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【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク生き延びる事は恥ずべき事。 生きて虜囚の辱めを受けず。 そう教わり、そう育った男は、己の身を恥じている。 それは死ぬまで変わらなかった。 「……牧師様のような事を言うんですね」 しかし貴方の言葉が、自分の救いになることを理解している。 けれども自分は救われるべきでないと、今も考えている。 「……。季節と言ってもね、 常夏の島で生まれましたから。ああでも、」 許される事。想われる喜び。 全てをとうの昔に忘れた男は──、 いつか自分を許せるのだろうか。 「……その時こちらでは、鬼灯が実っていたそうです」 それは、誰にもわからない。 (-10) 2021/07/12(Mon) 13:18:19 |
【独】 名無しの ミロク「……死者も眠いと感じるんですね、気のせいでしょうか」 どこかで自分が解体される音を聞いて何も感じない。 感謝をされているはずなのに、 ニエカワに墓を作った時のお礼より響かない。 この違いは何だったのだろう。 「私がやりたったことだから? 間に合わなかったのに、変ですね」 名もない男が取引以外で動いたのは、死者への弔いだけ。 生きている間に何もできず、やるせなさは募り続ける。 だから、その感謝がどこか救われていたのだと、答えを出した。 (-38) 2021/07/13(Tue) 19:31:05 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク(兄サン、どこいんだろ。 ……呼びゃァ出てくるかねェ) 暫く見かけない姿を探して、院内を彷徨いている。 腕の中には、蓋をしたブリキのバケツが一つ。 (-40) 2021/07/13(Tue) 20:42:01 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロクあなたの足元に黒猫が一匹。 小さくないて、じゃれつけば姿を消した。 「バケツなんて持ってどこに行くんですか」 それがどんなものかわかっていても、 男はそう話しかけました。 (-51) 2021/07/14(Wed) 8:31:22 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク 足元に現れた猫を踏んづけぬ様蹴らぬ様、 避けようとしてたたらを踏む。 「――あァ、いいとこに。 お前サンの墓、つくりにいくとこなんだけども。 どこに埋めりゃァいいかねェ」 一人分の首と骨とが収まったそれを抱え直して、 顔を上げた男はそう返事をした。 (-52) 2021/07/14(Wed) 8:54:36 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「私にソレを聞くんですね。 ニエカワさんと黒猫のお墓を作ったんで、その近くにでも。 深く掘るように言われましたが力は大丈夫ですか? タマオさんを呼べばよいと思います」 警察官はあまり文句なくやってくれるだろう。 見えている自分たち以外からは異常な提案ではあるのだが。 彼が異常な存在であるのは殺されている身からすれば十二分に知っているのだ。 そのまま案内をする、病院の裏口から出て少しした場所。 泥で山も見えなくなっているが比較的無事な地表があった。 彼らがいる場所だ。 (-53) 2021/07/14(Wed) 9:55:37 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「聞けンだし、どうせなら好きなとこがよかろ。 ……んー、まァ、おれだけでやってみるかねェ」 時間はかかるだろォが、と言いつつ 拝借したスコップを持って着いていく。 辿り着いた先、最近均されたと思わしき場所が二つ。 それが彼らの墓なのだろう。 バケツを脇に降ろし、静かに手を合わせる。 それから、程近くの地面にスコップの先を突き立てた。 十分な深さへ到達するまで、短くはない時間を要する。 只管に土を堀り返し乍らも、 話し掛けられれば手を止めぬ儘で応えるだろう。 (-56) 2021/07/14(Wed) 10:41:10 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「それもそうですか、死者の声が聞けるのも難儀ですね。 私は死んでいる方と意識して会話をすることがありませんでしたから、随分恵まれていました」 不思議な体質でしたとあなたの手を止めない程度にぽつぽつと会話を溢し自分が埋まる穴が掘られていくのを眺める。 他人事のようにみえてしまうのは、死んでしまっているからなだけだろうか。 「その骨って、"私"なんですかね」 (-62) 2021/07/14(Wed) 11:07:50 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「あァ、そういやお前サンもだったか。 ……まァ、ちっとばかしナンギかもなァ」 視界の外で幾人分か、パタパタと走る小さな足音。 バッチリシッカリ とり憑かれている 側に居る。なかなか姿は見ないものの。スコップを差して、掘り起こして、穴の外へ土を盛って。 無心に繰り返す動きが、掛けられた言葉で一瞬澱んだ。 「――おれのやったモンつけてんだ、 十中八九お前サンでちがいねェだろうよ」 (-66) 2021/07/14(Wed) 12:55:31 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「……そうですかね?」 声色が少しだけ明るく聞こえたかもしれない。 「私、商人として死んだのか私として死んだのか、 あんまり自信がないんです。 理由はすべてミロクに起因しているんですが。 ……ああ、わかりにくいですかね。 ミロクというのは商人の名前で、私は名前がありません。 だから私の意思でちゃんと死ねたのか、わかりかねています」 あのとき話した言葉より少し揺れた言葉。 生き方を変えられなかった男は、自分を見つけられていない。 自分のものがようやく手に入ったのもあの瞬間だった。 今なら言っても良いだろう、生死で揺れているのは同じだ。 「誰かの為に、誰かのせいで。あなたは言いましたが。 何よりも、自分がそこにいたのかがわからなくなるのはあまり良い気分ではないと経験則から語りましょう」 (-68) 2021/07/14(Wed) 13:05:23 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「お前サンの話はややこしいンだよなァ……」 流れ落ちる汗をグイと手の甲で拭う。 汚さぬ様に上着は裏口に置いてきていた。 「“商人のミロク”と、そうでないお前サンと。 ……わかんねェなァ。 それってまったくの別モンなのかい」 そう零してから、暫くの間。 傍目には変わらず黙々と腕を動かし―― 不意に、スコップをザクリと縦に突き立てた。▼ (-74) 2021/07/14(Wed) 14:58:33 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク 持ち手から手を離し、一つ伸びをして。 チラリと相手に視線を送る。頬に土汚れをつけた儘。 「――お前サン、どうして死んでくれたんだろ。 おれァ商人サンには“ガキども生かすために”って 頼んだつもりなんだけども」 諳んじる様に流れる様に言葉を吐く。 学が無いなり、考えて。用意できた返答がこれだった。 「それだけがお前サンの死んだ訳なら、 お前サン、商人として死んだんだろうさ。 それがチットモ関係ねェなら、 お前サン、商人じゃねェお前サンとして死んだんだろう」 (-75) 2021/07/14(Wed) 15:00:49 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「あなたのことを考えたかどうかで決まりますね……」 今までのややこしさを吹き飛ばし、簡潔にまとめる。 話すことが思考の整理になっているのだろうか。 「言うとおり取引にあなたは入っていなかったんです。 死ぬことは、入っていたと思いますが。 ……私あなたのために(も)死にましたか?」 罪を後悔する生者にする質問ではない。 「…………、答え出ていましたね」 そういえば、言っていた。なんだ、私はいましたか。 「私名前も、戸籍もないんです。 だから死んでしまったら本当にどこにもいなかったことになります、それが寂しいなと思っていたところだったんですよ。 あなたのおかげで、あまり気にしなくて良さそうです」 (-84) 2021/07/14(Wed) 20:11:25 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「……。そうかい」 何かを露わにする程の体力も残っておらず。 ただ相槌を打って、男は再びスコップを握る。 「お前サン、いなかったことにはなんねェだろ。 いなくなって泣く子だっていンだから。 ………………、おれが言えたことじゃねェんだが」 下を向いて作業を続け乍ら、そう言った。 ……本当に、言えた義理ではない。 (-88) 2021/07/14(Wed) 20:35:45 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「泣かせたんですか。知りませんでした」 すべて見ていたわけでもなくて、死体に興味がなかったわけですから。 ピアスが残っていたのは嬉しかったです。 「あなたは悲しくなってくれましたか? 心が痛むのならば、いい場所がありますよ。 安くて、美味しいものが食べられます。 死ぬ前に贅沢しませんか、私の荷物隠してあるんです路銀にしていいですよ」 (-89) 2021/07/14(Wed) 20:40:49 |
【神】 名無しの ミロク>>G16 ニエカワ 「はい、私も皆さんに生きてほしいだけでした。 ミロクとしても、わたしとしてもです」 自然死がこの世の中では良いとされます。 倫理の中で言われる自然とは、この世で起こったことはすべて自然的であるという論。 キリスト教でいう、死者が蘇るなどの奇跡とは対比されます。 人為的または事故などは、稀に起こる普通では起き得なかったこととされ、自然とは対比されます。 「信じましょう、彼らを。 死んでしまった私たちにはそんなことしかできません。 奇跡とは程遠いこの運命が、奇跡だったことを信じて」 自然でないことと、奇跡がこんなふうに証明されるなど。 倫理の世界も皮肉ですね。 (G17) 2021/07/14(Wed) 20:51:53 |
ミロクは、この年の夏に起きた事件を奇跡だと信じている。 (a15) 2021/07/14(Wed) 20:53:51 |
ミロクは、またこの夏に空を見上げ、誰かの生誕を祝うのだろう。 (a17) 2021/07/14(Wed) 20:54:56 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「――お前サン、諦めてなかったのか」 “悲しくなってくれましたか?”。 その問いに答えは返せず、返さず。 青年は只そう言って、困った様な顔して笑った。 (-94) 2021/07/14(Wed) 20:57:34 |
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