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![]() | 【人】 七川 惺[身じろぎする悠凛を抱きしめようとしたが 俺の手からすり抜けてしまった。] …………。 [シャワーなら一緒に、って言おうとしたんだ。 だけど、悠凛の身ごなしが素早くって。 やっぱりやりすぎてたからなのか、 身体が少しだるくって、後れを取った。 追いかけたんだけど、浴室のドアは ……閉まってたんじゃないかな。] 入ってもいい? * (3) 2025/12/20(Sat) 17:31:27 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛ぇ───? [聞き慣れない低い声。 惺に甘やかされることにたった一週間で 慣らされていた俺は、目を見開いた。 惺なら。「大丈夫だから気にすんなよ」とか。 軽く流すだけかと、] ………あんなこと、普段の俺は絶対言わないし、 [惺がプライドを持って頑張っているんだろう 仕事に“行くな”なんて。有り得ない。] いつもの俺は、 ………あんなこと、しない。 [惺にとっては今じゃないんだと思って決めたことを、 自分であっさりと翻すようなこと。 必死に我慢しようとする惺を、寧ろ煽り立てることばかり。 惺は俺を大事にしてくれるのに。 俺も、そうしたいのに。] (4) 2025/12/20(Sat) 17:40:04 |
![]() | 【人】 七川 惺[シャワーを流す音が聞こえる。] ……平気なんだ。 [なんで、こんなにむしゃくしゃするんだろう。 俺、悠凛になら、導火線もっと長いはずなのに。 一日二錠飲むのが通常運転になっていた抑制剤。 そういえば昨夜寝る前に飲み忘れ、 今朝もまだ飲んでいないことを忘れていた。 「あんなこと、普段の俺は絶対言わない」 「あんなこと、しない。」 “あんなこと”が何にかかっているのか、 どういうつもりで言っているのかわからない。 わからないけれど、 今、俺が必要とされていないと感じた。] (5) 2025/12/20(Sat) 18:25:06 |
![]() | 【人】 七川 惺[身体の中心に集まる熱が、方向を変え、 俺の右腕に集約する。] (ドカッ!!) [リビングのソファが悲鳴を上げる。 一部に亀裂が入った。 俺はそこらへんに落ちていたタオルを 汚れも気にせず腰に巻いた。] ふーっ…… [大きく肩で息をする。] (6) 2025/12/20(Sat) 18:29:11 |
![]() | 【人】 七川 惺[……そうだ、薬。 この時になって、やっと薬の存在を思い出した。 スポーツバッグに手をつっこんで 抑制剤を取り出し、キッチンへ向かう。 不穏な音を聞きつけて悠凛が戻ってきたのは その頃だったか。 俺は、薬を飲み込んで 自分自身で壊した、ソファの惨状を見つめていた。**] (7) 2025/12/20(Sat) 18:32:13 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[ちゃんと水温が十分に温かくなったのを 確かめて、頭からシャワーを被る。 頭を冷やすために冷水を、というのは。 日々スケジュールが詰め込まれてる以上、 こんな時だろうと有り得なかった。 サァ、と身体に降りかかる水音で、 惺の声はおろか、まだそこに居るのも 気づいていなかった。 さっとべたつく身体を流して、 髪を洗おうとしたら。 突然外で大きな物音がした。 惺。 何かにぶつかった? それとも───倒れた?] (8) 2025/12/20(Sat) 20:12:37 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[それ以上何か考える前にドアを開けていた。 これだけはと洗濯してあった 部屋着の中からバスローブを引っ掛ける。] ッ しずか、 [惺は、特に怪我をした風もなく 真っすぐそこに立っていた。 大丈夫?と声をかけそびれたのは。 惺の視線の先に、何があるのか 気づいたからだ。] (9) 2025/12/20(Sat) 20:14:00 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[ソファが凹んで、革も破れている。 その前に立ち尽くして、 ソファを見下ろしている惺の横顔。 右手の拳が。少し赤い。] ──…何してんの? [酷く硬い声が出た。] ぶつかって壊れた、って 訳じゃなさそうだな。 [それだけは良かった。でも。 ヒートの真っ最中でも巣作りしたいと 言葉にしては言えない俺にとっては。 そこがヒートの間、惺を待って、惺に抱かれて、 身を寄せ合って過ごした場所で。 それを当の惺本人が壊したっていうのは、 受け入れ難いものがあった。] (10) 2025/12/20(Sat) 20:29:13 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[どれかひとつでも口にしたら、 泣いてしまうのが分かっていた。 小さく息を吐く。呼吸を整える。] ごめん、色々我慢させたよな。 1週間近く付き合ってくれてありがと。 惺が付き合ってくれたから、 身体、いつもより楽だった。 [目を伏せて微笑む。……そうだよな。] 俺、髪乾かしたら外出るから。 もう大丈夫だよ、帰ってもらっても。 [外に出ても問題ないだろうと 思えるくらい、身体は元通りになっている。 もう惺に面倒を見てもらう必要がないのは、 明らかだった。*] (11) 2025/12/20(Sat) 20:45:29 |
![]() | 【人】 七川 惺[恋人の顔を見ることができない。 恋人?俺はまだ悠凛の恋人だろうか?] 我慢なんて…。 [今、この、何かを失いそうな痛みに比べたら。] 一週間……。 お前の身体が楽になったのはよかった。 [一週間近くだけ同棲して付き合った恋人? 俺は、身体が楽になるため以外、役に立たなかった? “帰ってもらっても”…その言葉がやけに耳に響いた。] 髪乾かすのも、手伝わせてもらえねーの? [それに対しては、どんな返事が返ってきただろう。] (13) 2025/12/20(Sat) 21:59:11 |
![]() | 【人】 七川 惺[黙々と、残っていた洗濯済の下着を着て。 黒いタンクトップと同色のボクサーパンツ。 今の気分にぴったりの色だ。 クローゼットを開けて。 Tシャツは着用せず、悠凛が似合うと褒めてくれた 薄藍色のダンガリーの上下コンビを身に着ける。 それから、スポーツバッグに手を入れて 忘れ物がないか確かめる。 財布、ピルケース、パスケース…… カードキーが入ってる。 それを受け取った時のウキウキした気持ちも 思い出してしまったけれど。] これ、返すな。 汚れ物は適当に……捨ててもいいよ。 [俺は、再び、振られたんだから。 *] (14) 2025/12/20(Sat) 22:01:52 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[───サンドバッグ? 場違いな言葉に、目を瞬く。] … ははっ、 [乾いた笑いが零れた。] そんなん必要なんだ? [俺の代わりに、それに鬱憤ぶつけるってこと? おまえらしくなくて、いっそ笑える。] (15) 2025/12/20(Sat) 22:29:09 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[もう視線も合わない。 少し前まで、ずっとそうだったな。 元に戻っただけ。 それでも惺は、俺の身体が楽になったのはよかったと 言ってくれる。 髪を乾かすとまで申し出てくれて。] 大丈夫。 もう普段通りだから、一人で出来るよ。 [相変わらず根が優しい。 そうでいられなくさせるのは、 きっと俺なんだろう。] ……あのさ。 そんなもの要るような相手と、 当分一緒に居ない方がいいと思うよ。 [自分が自分らしく居られない相手とは、 一緒に居ない方が良い。 それだけ告げるのが精一杯で、 あとはドライヤーで髪を乾かしながら、 着替える惺を黙ってみていた。] (16) 2025/12/20(Sat) 22:41:06 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[惺は淡々と、この家を出ていく用意をしている。 引き留める言葉も術も、 俺は持ち合わせていなかった。 αを狂わせるフェロモンさえ、今の俺はもう。 惺がスポーツバッグに手を入れて、 持ち物を確かめている。 そこから巣材を探った数日前に戻れたらいいのに。 やっぱり無神経だったよな、あれも。 惺が手にした、うちのカードキー。 スペアは何かあった時のために 親に渡してあるから、惺に貸したのは自分用だった。 それでも、返してというのを躊躇った。 だって。そんなの。まるで、] (17) 2025/12/20(Sat) 22:49:10 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[───あ。 惺はもう、戻ってこないつもりなんだ。 俺のところに。 “汚れ物は適当に捨ててもいいよ” その言葉を聞いて、ようやく悟った。 ] (18) 2025/12/20(Sat) 22:52:14 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[そうだよな。 惺にとっては、きっとその方が良い。 いくらでも良い相手は居るだろうし、 そういう相手と優しく想い合うのは とても、惺らしい気がした。 俺でない方が良い理由も、 いくらでも見つけられそうだったから。] … わかった。 [静かに答えて、頷いてみせた。*] (19) 2025/12/20(Sat) 22:57:16 |
![]() | 【人】 七川 惺 ── Lost ── [俺はいつだって言葉が足りなかった。 つい少し前には、言葉でちゃんと伝えなくちゃって。 そんな風に学習したつもりでいたのにな。 俺は幸運の前髪を掴み損ねた。 その髪はストロベリーブロンドの色をしている。] (21) 2025/12/20(Sat) 23:14:28 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[惺が最後に、俺に触れてくれた時。 惺の言う通り、俺は何を言われているのかも 分かっていなかった。 それでも、黙っていた。 言うべきことは、もうなかったから。 “一緒に居てくれてありがとう”とは言えたし。 伝えたい事は他にいくらでもあったはずだけど。 受け取ってくれる相手は、もういない。] (22) 2025/12/20(Sat) 23:28:26 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[俺が最後に近くで見たのは、 惺の顔じゃなくて。 髪を掬い上げて、離れてゆく指先だった。 ずっと、もうずっと。 俺は、この手を。] (23) 2025/12/20(Sat) 23:31:26 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[家を出るまでにまだ時間の余裕があったから。 窓を開けて空気を入れ替え、ゴミ袋を手に 部屋を片付けることにした。 失ったものの大きさに麻痺して無感情で居られる 今のうちにやった方が良いと、自分で分かっていた。 洗濯のまだだった、惺の下着。 2人で着ていた揃いのバスローブ。タオル。 包まって眠ったブランケット。 まだ使えるものも、迷わず袋に入れて口を縛った。 目につく汚れも拭って惺が居た痕跡を一つ一つ消していく。 マンションのコンシェルジュに連絡を入れて、 清掃とソファの処分の業者を手配してもらってから、 一息入れて部屋を見渡す。 これで家に帰る頃には、だいぶマシになっているだろう。 金があって良かったと今日ほど思ったことはない。 いつのまにか頬に伝っていた涙を手の甲で拭う。 そういえば、途中から視界が滲んでいた気もする。] (24) 2025/12/21(Sun) 0:12:26 |
![]() | 【人】 七川 惺[実家に帰って、一日自室に閉じこもった。 寝不足だったから、服も脱がずにベッドに横たわる。 身体の疲れを取るのが先決だろう。 まずは、そこからだ。 だが、ふと思い立って頭の上に手を伸ばし。 ヘッドボードに閉まってあったケースを開ける。 悠凛とお揃いの、輝く星。 それを首にかけた。 ほんの少しでも、夢の続きを視たかった。] (25) 2025/12/21(Sun) 0:23:41 |
![]() | 【人】 七川 惺[翌日、洗面台の前に立ち、両手で頬をパシッと叩く。] 何から始めようか。 [そうだ…!アレだ。 子供の頃、世話になったバレエ教室に電話をかける。 スケートをやっていた時、 柔軟性と体幹、それに加えて芸術性を高めるために、 一時習っていたのだ。 あの時の先生はもう引退していたが、調べると 息子さんが継いでいるらしいことがわかった。 すぐに電話をした。] 子供の頃やってて、もう一回習いたいんですけど。 モデルの仕事にいかしたくて。 そんなんでもそちらで習えますか? [悠凛がモデルを続けるのを望んでいたから。 やるからには、トップを目指す。 最終的にはお前の隣に再び並ぶ、その第一歩。] (26) 2025/12/21(Sun) 0:27:53 |
飛鳥 悠凛は、メモを貼った。 (a3) 2025/12/21(Sun) 0:40:12 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[そうして。 よそよそしいほど綺麗になった部屋に、 惺の居ない日常が戻ってきた。 空白を埋める新しいソファは、 伝手で直ぐに届いた。 惺とのことは、俺の日常に組み込まれる前に 終わってしまった。 撮影と番宣はヒートの前に終わっていたし、 恋人として会ったのも、惺の実家に行った一晩と、 この家で過ごした一週間足らず。 夜に電話をする習慣も、その間に途絶えていた。 拍子抜けする程、普通の日常が戻ってくる。 仕事が楽しくて、忙しくて、 慢性的に睡眠不足で。 お陰で家に帰り着いて、軽くアルコールでも入れて ベッドに潜れば、気を失ったように眠れる。] (27) 2025/12/21(Sun) 0:47:38 |
七川 惺は、メモを貼った。 (a4) 2025/12/21(Sun) 0:51:29 |
![]() | 【人】 飛鳥 悠凛[EverAfterの新曲のリリースがあった。 ライブが終われば、映画の撮影が始まる。 幸運な男だと思う。 俺の運はきっと、日々仕事で使い切っている。 何もかもを手にしたいなんて都合の良い話で、 長い目で見れば、これで良かったんだろう。 俺と長く付き合うのは、きっと難しい。 手離してやれなくなる前で良かった。 変わったことといえば。 楽屋で手持無沙汰にぼうっとしている時に、 リヒトとマキだけでなく、タイチまで俺に 気づかわしげな視線を寄越すようになったことくらいで。 基本距離置いて見守るタイプだから、 タイチだけは直接何も言ってこなかったけど。**] (28) 2025/12/21(Sun) 0:57:48 |
![]() | 【人】 七川 幸臣[息子が早朝ランニングを始めたようだ。 明後日の方向に走ってなけりゃいいが。 まあ、打たないシュートは、100%外れるわけだから。 何があったかは知らないが。 全く無駄というわけでもないだろう。] (29) 2025/12/21(Sun) 10:32:54 |
![]() | 【人】 七川 惺[早朝ランニングに出かける姿を何度か親父に見られた。 ……ある日、背中から声をかけられた。 生暖かい目で見てやがる、ちくしょう! **] (30) 2025/12/21(Sun) 10:37:25 |
![]() | 【人】 七川 惺[俺の実家と悠凛の棲み処がこんなに近かったのは 良かったのか悪かったのか。 ファーストコンタクトしてからもう六年経つ。 悠凛があのタワマンに住んでいるのだと 最近まで知らなかったのが不思議なくらいだ。 ショーの前に体重調整のため ランニングすることはままある。 ここは元々の散歩コースからそんなに外れてない。 ランニングコースはそれを一寸延長しただけだ。 スポーツブランドのモデルをやった時 そのままもらいうけたランニングシューズを履く。 ──良い靴を履きなさい。 良い靴は履き主を良い場所へ連れていってくれる。 っていう言葉があるんだってな。 なら、悠凛の所に連れて行ってくれよ。 身に着けたブランド品は靴だけ。 フード付きウィンドブレーカー、キャップ、 ジョッパーズ等は無印良品。 あと、度の入ってないスポーツ眼鏡。 アイドル程じゃないが誰かに見つかると面倒だから。] (31) 2025/12/21(Sun) 20:56:14 |
![]() | 【人】 七川 惺[それでもデカさだけで人目を引きそうな俺は 悠凛の部屋を見上げるのは早朝だけにしてる。 夜だと、不審者に見えそうじゃん。 待ち伏せしてるヤツみたいじゃん。 暗くなってからの方が、明かりがついてるかどうか わかるのにな。 少ししてから近くの公園のベンチに座って考える。 できればパリコレデビューは25歳までにしたい。 基本的にパリコレはニューフェイス、 20代前半までの方が起用されやすいと聞く。 現在所属してる事務所は雑誌や広告モデルに強いけど 元々ショーモデルに推すには弱い所だ。 パリコレオーディションの件で俺に声がかかったのも、 映画『デルタ』を見たエージェントからきた話だという。] (32) 2025/12/21(Sun) 20:58:55 |
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