14:18:30

人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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視点:

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【秘】 狡兎 ツィオ → 冷たい炸薬 ストレガ

「ああ。成程……。
 ストレガさんも一枚噛んでたわけだ……」

それは、実は自分にとっては初耳だった。
実は自分は、状況に棹を挿していただけで、
流れ自体は他の誰かが作ったものだ。
面白そうに顎に手をやって。

「そうだな……。
 それに対して言えることがあるとするなら……。

 『自分の口で言いに来い』かな……」

至極楽しそうに、
釘を刺された部分で指で弄んだ。

「ありがとう、ストレガさん。
 最高に面白い情報だそれは」
(-445) 2022/08/23(Tue) 19:55:18

【秘】 冷たい炸薬 ストレガ → 狡兎 ツィオ

「あたいは部下から聞いて面白そうだったから
 見に行っただけ。結果酷いもんだったけどね」

だからあんたが何の話をしてるかは知らないし、
探る気もない。そう零した。

「どうせ放っておいても明日には這い出てくるだろうよ。
 じゃ、確かに伝えたんであたいは帰る。
 あたいは無駄が嫌いなんだ、無駄にすんなよ」

ストレガはそう言って、去っていくだろう。
(-446) 2022/08/23(Tue) 20:00:20

【秘】 狡兎 ツィオ → 冷たい炸薬 ストレガ

「いやー……助かるよ。
 御足労ありがとう。
 これで思いっきり殴れるよ」

どれくらい先から助走つけて殴ろうかなと思いながら、
呑気な顔で貴方を見送った。

天を仰いだのち、一言だけ――その背中に。
(-447) 2022/08/23(Tue) 20:08:48
ツィオは、"さよなら"、と言った。
(a50) 2022/08/23(Tue) 20:09:05

【秘】 Niente ラウラ → デッド・ベッド ヴェネリオ

交わる指を見つめ、小さく吐息を零す。
それに含まれた感情の名前はまだ見つからない。
……それでも、今はそれでいいのだろう。

離れていく指のその全てを見届けて。
乱される髪に温かな感情を抱く。

「──…この命、家族ノッテのために。
裏切ることは、ありません」

いつものように真っ直ぐに見つめるのは。
感情が薄いなりの表現だ。

心からそう思っていることを、伝えるための。

拾われたあの日から、道連れになる覚悟は出来ている。
例えあの日にただ頷くだけの子供だったとしても。
心のどこかで、そう考えていたはずだから。

(-448) 2022/08/23(Tue) 20:10:14

【秘】 Niente ラウラ → デッド・ベッド ヴェネリオ

貴方の言葉は、夢物語だ。ない未来が描かれている。
それでも、どこかそれを現であればと願うのだ。

叶わないと知っていて。
それでも約束や願いを止められない。

だから。……だから。
ゆったりと頷いて、その夢物語を想像しよう。
信じるには難しく それでいて、優しい夢を──…。

「……趣味、は………分かりません。ですから、ヴェネリオ様と。
…………一緒に、探したいです ね」

貴方の趣味を知っても目を瞬かせるだけ。
それから、どんなものを見ているのか問いかけてみたり。

お菓子は頼まれれば作ろう。
上手く出来たら皆で分けて、そんな様子を眺めて。
叱る声に笑って、"たのしい"その日々を 過ごしていこう。

その夢に切なさを抱き、温かさを得ながら。
交じりあった熱を握りしめ また小さく吐息を零した。
(-449) 2022/08/23(Tue) 20:10:53

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ

少年は懸命に、あなたの隣を遅れないよう歩く。
それでも結局、守られていることも、わかって。
だから。
たとえ共にした時間が短かろうと。
生みの親よりずっと、あなたの方が家族だった。

「……なんだよ、それ」

くすぐったそうに少し、肩眉を上げる。
あなたを見上げて、吐息をひとつ。

「サルヴァトーレ」
「あんたホント、そんなことばっか言ってさ」
「人のことばっか見てて、自分のこともちゃんと見てんのか、……心配なんだよ」

それは、そうと自覚してのことではなかったけれど。
少年は確かに、あなたに『愛』を返そうとしていた。
(-450) 2022/08/23(Tue) 20:13:51

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド

「明後日ね。空いてるよ」

こちらは緊張した風でもなく、やっぱり笑っている。
場違いな程いつも通りに笑っている。

「……」
「ああ、非番はその次か……」

そんな、緊張感のないことすら口にしてみせるのだ。

「どこにも行かないよ、僕は」
ここアルバ以外のどこに行くって言うのさ」

君からのキスを享受する。
親鳥から飛び方を真似たような、親猫から獲物の取り方を習ったような、そんな君の愛し方。歳はひとつしか違わないのに男は君をよく可愛がったし、君は男によく甘えた。
二人でいる時々は逆転もしたけれど、概ねその関係は変わらなかった。


それから、君が満足する頃。

「ドニ」

男は、何度目かのその名を呼んで。
君に、今度は深く口付けるだろう。
(-451) 2022/08/23(Tue) 20:17:22
2022/08/23(Tue) 20:18:35

ツィオは、さて、どうやって殺すかな、と思った。
(a51) 2022/08/23(Tue) 20:22:46

【秘】 天使の子供 ソニー → 墓場鳥 ビアンカ

引き上げた体を腕の中に抱く。タオルでも持ってくるべきだったろうか。
こうなってしまった貴方を見てすぐに、どうするべきかなんて考えられるほど男は冷静じゃなかった。
せめても彼が大事にしていた彼に見せることにはならずに済む、それが幸運か幸いか、なんて。
彼らひとつひとつの末路を考えれば一概に言えるものでもないのだということさえわからないほどに。

引き上げた体は、濡れたままジャケットに包まれた。それだって十分じゃない。
人目をはばからずに配達車まで引き上げると、助手席に渡すように彼女の上半身を寝かせた。
顔に這うように固まった血をアルコールの入っていない使い捨てのウェットタオルで拭いた。
メイクの上からでも使えるリフレッシュシートだ。香水みたいな、いい匂いがした。
ダッシュボードの中から櫛を取り出して、あの綺麗だった髪にいつも通りに通そうとして。
海水でからまった髪は、無理に引っ張れば柔い皮膚ごと離れてしまいそうだったから、やめた。

少しずつ、少しずつ丁寧にきれいにしていった。無心で、無言のまま。顔貌には表情も無い。
ただ、それだけが出来ることであるように、出来る限りのことをした。
クーラーを効かせた車の中に満ちていた花の残り香は次第に死臭に追いやられていった。
時折通りかかる漁師が車の中を覗いている気配があっても、気にもとめないまま。
ベルトに着けた隠しポケットから、Tハンドナイフを取り出して肌の上にすべらせる。
書き殴られたメッセージを、ナイフで削いだ。それは彼女には相応しくなかったから。
刃を通しても、血が出ることはなかった。

外の気温の安定してくる頃には、最初よりはずいぶん見栄えするようになった死体を見下ろす。
あの日相談を受けたその日に、彼女と彼を外へ逃がせばよかったのだろうか。
呆然と考える。合理性や確実性を加味する余裕もない、思考の逃避でしか無かった。

「……綺麗に、……しなきゃ」

働かない頭のままに考える。誰かに、こんな彼女は見せられない。ただ、それだけの考え。
何度も体を合わせた彼女との間にあったのは友情に近いもので。果たさなければならない義理があって。
だから、彼女のことを。誰よりも死体に対して礼儀を向けてくれそうな彼に、託すことにした。
マフィアの烏に渡したなんて言ったらきっと夢で悪態をつかれるのだろう。力なく笑いながら、配達車のエンジンを掛けた。
(-452) 2022/08/23(Tue) 20:25:41
ツィオは、死ぬ前に、キスぐらいはしてやろうと思う。
(a52) 2022/08/23(Tue) 20:26:20

ストレガは、きちんと伝言を済ませた。
(a53) 2022/08/23(Tue) 20:30:31

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー

同じ景色を見られないならば。
隣にいることが許されないのならば。
昔の馴染みに託されたその命を守ることが生き甲斐だった。


顔は綺麗なまま、男は終わっている。
しっかりと調べると死ぬ直前に薬物を服用していた痕が見られたが、死因に変わりはない。

ファミリーに嘘をついてまで貴方を守ってやりたかった。
一人でも生きていけるとその小さな背中に期待をかけすぎて、
もうその心が擦りきれてるなんて思いもしなかったんだ。



「     」


死人は何も語らない。
静寂が部屋を包み込み、墓場のような冷え冷えとした気温はあなたの熱を奪っていく。

その心は俺だけのものに出来なかっただろう?
若くもない、力に歯向かえない家族一番の男が。
たった一人ですら手に入れやしない。
あいつには、家族も友達も子供たちも仕事もあって
その生活が、合ってるんだと思い込むしかなかった。


男は酷く狡い賭けをしていたのだ。
食事のあとは家にでも招いてやろうかと思い、貴方が寝床で背を見せたならその背中に銃を向けるつもりで。
しかしあの日もし本当に共にありたいと願われたのなら、命ごと全部やろうと。生きるか死ぬかすら委ねてやろうと。

本当に、愚かな賭けの向こうでこんなことになるなんて思っていなかった。奇跡はどこかに転がっていたのかもしれない、しかし、そうじゃなかったのがこの世界だ。
(-453) 2022/08/23(Tue) 20:32:37

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー



こんなに小さな手も握り返せない。
こんなに小さな体も抱き返せない。
それは男にとって無念であったが、
その体は語らず沈黙をしている。


もし辺りを見る余裕があったのなら、サイドテーブルにくしゃくしゃの紙が広げておいてある。
そこには"何か"を予約している領収書があり、
孤児院の住所、あなたの誕生日とされている日付の羅列が向こう20年分記載されていて、それは遠い各国の"店"から届くようになっていた。


あなたへの遺書も愛の言葉ひとつ送らなかった男は
未来の花に全ての想いを込めて眠りについていた。
(-454) 2022/08/23(Tue) 20:33:53

【秘】 名もなき医者 リカルド → デッド・ベッド ヴェネリオ

当たり前じゃないですか。
寂しいですよ。

そう言いたいのに、うつら、うつらと目が細まる。
まだ眠りたくない、まだ、離れたくない。
襲い来る睡魔と戦いながら、その話を聞いているだろうか。

「待ってて……くださる、ん、ですか」

自然と目が閉じられて、開く時間が少なくなった。
低い声が耳の奥に響いて、なぜだか無性に泣きたくなる。

「はい。必ず――……必ず、貴方を追いかけます、から、
 だから……俺をお側に――――――」

額に何かが触れた気がする。
柔らかくて、優しく甘い何かくちびるが。

だけどもう、何も返すことが出来そうもない。
どうやら俺の居場所は、ここではないらしい。
貴方はきっと、それを知っていたからこそ送り出してくれたんだろう。

あぁ、なんて最後まで甘い人なのだ。

――――ありがとうございます。
そんな貴方だからこそ、俺は、貴方が好きでした。
(-455) 2022/08/23(Tue) 20:35:09

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 墓場鳥 ビアンカ

美しく繕われた澄まし顔。
いつも通りの表情。
ほかに知っているのは、機嫌を損ねた顔。結構口が悪いところ。
少年が知っていることは、多くない。

「……ふぅん」
「ほかにどうしようもない、か」

これまで、あなたの過去を尋ねることはなかったし、あなたも話さなかった。
同様に、あなたが少年の過去を尋ねることはなかったし、少年も話すことはなかった。
けれど、ふと。こぼれるのは。

「どうしようもなくて、それしかできなくて」
「嫌なことでもそうするしかないの、おれを生んだヒトあの女とおんなじだ」

翠の瞳が瞬く。
すこしだけ、遠くを見るように。
どこかへ行くなら早い方がいいと言うなら、多分、クローゼットから出るのが遅かった。
遅かったけれど、だからここに、今があって。
それでもあんたは行かないんだろ、とよぎった言葉は胸に仕舞う。
少年は今この瞬間、すこしだけ、いい男であろうとした。

「……ん」

だからそう、短く頷いて。
あなたの手を離さないまま、家路を辿る。
(-456) 2022/08/23(Tue) 20:38:19

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「ああ。……はは。行けないかもなぁ、二人で」

それは残念だな、と合わせたように暢気に言う。

「分からないだろ。何があるか、どうなるかも」
「な」

貴方の事は信じている。
絶対に貴方は裏切らないし、どこにも行かないと。
でもそれでも、放しがたくて。
これが貴方の真似なのはそうだ。そして貴方よりも拙いものだろう。
それでも伝えようとするとき、愛したいと思う時、自分は貴方の真似をした。
身近にある、一番明確な愛の形だったから。

「ん? …………、あ」

名前を呼ばれればまた貴方の瞳を見て。
再び重ねられた唇と差し込まれる舌に、薄く口を開けて答えた。
貴方の気が済むか、こちらの気が済むまで、きっとそれは続く。

……やっぱり、甘い。
(-457) 2022/08/23(Tue) 20:41:28

【秘】 名もなき医者 リカルド → Niente ラウラ

取り戻した感情は、まだほんの小さなものだったかもしれない。
まだまだ迷い子のように彷徨ってしまうのかもしれない。

それでもきっと、死んでしまっているとしても遅すぎることはないはずだ。

考える頭、心があれば、いつだって取り戻して良いもののはずだ。

それくらいの悔いがあるほうが丁度いい。
空の上から見下ろして、雨となる涙を流せるくらいのほうが、きっといい。

回された腕が、泣いているように感じて、
ぎゅ、と抱き寄せた手に、少しだけ力を込めた。

止まない雨はないのだから、いつだって泣いていい。

「あぁ、寂しい、な」

そう思うから、こうして熱を与え合うことができるのだ。
(-458) 2022/08/23(Tue) 20:44:10

【秘】 Niente ラウラ → 無風 マウロ

近づく足音に振り返る──訳もなく。
そこにあるのはただの器だ。動くはずもない。

貴方の声を死体は聞かない。
貴方の言葉を死体は聞けない。
名を呼ぶ声に──声を、言葉を……返せない。

触れる手も、何もかも 知ることなど出来ない。
それが死ぬということだ。ここには、何もない。

(-459) 2022/08/23(Tue) 20:47:31

【秘】 エースオブ―― ヴィオレッタ → 墓場鳥 ビアンカ

>> ビアンカ

一夜の夢を見せる。
そんな騙し文句を、女はよく口にした。

ディーラーはそうやって客に夢を見せ、
客から夢を奪う仕事だ。
そう、見せられるのは一時の夢だけ。
いくら己の仕事に誇りを持っていても、
夢破れて去る背中を見送るのは、いつになっても苦しかった。

だから目の前の女にだけ、その言葉を零していた。
自らを嫌悪して、嘲る様に。



くすり、小さく笑いを零す。

ヴィオレッタはその下手な笑い方が、好きだ。
には決して見せない微笑み。
そこにあなたの”ほんとう”を見た気になって。

いつもは少しずつしか見れないあなたの素直。
今日はそれがたくさん見れることに、
少し驚いて、楽しくて、とても嬉しくて。

だから、見逃してしまったのかもしれない。
助けを求めるサインなんて、たくさんあったのに――

[1/2]
(-460) 2022/08/23(Tue) 20:47:43

【秘】 Niente ラウラ → 無風 マウロ

持ち歩いていたものは些細なものだ。
けれどここにあるのは、たったひとつ。

ならば他はどこに消えたのか。…死者は語らない。

ただ、そのたったひとつが守るべきものだった。
そのたったひとつを 届けたかった。

……なんて、それさえも理解は出来ないだろう。


フレームは、簡単に外れた。
そこにあるのは2枚のメモだ。

ならばそれを隠したものは誰か。

貴方はきっと知っている。名前も、あるし。
その文字を、見たこともあるはずだから。

小さめで、主張の少ない文字。
それぞれに書かれた内容は……違うもの。

勿論宛先も。……1枚は、届かないものかもしれない。

(-461) 2022/08/23(Tue) 20:48:20

【秘】 Niente ラウラ → 無風 マウロ

1つ目のメモは、貴方に向けて。
急いだようには見られない文字がそこに並んでいる。
そして、それをじっくりと書く時間はあまり無かったようにも。

ならばいつ書いたのか。……それも、語られることは無い。

────────────────────────
マウロ様

ラウラをお傍に置いてくださり ありがとうございました
ラウラはマウロ様の不器用な優しさが好きでした

ずっと お慕いしております

貴方に栄光と勝利が訪れますように

────────────────────────

…………。
……。

(-462) 2022/08/23(Tue) 20:48:48

【秘】 Niente ラウラ → 無風 マウロ

もう1枚も、宛名が記されている。
少しだけ 端がくしゃりと歪んで、折れていた。

────────────────────────
ツィオ様

ラウラは ツィオ様が好きです
あの日 貴方に触れたことに後悔はありません

幸せに なりたかった

────────────────────────

………………。
…………。

貴方がこの2枚をどうするか。
それは自由だ。

破いても、隠しても。燃やしても。
何だっていい。

咎めるものは誰も──いないのだから。
(-463) 2022/08/23(Tue) 20:49:22

【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

胸に灯った火がいつからそこにあったのかはわからない。初めは見えないほど小さな星火だった。
けれどもこの瞬間に至るまで、その命の尽きるまで、ずっと男の心は貴方のものだった。
貴方だけのものだった。絶えず、揺れることさえなく。ひとつきりの持ち物だった。
だからきっと、そこに違えがあったのだとするのならば。それは隠し続けた青年のせいだったのだろう。

交わした口付けはほとんど触れるだけのものだった。それで精一杯だった。
或いはあの日手を引かれていたのならば、重ね合う熱はもっと暖かなものだったかもしれない。
涙が皺に滲みてうっすらと水気を増す。それも僅かな隙間に吸い込まれて、失くなってしまった。
ほんの小さな現象でさえも、まるで二度と青年が貴方に与えられるものなど無いことを示すようで。
唇を重ね、指を触れればそうするほどに、もう異にされた幽明境を感じられるようだった。

もっと移り気で、気軽で、只々の別れとして思えるくらいのものであれば良かったのだろうか。
そうであればこんなふうに貴方を心配させ、呆れさせてしまいそうな別れをせずに済んだのか。
ぎゅうと、最後に指を握り込む。もう血の通わない指の肉が、少し潰れて痕がついた。

「……、こんなことしたら、怒るかな……」

ぼんやりと、浮かされたように曖昧な言葉が唇から出る。涙を吸って、息がし辛い。
懐から取り出したのは、いつか街中で誰かと交わした話題の中にあったもの。
アーモンド希望の花の枝を象った、プラチナの指輪だった。
小さく散りばめられたジェイドは己の瞳の色。それもまた、独善的で幼稚なものだ。
貴方の指にそれがあったなら、いつでも貴方を感じられるかもしれないと、そう思っていたのだ。

少し、貴方の指にはほんの少しだけ小さな指輪。きっと合わないと、買った時は思い返していて。
やっぱり上手くはまらないそれを無理やり、左手の薬指へと添えた。
誓い合わずに一方的に押し付けられたものに、どんな価値があるというのだろう。
(-464) 2022/08/23(Tue) 20:50:38

【秘】 エースオブ―― ヴィオレッタ → 墓場鳥 ビアンカ

「そこは否定しませんけれどね」

少々のお行儀の悪さを咎める事はなく、ただ頷く。
ノッテあちらのような伝手があれば、違ったのかもしれない。
でも、それは逃がしてあげられないということで――
だから、アルバうちが外は弱かったのは、良かったのだろう。

自分が逃げられないからこそ。
逃げる事をとっくに諦めていたたからこそ、
せめてこの美しい鳥には空で自由を得て欲しかった。
似た者同士の、でも抗い続けるあなたにこそ。


言い淀んだ答えの続きを待たずに、
オムレツを切り分けて、小さく口を開く。

ぽとり

手元の皿にケチャップが落ちた。
それにも気付かずに、口へとオムレツのかけらを運ぶ。
数度の咀嚼は口の端が緩んだままで。

「料理学校ならわかるのですが、大学ですか。
 正直なところ、総額は分かりません。
 ……が、入学費用くらいなら、工面できると思いますよ」

にまにまと緩んだままの口元を傾けたワイングラスで隠す。
水面に映りこんだ緑の瞳も楽し気に細められていた。

[2/2]
(-465) 2022/08/23(Tue) 20:52:26

【置】 鳥葬 コルヴォ


子どもの頃から、つくづく運の無い人生だった。

何度も死ぬような目に遭っては、望まぬ偶然悪運が命を繋いで。
それとは対照的に、自分に関わった人間は尽く死んでいく。
それがもはや単なる偶然では片付けられない域に達した時、
人生を悲観する事を、誰が咎められようか。


他者の死が、自分のせいだなとど驕った事は無い。
人はいつかは死ぬものだ。それが偶々その時だっただけの事。
それぞれの意図、それぞれの行動があって、その結果そうなったに過ぎない。
けれどそればかり見ていれば、嫌気も差すというもの。

嫌気が差して、疲れてしまって、けれど逃げる事も許されない。
そんな閉塞感に満ちた時間が、いつまで続くかもわからない。
(L6) 2022/08/23(Tue) 20:53:15
公開: 2022/08/23(Tue) 20:55:00

【置】 鳥葬 コルヴォ


終わりの見えない闇路は苦痛だった。

もしもそれが漸く終わるとしたら、今だと思った。

それで良いと思っていた。


けれど、本当はそうではないのかもしれない。
今更になってそんな事に気付くなんてのは、やっぱり運が無い。
(L7) 2022/08/23(Tue) 20:53:36
公開: 2022/08/23(Tue) 20:55:00

【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

部屋の中の僅かな光が、貴方の薬指で輝くほんの小さな色を照らしてキラキラとしていた。
それで、何か区切りがついたように、終わりを見出したかのように。
指輪に、唇に。もう二度と開かない瞼にもう一度ずつだけキスをして。

去り際に見たのは、サイドテーブルの書き置きだった。
小さく、けれど長く、今までの多くが書き綴られていたのだろうくしゃくしゃの紙を手に取る。

「……知ってたよ。遠い国から、あんなに正確にこの国の季節の花がわかるわけないんだ。
 花屋の店主さんがさ、そう言っていたから。そう、教えてくれたんだ」

貴方から託されたものは、本当は気付いていたはずなのに。
この結果はいずれ伝えるべきものを先延ばしにしていた罰なのだろう。
見下ろした表情に、最後に一度だけなんとか笑い返そうとして、うまく笑えなかった。

「さようなら、……先生。オレの、ヴェネリオ」

最後まで果たして、青年の声は大気を震わせられただろうか。
自分じゃ聞けなかった、わからなかった。貴方が教えてくれたならばいいのに。
もう叶わないことを思い浮かべて、貴方の部屋を後にした。
(-466) 2022/08/23(Tue) 20:55:11
マウロは、手紙を読んだ。遺されたそれに、何とも言えない顔をして。
(a54) 2022/08/23(Tue) 20:55:31

マウロは、「それも、知らなかったな」と言って。寂しげに、薄く笑っていた。
(a55) 2022/08/23(Tue) 20:56:16

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 天使の子供 ソニー

死体は何もしゃべらない。
死体は何もうったえない。

寂しさも、哀しさも、
苦しさも、嬉しさも、
悔しさも、愉しさも、

怒りも、
幸せも。

彼女はいつも全てを内包して、あの店先に立っていた。
そんなすべては流れ出してしまって、
もうどこにも残っていない。あなたが最後に施した死化粧が、醜い死体を僅かに彩る。

もし、彼女が生きていたのなら。

――なんだかやと喜び、けれど余計なことをするなと唇を尖らせたかもしれない。

もし、彼女が生きていたのなら。

――綺麗でしょう、こんなになっても? なんて、冗句になっていない冗句を飛ばして、子供のように笑ったかもしれない。

もし、彼女が生きていたのなら。

――ありがとう、ごめんね、最後まで迷惑かけて。 けっこう、あなたのことは嫌いじゃかったの、なんて、ほんとうかうそか最後までわからないことで微笑んだかもしれない。


もし、彼女が生きていたのなら。
もし、彼女が生きていたのなら。


――君の前で、笑顔以外をうかべることはなかっただろう。 彼女は、意地っぱりだから。

だから、彼女はもう死んでいた。
くしゃくしゃになった髪がぺとりと肌に張り付いて、
がたごとと揺れて、眠っているように傾いた。
(-467) 2022/08/23(Tue) 20:56:20

【置】 天使の子供 ソニー

小さな部屋の中に、音楽が流れ続けている。子供のための祈り、子守唄の伴奏だ。
締め切った部屋は蒸し始めて、細く流れる血の匂いが壁に塗り込められるように充満し始めている。
バスルームの壁を背にして、乾ききっている空のバスタブの中に座り込んでいた。
此処までに至る幾つもの部屋には鍵が掛けられている。辿り着くまでには、時間が掛かるだろう。

ぼんやりと天井を見つめていた。そこに楽譜があって音符が踊っているかのように、指で辿る。
目線はタイルの色をほとんど形も判然としないままに見つめている。ジェイドの色が輝いていた。
僅かに差し込む月の光はちょうど目元を映し出していて、瞼に嵌った宝石を照らし出す。

考えていた。自分に何が残っているのかと。
親友と親の仇、そう思いこんでいた人税の目標のような誰かを失った。
仰ぎ見るように心の中にあった、甘い匂いのする眩しい明星を失ってしまった。
たった一人きりの友人を失い、己が助言を仰ぐ優しい手を失い、
己が先に順番が来たとしてもその背にして守るはずだった目上の彼を失い、
この街から逃がそうとしていた友人も、彼女が大事にしていただろう脆い存在も失ってしまった。

此処に残り続ければ自分の手に何が余るのか、何が出来るのか。考えた、筈だった。
ぼんやりと麻痺した頭は、死臭に囚われてしまったように眩んでしまって。
自分の中には何も無いのだと、ようやく気付いてしまった。

「……♪……♪……」

手の中にはくしゃくしゃの紙。手の中には一丁の拳銃。
それは誰かから買い付けたものではなくて、隠し持っていた虎の子の一丁だ。
思い出の中のメロディを鼻歌でうたってみて、それを耳で聞く。けれどもそれは、自分の声だ。
本当に欲しかった誰かの声ではない。それはもう、得られはしない。
(L8) 2022/08/23(Tue) 20:56:43
公開: 2022/08/23(Tue) 21:00:00

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ


「……」

足が一度だけ、止まる。
あなたの、どこか大人ぶった態度に、ぱちぱちと瞬きをして。



「――誰が、あんたの母親なんかになってやるかっつうの」


そんなこと、言ってない。
あなたはそんなこと、言ってないのだ。


それなのにそんなことを言って、
ビアンカは手を揺らした。

家へ帰ろう。
あの狭苦しくて、不自由な籠の中に。
過去も未来も現在も、私たちをぎゅうぎゅうと押し込めてくるのだから、
せめてそこだけは心安らぎ、雨風をしのげるようにしよう。


「ん」


「ヴェルデ、あのね──」

(-468) 2022/08/23(Tue) 20:59:11

【影】 鳥葬 コルヴォ


死んでも、生きても、結局はどちらも同じ事。

その事に気付いてしまったからには、もうどちらを選べもしない。


結局の所、全ては自己満足だ。
だから生きるも死ぬも、それに自分が納得できなければ。
それらは何れも決して救い足り得なくて、救いを求めてもいなくて。

だから、名もなき烏はもう誰が望む所にも行かない。
行き着く先は、誰も知らない場所であればいい。
(&2) 2022/08/23(Tue) 20:59:28

【置】 天使の子供 ソニー

「……ああ、約束。果たしておけば、よかったかな」

ほとんど抑揚のない声が思い出したようにこぼした。誰に向けるでもない声だ。
けれども一度言葉にしてみたなら、誰かが聞いているような気がしてしまって。
叶いもしないことを、口にしてみた。

「ねえ先生、最後に。オレに、――……」

最後に口にしたのは何だっただろう。
誰も聞かない。聞こえない。届かないだけのもののまま。
その声も、心も。命も。思い出も瞳も、花の匂いも何もかも、一人のもののまま。
どこかそれに安堵しながら。

拳銃の引き金を、引いた。
(L9) 2022/08/23(Tue) 20:59:44
公開: 2022/08/23(Tue) 21:00:00

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ





「いっしょにかえってくれて、
 ありがと、ね──……」



彼女は、さびしがりやだ。
(-469) 2022/08/23(Tue) 20:59:46
 




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