間違いのない記憶だったのだろう。 (-234) 2022/07/13(Wed) 22:13:07 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「無茶を言うなあ。君らしくはあるけど」 冗談めかして溜息を吐き、呆れて見せた。 生者からすれば、彼女の放課後はまだ続いていると言えるだろう。それを想像できないわけではない。 「私と君、ひょっとして在り方は近いのかもしれないね。 私が目指すべきものは、もう時代によって失われてしまった。 愚かだとは思っているが、それでも私はこうするしかなくて──手段だって、ひとつしか無かった。 でもね、君」 朝日が滲みだした、東の空。目の前に、貴方がいるかのような気軽さで。 手を伸ばし、頬の輪郭をなぞる。 そんな、仕草だけをした。 「成り下がっている、なんて言い方はよしてくれ。 民主主義じゃ人間は平等なんだろう? その標がどれだけ高嶺に在ったかは知らないが、現人神よりは近かったに違いない」 彼女なりに冗句を含みながらも、言外に。 卑下するな≠ニ、そう告げる。 命が紙屑のような時代でも、人の個が否定され、戦車の歯車として生きることを強いられた時代でも。 人々は、理想の影で泣き続けた。……それは、少女も同じ。 「人が変わったらさ、変わる前のその人はどこに行くんだろう。 私は、消えてしまうと思う。 私が変わらないのは、そういうことだ」 変化してしまえば、『教師を志す白間コズヱ』は消えてしまう。 それは成仏でも何でもなく、不可逆な変化として。 幻になる、ということだ。少なくとも少女は、そう考えている。 (-240) 2022/07/13(Wed) 23:22:08 |
【秘】 奔放 クリス → 陽葉 シロマ「成り下がった、であってるだろう」 「その標を制定したのは自分自身だ。だったら、誰が何を言おうとも」 「その自分が麓にいる事を自覚しているのは、自分だろう?」 今まさにきみが言った通りだ。 平等を制定したのは民主主義なのだろう? 民主主義とは民意だ。民意に身を置いているというのならば、この場すら存在しない。 未だそれが道半ばであると、そしてそれを止められないのは。 どこの誰だと、そう笑う。 相馬栗栖は探偵に向いていない。事実は振りかぶるわけではなく。 真実をそこに置く。 「それを平等だというのなら」 「変わったところで」 「大した変化なんてないだろ、白間」 世界にとって。僕たちは。 大した存在ではないのだと認めると、そう言って見せろ。 「幻かどうかを決めるのは、 僕たち じゃない」 (-242) 2022/07/14(Thu) 1:17:04 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「言うじゃないか。 ああ、幻かどうかを決めるのは私達じゃない。世間様さ」 頬をなぞる仕草をした後。 貴方の顎を軽く持ち上げるように、人差し指を動かした。 少女は静かに喉を鳴らし、笑う。 「いてもいなくても同じ。背景にさえならない滲みのひとつ。 そんなものだろうよ。私も、君達も」 鴉がどこかで鳴いた。 鳥が目を覚まし、陽の下を飛ぶのはあと数刻後。 どこかの家では誰かが起きて、どこかの家では誰かが眠る。 「さて、栗栖。 君の話を聞くに、君は私に変わってほしいのだと捉えたわけだが」 世界は今日も、いつも通り回っている。 「生徒ではない君の願いは叶えられない」 「大事な生徒を置いて消え失せることなど、もっての外」 「しかし。 聞いて、知り、検討することはできるよ」 (-253) 2022/07/14(Thu) 12:36:12 |
【秘】 奔放 クリス → 陽葉 シロマ「つまらないからね、ただ結末が決まっているものを見やるのも」 行きつく先が決まっている。それは未知ではない。 ただ、そのままに、流れに身を任せるだけ。 何度だって言っている。そんなものは、つまらない。 「似てるからこそそう思うのかな? それとも僕が僕であるからか、フ、フフ」 幻かどうかさえ分からない男は、笑う。 頬を撫でられたかさえ分からない男は、笑う。 「僕にできることなど、もうきっとないんだからさ」 きっと、この先ちょっとだけマシな結末などないんだろうけど。 きみの知ってる通り、その男は、だからといって動くことをやめないのだ。 幻に成り下がったとしても。 「ただ、解決しに来ただけさ、僕は」 きみの妄執を。 「きみの期待に応えに来た」 静かな対話は、きっと行き着く先などありはしない。 幻は幻のままに。それにはきっと意味は付随されず。 願いなど他者に預けない。それが彼と彼女だった。だから。 世界に疵をつけるのだ。それがどんな前提を持っていようとも。 相馬栗栖にとって、彼女は。 白間コズヱではない。ただの、 (-254) 2022/07/14(Thu) 13:46:02 |
【秘】 甚六 カナイ → 奔放 クリス見上げるきみに笑いかけた。 口をもにもにさせて、笑い声はその中に含んで。 「じゃ、そぉま は…… んぇ 」それも、束の間。 ちかちか瞬き、息を継ぎ。 「 ……ん。」んん、 「す、すいり。……が、がんばれ よ 、しゅ い、す …すひ 、ぁう。」「 すいぎむ 「ぁと、…あと!」 「 こ ずちゃん のこと、おねが い、な」 ▽ (-259) 2022/07/14(Thu) 14:44:07 |
【秘】 甚六 カナイ → 奔放 クリス慌ただしく、言葉を重ねて。 さいごにぎゅっと、きみの手を握ってから。 「元気でな、そぉま」 廊下の奥に駆けていった。 (-260) 2022/07/14(Thu) 14:45:36 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「予定調和だって尊いものさ。 予想外の事は正直、もう勘弁してもらいたいものだけど」 警報が解除された直後に空襲に見舞われ、優勢と聞かされていた戦争は負け、校舎から生徒は消えた。 社会の荒波は常に少女に厳しく、また虚しさを与え続ける。それはいつの時代にも存在する、『よくある話』だ。 「しかし期待に応えてくれると言うなら、もう少し話を聞いてみよう。 私の欲しいものが、その先にあるかもしれない」 実のところ、その答えが何であっても構わない。 こうして、自分について考えさせることが目的であったから。 勿論、期待に応えられれば嬉しいけれど──高望みはしない。 そう告げて、亡霊は貴方の言葉を待った。 (-262) 2022/07/14(Thu) 15:48:31 |
【秘】 明滅 カナイ → 奔放 クリス「そぉま」 「ぼくもさ」 「きみくらい賢かったら、 呆れた顔とかさせなかったんかな」 「がっかりもさせなかったかな」 「ねーちゃんのくせに、 悲しませたり、しなかったよな」 「あの子のことも、わかってやれたんだろな」 (-263) 2022/07/14(Thu) 15:52:45 |
【秘】 明滅 カナイ → 奔放 クリスけどな、 きみと話してると、ぼくは いつのまにか、 ぼくが馬鹿でどうしようもないやつだったことを いつもちょっとだけ、忘れてて、 それって なんだか、 なんだか とても (-264) 2022/07/14(Thu) 15:54:46 |
【秘】 奔放 クリス → 友達 ネコジマ「ああ、知ってるよ」 「だからこそ、」 「いや」 「それでも、僕は」 都合の良い幻聴か。 それとも、聞きたくもない言葉か。 どちらにせよ、それは、 (-277) 2022/07/14(Thu) 19:24:34 |
【秘】 傷弓之鳥 マユミ → 奔放 クリス「悪趣味」 言い切って捨てた。余計に機嫌が斜めに曲がる。こちらはそちらの腹の下なぞ、めくりあげることができた試しがないのに。 とはいえ、へそも口も曲げていては話が進まないので適当なところで仕切り直しとばかりに咳払いをひとつ。 「まず、少し前に栗栖が出した宿題は『分かっている自分を話してくれ』でしたね。 拙はずっと、『何も難しいことを考えずに無邪気に楽しい時間だけ過ごせる、子供のまま皆とずっと一緒にいたい』と思っていました。 学校を卒業してしまったら、大人になってしまったら、皆バラバラの道を歩むでしょう?今生の別れにならない者だっているでしょうが、大人になれば今よりずっと不自由で窮屈な時間を過ごすことになる。 拙はそれが嫌だったんです。何も余計なことなど考えず、好きな人と好きなことだけをしていたい」 あまりに稚拙であまりに我儘で、あまりに困難を極めた願い。 子供の時間を、子供のように無邪気なフリをして現実から逃げて夢見ていた。 ▽ (-286) 2022/07/14(Thu) 20:58:06 |
【秘】 奔放 クリス → 甚六 カナイ「僕は賢くなんてない」 「ただ、知りたいことを」 「ただわかりたいことを」 「ただ、そうあろうと……」 「きみだって、出来たはずなんだ」 「きみだからこそ、出来たことはいくらでもあったはずだ」 「勝手に諦めて、押し付けていくな、馬鹿が」 (-287) 2022/07/14(Thu) 20:58:20 |
【秘】 傷弓之鳥 マユミ → 奔放 クリス「でも流石に拙も本物の馬鹿にはなれなくて。抱える願いは叶えるのが難しいと分かっていました。 でも、だからといってどうすることも出来なくて。夢を見続けたまま遊び呆けて現実に目もくれず、後ろ向きのまま前進し続けていたのですよ」 きっと、逃れられない別れの時が来てしまったならば。虚しさと寂しさを抱えたまま流されるだけ流されるつもりだっただろう。 「……それなのに」 かたん、と。少女の座っていた椅子が軽い音を立てて後ろに下がった。 「栗栖。貴方は拙が願いを叶えたとしても満足出来ないだろうと言ってのけた」 かすかな衣擦れの音を連れながら、少女は大股で教卓へ。 「そして。拙もまた、その可能性は否定しきれないと思ってしまった。貴方のついさっき放ったばかりの言葉で、長い間抱えた願いがぐずぐずに崩れようとしているのですよ」 「長い間思い続けてきた願いが、そんなあっさりと砕けることってあります? 結局それは、その程度だったということなのでしょう」 教卓を挟んで、その向こう側。 相馬栗栖ただ一人を、黒黒とした双眸が真っ直ぐ射抜いている。 ▽ (-288) 2022/07/14(Thu) 20:58:38 |
【秘】 傷弓之鳥 マユミ → 奔放 クリス「だから、本当は自分が何を求めているのか考えました。色んな人の話も聞いたんですよ。 生きても死んでも、今の拙では変わりなく寂しいままだから、本当にやりたいことがないか考えろと教えてくれた子がいました。 無理して生きることが必ずしも美談ではないし、死を選んでも誰にもその人を咎める資格は無いと言ってくれた子がいました。 本当に皆とずっと一緒にいる事を望む子から、死んで不変を手にしようとも誘われました」 「皆が皆、それぞれ道を歩もうとするなら背中を押してくれるのです」 はぁ、と。 ため息ひとつ。同時に視線が机へと落ちた。 「でも、今の拙は。 何がしたいか、自分ですら分かりません」 「考える必要のなかった過去ばかり見つめ続けて。 未来にも死後にも、 ──何も見出せていません」 「拙はきっと、歩く理由が欲しかった。 がらんどうを埋めるものが欲しかった。 ……きっと、そうだと思います」 話し終えて、顔を持ち上げる。これで満足したかとばかりに、くりりと大きな瞳に貴方を映した。 (-289) 2022/07/14(Thu) 20:58:58 |
【秘】 奔放 クリス → 甚六 カナイ「僕は、」 「僕だって、何かを出来ればいいと思っているんだ」 その声は、幻だったのか。 いいや、きっと違う。 きっと違うと信じて見せれば、違うのだ。 だから、 (-290) 2022/07/14(Thu) 20:59:38 |
クリスは、そのライトを、 (c17) 2022/07/14(Thu) 21:00:01 |
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