【秘】 坑道の金糸雀 ビアンカ → エースオブ―― ヴィオレッタ「でしょう? イヤ、色々考えはしたんだけどさあ。 このままじゃ私、よくてナイト・バーの客引きババアよ。 そんな未来お断り。 はー、綺麗なままでいたい。若いままならいくらでも稼いでやるのに」 他愛のない冗句を溢して、オムレツをもう一口。 唇についたケチャップを、ぺろり、と僅かに赤を見せた舌先が舐めとっていく。 「……何」 にまにまとした顔に、少しだけ唇がとんがった。 なんとも居心地が悪そうな様子はワインで流し込み、 頬にまたほんのりと朱が差して。 「……ほんと? それじゃあ、ちょっと……あ、勿論借金だから。 絶対返すからね! ていうかさあ、普通にナイト・バーの従業員としてもイケる仕事してると思うんだよ私。 ワインバーとかで稼いで…夜の仕事なのは変わんねえけど……」 恥ずかしさを隠すためか、彼女の口はさらによく回った。 未来のこと、夢のこと。 結局自分は夜の街に立つことしかできないのだという自虐めいた言葉の中に、ちらほらと見え隠れする自負と誇り。 皿の上はあっという間に綺麗になって、ワイングラスも空になる。 ↓[1/2] (-2) 2022/08/23(Tue) 21:45:45 |
【秘】 坑道の金糸雀 ビアンカ → エースオブ―― ヴィオレッタ↓ 「っていうかほんと、おいしい、……おいしいなー。 ヴィー、お酒のこととかさ、料理とかさ、…… 教えてもらったりさ……」 むにむにと唇が動いて、また不器用に笑う。 笑顔のかたちを、思いだすかのように。 「……して、……いい? こんど、……また、こんど」 未来のこと。明日のこと。 そんなことばかり。 だって、怖い。 [2/2] (-3) 2022/08/23(Tue) 21:46:25 |
【神】 冷たい炸薬 ストレガ【ノッテアジト】 「なん、だって?」 もう、随分静かなアジトで。 二枚の資料を見る。 両方共に、関わった顔。 特に、その片方は。 「冗談にしちゃ笑えないよ」 ストレガは、椅子を蹴倒したりしない。 静かに立ち上がり、俯いて、机に手をついた。 「なあ」 広くなった会議室で、僅かに震えた声が ぽつりと虚空に吸い込まれていった。 (G0) 2022/08/23(Tue) 21:55:35 |
ストレガは、海色の瞳が波のように揺らめく。 (a1) 2022/08/23(Tue) 22:00:09 |
【秘】 無風 マウロ → 狡兎 ツィオくしゃと端が折れたメモ。 中身は武骨な汚い文字ではなく、小さめで主張の少ない文字で書かれている。 ──────────────────────── ツィオ様 ラウラは ツィオ様が好きです あの日 貴方に触れたことに後悔はありません 幸せに なりたかった ──────────────────────── 好きにしろというのなら、せめて。 伝えてやりたいと思った。もう意味のないものだったとしても。 それが本当は彼自身が望むことではなかったとしても。 (-4) 2022/08/23(Tue) 22:03:27 |
ストレガは、瞳から海が零れている。寄せては返す、波のように。 (a2) 2022/08/23(Tue) 22:09:26 |
【神】 ”復讐の刃” テンゴ【ノッテアジト】 いつも煙管をふかしていた昼行灯は、姿を見せなかった。 報告書に上がっていない辺り、死んだ線は薄そうだが… 欠席の連絡すらなく空いた席は、静けさを返すのみだった。 ただ。 紙切れが1枚残されていただろう。 『会議に俺が居なかった場合は、俺自身が死んだか、動けなくなった状態だと判断して貰っていい。用があるなら俺の部屋に書面を置いておけ。』 (G3) 2022/08/23(Tue) 22:09:38 |
マウロは、少しだけ胸が苦しくなった気がするけれど。きっとまだ傷口が疼いているだけなのだ。 (a3) 2022/08/23(Tue) 22:10:25 |
【神】 無風 マウロ【ノッテアジト】 傷に障らないように、時間前に会議室で座って待っていた青年は、資料を読んでは溜息を吐いた。 まだ犠牲は減らないものなのか。 ストレガの様子を横目で見て、しかし、何も言う事は出来ずに。 やがて視線を外したのだろう。 (G4) 2022/08/23(Tue) 22:13:04 |
レヴィアは、殺した誰かを弔うように、毎日鎮魂歌を奏でていた。 (c7) 2022/08/23(Tue) 22:19:41 |
レヴィアは、女を弔う音色は、もう流れない。お店は今日は、静かだった。 (c8) 2022/08/23(Tue) 22:20:33 |
【人】 ガット・リベロ ルチア【路地裏】 彷徨う。 彷徨い歩く。 ふらふらと、彷徨いあるく。私はまるで亡霊だ。 だから、それを好んで声をかけてくる連中は。 さながら、悪霊祓い(エクソシスト)だろうか。 むっつを2で割って、みっつ。簡単な計算。 「𝕻𝖆𝖉𝖗𝖊 𝖓𝖔𝖘𝖙𝖗𝖔 𝖈𝖍𝖊 𝖘𝖊𝖎 𝖓𝖊𝖎 𝕮𝖎𝖊𝖑𝖎,𝖘𝖎𝖆 𝖘𝖆𝖓𝖙𝖎𝖋𝖎𝖈𝖆𝖙𝖔 𝖎𝖑 𝕿𝖚𝖔 𝕹𝖔𝖒𝖊,」 お祈りをしなければ。 ああ、主よ。天に"まします"我らの神よ。 そう亡霊が祈るなら、きっと連れて行ってくれるはず。 彼らがその"みつかい"なのでしょう? 「───! !? !!」 野太い声が、ごぼごぼと、水に溺れる音に変わる。 ああ、いや。その前に花火のような音がみっつ、聴こえていたかな。 ぱたり、ぱたりと。重なり合って"おねむ"になって。 まるで子供みたいに。それでは牧師様にはなれないね。 「𝖈𝖔𝖒𝖊 𝖓𝖔𝖎 𝖑𝖎 𝖗𝖎𝖒𝖊𝖙𝖙𝖎𝖆𝖒𝖔 𝖆𝖎 𝖓𝖔𝖘𝖙𝖗𝖎 𝖉𝖊𝖇𝖎𝖙𝖔𝖗𝖎,」 お祈りをしなければ。そうでなければ。 あの人はどこにいるだろう?ねえ神様。あの人はどこにいる? (0) 2022/08/23(Tue) 22:31:03 |
【秘】 愚者 フィオレロ → ”復讐の刃” テンゴ「昼行灯の火が消えた時、あなたがどうなるか。 ……心配だなぁ。 燃え続けている間はいいんですよ。 異国人なのに実力主義のノッテの顧問まで 上り詰めたあなたの実力を疑っているわけではないんです」 「そのあとの話で。でも、テンゴさんは」 "そのあと"なんてどうでもいいと思ってるんだろうなぁ。 そう呟いて困った人だとばかりに笑った。 (-5) 2022/08/23(Tue) 22:40:59 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 名もなき医者 リカルド【テンゴの部屋】 いつか、どこかの時間軸。 もし、貴方が。 奇跡的に回復して、何かが気になって。 テンゴの部屋を訪れたならば、部屋の鍵は空いている。 綺麗に整理され、殆ど物が見られない室内に、オーダーメイドと思われるスーツが一式飾られているのがよく目立つ。 ぽつん、と置かれた机の上には、封筒が1つ。それと、貴方にテンゴが投げて寄越した竹の水筒が1つ、残されていた。 何故か貴方は、水筒に不自然さを覚えたかもしれない。 もし手に取って確認したならば、その中に紙切れが入っているのに気付けるだろうか。 紙切れは、達筆で書かれたメモ書きと、港の五番倉庫の地下にある秘密裏に設置された医療施設に関しての情報が記載されているものの2種類だ。 『これに気付く者は、恐らく俺を良く知る人物であると確信している。もし俺が報告書に上がらず、帰る事も無かったら訪ねてみてくれ。運が良ければ生きているかもしれない。』 (-6) 2022/08/23(Tue) 22:43:12 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 愚者 フィオレロ「…なるようになるさ。」 「ただ、天寿を全うすることはないと確信はしている。お前を置いて早々に先に逝ってしまうかもな。」 なんて。縁起でもないことを言いながら。 「お前さんこそ、どうしてそこまで俺を心配する。直属の部下でもあるまいに。」 至極不思議そうに、その時は言っていた。 (-7) 2022/08/23(Tue) 22:59:58 |
【秘】 愚者 フィオレロ → Niente ラウラ死んだと自覚するまでに、数刻かそれ以上に遥かに長い時間か。 2人程の死者と正者の手を借りて理解した後、 即座に消える身でもなく、地上で言葉を交わした事のあるファミリーの死を知れば、その姿を探して軽く歩く。 その間にもさらに死者や記憶違いでの正者が増えているかもしれないが、さてこの奇妙な空間内では今どの時空でもおかしくはないだろう。 「やあラウラくん。機会が再びできてしまった事を喜べばいいのか悲しめばいいのか。……一般的には後者かなぁ」 その姿が何処かしらに存在して認識できたのなら声を掛けるだろう。 己の目覚めた時は酷い精神状態だったから、いささか慎重すぎるくらいに潜めた声で。 「時間がないかもしれないから、聞きたい事を先に聞いてしまおうかな。あの後何か見つけることはできたかな?」 (-8) 2022/08/23(Tue) 23:01:04 |
【秘】 愚者 フィオレロ → デッド・ベッド ヴェネリオ「あーあ。ヴェネリオさん、本当に死んじゃったんですねぇ。 悲しむ人も多かったでしょうに。相変わらず罪な人だ」 死んだと自覚するまでに、数刻かそれ以上に遥かに長い時間か。 2人程の死者と正者の手を借りてフィオレロがそれを理解した後、 即座に消える身でもなく、地上で言葉を交わした事のあるファミリーの死を知れば、その姿を探して軽く歩く。 見つかればその背にすぐに声を掛けた。 「孤児院、どうなりましたか?」 と、真っ先に聞きたかったそれを最初に伝える。 (-9) 2022/08/23(Tue) 23:05:14 |
【秘】 狡兎 ツィオ → 無風 マウロアジトの会議室。 自分の特等席である一番奥の席に座り、 そのメモが渡されたのなら、広げて読み。 丁寧にそれを折りたたむと。それを指の間に挟んだまま。 小さく息を吐いて、一言だけ口にした。 「――知ってる」 (-10) 2022/08/23(Tue) 23:06:29 |
【秘】 無風 マウロ → 狡兎 ツィオ「そうか」 余計な世話だっただろうかと思いつつ。 ふいと顔を逸らしてから、足を組んで。 「俺は知らなかった」 「まあ、でも。持っとけよ」 (-11) 2022/08/23(Tue) 23:12:02 |
【秘】 愚者 フィオレロ → ”復讐の刃” テンゴ「やめてくださいよ縁起でもない。 俺は置いて行かれることが何より嫌いなんです。 そんな事されるくらいならいっそ先に置いていきますから」 「……。ああ、わからないですか?そうですねぇ……」 どうしてそんな事を聞くんだろう。 とばかりに真顔の瞬きを数回し終えて、顎に手を当てながら指でトントン弾くように叩きながら思案した後に、秘密だとばかりに声を潜めて。 「じゃあ、」 「思い出話にしましょう」 「"そのあと"を語れる機会が訪れた時に、ね」 そんな日は訪れることはなかったのだけれど。 起きる事のない事を、秘めた思いごとこの日の記憶と共にしまい込んだままに。 これでよかったのだ。そう自分に今は無理やり言い聞かせた。 (-12) 2022/08/23(Tue) 23:15:29 |
【秘】 狡兎 ツィオ → 無風 マウロ貴方にだけ聞こえる声で。 表情を変えず、前を向いたまま囁く。 「お前がそういうなら。 見るたびに傷つくことにしよう」 メモを、大切そうに胸ポケットに仕舞って。 「マウロ、多分な。――女といるときに。 死んだやつの顔が浮かぶような最低な男は きっと一生、誰かを幸せになんかできない」 ――そして、幸せになる価値もない。 そう呟いて、大きく伸びをした。 (-13) 2022/08/23(Tue) 23:18:02 |
【秘】 郵便切手 フラン → エースオブ―― ヴィオレッタいつか、なんて。いつになるのだろう。 誰にもわからないことだ。 「……そうですか」 掌に戻されたそれだけが、自分の全てを知っている。 渡せるものならすぐにでもそうしたい。 いつも間違っている。 きっと今回も間違った。 いつも通りだ 。「迷惑でしたね。すみません」 だから、あなたに届けられたのは謝罪だけ。 取り繕うための笑顔の方が一番上手くできる。 困らせているのは自分なのだけれど。 己も困ったように笑って、思い出を仕舞った。 自分がいなくたって、あなたには、あなたを想ってくれる仲間がいるのだろう。 だからこれは、あなたには不要だっただけなんだろう。 それが答えだ。 (-14) 2022/08/23(Tue) 23:23:58 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド君の趣味の調度品。 居心地よく調節された空調。 片付いてはいるが生活感のある部屋。 男はここが好きだった。 そういえば君は、彼の部屋に足を運んだことがない。 従順に口を開けて待つ君はやはり餌を待つ小鳥のようで、 そこに唇を合わせた男は親鳥のようにも見えただろうか。 君はこの男のキスをよく知っている。 この舌がどうやって君を求めて、どうやって暴いていくかを知っている。 腰を下ろしたソファは男二人が寝るには狭い。しかし身を寄せ合えば不可能ではないし、むしろその方がいい時もあるということも、よく知っている。 ほんの一瞬、熱が離れて。 君の腹の上で手が滑った。 「いい?」 返事は多分Beneだろう。 (-15) 2022/08/23(Tue) 23:24:16 |
【秘】 無風 マウロ → 狡兎 ツィオ「忘れてなんかやるなよ。 俺たちが守りたくて、守れなかった存在だろ」 俺たち3人が、それぞれアイツの事を考えていた。 どんな思いを乗せていたとしても、それは変わらないはずだ。 そしてそれは。 「そりゃあ、その女に魅力が足りないんだ。 死んだやつを思い出に出来るくらいのイイ女が見つかりゃあ、幸せにだってなれる」 「アイツだって、それを望んでるだろうよ」 お前にはそれだけの価値がある。 少なくとも、ここで生きている2人はそう思っている。 それは、口には出さなかったけれど。 (-16) 2022/08/23(Tue) 23:26:35 |
【秘】 狡兎 ツィオ → 無風 マウロ「十分魅力的だったよ。 それは、誰よりお前が知ってるだろ、マウロ。 それに、忘れる……? 思い出に出来る……? 大丈夫だ、それはない」 小さく、自嘲するように笑い。 「これから先は。 ――お前らと一緒にいるときに、 死んだ彼女の顔が――浮かぶだろうからな」 多分それは、お前たちが居なくなると知ったときの様に。 ずっと。 ずっと引きずるだろうと思う。 だから俺は。 お前たちと同じくらい大切なものなんて。 いらなかったんだ。 ――だから、俺は。 ――幸せには、ならないのだと、思った。 (-17) 2022/08/23(Tue) 23:40:21 |
ツィオは、俺たちは、似た者同士すぎたな、と笑う。 (a4) 2022/08/23(Tue) 23:42:23 |
ツィオは、幸せに なりたかった。 (a5) 2022/08/23(Tue) 23:43:46 |
【独】 狡兎 ツィオでも。 キミを傷として残せないなら。 俺は幸せになんか、ならなくていいよ。 さあ。 どこに――逃げたい。 どこにでも連れていこう。 俺の命が尽きる、その時まで。 (-18) 2022/08/23(Tue) 23:45:22 |
マウロは、「それもそうだ」と笑った。 (a6) 2022/08/23(Tue) 23:53:28 |
【秘】 名もなき医者 リカルド → ”復讐の刃” テンゴ【テンゴの部屋】 会議が終わった後か。 包帯を巻き、ふらつく頭を抑えながら、男はよろよろと貴方の部屋を訪れた。 貴方がただの昼行灯でないことはわかっている。 だからこそ、この疲弊した組織をまとめるのは貴方と 姿の見えない上司 しか居ないと、思っているのに。「……リカルドです。テンゴさん、居ますか」 ノックをし貴方の反応を待つ。 待つが反応はなく、ドアに触れるとその鍵は開いていて疑問を覚えた。 「…………テンゴさん?」 周囲に視線を彷徨わせ、質の良いスーツと、机には封筒と不自然に水筒が置かれているのに気づいた。 あの時もらったのと似た竹水筒を振ってみても水が入ってる様子はない。代わりに何かカサカサとした音がしてそれを開く。 自分が秘密裏に設置した施設の事が書いてあり、これはもう必要ないなとその手紙は自分のポケットへと収めた。 「こっち、は…………と」 見慣れた文字を読み、「そうか……」とほっと胸をなでおろした。 そこにいるのなら、行かねば。 (-19) 2022/08/23(Tue) 23:58:15 |
リカルドは、ふらつく頭を抑えながら、どこかにある闇医者の元を、抜け出した。 (a7) 2022/08/24(Wed) 0:02:14 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 名もなき医者 リカルド【隠された医療施設】 貴方が情報を頼りに向かった先に、隠されるようにしてその施設はあった。 元々、秘密裏に匿ったり、治療を行う目的で作られた施設のようで、言わばファミリーの中でも秘密の隠れ家と言っても良いものであった。 施設の人間にテンゴの名を話せば、此処にいる事を教えてもらえる。だが…男が此処にいるのは患者としてであった。 聞けば、路地裏で倒れていたところを発見されたのだが虫の息で、発見が遅れていれば死んでいただろうとのこと。 身体の至る場所に怪我があったが、心臓部の刺し傷と右目の銃創が特に酷く、致命傷になっていた可能性もあったようだ。 今は何とか持ち直し、意識が僅かだが戻ったと知らされ、貴方は病室へと通されるのだろう。 → (-20) 2022/08/24(Wed) 0:54:19 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 名もなき医者 リカルドベッドに横たわったテンゴは、すっかり変わり果てていた。 体中に包帯が巻きつけられ、いつも付けている面はない。 酸素吸入器を付けられた様子は弱弱しくも映るだろうか。 身体を動かす余地もないのか、気だるげな様子で。残った左目で貴方を見れば、それはもう驚いたように目を瞬かせる。 「お前さん、どうして……」 小さく、思わず、声が漏れた。 (-21) 2022/08/24(Wed) 0:58:37 |
【秘】 Niente ラウラ → 愚者 フィオレロこれはきっと、道の途中。 誰に出会うのが先か、後か。 そうしたことをこの世界で考えるのは野暮だ。 聞こえた声に真っ直ぐに視線を向ける。 それは、いつかのように。 「……フィオレロ、様」 問いかけには、何かを考えるように空を見上げる。 それから目を閉じて、口を開いた。 「………………はい。……きっと、見つかりました」 あれがきっと、欲なんだろう。 なんとなく、そう感じている。 いつかに想像した貴方の反応を思って、閉じた目を開いた。 (-22) 2022/08/24(Wed) 1:10:45 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → ”復讐の刃” テンゴ【隠された医療施設】 医療施設に着いて見れば、自分の手で用意していた施設と似たようなものが、もうひとつあったのを目の当たりにして苦笑した。 人とは、皆、似たようなことを考えるのだなとでも言うように。 施設の人間には、貴方も十分重症患者ですよと言われながらも治療を受けてる暇はないと断り、病室へ案内してもらった。 それはそうだろう。 リカルドが銃撃されてからはまだ、1日しか経っていない。 頭部を撃たれてるのだから絶対安静であり、それは口酸っぱく救出してくれたストレガにも言われたし、自分自身もマウロにそうしろと話した医者であった。 そうしてなんとかたどり着いた部屋で、貴方は驚くほど弱った姿でベッドに横たわっていた。 「……な、んで……」 どうしてこんなことになってるんですか、という言葉がとっさに出てこずに言葉を飲み込んでしまう。 俺に、死に急ぐなと言ったその口でどうして、こんないつでも死んでしまうような姿になっているのか、頭で理解できなかった。 「俺は……頭部損傷の死の寸前でストレガに助けられました。 腕の立つ闇医者に処置を受けてこの通りです。……ですが、その言葉はそっくり貴方に返しますよ」 (-23) 2022/08/24(Wed) 1:27:27 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 銀の弾丸 リカルド【隠された医療施設】 「……そうか。無事で良かった。」 やっと戻った意識の中では、貴方の無事を認識するのがやっとで、それだけの言葉を漏らし。 次いで、貴方に返された言葉に僅かに言葉を選ぶような間があった。どういったものかを、考えるような、そんな間だ。 「俺は、 ノッテに消されかけた。 恐らくは、抑えがなくなったのを良いことに、元々消したがっていた連中が動いたんだろう。まあ、どんな運が働いたのか、俺は生き延びた訳だ。」「確かに、心臓を抉った筈、なんだがな。」 苦笑いをするように、しかし苦し気に息を漏らす。 目が覚めたばかりで予断を許さない状況であることが伺える。 「それで…俺に用でもあったか?」 わざわざ足を運んだという事は、用向きでもあったかと。 瀕死の重傷を負った身でありながらも、向き合おうとする。 (-24) 2022/08/24(Wed) 1:55:23 |
コルヴォは、その夜を境に夜闇に消えて、何処へも帰る事は無い。 (c9) 2022/08/24(Wed) 1:55:49 |
コルヴォは、誰かとの口約束を果たす事は無い。 (c10) 2022/08/24(Wed) 1:55:57 |
コルヴォは、預けたものを受け取りに行く日は永遠に来ない。 (c11) 2022/08/24(Wed) 1:56:02 |
コルヴォは、次の会議に訪れたのは、その死を告げる書類だけで。 (c12) 2022/08/24(Wed) 2:00:16 |
コルヴォは、もう誰の元にも戻らない。きっと子守歌を聞く事も無い。 (c13) 2022/08/24(Wed) 2:00:23 |
コルヴォは、いつだって喪に服していた。 (c14) 2022/08/24(Wed) 2:00:29 |
コルヴォは、死んでいった人間と、それから死に損なった自分の為に。 (c15) 2022/08/24(Wed) 2:00:35 |
【神】 冷たい炸薬 ストレガ――少しの間。微かな嗚咽が残っていた。 それをかき消すように、ごつ、と頭がテーブルに落ちる。 1度、2度。……間をあけて、強く、3度。 そして、ゆらりと立ち上がる。端末を指先でなぞり、 ソルジャー以下数名の手勢に向けて。 「ストレガだ」 「暗殺屋の所に転がっていたゴミとその仲間の身元を調べろ。 徹底的に。全て調べあげて、まとめて報告しろ」 「気取られず、そして決して殺すな。 あたいがやる。 ……安心しな、自爆みたいな古臭い方法は使わないよ」 ビッ、と親指の腹で目元を払う。 家族の死を嘆く、年相応の女は消えた。 (G5) 2022/08/24(Wed) 2:18:43 |
【神】 冷たい炸薬 ストレガ海は涸れ、煮え滾る溶岩が流れ込む。 ともすれば血涙を流しかねないほどに鬼気迫る――微笑み。 「恐怖の味ってモンを、教え込んでやるのさ…… 連中の、根の部分まで。骨の髄でもまだ足りない、奥底に」 女は、今や本物の魔女となった。 「ちょっと、行ってくる。 ああ、安心しなよ。テンゴさんの手は煩わせないさ。 あたいが欲しい首は、そんな上等なモンじゃない」 「もっと下等な、屑の首だ。手柄も、何も要りゃあしない。 その代わり――横取りしたら、誰であっても、 喰いついてやるから。覚えておきな」 ごつ、ごつ。床をブーツが叩く音。 魔女は、会議室を後にするだろう。 (G6) 2022/08/24(Wed) 2:29:59 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → ”復讐の刃” テンゴ【隠された医療施設】 「……ノッテ、に?」 まさか、そんな。 そんな事あの人が許すはずもない。 俺の上司が居る限り、そのような事を許すはずもないではないか。 ―――ズキリ、頭が痛む。 「俺が診れればよかったんですが……、生憎頭をやられたもので、しばらくは使い物になりそうもありません」 隠してましたが俺は医者なんですよ、と呟いて近くの椅子を寄せて腰を下ろす。 視線が少し、低くなった。 「俺はここの、医者………、……? っ、いや、俺はここのことは知らん……知ってる?」 頭を撃たれた影響か、記憶が混濁してふるりと震えた。 スタッフが、ここは貴方が作った場所ですよと言ってるのが遠くに聞こえた気がする。 そうだ……ここは、俺の営む密輸倉庫の俺の地下。 忘れてはいけない。 「……ヴェネリオさんとラウラ、それにレヴィアの姿が見えません。 俺は、貴方がただの昼行灯だとは思っていませんから……だから、せめて貴方を呼ばなければと部屋に行ったんです」 そうしたら手紙を見つけました、と、素直に話すだろう。 (-25) 2022/08/24(Wed) 2:39:47 |
ストレガは、路地の店には向かわない。 (a8) 2022/08/24(Wed) 2:44:25 |
ストレガは、あの店に向かうのは、清算をしてからと決めている。 (a9) 2022/08/24(Wed) 2:46:47 |
ストレガは、だから、もう少しだけ待っててよ、Piccolinato (a10) 2022/08/24(Wed) 2:48:09 |
ストレガは、呟く傍ら、掌に隠れるような、小型拳銃を手にして街へ消えた。 (a11) 2022/08/24(Wed) 2:49:00 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【路地裏】 「………っ、は」 闇医者から出たものの、その身一つだった自分に運転する車はない。もっとも、この頭の状態で運転するなど自殺行為であろうが。 朦朧とする頭と、ふらつく足取りで、一歩、一歩と歩みを進める。 大通りにさえ出てしまえば、タクシーも捕まるだろう。 はやく、アジトに戻らねばと。 その一心でただ、歩いている。 (2) 2022/08/24(Wed) 2:50:24 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 銀の弾丸 リカルド「………。なるほど、ならこれをヴェネリオに寄越したのは、お前さんだったんだな。くく。っ、つう……」 笑いを零し、痛みに呻く。 「気にするな。俺も両腕に足を銃でやられてる上に、心臓は破れかけ。右目はお陀仏だ。悪いが、暫くは動けそうにもない。お前さんはお前さんの怪我を治すのに専念すると良い。」 「それで…そうか、お前さんは知らなかったんだったな。」 貴方にとって、最も聞きたくなかった報告を、告げる。 「ヴェネリオ・フィルマーニ、ラウラ・リベラトーレ、この両名とも、お前さんと同日に、 死亡報告 「レヴィア嬢は…分からんが。少なくとも、俺にこの怪我を負わせた時までは、生きていた筈だ。」 (-26) 2022/08/24(Wed) 2:57:27 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 愚者 フィオレロ「それは俺も困るな。未来有望な若者に先立たれたくはない。それに、気に入りが先に死ぬのを見るのも御免だ。」 「思い出話、か。良いだろう。そのあとが俺にあるのかは分からんが、もしあったなら、その時は。じっくりと聞かせて貰おうか。」 死ねないな、と独り言ちて笑う。 だが、そのあとは、来なかった。 本当に、思い出話になった。 男もまた、芽生えかけた感情に蓋をし、思考する。 そのあとが、あったなら。自分は受け入れられただろうか。 「…きっと。愛していたよ、心から。」 (-27) 2022/08/24(Wed) 3:06:34 |
【秘】 愚者 フィオレロ → Niente ラウラ元気?と問いかける男の顔こそやや疲労の色が見えるものの、貴方の返答を聞くと最初こそ驚いたように目を瞠って。 どこかやり場に困ったような視線から貴方に視線を戻した。 だからきっとあなたが目を開いた時に見たものは、 「そう。後悔は、していない?」 憐憫でも喜びでもない。希望と絶望でもない。 笑顔ではなく微笑みを返して、"そう"なのかと頷く目は、同じ気持ちを抱いてしまった貴方をほんの僅かに心配するもの。 それはまるで、男は一度そう思ってしまったことがあることのよう。 「君が得た答えが不幸なものではなかったのなら、 見つかったそれを、最後に聞いてみたいな」 (-28) 2022/08/24(Wed) 3:17:17 |
【秘】 愚者 フィオレロ → 家族愛 サルヴァトーレ島の中の花屋を巡る。 これは男がまだ生前の話。 男は"あえて"ノッテの領土ではなく、島にある花屋を美術館でも除くように見て回るのが好きだった。 例えそれがアルバの息がかかった場所ででも、だ。 己が見極められる程度はさすがに遠慮するも、 そうでないなら知らなかったと答える気しかない。 どんな花屋でも、全ての花を仕入れられはしない。 だからこそ巡っている最中── 好きな花を見かけると、思わず声を掛けずにはいられなかった。 「──オキシペタルム」 花屋の前の貴方が持つ花に思わず声が漏れてしまい。 おっと、と気づいてからは誤魔化すようにはにかんでから、 「いや、失礼。随分と好みが似ていたもので。 結婚式かお祝い事ですか?」 なんて、世間話とばかりに臆さずに話題を振ってきた。 (-29) 2022/08/24(Wed) 3:25:35 |
【秘】 Niente ラウラ → 愚者 フィオレロ貴方に向かう菫色は、揺れない。 ただ真っ直ぐに向かい、貴方の瞳を覗くように。 「はい。……後悔は、しません」 その表情は変化こそ見えづらいものの。 声色は柔らかく、ほんの少し笑っているようにも思える。 あの日に後悔などない。……なかった。 「………幸せに なりたかった」 それは組織の人間としてではなく。 たったひとりの、女の言葉だ。 この意味はきっと理解出来ない。これだけでは、きっと。 けれどその詳細を語ることは無いだろう。 ……その代わりに。 「誰かの何かが欲しい、というのは──立派な "欲望"でしょう」 もう一度空を見上げて、誰かを想う。 ほんの一欠片でもそれを願うことがきっと、欲の始まりだ。 生きていれば、その想いは大きくなり。 やがて、その全てを欲するようになっていたのかもしれない。 (-30) 2022/08/24(Wed) 7:05:37 |
【人】 ガット・リベロ ルチア>>2 リカルド 【路地裏】 「𝔄𝔳𝔢 𝔐𝔞𝔯𝔦𝔞, 𝔭𝔦𝔢𝔫𝔞 𝔡𝔦 𝔤𝔯𝔞𝔷𝔦𝔞,𝔦𝔩 𝔖𝔦𝔤𝔫𝔬𝔯𝔢 𝔢̀ 𝔠𝔬𝔫 𝔱𝔢.」 ずるり、ずるりと。彷徨い歩く。 あなたが大通りに出る前に、暗澹たる闇で歩を進めるなら。 それが、ふらりと視界に映る。 泥の如き眼が、そちらを映す。 ──関わるべきでは無いものだと、すぐにわかるだろう。 (3) 2022/08/24(Wed) 7:47:24 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → ”復讐の刃” テンゴ「なんて事を……、ですが……貴方も居ないとなれば、俺が現場にいないわけにはいきませんね」 自分の役割くらい承知しているつもりだ。 生き残ってしまった以上、無理は承知で動かねばなるまい。 自分とて、ヴェネリオが守り抜いたこのノッテを愛しているのだ。 彼が居ない間くらい守れなくてどうする。 休むのは戻ってきてからでいい……そう、思っていたのだけど。 「…………は?」 嘘だと言ってほしかった。 告げられた言葉を聞いて、我が耳を疑う。 施設の部下が慌てて持ってきた報告書を奪うようにして見て、目眩がした。 あの上司が。約束をしたはずのラウラが。 もう居ないなんて。 俺が、右腕としてお守りすべきだったのに。 マウロとうまく話ができればいいと、思っていたのに。 「俺、ひとりだけ……生き残ってしまったと……」 仏頂面の瞳から、涙がこぼれた。 (-31) 2022/08/24(Wed) 8:21:13 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【路地裏】>>3 ルチア 怪我の影響による重い一歩を懸命に前に、前に出しながら大通りを目指す。 もうしばらく歩けばたどり着く、そんな時に。 自分とはまた違う一歩を進める音を聞いた。 「…………?」 警戒し周囲を見回すと、そこには見覚えのある少女。 アルバとの対立が激しくなった頃に、一度こっそり抗争の場から逃したことのある子供の姿だ。 その後も見かけた時は、明るい顔をしていたはずなのに。 いつも一人で本を読んでいたヴェルデとは違い、あなたの側には油断ならぬ男が控えていたから関わるまいと遠ざけていたが。 ――そういえば、あの男の死亡報告があがっているのだったな。 そう思い出せば、貴方の方へと歩の方向を変えた。 「……君、このような所でどうした。危ないだろう」 気がつけば、声をかけていた。 (4) 2022/08/24(Wed) 8:29:49 |
【神】 A88A― ヴィオレッタ【アルバアジト】 いつも通り女は会議の場にいる。 誰かがいても、誰もいなくても、変わらずに。 いつも通り話を聞いて。 いつも通り清掃をして。 いつも通りアジトを後にする。 ただひとつ、違ったのは。 その日、女は出勤しなかった。 (G7) 2022/08/24(Wed) 9:18:04 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 銀の弾丸 リカルド【隠された医療施設】 「無理をするな。折角拾った命を捨てたいのか。」 ただの怪我であればまだしも、貴方も頭へ相当な傷を負っている。記憶が一瞬混濁するほどだ。無理をすれば悪化する可能性だって否定出来ない。諫めるような言葉が出る。 「…すまんな。守り切れなかった。」 「こうなってから分かったが、二人とも、恐らくは ノッテが原因 だ。俺がもう少し早くに腰を上げていれば、と悔いている。」喪った悲しみ、苦しみ、全てよく分かる。 自分も味わったことがあるものであるからこそ、痛いほどに。 「まだ独りではないだろう。お前さんには残っている者たちがいる筈だ。だが、今は泣いておけ。」 ただそれだけ、零す。 (-32) 2022/08/24(Wed) 9:18:36 |
【人】 ガット・リベロ ルチア>>4 リカルド 「……A……」 ずるり、足を向けた先で。 それが何か語りかけてくる。 ……これまでと少しだけ違う感覚を得た。 わずかに懐かしい感覚を得た。 「……あ…なた。わたしを 知っている人?」 危うそうにふらついていた少女が、 ぴたりと全ての動きを止めた。 (5) 2022/08/24(Wed) 9:52:28 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 愚者 フィオレロ祭りの少し外れ、閑静な街路で男は花を見ていた。 ここ数日、島の全体が文字通りお祭り騒ぎの雰囲気に包まれている。酷く活気に満ちて陽気なそれを嫌いではなかったが、浮き立ちすぎた空気は男の日課には不似合いだった。 花を選ぶ。菓子を選ぶ。装飾品を選ぶ。 愛する者たちに贈る様々を手に取る。それを手にした、口にした、身につけた彼ら彼女らの顔を思い浮かべる。笑う声を耳に思い出し、ぴったりのものがあればそれと決める。 心に寄り添うように、言葉を交わすように、なるべく雑音がないのがいい。 だから男はそこにいた。青のオキシペタルム────ブルースター────をその手に持って。 声をかけられれば緩慢にそちらを見、それから柔和に笑うだろう。 「Ciao.」 もう一度青い花に目をやる。 「そうなんだ。知り合いに子どもが生まれたもので」 (-33) 2022/08/24(Wed) 10:06:46 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → ”復讐の刃” テンゴ【隠された医療施設】 本来であれば絶対安静の重体であることには変わりない。 頭、脳への損傷は傷が軽く見えても油断ならないことは、一般人であったって理解してる事だ。 それでも、動けるならば動かなくては。 今の状況が、真面目すぎる男を大人しく寝かせるには弱すぎた。 腐った阿呆どもに任せていては、アルバとの交渉だってきっと決裂しかしないだろう。 冷静になれ、考えろ。 自分がどのように動くのが最適解なのかを。 ……ただ、それでも。 「……っ、う」 今だけはこの喪失感を隠せそうもない。 男は正しく、上司を愛していた。 それが色恋のような感情ではなくても、確かに愛していた。 一生忠義を尽くすつもりだった。 ラウラを幼馴染の元へ帰すつもりだった。 感情の種別はさておき、彼女にとっても上司は最愛の相手だったはずだから。 まるで自分のように、妹のように見守っていたのだから。 (-34) 2022/08/24(Wed) 11:24:23 |
レヴィアは、きっと魔女の行動にこう言ったはずだ。「興味がないわ。」「……馬鹿ね。」 (c16) 2022/08/24(Wed) 11:32:34 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデたかが二年。数字にすればそれだけ。それでも少年期の一年は長く、ひとつの季節、ひとつの月でさえ濃密な時を孕む。 幼少期から少年期を経て青年になり、それから大人へとなる道程。変貌の時期を共に過ごしている。 傷だらけでみすぼらしかった捨て猫は、多少痩せ型ではあれど毛並みよく、涼やかに二本の脚で立って歩くまでになっていた。 だからだろうか。 君が呼んだ名を、男は訂正させようとしなかった。 戯れる愛称ではなく「サルヴァトーレ」と言うのを、嗜めようとしなかった。 真っ直ぐに名前を呼ぶその姿に、いつかたどり着くであろう大人の姿を見たからかもしれない。或いは小さな舌がはきはきと音を出すのを、その音が整然と並んで自分の名を作るのを、聞いていたかったのかもしれなかった。 「僕はちゃんと、三食の食事をするよ」 心配いらない、と。 ウインナーを齧って顔を少し顰めた。 「これ、思ったより辛いんだよね」 (-35) 2022/08/24(Wed) 11:37:55 |
【人】 ガット・リベロ ルチア (7) 2022/08/24(Wed) 12:51:08 |
ルチアは、リカルドに銃口を向けた。 (a12) 2022/08/24(Wed) 12:52:11 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【路地裏】>>7 ルチア 「―――…………」 その言葉に。 「そうか……」 その眼差しに。 「君も、壊れてしまったのか」 あの男がとても大事な存在であったのを理解した。 俺は、あの男の死の真相は知らないが、自分で死ぬような目をした男ではないことくらいは知っている。 そして、もう一人。 同じように狂ってしまっていた男のことを、俺は知っている。 あのようなことになる可能性を、俺はどうしても許せない。 この年端も行かぬ少女に、させてはいけない。 「……おいで。 今度は俺が、君を独りにしないと約束しよう」 そうして男はまた、懲りずに手を伸ばした。 (9) 2022/08/24(Wed) 13:05:30 |
【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ少年が他者の名を呼ぶことは少ない。 客の名前なんかいちいち知りやしないし、それよりもずっと近しいあなたの名前さえ、碌に口にしやしない。 そういう習慣がついていないことがひとつ。 呼べば振り返らせてしまうと知ったことが、もうひとつ。 ――それでも今、確かにあなたを呼んだ。 「メシだけじゃなくて」 「ヒトのことばっかじゃなくて、自分のことも愛してさ」 「ヒトからちゃんと愛されろって言ってんの」 あんたはそうできる場所にいるだろ――と。 呆れたような声音は、暗にそう告げている。 あなたのことをよく知りもしないくせ、子供らしい無責任さで。無鉄砲さで。 ウインナーをかじる。翠の視線があなたをちらと見上げる。 「……やっぱこっちと換える?」 (-36) 2022/08/24(Wed) 13:26:46 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ進んで誰かの部屋に行くような性分でもない。 元々気が向かなければ、一人でいる時間の方が多い。 貴方の部屋へ行った事が無い事には気付いているけれど、 きっとだからと言って覗いてやろうという事も無かったのだろう。 ぬるい温度。 求めれれば応えたし、暴かれるのならそのままに。 アベラルドの方からこういう事を進んでする事は少ない。 殆どがきっと貴方からで、そしてやっぱり拒まないのだ。 こういう風に。今までみたいに。 そして、今も。 最初はその許容全てが、『嫌ではない』という 消極的で受動的な理由だったかもしれない。 でも、今は貴方の事を受け入れたいからで、甘やかしたいからで、 二人の距離が無くなるこの時間が、無自覚に気に入っていたのだろう。 自覚したところで、そうだと認めることも無いのだろうけど。 「……ああ」 「いいよ。サヴィ」 「好きにしろ」 返事は貴方の予想通りに。断る理由も無かったから。 これからきっと貴方に触れられなくなるのだから。 貴方の熱を覚えるように、この夜を過ごすのだろう。 最後に。 * (-37) 2022/08/24(Wed) 14:00:10 |
【秘】 愚者 フィオレロ → 家族愛 サルヴァトーレCiao、とあいさつ代わりに返答しながら、 「そりゃぁ、おめでたい。 "家族"が増えると言うのは喜ばしいですね。 私は家族に憧れてそう短いですが、 知り合いの子に花を授けるくらい愛されているのは羨ましい。 そんな人なら、その花を選んだ理由が何か他にも?」 小さくどこか儚げな美しさのそれを綺麗だけで選ぶのも 何一つおかしな事ではないけれど、この伊達男めいて見える 彼なら他に考えでもあるのかと興味をつい抱いてしまう。 (-38) 2022/08/24(Wed) 14:02:54 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ* * * * * * それから。 あの日から二日後の朝にでも、 貴方のスマートフォンにメッセージが来るのだろう。 時間の指定と、場所と。 『よろしく』とだけ添えられた、簡素で短いメッセージが。 貴方があの夜のように、これまで通りに彼の願いを聞き届けるのなら、 アベラルドは夜、約束の場所で待っている。 (-39) 2022/08/24(Wed) 14:03:27 |
【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカあなたが止まれば、少年は一歩、前に出て。 その拍子につんと手が引かれ、振り返る。 「……そりゃそうだ」 「おれみたいなガキがいるにはさ、」 「――あんたはちょっと、キレイすぎる」 それは聞き飽きた賛辞だろう。 あなたはもっと美しい言葉をかけられてきただろう。 それでも、口の巧くない少年は、嘘のつけない少年は。 心からそう思って。 さざなみのようにかすかに、繋いだ手が揺れる。 狭い部屋の隅っこ。 毛布と本のある寝床。 きっと自由からは程遠く、けれど確かに、あたたかい場所。 ――家へ帰ろう。 ▼ (-40) 2022/08/24(Wed) 14:09:27 |
【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカ「なんだよそれ」 「そういうのは、おれが言う方だろ」 「かえる場所をくれて、ありがとう」 少年はさみしさを知った。 (-41) 2022/08/24(Wed) 14:10:20 |
ヴェルデは、だから、やっぱり、幸せだったのだ。 (c17) 2022/08/24(Wed) 14:15:11 |
【秘】 いつかの夢 ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカもしも、こんな状況でなかったら。 もしも、明日も明後日もその先も、未来があったなら。 少年はいつかのあなたが言った通りに、他の仕事ができるようになろうと努めただろう。 お節介焼きのだれかさんに借りを作って、真っ当な教育を受けようとしただろう。 過去より架せられた苦痛を手放して、ほかの道へと目を向けただろう。 それは浅慮な子供らしい、想像力を欠いた夢。 困難を知らずに語られた無謀な言葉。 けれど確かに、自らの意思で。 呪縛でなく、義務でなく、強制でもなく。 十年後もこの手を、握っていたかった。 ――――それは、ここにはなかった、もしもの話。 (-42) 2022/08/24(Wed) 14:15:49 |
【置】 ノッテの魔女 ストレガ――下手人は、至極あっさりと見つかった。 それは一仕事終えた安堵からか、或いは 底冷えする魔女の号令に部下が奮起したからか。 ともあれ。彼らは、見つかった。 見つかってしまった。その報告を聞けば 魔女はきゅうっと口の端を吊り上げて、笑う。 「ああ」 「いまいく」 左手には暗殺用の小型拳銃を一丁。 それはいつだか、整備したあの銃と同じ型。 同じ改造を施したもの。 右手には最も扱い慣れた物が詰まった工具箱。 仕事の時に使う物の内、幾らか錆が浮いた古いもの。 ごつ、ごつ、と。あの子の軽い足音に比べれば、 ずっとずっとうるさくて、重い音。 やがてそれは辿り着き、訝しむ者を前にして、 微笑みながら呟いた。 「Chi semina vento raccoglie tempesta.」 嵐が、吹き荒れた。 (L0) 2022/08/24(Wed) 14:26:59 公開: 2022/08/24(Wed) 14:25:00 |
ストレガは、生け捕りの代償に、右の頬と耳が少し欠けた。 (a13) 2022/08/24(Wed) 14:31:33 |
ストレガは、それを引きずって、塒へと帰っていく。 (a14) 2022/08/24(Wed) 14:33:48 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 銀の弾丸 リカルド【隠された医療施設】 「泣ける時に泣いておけ。きっと此処から先は、泣きたくとも泣けなくなる。お前さんも、マウロもツィオも、上を目指すべきだと期待しているんだ。」 「他の連中よりは、余程信用出来る。だから。」 「落ち着いたら休め。どうしても動くなら、一人でやるな。良いか、お前が無理をして倒れたらそれこそ本末転倒だ。」 喪失感をよく知る男は、親友の言っていた言葉を思い出しては、似ているな、と一人思った。 「強く生きろ、リカルド。我が親友ヴェネリオが期待して目を掛けた男は、後にも先にもお前さんだけだ。」 (-43) 2022/08/24(Wed) 15:52:46 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → ”復讐の刃” テンゴ【隠された医療施設】 そうかもしれない。 残された幹部を考えるとあまりにも、ノッテは脆い城となってしまった。 その上で唯一信用できた上司の親友はこの有様だ。 今のノッテを支えるのは、俺達三人をおいて他に居ないだろう。 マウロを今の境遇から引き上げるのにも逃せぬいい機会だった。 この方にも、上司にも目をかけてもらった自覚もある。 可愛がってもらった自覚があるからこそ、このままではいられないと、止まらぬ涙を流しながらそう思う。 「はい……、 俺の愛する上司もまた、後にも先にもあの方だけです。 そしてあの方の親友も、貴方をおいて他にはおりません」 ですから、貴方はこのまま死んだりしないでください。 点滴まみれの貴方の手を取って、切に願った。 (-44) 2022/08/24(Wed) 16:29:59 |
【魂】 銀の弾丸 リカルド【ヴェネリオの部屋】 「………………」 主を失った部屋に入り、部屋を見回した。 使う人間がいなくなったというだけで、ひどく寂れた気持ちになり涙がにじむ。 テンゴに聞くまで、亡くなったことすら知らなかったのが、ひどく親不孝にすら思えてしまってならない。 部屋に香るあの人が残した煙草の匂いも、いつかはなくなってしまうのだろうか。 、ひょっこりと「リィィック、直ぐに迎えに来い」なんて連絡を入れてきそうな気さえするというのに。 (_0) 2022/08/24(Wed) 16:37:17 |
【魂】 銀の弾丸 リカルド血の気もなくふらふらと、いつも2人で珈琲を飲んでいたソファに腰掛ければ、上司に託されたノートパソコンがテーブルに鎮座しているのが見えた。 「このパソコンで、2人でラウラを見守っていたな……」 パソコンを開いて、電源を入れた。 小さく稼働する音が聞こえてしばらくすると、パスワードを入れる画面が出てきた。 教えられた操作方法を経て画面を映し出せば、それは、様々を見通す目となる。 ――けれども、見守るべき女も、もういない。 (_1) 2022/08/24(Wed) 16:43:27 |
【魂】 銀の弾丸 リカルドこのパソコンと、操作権限の全を握るUSBは、生涯露出させないことを上司に誓って託されたものだ。 これを破壊できていないまま、二人共死んでいたならば、本当に大変なことになっていたかもしれない。 いっそこの場で破壊してしまうべきかとも思ったが、これはきっと、これからの自分に必要なものになってくるだろう。 情報を握ることこそ、この先の戦いにおいて必要なこと。 ツィオやマウロでは出来ない何かを、俺自身が握っておく必要があったのだ。 それを貰えていた俺は、 「……俺も、随分愛されていたものだなぁ」 と言って笑った。 あの男に逆恨みされるのも当然だったかもしれない。 そしてしばらく無意味に流れる映像を眺め、 いつもの珈琲でも淹れるかと思ったその時だった。 (_2) 2022/08/24(Wed) 16:51:34 |
【魂】 銀の弾丸 リカルド「―――――……っ!!!」 激しい頭痛に目を顰め、質の良いソファにどさりと倒れ込む。 割れるように頭が痛い。 何かが失われそうで、何かが視えそうで。 なぜだかとても恐怖を覚えた。 しばらくソファの上で蹲っていると、フラッシュバックしたかのように、映像と声が、目の前に広がっていく。 「ヴェネ……オ、さ。ラ……ラ……!」 夢と言うにはリアルで、現実と言うには不可解なそれは、きっと臨死体験というものだったのだろう。 川を渡ってしまう前に、貴方達に出会えていた。 そして、生きている者は戻れと送り出されていたのだ。 「あ”……う”、ぁ”……!」 とても痛いです、ヴェネリオさん。 貴方の答えが聞けないのが悲しいです、ラウラ。 ―――男はソファから動けないまま、痛みと喪失感でまた、涙を流した。 (_3) 2022/08/24(Wed) 17:01:05 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルド「何も知らなかった、なんて口先だけではどうとでも言い逃れ出来るだろ。 信用できない。それにそれだけの地位に居て覚えも何もないなんてマヌケな話はないだろ?」 的を射ているかどうか、なんて識別は出来やしない。遠く昔の話だ。 4年前、ありふれた日課のうちのいつかにアクシデントが起きてたとして、覚えているものか。 そんなことさえ、男には関係ないのだ。理屈の通っている正論を期待しているわけじゃない。 逆手に指を巻き付けた男根をやわく包んで上下に擦る。垂れた酒が水気を足した。 曲がりなりにも低くはない度数のアルコールが粘膜からじんわりと吸収される。 掌の窪みでつつみこむようにした亀頭から滲む体液を、馴染ませるようにくるりと手を動かす。 先の方ばかり刺激しては、手の中のものを絶頂へと導いて追い詰めた。 「……アイツが一番、アウグストに近かったから。でも満たされなかった。 果たされたと思えたものがなかった。だから、次を見つけないといけなかった。 今度は、次を殺せば胸の内がスッとするかもしれないだろ?」 たったそれだけの為に、目の前の男は貴方の幼馴染みを、大事な家族を殺したのだ。 正確には今はまだ境界の淵に彼の命はあり、抜け出したところではある、それでも。 そこに明確な目標があり、使命めいたものを帯びて刃を振るっているように思えているのは己だけ。 他人から見てみればもはや彷徨いながら何もかもを牙を剥くようにさえ見えたって、仕方がない。 「アウグストの屋根の下の人間なんか、一人残らず死んじまえばいい。それ以外に理由なんて、無い。 それに、アンタに教えた直後に、みんな死んだ。カフェも、アベルさんも、トトーも、ヴェルデも。 アンタの差し金なんだろ」 言葉は刺すように鋭く、他者への慮りも欠片もなく踏み躙って。 そのくせ、火照った肌の上を這う手先だけはそろそろともどかしい。 体液の絡んだ手はそのまま手首から先を動かすように押し広げて、足元に絡む衣類を下着ごと剥ぐ。 空調の効いた室内は、外気よりも僅かにひんやりとしている。アルコールで体温が上がっていれば尚更。 広い空間、寝室でもないテリトリー外の建物の中で肌を露わにしているのを思い知らせるように。 (-45) 2022/08/24(Wed) 17:08:23 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー「知らないものは、知らんとしか、言えん」 いくら知らぬといった所で、通じないだろうことはわかっていた。それくらいで何年もの間蓄積された物が晴れてしまうならば、この男はマウロを殺してなどいないし、俺を犯そうとも思わないだろう。 消化しないまま直接体内に入れられるアルコールは薬の影響と相まってひどく回る。 「ふ、あ……、あ――――っ」 性急に絶頂へと導かれているのが手付きでわかって、堕ちてはやるまいとふるふると頭を振った。 それでも硬度を増し、弓なりになってしまったそれは、簡単に良いように貴方に弄ばれてしまっている。 断続的に与えられる感覚に、随分とご無沙汰な身体はすぐにでも気をやってしまいそうで。 きっと、あっけなく果ててしまっただろう。 「マウロも、俺も! 何も関係などあるものか、……っ。 あ”、全部俺だと言えば満足なのかっ。 貴様に、きいっ、あっ、話は! 誰にも話して、いないっ」 気をやった後であっても容赦はなく。 与えられる刺激はそのままに残った衣服を剥ぎ取られていく。 出来上がってしまった身体は、衣服の擦れる感触ですらもどかしい快感となってしまっていてたまらない。 けれど、綺麗に衣類を剥ぎ取ってしまったその瞬間に訪れた、つかの間の静寂とひんやりとした空気に、少しだけ冷静に喋るすきができただろう。 「貴様、は……、自分で自分を追い詰めている。 このような方法で、胸の内が晴れるものか。 貴様のそれは、最早敵討ちですら無い、ただの狂気だ。 恨みと嫉妬で塗りつぶされた狂人だ」 「――俺は、貴様の思い通りにはなってやらん」 堕ちながらも、その挑戦的な目だけはまだ、失われていない。 (-46) 2022/08/24(Wed) 17:47:40 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「ふふ、─────うん」 「愛してるよ、ドニ」 蕩けるように、 甘く、 囁いて。夜を溶かすのだ。二人は。 █ メッセージにはすぐに返事があるだろう。『了解』とこちらも一言。その後に普段通りの天気や食事に関する話題がぽつぽつと寄越される。少なくとも文字の上では、男の振る舞いはいつも通りに見えた。 それからアジトでの報告を聞き、各々自分のすべきことを行う。 そこでもやっぱり男はいつも通りににこにこと皆の顔を見て回っていて、なんの代わりも動揺も見せない。 その平静さを君が疑うことはないのだろう。 そして、夜。 男は約束通り君のもとへと現れる。 普段通りの靴音を鳴らして、普段通りの服を身につけて、普段通りの笑みを携えて。 「やあ、ドニ。早いね」 「わりといい夜だ。祭りもまだ、十分賑わっているようだし」 特別なところは何もない。きっとこれも日常の一場面でしかないのだろう。 (-47) 2022/08/24(Wed) 18:13:03 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → ”復讐の刃” テンゴ「なるほど、信じらんねえことばっかだな向こうの話は。 死んだ人間と話せるのか」 「だったらお前は俺と話せないだろうなあ。 俺は死ねたらきっと後悔なんてない。 常にやりきって自分で死をえらんでやる、だから――」 「その剣も、それに合わせられる俺の銃も しっかり覚えていられるだけそばにいてくれよ」 「俺は下の面倒を一々見られるような性格はしてないんだ」 (-48) 2022/08/24(Wed) 18:26:47 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → ”復讐の刃” テンゴ「どちらかが死んだら片方は やり残したことがなくなるまで生き尽くす、誓えよ兄弟」 (-49) 2022/08/24(Wed) 18:28:07 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ普段通りのメッセージをこちらも普段通りに返す。 アベラルドが本当にいつも通りなのか、取り繕っているのか。 文字の上では表情も声も分からないのだから判別は付かないだろう。 けれど、恐らく、本当にいつも通りなのだ。 そして貴方もきっとそれを疑いもしない。 特に準備らしい準備はしなかった。 持っているものだって大きく変えはしない。 これからする事はきっと自分の為にしかならない事だ。 家族にとっても損害だし、貴方の死を悲しむ人だって沢山いる。 それでも、アベラルドは取りやめたりはせずに。 靴音で、誰が近づいているのかは分かった。 早くもなく、遅くも無く、本当にいつも通りの音。 声を掛けられる前にそちらを見て、笑う。 こちらも、大きな変わりもなく。 「そりゃ、こっちが呼んでおいて待たせるわけにはいかないだろ」 「向こうで馬鹿みたいに騒いでる奴もいたな。 酒も飲めない奴が浮かれて飲むからああなる」 言葉を交わしながら、手招く。この路地に続く暗がりの方へ。 「こっち」 子供ならば手でも引いたのだろうか。 アベラルドは先に背を向けてそちらの方に歩きはじめる。 ▼ (-50) 2022/08/24(Wed) 18:29:38 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレそれだけ、いつも通りじゃなかった。 いつもは貴方と歩調を合わせでもするはずなのだ。 だから、コレはわざと。 この数秒が今なら逃げられるという、最後の時間だ。 (-51) 2022/08/24(Wed) 18:30:53 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ【寂れた時計塔】 垂れた血の跡が、時計塔に伸びている。 何かを引きずった跡も。 それらは錆びついた扉へは近づかずに、 脇に積まれた箱の方へ。その陰に隠された入口へ続く。 『中は廃墟の割には小奇麗で、幾つかの机と椅子がある。 動く事もないはずの歯車たちは錆びも埃もない。 床も入口付近は草が侵蝕していたが、 そこ以外はワックスのきいた床板が張られている。 発電機でも持ち込んでいるのか、壁にはコンセントの口が 幾つもあって、電動ドリルやはんだごてなど 電機工具のコードがいつでも挿せるようにぶら下がっていた。』 「本当はね」 今は、そこに工具はない。すっかり取り去られている。 家具の配置は変わらないまま、仕事の痕跡が消えていた。 部屋の壁際には、中身が空っぽの金庫がひとつ。 それと、金庫に片腕を下敷きにされた男がひとり。 「ここには、誰も入れるつもりはなかったのさ。 あたいの物を勝手に触られたくないし、 仕事の邪魔もされたくなかったしね」 何の話をしている、と睨む男の、固定された腕を 強く踏みつける。骨の軋む音がした。 (-52) 2022/08/24(Wed) 18:35:29 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 愚者 フィオレロ「孤児院……?」 前半の言葉はあまり聞けなかったのか、寝ぼけ眼で答える背があった。確かに死んでいる同士、こんな夢もまたどこかにあってもおかしくないのかもしれない。 「さあ、引き継ぎはまともにしてないがテンゴがやってくれるとさ。残ってる奴等が何とかしてくれるだろ」 「その本当に死んじゃったってやつはなんなんだ。 俺は死ぬつもりなんてなかったぞ」 (-53) 2022/08/24(Wed) 18:36:27 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → いつかの夢 ヴェルデ「僕は幸福だよ、ヴェルデ」 愛されろ、という言葉にはそう返事を。 君の言葉を嫌ったのでも、否定したのでもない。事実男は満たされている様子だった。男が君を、或いは彼女を見つめる瞳に愛以外の何かが混じったことはなかったし、何か飢えた様子を見せることも、妬む目付きをすることだってなかった。 男はいつだって愛だけを与えて、与えて、与え続けた。 それしか知らないように。 それだけが呼吸のように。 だから、君の無責任な問いは、無鉄砲な言葉は。 案外、それが本質だったのかもしれない。 それでいて、見上げる君の視線を、ほら見ろとでも言いたげな顔で受け止めるのだ。 「……おや、優しいね。ヴェルデ」 「でも平気だよ。それってちょっと、かっこ悪いし……」 (-54) 2022/08/24(Wed) 18:38:00 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「ところがだ。ある時どこで見つけたのか、 猫が入り込んできてね。毛並みはいいのに、 なんとも態度が可愛くない奴でね。 その癖、賢い奴で場所を荒らしたりしないのさ」 もう一度、強く踏む。折れる前には、足を離す。 男は、既に片手と両足をガムテープで巻かれ、 身動きが取れない状態になっていた。 狂ってんのかよ、と僅かに汗をにじませた男に、 ハ、ハ、と。それこそ狂ったように、笑う。 「はーぁ。ま、そんな猫が何度かここに来てね。 その度ちょろっと様子を見ては、帰っていくのを見てた。 いや、別に深い話がある訳じゃない。 ただそいつの事が気になってたのさ。 今頃どこで何してんだか、ってね」 傍らに、大きなリュックを下ろす。中から工具を引き出して。 壁際のコンセントは、きっと増設したものだ。 「そんな猫がな」 魔女は、そこにはんだごての電源を接続した。 「あたいが、気まぐれにちょっと見送ったらさ」 魔女は、凄絶に微笑んだ。 「死んじまったんだ」 (-55) 2022/08/24(Wed) 18:44:24 |
【秘】 愚者 フィオレロ → Niente ラウラ「そうか。ここまで来てそう思えるなら本物だね」 零れた彼女の呟きに答える術を持たない男は、 何も肯定も否定もせず、ただ一度だけ相槌のように頷いた。 もしその言葉に反応できる人がいたとして。 それはきっと自分ではない。そう思ったから。 「……だと思うよ。欲望が、自分には過ぎたものだとか、 思われる価値がないとか考えた先の自我の芽生えなら── ある意味、聖書などに謳われる"人間"にようやくなれたのかもしれない」 あなたの視線につられたのか、感傷が勝ったのか。 空に見えるそれを見上げて、その相手が誰だったのならと少し無粋な思案を仕掛けたのを止めた。 「"何か"でよかった。死を望むほどでなくて」 (-56) 2022/08/24(Wed) 18:44:34 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「なあ。なんでその猫は死んだんだろうな?」 知るかよ、と返す口をガムテープで塞ぐ。 口元から、後頭部。また口元。4周ほどして、止める。 「そう考えてた時、小耳にはさんだんだよ。 『猫を殺した奴がいる』って」 ちり、ちり、赤熱しつつあるはんだごてを見下ろしながら、 黒ずんだ指先に軍手を嵌めていく。 「あんたからさあ」 「するんだよ」 「 ねこのちのにおいが 」熱し切っていないはんだごての先端を、 金庫に挟まれた腕に押し当てた。 (-57) 2022/08/24(Wed) 18:49:35 |
【秘】 愚者 フィオレロ → デッド・ベッド ヴェネリオ「……ああ、そうなんですか。テンゴさんが。 最初からテンゴさんに任せていればよかったのでは?」 シノギみたいなものなら猶更と。 最も生きていた頃だと余りいい顔のしなかった提案だ。 なんせ、そちらの世話を比較的楽しそうに焼いていたの だからその機会が減るのは目に見えていたので。 「残念です。ご愁傷さまです。 いやあ、なんだか死に血肉沸き立つみたいな心地で 当時も会話されていた気がしましたので。 俺も死ぬつもりはなかったですよ本当に。 ……まあ、許されなかったって事ですかね」 せめて継げていればな、と未練だけを零す。 (-58) 2022/08/24(Wed) 18:50:02 |
【人】 ガット・リベロ ルチア【路地裏】>>9 リカルド 「──あなたは、ちがう」 この声を聴いたことがある。 『おいで』と呼ばれ、『あちらへ』と促された。 あの人と同じ、優しさを持っていた。 同じ、同じ。そうだよ。同じなんだ。 「ああ。ああ。ああ──」 (11) 2022/08/24(Wed) 18:52:43 |
【人】 ガット・リベロ ルチア (12) 2022/08/24(Wed) 18:55:06 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 愚者 フィオレロ「あいつはよそ者だし、死ぬ覚悟ができすぎていた」 コンシリエーレをよそ者扱いする幹部は非常に多い。 だからあいつはあの地位になったのだ、いきさつをよく知っている男は何でもないように友をこき下ろす。 「ああ。できればできるだけ殺して、無事ですみたかった。 だが敵の数も知れないからな。 最悪のことを考えるだけ考えて……、 大人しい行動をするに至らないのが俺だっただけだ」 もっといきたかったような、死ねてせいせいしたような。 後悔はないのだと、上司であった男は溢した。 後悔を作らずに常に生きていこうとしていた男は、それはもう何処かからは死にたがりに見えていたようだったが。 「いつも残酷だよな運命ってやつは、お前誰にやられてたんだ。 最後までわからなかったぞ、身内か?」 (-60) 2022/08/24(Wed) 18:56:55 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「なあ」 封じられた身体をうねらせる男の、腕を焼き続ける。 「あの子は、暗殺者だったよ。 正直言って、最近までどんな子か知らなかった。 工房に来るでもなし、会話が得意でもない。お互いね」 はんだごてを離して、灼けた痕を眺める。 「いざ会話してみれば、かっわいくない子でさあ」 ガムテープ越しに、ゆっくり押し付けて脛を灼く。 くぐもった呻きが、暴れる向こうから聞こえてくる。 「でもね」 「あの子は、……いい子だったと、あたいは思ってる。 はは、聞かれたら『馬鹿ね。』って言われそ」 似てない声マネを、男は聞けていただろうか。 金属を溶かす熱に、腿の裏を服の繊維ごと灼かれながら。 「あーあ」 (-59) 2022/08/24(Wed) 18:57:58 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「なあ」 ガムテープに押し付けた熱が、少しずつ男の頬を灼く。 ビニールの溶ける匂いが、肉を焦がす臭いに変わる。 「あたいは、あんたを苦しめたい。 けど、そんな事してもあの子は帰ってきやしない」 ぱっ、と、はんだごてを離してやる。 電源を抜いて、コードを纏めて。 「だから、代わりにあの子を弔いたいんだ。 なあ、あんた。手伝ってくれるよな?」 痛みに涙を流しながらも、男はガムテープの向こうで イタリア語のスラングを幾つも幾つも垂れ流していた。 「ああ。ありがとう。じゃあ、頼むよ」 ぽんぽん、と男の頭を軍手越しに軽く撫でる。 そして、魔女は二階へ姿を消した。 (-62) 2022/08/24(Wed) 19:04:38 |
ストレガは、時計塔の歯車を撫でた。それは、別れの挨拶のよう。 (a15) 2022/08/24(Wed) 19:06:16 |
【秘】 愚者 フィオレロ → デッド・ベッド ヴェネリオ「まあ、それはもう。考えてみたら…… それこそ俺が更なる交代先探す羽目になってましたね。 その癖、あの人だけ生き残ってるんですよ。 あれだけ覚悟もできてるのに理不尽なんだかなんなんだか。 せめてどっちも死ぬか、どっちも生きるにしておいてください」 この発言こそ理不尽の極みである。 あなたほど彼に詳しいわけではないけれど、それでもあなたと彼の親しさは当然のように知っている。 だからその言葉に不満もなければ、乗っかるくらいである。 「やんちゃですねぇ。 後悔がないって言いきれる人が多いの本当に不思議ですよ。 俺なんて後悔の塊なのに。 ……まあ。ノッテの家族がそう思う人たち ばかりなのは俺にとっても幸福なんでしょう」 前向きにとらえるか、後ろ向きにとらえるかの差だろうか。 こんな場所に来て男は議論する気もないため苦笑でとどめたが。 「……一年前のアルバとの件が気に食わない、 幹部の誰かと思っていましたが。その様子ですと違いましたか」 (-63) 2022/08/24(Wed) 19:07:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 愚者 フィオレロ「へえ。憧れて?」 君の言葉を聞いて、気になる単語を掴みあげる。それはある意味センシティブな問いだったかもしれないが、男が臆することはなかった。 「ああ、」 君に注がれていた視線が手元の花へと移動する。わざとらしく逸らしたのではなく、単純に話題のきっかけへと目が向いただけらしかった。その証拠に先程まで花屋と向き合っていた男の身体は今、開け放ち、受け入れるように既に君の方へと向いている。 「そうだね。月並みだけど」 男の口元が笑みを形作る。愛する者を思って、自然に零れたのだろうか。 「生まれた子が男の子なんだ。ベイビーブルー、男の子のラッキーカラーだよ」 「それから花言葉は幸福な愛……だっけ。ほら、この青。マドンナのヴェールの色をしているだろう」 そこで、もう一度視線をあげる。 弧を描く口元、やや眇られた瞳。いたずらっぽい笑いがそこにあった。 「……なんてね?」 「こんなこと、君も知ってるんだろ? わざわざオキシペタルムなんていうんだもの、ブルースターじゃなくてさ」 (-64) 2022/08/24(Wed) 19:11:25 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「待たせたね」 魔女は、少しして降りてきた。 両手には旅行鞄を1つずつ。 きっと、その中には止まった時計と、動いている時計。 そして、この魔女の得意とする爆弾が満載で。 けれどそのいずれも、ここで使う気はないようで。 旅行鞄を抱えて、工具の入ったリュックも背負って。 最後に、欠けた頬と耳から血を流しながら、 男に近づいて微笑んで。 「なあ。あんたみたいな野郎でも、息子はいるだろ」 痛みに血走った目を向ける男は、狂った女め、 という視線しか返さない。実際男に家族がいるか? そんな事は、この魔女にとってはどうでもよかった。 魔女は、釘打ち機を取り出して。 (-65) 2022/08/24(Wed) 19:15:56 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 愚者 フィオレロ「正直俺もお前をやったのはあいつらかと……。 それでも荒立てるわけにはいかなかったから、言わなかった。 全部終わったらテンゴが片付けてくれるだろ。 あいつもただじゃ死ねない男だ、いつか追っかけてこっちに来てくれるさ」 ひと欠伸しながら思い出すのは、生きていた頃の貴方たちの姿と家族たちの姿。やりたいことはあったが、そこまで顔は歪めるに至らず。 「若いなあ、お前は。 あー、例の件だが。すまんな改めて死んだ人間を俺は嫁にとれん。 だがめいいっぱい甘やかしてやる。 抱きつくだの何でもしてこい。どうせ忘れるし泡になって消える思い出かもしれんが、この瞬間だけ俺が叶えてやったことにさせてくれ。部下を褒めなすぎていたのは気にしていたんだ」 (-66) 2022/08/24(Wed) 19:17:37 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「Voi e i vostri figli soffrirete per il resto della vostra vita.」 男の股間へ押し当てて、制止の声が出る前に、 きっちり3発。男を、床材と縫い付けた。 (-67) 2022/08/24(Wed) 19:20:33 |
ストレガは、釘打ち機をしまうと、「Addio.」と呟いて時計塔を出た。 (a16) 2022/08/24(Wed) 19:20:53 |
【秘】 Niente ラウラ → 愚者 フィオレロ本物か、偽物か。本当のところは分からない。 ただきっと、分からないなりに考えたこの答えは。 ラウラという一人の人間を、己を救うだろう。 「……ずっと、過ぎたものだとは 思っていました。 ラウラは、役立つだけが価値だと 思っていました」 死ぬことに恐怖も後悔も抱かず。 終わり行くことだけが生きていく道だと。 けれど今は。……今は、貴方の言うように。 確かな"人間"として、答えが出せた。 「死は、望みません。 ラウラは──生きて、幸せを"知りたかった"のですから」 菫色に映る空は眩しくて、少し目を細め 息を吐き出した。 「…………フィオレロ様、話を聞いてくださり。 ありがとうございます ね」 (-68) 2022/08/24(Wed) 19:26:54 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 無風 マウロ一方的に責め立てるわけでなく、相手から歩み寄りがあるのならばそれを受け入れる。 唇の合間に割り入れた舌は相手の舌を追って、不意に相手の方から触れ合わされたなら喉を鳴らした。 鼻の天井を抜けるような声は弱々しく、僅かに下瞼が強張って与えられた快を甘受する。 耳の後を抜ける感覚にそろそろと息を吐いて、甘えた生き物みたいに鼻筋を擦り寄せた。 「誰も来やしないよ、それに。 今から二人でどこかに入るトコ見られるより、いい」 祭りの後、夜も深くに指を絡ませて落ち着ける場所に入る、なんて。 これから何をするのかを店員なり受付なりに報せるようなものだ。なんてのは、詭弁だけど。 服を脱いで全身の肌を擦り合わせるのとは違う感覚が走る。 密やかで、まだ日常から離れきれていないような妙にそわついたものがじんわりと広がる。 腹筋の起伏を指の腹で辿って、前に戻った指がベルトと内掛け釦を緩める。 下腹部にほんの僅かに気流が流れ込んで、ひやと違和感が臍の下を走った。 互いに前を寛げる。まだ下着越しのそれがなんとも頼りない砦のようで。 ちら、とすぐ傍にある顔を見上げてから、掌を張り付けるように触れた。 一歩前に出て、爪先同士が交差するように並ぶ。下着越しに、普段他人には見せないような肌が触れ合った。 青年のほうは緩やかな興奮の為に、下衣の中の性器は張り詰めはじめている。 もどかしい感覚を混じり合わせるように、腰を寄せて相手のものへと擦り付けた。 (-69) 2022/08/24(Wed) 19:28:01 |
【人】 ノッテの魔女 ストレガ「あーあ」 「……。あいつ、怒るかな。 ……いや、絶対こうだな」 「『興味ないわ。』」 「はは。」 ごつ、ごつ。 時計塔から足音が離れていく。 旅行鞄を二つに、リュックサックをひとつ。 女だてらに銃器を散々振り回したから、 これくらいは持ててしまうのが恐ろしい。 それからふっと、思い出したように。 寂れた時計塔を見上げる。 天辺には、鳴る事のない大鐘が釣られていて、 時計塔の中の歯車が動いていれば、 きっと時を報せる鐘の音を、島中に響かせたのだろう。 「――なあ。中を修繕しといて、なんだけどさ。 悪い、あたいの友達の為に……」 「空のずっと向こうまで届く、盛大な花火をあげてくれ。 それから、あんたのデッカい音をさ、響かせてくれ。 あたい、グラスハープとか当分弾けないから、 それまでの代わりとしてさ」 キン、と、銀色から欠けたリングが落ちる。 頬と耳が欠けた魔女は、時計塔に瞑目して、背を向けて。 銀のスイッチを、押し込んだ。 (13) 2022/08/24(Wed) 19:29:30 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド男はアルバの顧問だ。 ファミリーの全てに心を砕き、配り、人となりを知り、交遊する。時にはボスの友人にすらなり、その言葉を否定すらして見せる。その立場は、概して幹部より重い。 であるというのに、男はまるで中間管理職のように熱心に動き回った。その姿はただの善人、或いは各々の兄、親、友人のようにも見えたろう。その親しげな様子を煩わしく思う者も当然いたけれど、概ね好かれている様子だった。 きっとそれは、君から見ても。そして、君も。 二人の振る舞いは思慮に欠けているのかもしれない。 それでも、止めておこうだなんて言わなかった。 「祭りで羽目を外さないなんて損だからなぁ。うっかり危ないところに踏み込まなきゃいいんだけど」 君の気遣いを、 ────それとも最後の畏れを、 男は受け取ったのかどうか。機嫌が良さそうに笑っては歩みを進めた。追いつくように、その歩調を早めて横に並ぶ。 (-70) 2022/08/24(Wed) 19:32:50 |
【人】 高らかに、あなたの元へ届け ストレガ「Buona notte.Sogni belli.」 「レヴィア」 寂れた時計塔が、基部から爆発した。 いくつも、幾重にも仕掛けられた爆弾が、 連鎖的に爆発を起こす。 背中に熱と風を感じながら、魔女は去っていく。 最後に、天辺の大鐘の真下が、特大の爆発を起こして。 カラァーーーーン、カラァーーーーン…… 大きな鐘が、何十年かぶりに、その音を天へと響かせた。 (14) 2022/08/24(Wed) 19:34:22 |
ストレガは、ため息をひとつ。猫を迎えに、あの店へ向かった。 (a17) 2022/08/24(Wed) 19:35:42 |
【秘】 愚者 フィオレロ → 家族愛 サルヴァトーレ「孤児だったものですから。 その上で幸せな"家族"を見てしまうと憧れませんか」 よくある話だろうとばかりに。もうひとつ、あなたはどうですか?を込めた笑みが貴方を見やる。 こんな花屋の店先で出す単語でも返す話題でもないにも拘らず、 気にしていないのか、あるいはそう見せているだけか。 何の躊躇もなく会話のパスを返す。 「はは、いやまあ」 最初のワードで"結婚式"を単語にも出していた時点で、元々知っていたことは明白だろう。 隠しもしない緩い笑いから、小首を傾げて貴方の目を見つめる。 貴方が変えた姿勢に無意識に敵意はないとばかりにそれとなく腕で覆っていた姿勢を、開けたものに変える。 「あなた自身にもご家族がいるように見受けましたが。さて。 それに、好きな花 についての話は幾らでも聞きたくて。 特に品のある貴婦人ならよく見かけるんですが……情に厚そうなお兄さんが知っているのを見ると、つい尋ねたくなったんですよ」 (-71) 2022/08/24(Wed) 19:40:31 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 家族愛 サルヴァトーレ子供の頭にしては重たい頭蓋。肩先までしか届かないけれど、それくらいまで届いてしまう。 腕の中で愛される時代は終わり。まやかしの安寧があるだけ、夢を見ているだけ。 それにも関わらず、貴方の優しさを利用してこうして水底のように身を沈めているのだから、 顔貌に張り付いたあどけなさとは裏腹に、十分によく物を知っている大人の筈なのだ。 柱時計のように丁寧に規則的に注がれる愛に。 値するものかどうかなんて、誰にもわからない。 「ん、……今日は大丈夫。トトーの為に、空けられる。 だからもうちょっとだけ、居られるよ」 用事はない。誰某れに命じられた用事は。自分のための用事は、捻じ曲げたって構わない。 最後にもうひとつぶんだけ、ぎゅうと胸に頭を埋めてさんざんに甘えてから。 歩きやすいように一歩離れて、二人だけの為に間借りした休憩所から出る扉に踏み出す。 その日は太陽も高いうちに二人だけの時間を過ごして、普段どおりにわかれたのだろう。 互いの人生は深く交わらない。一つのいきものになることはない。 それが本当の別れになると知っていたなら、もう少しだけでも時間を割こうとしただろうか。 いつか斜陽の日が来る。 その、少し前のことだった。 (-72) 2022/08/24(Wed) 19:43:28 |
【秘】 愚者 フィオレロ → デッド・ベッド ヴェネリオ「そうですよねぇ。まあ十中八九……でも気にしないでください。そもそも俺からすれば、そう言って貰えるだけで十分ですから」 言葉通り、誤解なんて一言で済ませられる問題でもない。 何より前ボスの判断だってあってこそだ。 己は一切の噓を語ったつもりはなくとも、こうして肩を持ってくれる人の存在がどれだけ大切だったかは理解している。続けて頭を下げた。 「いつか、かぁ。いつになりますかねぇ。 極東のハチコウとやらにならなきゃやってられないくらい待たされる気がしてなりませんよ俺は。そういうペースの人ですもん」 「若いですよ。なんたって享年23です。 若さを求められてもいましたし、それで許され……」 ません?と言い切る前に、突然流れとして出るには不自然すぎる単語を聞いて、おう。うん。とばかりに頷いた。 そも、先に単語を出したのはこの男なんだがそれはそれ。 「…………死後一番驚いたかもしれませんね。 覚えていらしたとは。てっきり俺がしくじった時点でゴミ箱に投げ込まれていたと思っていたので、今結構に動揺していますね」 していますね、と言っている顔が無表情なのが動揺に拍車をかけているのはとっくに知られていることかもしれない。 「甘やかす……甘やかされる……」と譫言のように呟いてるのは、逆に言えばこんな行動を録に起こした事がなかったのだろう。 (-73) 2022/08/24(Wed) 19:47:24 |
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ「……そ」 あなたがそう言うのなら、少年にはこれ以上、重ねられる言葉はない。 口が巧くはないのだ。 それに何より、元よりそこにないものを欠けていると認識することはむずかしい。 少年自身だって、そうなのだ。 それでも今、差し出そうとしている気持ちが届いたらと。 それは、ほんのささやかな我儘だ。 「無理に食べるのもかっこよくはないだろ」 「じゃあ、ええと――おれが」 「おれがほしいから、ちょうだい」 (-74) 2022/08/24(Wed) 19:47:59 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「全くだ。ここら辺なんか、特に物騒なのにな」 そう言って、ついてきたのをちらりと見ては一つ浅く息を吐いた。 もう後戻りは出来ない。 暗く細い路地は当然と言うべきか、人の気配一つない。 夏の空気が湿気を伴って、建物の隙間に風となって緩やかに吹いていた。 転がっている何かの瓶を軽く足で横に蹴れば、 コンクリートの上を転がる硬質な音がした。 「ここでいいか」 何度か道を曲がって、進んで、待ち合わせた場所から奥まった位置に立ち止まる。そこだけはさっきまで歩いていた道より小奇麗で、ゴミも落ちちゃいなかった。 「もう少し綺麗な場所にしてやりたかったんだけど、そんなとここんな陰に無いもんな」 貴方に向き直して、気の抜けたように笑った。 その顔は酷く寂しがっているようにも見えるし、 酷く安心したようにも見えるだろうか。 「……傷は付けたくないんだ。銃もナイフも使わない」 ぱ、と顔の横で両手を上げる。 (-75) 2022/08/24(Wed) 19:54:28 |
【秘】 A88A― ヴィオレッタ → 坑道の金糸雀 ビアンカ>> ビアンカ 「いいえ、なんでも?」 落としたケチャップは次のオムレツで掬ってなかったことに。 愉し気な表情も、すまし顔でなかったことにして。 「えぇ、貸しにしておきます。 ですから――」 何処かへ行っても、連絡をくださいね なんて素直に言えなくて。代わりに、 「ですから、しっかり働いて返してくださいね」 などと減らず口を言って。微笑む。 できることなら、日の当たるところで 此処ではない何処か、この街の外なら。 あなたと……あの子なら。それができると思っていた。 けれど、それはあなたの矜持を貶めると知っていたから。 今は夜にしか鳴けない鳥も、 いずれは陽の光を知ると信じていたから。 ただ、あなたの話を聞いて、頷いて。 ……少しだけ眩しそうに、見つめるだけ。 [1/2] (-76) 2022/08/24(Wed) 19:58:13 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 坑道の金糸雀 ビアンカ「そう? ────君が言うなら」 やっぱり、そう。 君はあの子を渡さないし、男も結局こう言うのだ。 寂しいと言うくせに、悲しいと言うくせに。 カタギにするだとかなるだとか、そういうことに関心はないらしい。 男は言葉を尽くした。女は多くを語らない。結局は、そういう戯れを楽しんで。 戯れが稀に真実を映すこともあったろう。 沈黙は金、雄弁は銀なんて言うけれど、それだけが全てでもない。 偉そうな格言は、大抵何の役にも立ちはしない。 「身に余る光栄だ、<cc dolcezza>お姫様</cc>」 最後まで止めない。 男は模範的な客ではなかった。客を待つ娼婦と話し込むことも多かったし、顔を合わせれば大抵出かけようと誘った。酷く親しげで馴れ馴れしく、いつだって恋人を呼ぶように君を呼んだ。 男は模範的な客ではなかった。それでも乱暴だけはしなかったし、君の見せる夢に溺れることもなかった。恋人役を冷静に愉しみ、その手を引いて逃げようなんて言うこともなかった。 「僕も愛してるよ、ビアンカ」 それでもこれだけは、真実。 朗らかに笑って手を振り、踵を返す。 女は娼婦だった。男はマフィアだった。 それはきっと、ありふれた話だった。 (-77) 2022/08/24(Wed) 19:59:06 |
【秘】 A88A― ヴィオレッタ → 坑道の金糸雀 ビアンカ「そんなお世辞を…… って、さっきも言いましたね」 二度目の照れ隠しは途中で止めて小さく苦笑。 代わりにグラスのワインを流し込んで、ほぅと吐息を零した。 「……いいですよ。 えぇ、あなたが望むのなら、 私でよろしければ、いつでも」 そう言って頬杖をついて、あなたを眺める。 今日は夢に酔ってるせいか、 アルコールの回りも早い気がした。 「…… ビアンカ 」だから、普段は口にすることのない名を呼んだのも、 きっとその所為だろう。 [2/2] (-78) 2022/08/24(Wed) 19:59:33 |
【秘】 愚者 フィオレロ → Niente ラウラ「……そっか。 何もかもが過去形にばかりなったこの空間で、 一番聞けて嬉しい "だった" かもしれない、な」 果たして、例え話の人間になる事が幸せなのか。 死後にその欲望を知ってしまったが故に後悔を経験した己には、 終ぞ最後まで答えを出すことができなかったが。 「ラウラくん。君が人となったこともあるけど、それ以上に。 その答えを選んだ上で俺と違う道を歩んでくれた事が 俺が理由を言う何よりの一番の理由だ」 本当は、それこそを一番望んでいたのかもしれない。 なんて恩着せがましい言葉はそっと胸の内にしまって。 「……こちらこそありがとう。 その結末を見せてくれて」 貴方が知れた答えに、昔は祈りだったから今度は祝福を。 それから空の色を見て、何かを思案するようにして、 「夜が来る前に帰らなければならない時間だが、さて。 ──それじゃ、"また機会があったら飲もう"、か」 これからの有無を聞くよりも、きっとこの方が自分達らしくていい。 (-80) 2022/08/24(Wed) 20:03:07 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 愚者 フィオレロ「なんだ、真面目に考えてやってたのは俺だけか」 なんともないように、いいつつ。頭をかく。動揺していたのは同じだ。 まともに関係性を求められて言葉を言われたのはあなたぐらいだったから。 「テンゴに押し付けてやろうかと思ったらあいつも、俺にお前を渡そうとしやがった。 あっちにも惚れてるならやめておけよ、恋愛感情じゃなくてペット扱いで終わるのがおち。コルヴォも、ありゃだめだ。 だからノッテにこだわるのは……リックならましだったかぁ? わからんな。」 ぶつぶつ呟きながら手を伸ばせば伝わらない熱を掴む。 夢なら腰ぐらいどうにかなってくれや、と。 思いっきり貴方の脇をつかめば高く上へと持ち上げてやる。 そのまま重力に逆らわず地面に足をつかせれば髪の毛を乱すように掻き回してやった。 「適当な子供たちにはこれをやったら喜んだ。 俺はその理由を知っててやったり、やらなかったりした。 いつまでもその体を支えてやれない。 一緒に居続けるっていう約束もしてやれはない。 泣いたときに慰めるのは、俺じゃない。 そういい聞かせてるのに、喜ぶもんだから。 それが欲しいもんなんだって知ってた。 最期で悪いな、生きてたらもっと他のもんも考えられたが ……どうせこれ以上やれないんだ。 未練なんて消して楽になっちまえよ」 (-81) 2022/08/24(Wed) 20:05:22 |
【秘】 A88A― ヴィオレッタ → 郵便切手 フラン>>フラン 「いえ、」 ゆるく首を左右へ振る。 あなたに間違いはないと。 「迷惑だなんて。ただ――」 私には、それを受け取る資格なんてないのですよ、フランさん 本音は心の奥へしまい込んで、 「ただ、そんな高価なもの。 気安くいただく訳にはいきませんので」 建前と仕事道具で誤魔化す。 「それにそれは誰かの為のもの、でしょう? ふふっ、いけませんよ? 女性を口説くのならその人の名で贈らないと」 くすくすと笑って、誤魔化してみせる。 そういった品ではないと知りながら。 (-82) 2022/08/24(Wed) 20:14:59 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ザ・フォーホースメン マキアート「それでもさ。子どもなんて、長いこと抱いていないから」 両の手に目をやる。大きな手をゆっくり握って、開く。 マフィアという組織に身を置いていれば、どうしたって生より死の話題が耳につく。やれ誰が死んだ、殺した、殺された、自分の組織のことではなくても、ないからこそ日常茶飯事だ。 だからこそ家族は新しい命の誕生を喜んだ。男も例外ではなく、きっと周り以上に。 喜びをよく顔に出す男だった。 寂しさも素直に口にする男だった。 「そう? それなら信じよう。君は僕に嘘なんかつかないし」 にこりと笑んでは、その身体を軽く引き寄せて。 軽く頬に口付けて、「君は偉いね」。 それから元通りの位置に収まって、アルコールを一口。 「聞きたいことはもう一つあってさ。君の可愛い後輩のことなんだけど────」 「どう、あの子は。先輩から見て?」 (-83) 2022/08/24(Wed) 20:15:37 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォまだ僅かな陽のあるマジックアワーの中に浮かんだ、黒い輪郭を目にする。 足音のない生き物はゆっくりと近づく。相手の言う通り、さながら死人の影が揺れるようだ。 例えば拳銃の間合いであれば届くもの。ナイフであれば、もう少し。 その僅かな違いの手前で、爪先はぴたりと止まる。静けさの中に声はよく通った。 そのくせ風に流されてしまって、互いの距離から離れてしまえば、きっとなんにも聞こえない。 「……アンタは、金と手間さえ払いやすりゃ、やってくれるの。 その名前の通りの、仕事っていうのをさ」 口の中に氷を詰めているように声音は冷え、されど鋭さも無く川底に落ちたよう。 少なくとも以前まで話していたような表稼業の柔らかさは持たず、けれど仕事中の張りもない。 いちばん、ペルソナの何もかもが剥がれた中央にあるもののような無防備さだ。 青年の、外装の無い振る舞いを目の当たりにした人間てのは、そう多くはないものだろう。 両腕は下がり、隙こそないもののその先に縋る刃はない。今こうしているうちは、傷つけることはない。 それを示すように、薄暗がりの中で手袋をした指がふらふらと揺れている。 冷えた唇から飛び出した言葉は、相手からしてみれば出し抜けに聴こえるものだろう。 昨日まではもう少しばかり、青年の姿には不穏当な意気があったはずなのだ。 「オレより先に、用事のあるのが、いるんだ。 ……誰にも見せてやりたくない。死体を、処分してくれるんだろう」 手荷物があるわけではない。今この場に、"用事のある者"はいないのだろう。 一応は相手とは敵対する間柄の筈だ。どれだけ互いの素性を聞き及んでいるかは別にして。 それを戯言のままに聞き流すか、仕事、或いはお願いとして捉えるかは、相手次第だ。 (-84) 2022/08/24(Wed) 20:17:33 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → デッド・ベッド ヴェネリオ「話せるったって、運が良ければだがな。口寄せは女の方が適性が高いようでな。男の俺ではそう簡単には聞けんよ。」 言いながら、貴方の言葉を最後まで聞く。 聞き終えれば、ふ、と笑うのだ。 「お前さんはそうだろうな。死んだ後に俺に未練を託す無様は晒してくれるなよ。嗚呼、その銃も何も、全て覚えておいてやろう。故に、だ。」 → (-85) 2022/08/24(Wed) 20:27:03 |
【秘】 郵便切手 フラン → A88A― ヴィオレッタ「誰かのための、ものでした」 ポケットに掌を重ねる。 小さな硬い感触が布越しに伝わった。 「……あなたの名で贈ったら、」 "価値"に見合う信頼を築けたら。 贈って、受け取る"資格"を互いに得たら。 「今度は受け取ってくれますか」 賭け金も残ってない自分には、場が流れたって関係はないとばかりに言葉を続ける。 そういった 品ではない。今は。いつか、があるならそうなるかもしれないけれど。 今は、どこかに消えてしまいそうなあなたの無事を願う御守りだ。 重ねた影が新しい像を結ぶなら、それは間違いではなくなるだろうか。 (-86) 2022/08/24(Wed) 20:28:29 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → デッド・ベッド ヴェネリオ「誓おう。この血に、ノッテに掛けて。」 「お前さんがくたばった後も、生きてやる。俺がそうなったら、精々長生きしてくれよ、兄弟。」 (-87) 2022/08/24(Wed) 20:30:42 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 銀の弾丸 リカルド【隠された医療施設】 「…それでこそ、だ。」 「俺は早々くたばるつもりはない。誓ったからな。」 なあ、兄弟。と零す。 意識が戻ったとは言え、傷は深く。 脂汗を滲ませて、息を吐いた。 「お前さんが作り上げたこの施設の連中は優秀だ。そうだろう?だから心配はするな。お前の為すべき事を為せ。」 安心させるように、貴方の手を軽く握った。 (-88) 2022/08/24(Wed) 20:35:46 |
ヴェネリオは、聞こえない挨拶を。「Addio、兄弟」 (c18) 2022/08/24(Wed) 20:40:30 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 愚者 フィオレロ結局は徒労に終わるとわかっている努力を、誰が続けられようか。 当然、他人からすればそんな事情は知った事ではないだろう。 だからこの腹の底は誰に話す事も無い。 片手の指の数にも満たない人間だけが、知っている事。 他人にとっては、誰に話す程の過去も無い、つまらない人間だ。 「……努力して、報われるなら。 生きる事をやめようとしてやめられるのなら、 きっと俺は、とうに終わっていた人間だよ」 とはいえ、今は回りくどく慎重すぎるやり方をしている。 その事だって今はもう嫌というほどわかっていて、 だから今後の進退を決めるなら、きっと今が岐路なんだろう。 けれど、それでも。 「人はいつかは死ぬ。死んだ奴に頼らなきゃならないほど、 俺もやりようが無くなったわけじゃない。 たとえいつかお前が引き金を引く時が来たとしても、」 「それは今じゃない」 死に損ないは、今を選ばなかった。 それが良い事だったのか、悪い事だったのかはわからない。 何れにしても、その賭けが行われる事は終ぞ無く。 それ故に、互いに淡く脆い期待を裏切られる事は無かった。 ただそれだけが、確かな事だった。 (-89) 2022/08/24(Wed) 20:44:55 |
【独】 郵便切手 フラン/* 先輩後輩の間に挟まりたくない 恋愛には発展させたくない 丸く収まれ丸く収まれ丸く収まれ プラトニックの間に挟まったやつから死んでいくんだぞ!!!!!!!!!!!! (-90) 2022/08/24(Wed) 20:48:10 |
【置】 A88A― ヴィオレッタ【Pollo Nero】 「……。」 半時間ほど前から、一人の女がグラスを傾けている。 来店から暫くはキャストがついたが、 最初の注文以外は喋ることもなく、 話しかけてもにっこり微笑むだけ。 数人が入れ替わったのち匙を投げられ、 独りでワインを飲み続けている。 煙草を吸うでもなく、スマホを触るわけでもなく、 ただグラスの赤いワインを 減らしては注いで。注いでは減らして。 そして時折、ぼんやりと店内を見回すだけ。 喪服のような黒いドレスは何処か場違いで。 微笑を湛えているのに昏さを感じる顔は不気味で。 時折漏らす吐息は人を近寄らせない雰囲気は重くて。 店の片隅で居ないものとして、扱われていた。 そして、その扱いに女は満足していた。 [1/2] (L1) 2022/08/24(Wed) 20:51:13 公開: 2022/08/24(Wed) 21:00:00 |
【置】 A88A― ヴィオレッタ更に少しの時間が経つと、 ボトルで頼んだBiancaVignaが空になる。 その最後の一杯。それを軽く掲げた。 「…… あなたの方が、酔えましたよ―― 」呟いた名が喧噪に溶けると、グラスを置いて店員を呼ぶ。 訝し気に、でもそれを精一杯隠した店員に、会計を告げる。 店内の幾人かのほっとした雰囲気を感じながらも何も言わず、 素直に支払い女はバーを後にした。 この不気味な客の去った後には、空のボトルと 注がれたままのワイングラスだけが残されていた。 [2/2] (L2) 2022/08/24(Wed) 20:53:40 公開: 2022/08/24(Wed) 21:00:00 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルドふっと笑うような声が漏れる。嘲弄にしては柔らかなものだった。 哀れみなんだろうか。成すがままにされている相手への、男にとっては不可思議な状況への。 どんな想いで相手がここへ訪れたのかなんて、考えやしない。思いを巡らせたりもしない。 冷えた妄念だけが足と頭を動かして、この数日を組み立ててきたのだ。 今までに何度もやってきた手口を繰り返してなぞるだけ。自分自身の傀儡のようだ。 「そうだったら。自分で自分を追い詰めているなら、なんだって言うんだ。 目的も見失って、狂っているんだとしたらなんだって言うんだ。ほかに何も持ってやしない。 その全てを持ってるアンタに言われたくない。全部掻っ攫っていったのはアンタのほうだ」 指に絡んだ精液を拭うように雁首に指を擦り付ける。僅かに濃度の平坦でない滑りが流れる。 ソファに乗り上げ、息の掛かるほどの位置で囁く。陰湿な喜びに、歪んだ笑みを浮かべた。 小さな声で吹き込む唇は、件のアイオライトのすぐ傍で動く。微かに耳を、熱のある肉が揺らす。 「返してよ、リカルド。 ……ね、今楽しい? 望んでやってきて、こんな目に合わされて」 高揚したように吐息が音を立てる。それが何に依るものかなんてのは、わかっちゃいないのだろう。 乾いた左手が頬に触れる。冷えたジェイドの瞳が、貴方の目を輝きを見つめ返して。 酒で腫れて深い赤に染まった舌で、まだ強気な言葉を投げかける唇をそうっとなぞった。 「ちょっと転がすね。……こんな姿勢、女相手じゃしやしないでしょ。 女みたいにされるのは初めて? 大事にされてそうだもんね、アンタはさ」 体温を帯びた頭がゆるく、上体の上を滑るように離れてソファから身体を起こす。 肩口をまだ体液の付着した手で掴むと、内側に押し込むようにぐるりと体勢を変えさせた。 相手の頭はクッションの上に、身体は丸ごとソファの上に。 下肢は奥に押し込められ、背中を反らせて腰を天井に突き出させる。 衣類の剥がされた下肢のその付け根に、く、と体液と唾で濡れた親指を宛てがい浅く愛撫する。 乱暴に指を突っ込んだりはしない。その方がマシな気分だったかもしれないけど。 (-91) 2022/08/24(Wed) 20:58:12 |
【秘】 愚者 フィオレロ → 鳥葬 コルヴォ長い長い沈黙の後、この手が貴方を基軸とした何もかもにも触れられる事は永遠に無いと知った。気付いた。 「…………そうか」 その上で、零れた言葉はそれ一つ。 薄々こうなる事をわかっていたのか、感傷が全てを塞き止めたか。 「振られに振られてここまで来たな」 「他人に何かをしてやるなんて事は烏滸がましいと理解していたが──それでも、何か一つでいいから、」 "お前の手助けがしたかったよ" なんて、幼少期からずっと押し付け続けていた余計なお世話も、これで全部終わりだ。終わるからには立ち去らねばならない。 ああ、格好悪いしみっともないったらありゃしない。 結局己は不用意に労って、逆に昔馴染みを傷つけ続けただけだ。 『stronzo!!』なんて叫んでやりたくすらなるも、最後の最期だ。どうせなら嫌がらせの限りを尽くしてやろうとして、 「うまく死ねよ。そうでないと、」 「次に会うときは本当のfratelloになるよう願ってる俺の願いが叶うぜ。──じゃあな」 一番最初、本当に出会ったあの日に貴方に望んで。 再開した後の貴方をみて、遂に望みを言葉にできなかった"迷惑"を全部ぶち撒けてから──永遠にその場から跡形もなく、男は消え失せた。 (-93) 2022/08/24(Wed) 20:59:18 |
【独】 デッド・ベッド ヴェネリオ/* ぶっちゃけいまのうちに独り言を書きためておくべきでしたが無理でした。時間がねえ、生きてるって本当大変だな Addio!!! (-92) 2022/08/24(Wed) 20:59:45 |
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