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【人】 銀の弾丸 リカルド【ノッテアジトの廊下】 闇医者を抜け出し、とある少女と出会い。 アジトへ向かって、上司やテンゴなど頼りの人がいなくて、 ふらふらと探し歩いて、今。 上司の部屋から出てきたリカルドの手には、あるノートパソコンをカバンに入れて持ち出してきていた。 この時はまだ少女がこの後、身を投げ出してしまうなんて事には気づくはずもなく。 ただ、重体とも言える身体にムチを打って仕事に戻るつもりでいた。 あの2人が動けない今、しっかりしなければならない立場にいる自覚は十分にあったからだ。 寝ている暇は、1分とてなかった。 「これは俺の部屋に保管することになるな……」 などと呟いて。 (5) 2022/08/24(Wed) 22:42:00 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → ”復讐の刃” テンゴ【隠された医療施設】 「――……約束ですよ。 日に1回は様子を見に来ます、……俺自身の治療もありますしね」 ここのスタッフたちは、施設立ち上げの頃から共に研鑽に励んだ者たちだ。 医療においては何よりここが信用できる。 きっと、貴方も快方に向かうはずだと信じている。 「はい。 では、俺は一足先にアジトに戻ります。 そうとわかれば、最優先で守らなければならない物がありますから」 上司に託された宝物。 それを、誰かに見つかる前に回収しなければならなかった。 (-0) 2022/08/24(Wed) 22:56:46 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー「それがっ、妄想だというんだっ あの方は、お前をいつも気にかけていただろう……!」 俺が何を持っているというのだろう。 確かに俺は可愛がってもらったが、上司の愛はお前のものだっただろう。と、男はそう思っている。 自分たちの間にあるのは、主従の関係であって、同じ高さに居るものではない。 父も母も、最初からいなかった。 養親は、最悪の人種だった。 今はただ、上司への敬愛と、幼馴染への親愛で生きている。 愛など、そんな不確かなもの。 俺は知らないし、要らない。 「んぅ……、っ、奪ってもないものの返し方など、知ら、ぃ、あ」 拭う手付きですら、快感にしかならなくて、 それで吐息をかけられれば、素直な身体はぶるりと震えた。 上司ですら、俺のものではない。 俺が、上司のものであるだけ。 元々俺のものでは無いものを返すことなど不可能だ。 ▼ (-4) 2022/08/25(Thu) 0:38:43 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニーだからこのアイオライトのピアスは結局、どういう意味を込めていたのだろうかと、耳を弄られながら思う。 やっぱり、犯し恨みをぶつける相手を、狙いを、俺に定めたという意味だったのだろうか。 それは、この男にしかわからないことだ。 ――ぎくり。 転がされ、告げられた言葉に心臓が鷲掴みにされた気分になった。 女相手ならともかく、男相手に性行為などしたことがなく、そこは、堅く閉ざされたままだ。 何をされるのかは最初から理解はしていても、簡単に受け入れられる身体になどならない。 それでも、気持ちいいよりも、痛い方がいい。 なんて、欠片だけ残った理性が叫ぶ。 「……はっ、どうせなら泣き叫ぶほど痛くしてしまえ。 愛撫なんぞ――――」 異物が。まさぐる。 どうして優しくしようとするのか、理解が出来なかった。 (-5) 2022/08/25(Thu) 0:39:30 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー大事だからこそ遠ざけておきたいという思考は理解できる。 そうだからこそ、自分たちマフィアの世界に巻き込みたくないと思うのは当然の理だ。 それくらい、本当はこの男だって気づいているんだろう。 だからこそ蟠りが燻って、恨みとないまぜになってしまっている。 雫が背中に流れて、それが何なのか気づいたけれどわからない振りをした。 泣いているのか、と。 指摘したってどうにもならないことだし、隠そうとしているのだからそれに合わせてしまったほうが良いだろう。 代わりに、少し、押し黙ってしまったけれども。 そもそも体勢がもう、自由に喋ることを許してはくれない。 腕の自由を拘束された上で腰だけ上げれば、自然と顔は下に突っ伏してしまう。 柔らかなクッションがあるからこそ痛くはないが、大きな声を出さない限りはくぐもった声になってしまうことだろう。 完全に屈服させられている姿勢に、触れられている事に、流石に快楽とは別の羞恥心が大きくなった。 「――――っ!! な、に……をっ」 その煙草の香りは、上司が使っている物と同じものだ。 いつも買ってこいと言われるから、同じものを用意したら喜ばれたからそうなってしまっただけで他意はない。 それでも、この男が同じ香りをさせていることについてどう思うかは話は別。 受け入れるのを決めてはいても、やめろ、と。叫んでしまいたい気分だった。 痛くされないのはまだしも、まさか、そんな所を舌で刺激されるなんて思わない。 柔らかな感触が堅く閉ざされた窄まりをほぐそうとしているのが、ひどく気持ち悪い。 動く度に喘ぐ声は、クッションに溶けて消えていく。 身体が根本的に作り変えられていってるような、そんな気分だった。 (-10) 2022/08/25(Thu) 8:01:01 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【路地の店】>>9 ストレガ 予想と違わず辛辣な言葉を受け、さすがの仏頂面も少しばかり眉を下げ。 それでも、辛辣な言葉の裏に面倒見の良い一面がある事を知っているから、降参の意味を込めて軽く両手を上げた。 「お前の言葉には何一つ言い返せないな」 頭を撃たれて絶対安静にならないわけがない。 ド級のバカと言われればそのとおりだが、どうにもそういう訳にはいかない。 外回りを押し付けられてる時点で、色々警戒すべきこともあるのだが、それはさておき。 正面から貴方の顔を見れば、流石にその大荷物と欠けた頬と耳の状態には気づくだろう。 「……だからその傷を作ってきたのか? その大荷物も気になるが……闇医者で見た時はそんな傷、なかっただろう」 表に見える範囲でしか、彼女たちの交友を知るわけもなく。 自分とて、あの2人を殺した人物は洗い出したいと思っているから、その様子を見れば何をしてきたかくらいは想像がついた。 断られるだろうなとは思いながらも、両手に荷物があることを良いことに流してある横髪に触れ、傷を診た。 「俺が密売に使ってる港の5番倉庫の地下によかったら来い。 綺麗に手当をしてやろう。女の顔にこの傷をそのまま残すのは忍びない」 続く言葉には「言い訳……」と頬をかけば、 「テンゴさんがそこで、俺以上の重体で寝ている。 俺が今、ベッドで寝ている時間は1秒たりともない。心配させてすまんな」 と言い、そこには最新の医療施設を作っていると告げ、そこでマウロを手術したことも告げた。 貴方になら、あそこに今寝ているテンゴにも会わせてもいいと、思っているからこそのことだった。 (10) 2022/08/25(Thu) 19:39:01 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【路地の店】>>11>>12 ストレガ 「……それは、そいつは大層泣きわめいたことだろうな」 それは大体の男は震えあげる話だった。 言葉通りに受け取って、それを想像してみれば痛いどころの話ではなく、いっそ死にたいくらいの絶望だろうなと理解した。 「時計塔まで吹き飛ばしてきたのか。その荷物は引っ越し道具か? ……まぁ、いい。今の話で件の経緯はだいたい予想はついた。 この家は好きに使うと良い。 ……下手人は、トスキファミリーの者かどうかだけ教えてくれ」 これが今ここにいる本来の仕事のため、確認を取り。 内容を聞き出せれば、助かったと礼を言う。 避けられ断られとするだろうから、然程気にはしてない様子だが、あなたの言葉には「わかったわかった」と返している事だろう。 「ヤクについてはしばらく後遺症が残るかもしれん。 とはいえそれでお前に迷惑をかけるつもりはないから安心しろ。 ……まぁ、お前がそれを残したいというのであれば無理強いはしないさ」 この傷は、お互いにきっと、一生残る。 大きさや酷さの話ではない。 強い願いを成す傷とは、案外消えずに残るものなのだ。 その傷を持つものが、忘れない限りは、ずっと。 ▼ (13) 2022/08/25(Thu) 20:43:43 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【路地の店】>>13 ストレガ 「あぁ、手当はともかく見舞いには行くと良い。 あの人も話し相手が出来れば喜ぶだろうからな」 ただの昼行灯ではないと、ちゃんとわかっている人間がここにもひとりいる。 それはとても良いことだ。 あの人がどう思おうと、まだまだ彼には現役で居てもらわなくてはならない。 「あの時の件については是非内密にしていてもらいたいものだが……、 状況が許してくれるようになれば、その時はゆっくり休ませてもらうことにしよう」 随分心配をしてもらえたものだなと、小さく笑った。 ……俺が、ツィオが、マウロが。そして貴方も。 それぞれ力をつけて立てる日が来るまで、あの人達にはずっと見ていてほしいと、そう思うのだった。 (14) 2022/08/25(Thu) 20:44:44 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【ノッテアジト廊下】>>17>>18 どうしようもない奴ら 「随分良いように言ってくれるじゃないか。 散々面倒をかけてくれるのはいつもお前たちだというのにな」 荷物を奪われ、少しだけ慌てたように「それは大事なものだから、丁重に扱え」と指示をして、前を歩くツィオの後に続く。 慎重に歩かねばならないのはマウロと同じだから、ゆっくりとした足取りだ。 ふらふらした様子を見せないのは、気を張っているからだろう。 それでも、ツィオがこちらを向いて手を掲げれば、 貴方達にしか見せない顔が、ここに確かにあって。 本当に泣きそうな、それでいて安堵したかのような。そんなくしゃり、とした笑みを浮かべて手を伸ばす。 「――ただいま、兄弟」 こつん。 本当に軽く、拳を手のひらに当て、 その開かれた左手にそっと手のひらを重ねた。 (19) 2022/08/26(Fri) 0:17:24 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー体を触られ始めて、どれくらいの時間がたっただろうか。 実際にはそんなに経ってなかったとしても、自分には永遠にも長い時間が経過しているように感じられて、危険だ。 「――――――ふ、うっ」 最後に残った羞恥心が、クッションを噛むようにして声を殺した。 もう十分に回ってしまった強い酒と薬が混ざり合って、身体の中で暴れていて、熱い。 喉はからからと乾いているくせに、湿らされた下の方ばかりが熱を求めて震えている。 頭の中では警笛が鳴り響き続けているけれど、それに従う理性はもう欠片も残っていない。 ただただどうにもならない飢えが、叫びだしているかのようにその舌を、指を受け入れてしまっていて、 とろりとしたローションにまみれてしまう頃には、空気を求め浮いた口から甘くなった吐息が漏れ出た。 「そ……な、こと、した―――ことな、っ、あ、あぁ」 決して女のようには柔らかくないそこが、男根を受け入れるための受け皿になっていく。 熱があるかのように火照ったそこだけは潤んで、身体がどんどん作り変えられていくかのようだ。 どんなに言い返して見せたって、その顔はもう、生真面目な幹部候補のそれではなかった。 (-33) 2022/08/26(Fri) 1:46:49 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー――貴方が言う通り、 俺は、ソニーの過去を何でも知ってるわけではない。 あの方と過ごした日々を、ボスとの諍いを、親友とのあれこれを知っているわけではない。 それでも、ずっと見てきた。 気のおけない好敵手として、上司の大切な人として、見てきたんだ。 彼がどう言う存在なのかを。 笑顔を使い分けて、本当の自分を見せないようにする。 人懐こそうなくせして、独りになろうとしているようにすら見える。 たった一人以外は要らなくて、我儘を振りまく子供のような男。 「―――は、それでは、あの方は手に入らないというのになぁ……」 ぽつりと漏らした言葉が、貴方に届いたかはわからない。 直ぐにそれは溶けてしまって、言葉にならない喘ぎに変わってしまっただろうから。 どう思われようともう、構わないと思った。 これ以上の凶行を止める一手になるのなら、それくらいの事は何のブレーキにもならない。 たとえ自分が堕ちた淫魔と呼ばれようとも、それであの方の心が晴れるというのなら、これ以上幼馴染が、家族が狙われなければそれで良い。 「あ、あ、―――――――っ」 熱い、アツイ。衝撃に目の前に火花が散った。 舌や指とは比べ物もならない質量の異物が、自分を貫いていく。 痛いのに、痛いだけじゃなくて、それを待ち望んでいたかとでもいうように、体が悦んでいる。 きゅうきゅうに締め付けているのは、慣れきっていない狭さからなのか、それとも快楽によるものなのか最早自分にはわからない。 手が自由に使えていたならきっと、クッションにしがみついて耐えただろうけれど、それすらも敵わないから、肩をソファに押し付けて弓なりに背を反らせた。 けれども、それと反比例するかのように、自分自身のそれは萎えたまま。 それは、体内に回りきった薬の影響としか言えないのだろう。 (-56) 2022/08/27(Sat) 0:47:11 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【ノッテアジト廊下】>>37>>38>>39 俺の家族 「――ハ、ついに天辺ときたか」 夢を語るのは俺の役目だったはずなのにな、と嗤う。 俺の上にいるべき上司は、たった一人だけ。 その上司に送り出されたのだ。……ならば、あの方の元へ行くときは、誇れる自分であらねばならない。 「お前たちに耳に入れておくべき情報がある。 特大級の機密だ……3人でなら……、 上手く料理できるだろう。――わかるな?」 これだよ、と。 ツィオが持つノートパソコンとUSBが入ったカバンを撫でた。。 上司が長年努力して作り上げた情報収集装置。 ラウラが残した軌跡を見たならば、貴方達はなんと言ってくれるだろう。 閉じた目の裏に描くのは、あの日見た広い街並み。 あの全てを手にするために。 地獄のよしみだ、肩を組んで歩いていくとしよう。 (40) 2022/08/27(Sat) 20:36:45 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 風は吹く マウロ【アジト内のリカルドの部屋】 廊下で兄弟たちと再会して、それから。 リカルドに充てられた部屋で、上司と密かに眺めながら情報を得ていたパソコンについて話した後だろうか。 上司のために淹れるのがとても上手になってしまった珈琲を入れ振る舞ったりして、不意に話題を変えるように2人に声をかけた。 「あぁ、そうだ。 俺がマウロに手術を施した医療施設についてだが……、あそこは秘密裏に作ったものだから機密にしていて欲しい。 もしもの時に活用してきたものだからあまり知られたくないし……それにだな」 「あそこに今、 テンゴさんを入院させて匿っている 」このゴタゴタの中で、彼やヴェネリオを邪魔に思っていた身内の犯行と断定しながら、語る。 自分たちには、今すぐてっぺんを取る力はない。 個人的な事情をおいて考えても、ヴェネリオが居ない今、まだまだ彼に引退されるわけにいかない。 それが最大の機密にしたい理由だ。 「俺やマウロ以上の絶対安静の状態だ。 ……そう言えば容態に関してはわかるだろうが……、よかったら時間を見つけて顔を見に行ってやってくれ」 (-75) 2022/08/27(Sat) 20:57:13 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー会いには行かないという言葉に、 器用そうに見えるのに、本当の貴方はとても、不器用な人間だなと思った。 それはあの方も、自分も同じだ。 誰か一人でも器用に動けていたなら、今このような事態にはなってはいなかっただろう。 ――だけど、そうなってしまった。 もう何処にも引き返せやしないのだ。 「は、ぁ、っあ”、あっ」 まるでイイ所探されているかのようなゆっくりとした動きに、身悶えした。 もっと、感じる間もなく痛みだけを与えてくれれば、こんなに苦しむことはなかったと思うのに。 貴方が、俺に良くする理由がわからなくて、混乱して、尚もその意識は快楽の海に溺れていく。 潤滑油を頼りに、中でごり、と何かを抉るように擦られれば、一際大きく鳴く声が上がっただろう。 もうそこに、普段の仏頂面の幹部候補など居やしない。 本来ならば排泄期間である場所が、濡らされて受け入れている。 雄を受け入れてきゅうっと締め付ける様は、雌にでもなってしまったかのようだ。 響く音も、擦れる感触も、痛みも、優しさも。 楽しんで性行為をしたことなどなかったから、それは正真正銘今まで感じたことがなかった快感で、頭の中をどろどろに溶かされている気分だった。 ▼ (-86) 2022/08/28(Sun) 0:08:15 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー恨みと嫉妬をぶつけられているのはわかっている。 自分が欠片でも好かれているとは思っていない。 自分が向けた好意にもにた感情と同じ物が返ってくるのではと思うのは、烏滸がましい、独りよがりな思考だ。 髪を梳かれ、温かい何かを背中に感じた。 それまで体の自由を奪われ、身悶えして捩ったり跳ねたりするだけだった体だったが、 包み込むようなそれが、腕であることに気づいた時には、はた、とそのの動きを止めて、 何が起きたのかとぼんやりした頭で考えたが、首筋を吸われて落とされた言葉に 今、背中にぴったりとくっついてきた男の目に、自分が何に視えているかを理解してしまった。 ――本当に、悲しいくらいに、 想いの一方通行しか、ここには存在していない。 「―――……、腕を解け。 これじゃ、お前の頭を撫でてやれないだろう」 あの人ならば、きっと、そうしてくれるだろう? (-87) 2022/08/28(Sun) 0:09:14 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー例え紡がれる言葉が自分へのものではなかったとしても、その声色は甘く震えて耳の奥に響くようだ。 頭の中が真っ白になっていくようで、どこかに連れて行かれてしまうような気分になる。 「ふ、あっ、んんっ」 快楽に堕ちた瞳には、何も映らない。 ただ、その頬に触れた硬い髪に頬ずりをしてやるだけだ。 受け止めたそれは愛ではなかったけれど、貴方とのこれまでを否定しやしない。 あれはあれで、駆け引きをちゃんと、楽しんでいたから。 でも、今はただ。熱くて、気持ちがいい。 奥を突かれて苦しいのに、たまらない。 名を呼ぶ囁きに、異常な熱がこもった。 ――馬鹿が……俺は、リカルドだ 否定する言葉は口からは出て来ない。 代わりに、絶え間なく嬌声と肌がぶつかる音が部屋の中に響かせて、頬を涙が伝って流れた。 それでも本来なら立ち上がるべき自分のそれは、そういう事なく萎えたまま。 何かせせり上がってくるような感覚が、体をぶるりと震わせている。 もう代わりでも、恨みでもなんでもいい。 ただ、どうか最後まで離さないでいてほしいと、ただそれだけを願って。 「っふ、は、あ、ゃ、ああ―――――っ」 長い吐精を腹の奥に受けながら、全身を強張らせ、震えるように弛緩する。 男を受け入れるのは初めてであったのに、後ろだけで深い快楽に達した身体の力が抜けて、背中にすり寄る頭を自由にさせている。 もう、身体の何処にも、力が入る余裕はなく、 ただ、静かに目を閉じて全てを受け入れていた。 (-97) 2022/08/28(Sun) 16:44:29 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【港の防波堤】 ――慌ただしかった1日からいくらか経ったある日。 日参して治療を受けている地下病院から出て、一人、防波堤から海を眺めていた。 今日も忙しく仕事をして、治療後はテンゴに報告ごとを耳に入れたりしていたけれど、この時ばかりは紫煙を昇らせ、静かに波の音に耳を澄ませていた。 居なくなってしまった人たちの、いろんな声が聞こえる気がした。 ラウラの控えめな声や、上司が俺を呼ぶ声。 それから、この海に攫われてしまった少女のこと。 行き場を失っていたその少女を引き取って、育てる、つもりだった。 約束通り独りにしないと、約束して。 まるで、あの男に言ってやりたかったセリフみたいだな、なんて思ったりしながらも、差し出した手が届いたのが嬉しかったのに。 亡くなった者の後を追いたい気持ちがわからないわけではない。 自分とて、地獄の果まで上司のお供ができるなら、今すぐにでもあの人のもとに行きたい。 だけど、出来ない。 命など、大事な物のために捨てる事はいつだって出来るし、惜しいわけではない。 自分の大事なものは、たった一人だけではなかった、から。 幼い頃から苦楽を共にした幼馴染を置いては何処にもいけない。 マウロが死んだと思わされた時の、ツィオの顔。 手を伸ばしても決して触れられないと思った、あの時。 気づくのが遅くても、あんな顔をさせるなら駄目だと思った。 俺は、上司を、幼馴染を傷つける者を許さないが、 俺が傷つくことで、あいつらにあんな顔をさせてしまうなら、 俺は それ を絶対に許してはならない。 (42) 2022/08/28(Sun) 23:10:53 |
【置】 銀の弾丸 リカルド――ある、晴れた日。 男は、花束を3つ抱えて墓地に訪れた。 ひとつは、数日間しか共に居てあげられなかった少女の小さなお墓に。 ひとつは、心を知らなかった無垢な女の墓に。 ひとつは、心から敬い愛した上司の立派な墓に。 立場の違いがあるから大きさや場所までは揃えられなかったが、それでも同じ墓地の中にそれぞれ準備することが出来た。 勿論それは、俺一人の力ではなく、ツィオやマウロも共に尽力してくれたからに他ならない。 「一緒に来る事が出来たら良かったんだが、まぁ……、 二人共後で来るだろう―――と、」 墓標にLaura・Liberatoreと記された墓の前に来ると、そこには違う花束がふたつ置かれている。 「――なんだ、二人共先に来ていたんだな」 ふ、と可笑しそうに笑って。 墓の前に腰を下ろし、同じように花束を捧げて、両手を胸の前で組んで目を閉じた。 それぞれ話したいことがあったんだろう。 それを他の二人に聞かれたいとも思わないのは、自分も同じだ。 男というものは得てしてそういうものだが、果たしてここに居るはずの女は理解しているだろうか。 (L30) 2022/08/29(Mon) 20:37:42 公開: 2022/08/29(Mon) 20:55:00 |
【置】 銀の弾丸 リカルド「聞いたとは思うが……アルバファミリーと合併を視野に入れた同盟を組むことになった。 一人でも多くの人間を迎え入れたいと思って尽力しているんだが、……なかなかうまくいかない」 互いに多くの命を散らしてしまった。 組むくらいなら抜けるという人間もいれば、大事なものを追って死んでしまったものも居る。 その気持はわからないでもないが、俺はとても同じ道を歩もうとは思えない。 「なぁ、俺は。 お前の答えが聞けなかったなぁ……、まぁ、おおよそわかった気はしてるんだが。 今は聞けなくて良かったとも思ってるんだ」 「結局の所、俺もお前も、二人共が大事なのは変わらないからな」 自分にとっては、どちらが上も下もないから。 上司だけはまた違った位置にはいるけれど、それでも3人共何より大事な存在であったのは変わりない。 あの人のことだから、きっと、ラウラを一人にはしていまいと、 そんな事を思いながら目を開き、真っ直ぐに墓標をみつめた。 (L31) 2022/08/29(Mon) 20:38:35 公開: 2022/08/29(Mon) 20:55:00 |
【置】 銀の弾丸 リカルド「ラウラ。 お前に一つだけ報告がある」 「俺は今日から、名前を変えたんだ」 「だから……今日から俺の名は、 リカルド・ フィルマーニ だと、覚えておいてくれ」――――姿の見えないあなたの声が聞こえた気がする。 大事なものを二度と喪わないよう、 その名をしっかりと、自分に刻んで誓う。 いつの日か絶対に、3人であの景色全てを手にする為に。 (L32) 2022/08/29(Mon) 20:39:51 公開: 2022/08/29(Mon) 20:55:00 |
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