人狼物語 三日月国


7 【R18】鈴蘭の村:外伝6〜カフェリコリス〜【RP半再演ペア】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


ったく、もう少し待ってくれよ。
まだ、終わってないんだよ……


[嘆けども、恐らく、命令は変更されない*]

[とめどなくあふれる水のように
つながった先から感情がこぼれてくる

それはきっと不都合であり
それはきっと、―――都合もよかった。

憎悪しか持たないはずの心が、魂が、
……なぜか満たされていくのだから]

[きっと飽きもせず
様々な感情をこちらにぶつけてくることだろう。

こちらはそれに呆れもするし、
めんどくさがることも大いにある。

そんなこと初めからわかっているのにどうしてか
"離れる"という選択肢はなかったのは、―――…]


[月日は秋空の雲のように
どんどん流れていく
球追カットバースは勝利を重ね
今年もリーグ優勝街道を一直線に進んでいた

キャプテンから引っ張り打ちの極意について伝授された私は
攻撃面でチームの戦力として期待される日々

今年が始まる頃には
こうなるとは全く考えられないことだったのに
いつの間にやら、ここまで進んできたようだ

…流石にキャプテンを超えたなんてのはまだまだお世辞だろうとは思っているけれど]
 


[キャプテンは
「逃してはならない機会もある」
…と言っていたっけか

あの野球観戦のチケットを
先に他の人に渡したり金券ショップに売っていたら
今、こうとはなっていないかもしれない

そもそもチケットが当たっていなかったら
あの時買い物に行かなかったら
怖気付いてカットバースに飛び込まなかったら

あの野球観戦でみた
とある選手
がこの星に来たのは偶然だとか
とあるチームメイト
が肘を壊さずに投手をしていたらだとか
とある人と
キャプテン
が出会っていなかったらだとか
……そこまでは知らない話だけど


誰もが一度は考える
パラレルワールド説。もしもの話
考えるだけで、ifの自分に会えたりはしないから
ただの空想の域を出ないけれど

唯一確かな事は
旅行費の一部を受け持ってくれてまで
“逃してはならない機会”を掴んでくれた
キャプテンにはいつか、恩返しをしたい]
 


[彼が言ったプロ野球選手になったら払ってくれは
流石にただの、ちょっとした意地悪発言だとと思っていた
社会人野球のチームでも入れたらな…と、ぼんやり見据えていた未来の形

バイトと大学の授業に時間を追われつつ
野球の練習もちょこちょこ挟む…カットバースに入った当初から変わらないサイクルのまま過ごしていく

そう。今日も
バイトがあったから練習時間には途中参加で
急いで練習着に着替えてグラウンドに入って
そんなドタバタな日だった]
 


 [変わらぬものなんて何もない


           またひとつ、分岐点が
             近くに迫っているだなんて]*

 

― Epilogue とある日のカルデア ―

[1週間の休暇は終わり、
私たちのいつもの日常は帰ってきた

マスターについて特異点の修復に行ったり
今川さんのお部屋に首狩りボーナスを得にいったり
それ以外にもなんやかんや、あったけれど
平和で、幸せな日常を過ごしていた

そんなある日の、ことである

私は風呂上り後、日課のクガニに餌をやり
読書に勤しんでいた

今はハーブティーに纏わる本を幾つか買い漁っており
何時かまた、あの店に来店した時に
あの店員と会話したいものだと
それまでに、上手に淹れられるようにならねばと

まずは知識を蓄えねば。そう考えて
彼から聞いた話を記したメモと見比べながら
頁をめくっていたところ……]

 む、クガネか。
 かまわないよ。ハーブティーでも淹れるか?

 ……ん。

[常のような元気溌剌ではなく
照れつつの問いかけに、首を小さく傾げ
君の言葉を待っていたら……

差し出された箱が、あった

ありがとう、と告げ受け取ったもの
君の前で開ければ、銀色のデザートスプーンとフォークがあり

それは奇しくも、あの時喫茶店で見た
銀の輝きを、思い出させるものであった]


 美しいな。
 ……きっと、この匙やらで食べる甘味は

 きっと特別な、味がするだろう。
 ありがとうな、クガネ。

 ―――無論、だ。之からも
 君と共に。美味しいものを食べ、美しい景色を見て
 楽しく、日常を過ごしたいと思うよ。

[君が私の為に、作ってくれたことがうれしい
共に食卓を囲みたいと、言ってくれるのがうれしい

ああ、君は何度私を喜ばせるのだ]

[私たちは英霊だ。永遠に共にいられる保証はない
だが、それでも君となら。最後の時まで
きっと幸せ、なのだろう

―――願わくば、それが永遠に続けばよいのだが]



 さて、礼にもならないが。
 温かいハーブティーでも淹れようか

 折角なのだ、鶴姫が土産に買ってきた菓子が
 冷蔵庫にあったはずだから。
 それを茶受けに、之を早速使わせてもらって
 かまわないかね?


[尋ねつつ、銀の匙を持ちつつ 笑う
だから、ねぇ可愛い人]

[9月12日 無料トークアプリ GINE 「球追カットバース」グループライン]


セス<お疲れ様です。リーグ優勝が決まりそうなタイミングですが、個人面談を行おうと思います。練習中から練習終わりの時間を利用して、21日までに終わらせたいのでご協力お願いします。

[9月20日 GINE ラッセルとのトーク画面]

セス<お疲れ様です。練習のない日ですいませんが、明日どこかで個人面談をする時間は空いていますでしょうか?)


[練習も片付けも終わらせて
自転車に乗ってスーパーに寄って
テキトーなお惣菜を買って家に帰って食べる
この辺りまでは日常的な、風景だった

スマートなフォーンのロックを解除すれば
GINEのアイコンの上に赤い通知の印]


 個人面談かー…


[知らせは、球追カットバースのグループラインから

去年はあったっけ。あったとしても記憶がどうにも薄い
面談といっても派手に時間を取ったりはしないだろうから
忙しい私でも時間はなんとかなるか。と踏んで]
 


[そして約1週間後。20日
個人面談は21日までと聞いていたが一向に気配がない
…そろそろ流石に連絡が来るはずでは?

もしや私の存在を忘れられているのではと
疑問を持ち始めた頃に再び連絡はくる]


 もっと早く言ってくれたら良いのに…


[ちょっとした愚痴をこぼしながらも
指先を動かし返事を書いていく]


ラッセル< こんばんは。いつもお世話になっています。明日のお昼頃なら空いています)*
 

─ ホテル・スイート ─



  そうしたい気持ちは山々ですけど……
  もうこんな時間ですよ?

  それに、
  君と居るとつい気が抜けてしまいますから。


[ベッド傍の置時計を指差した。それなりの深夜だ。
早朝の散歩を予定しているとはとても思えないような。
この後すぐには寝付けないだろうことも、容易に想像が付いた。

ご所望のモーニングコールは出来ればしてやりたい。
が、彼の起床前に起きて二、三の仕事を片付けることさえ、明日の朝は出来るかどうか。

油断しきったベッド上の彼に覆い被されば、
素っ頓狂な声が上がった。
驚いた顔も可愛らしくて、思わず愉悦の笑みが零れてしまう。]


  ふふ。
  ……そんなに驚きました?


[伸ばした指先を耳元へと滑らせれば、早鐘を打つ彼の拍動が伝わってきた。
そのまま脈を辿って首筋を落ち、肩を過ぎ、胸元へ掌を置く。
より確かな鼓動を感じるために。]

[己の心臓もまた、同じくらいに激しく高鳴っていた。


 件の壁ドンで微破壊された元バイト先の壁だが、
 当時僕にまで疑いの目が向けられていたことを
 恐らく彼は知らない。

 店長視点、容疑者は二名。
 まして片方は素行の甚だ悪かった僕だ。

 どちらがより器物損壊の犯人らしいかと問われたなら、
 誰もが僕を指差しただろう。

 ヴィクのあの細い腕のどこにあんな力があったのか。
 僕自身、この目を疑ったのだから。

 「レーナルト先輩が壊しました。」
 正直に答えても、店長は全く信じてくれなかった。
 ヴィクも事情聴取は受けていたようだったけれど、
 彼の言い訳は恐らく、
 僕を庇う為の証言と思われていたと思う。



あの日の暴魔が、今ではこんなにも愛らしい表情を見せてくれているのだから。
鬼生何が起こるかわからないものだ。]


 
─ 夜明け前 ─



  ふぁあっ……?


[髪に触れた優しい熱と、肌をぬるりと滑ったやわらかな感触に驚いて目が覚めた。
こんな可愛らしい悪戯を仕掛けてくるのは、世界にただ一人しか居ない。]


  んむ……、
  ……ぁ、ヴィク…………?
  おはよう、の……


[愛する人に伸ばしたはずの手が、空を切ってシーツに落ちた。
重い瞼をこじ開けて声のする方に目をやれば、
プールサイドで双眼鏡片手にはしゃぐ姿。
黎明の光を受けて、金の髪が燦然と輝いている。

彼の方が先に起きていたのは予想外だった。
てっきりこちらが起こさねばならぬものと思っていたのに。

朝っぱらから元気だなぁ。
己の身体を確認してみれば、喪った箇所は元に戻り、どこに傷が与えられたかさえよく分からなくなって、むしろ肌つやが良くなってさえいた。……愛の成せる業だろうか。

身体を揺すられゆっくりとベッドから身を起こして、開けたローブを整える。]



  ……随分早起きですね…………、
  被告人ヴィクトル・レーナルト。
  ちゃんと起きられてえらい君には、
  こーしてあげます。

  僕直々に、羽交い締めの刑です。


[半分夢うつつ状態のままよろりと立ち上がると、
正面からぎゅうっと抱きついた。
見上げれば上機嫌な君が居て、頬に優しいキスが降ってくる。]


  …………っ、
  …………

  ……どうせならこっちの方がいいです。


[頬へと手を伸ばし踵を上げて、唇に唇を重ねる。
姫の胸に身を預けながら二度寝しそうになって、眠い目を擦った。

流れでぺたぺたとヴィクの身体を触診する。
昨夜確かに付けた傷痕も、奪い去った指先も、何も無かったかのように元通りになっていた。
むしろ、やはり彼も昨夜以上に血色良く見える。]

[ ── これからは、毎朝こんな風に一緒に居られるのだ。
想像するだけで頬が緩んでしまう。]


  では、
  ――向かいましょうか。


[手早く支度を済ませると、
甘い香りの漂う花畑へと、連れ立った。]*

― ラベンダー畑 ―


[風が吹く度、甘く柔らかい香りが鼻腔をくすぐる。
一面を埋め尽くす青紫は美しく、蝉の鳴き声さえ清々しい。

そして――
眠い。

立ったまま眠ってしまえそうに眠い。
鎮静作用のあるラベンダーといえば、最も有名なのは安眠効果。ただ眺めているだけでは美肌にはなれない。

設えられた散歩道を昨夜のように恋人繋ぎで歩きながら、自然と降りてきそうになる瞼を必死で持ち上げた。
ひんやりとした静謐な空気を肺いっぱいに吸い込み、目を醒まそうと試みる。少し肌寒い。

ヴィクは水を得た魚のように元気いっぱいだったから、多少足元が縺れても助けてくれただろう。

暫く歩くと、休憩所らしき小さな販売所に辿り着いた。]


  ラベンダーソフトクリームに、
  ラベンダーティーですって。
  ……流石にこの時間、まだ開いてないようですけど。

  僕、紅茶は
  ラベンダーミルクティーが一番好きなんです。
  ヴィクは何が好きですか?


[こんな他愛ない会話も、今後は気軽に直に交わせるのだろう。]

[大切なことも、くだらないことも。
共通する話題も、相対する話題も。
嬉しいことも楽しいことも、悩めることも辛いことも。

沢山話をしよう。
時には喧嘩したっていい。
君となら、嵐の夜も超えてゆける。


夢見心地で花畑を後にして、ホテルへと戻ろう。
朝食バイキングを目と舌で楽しんで、さて、お待ちかねの海へ行こうか。

小さいけれど憧れていたクルージング船に乗って、
シャチやイルカの尾を見て二人ではしゃいで。
岸へ戻り海水浴場に着けば、サマーハウスで海の幸を堪能して、日が落ちるまで浜辺で遊んで。

そうしてくたくたになって戻ってきた真珠貝ソファの上、
蒼の光揺らめくシャンデリアの元。
きっとまだ大海原へと想いを馳せている君に、声を掛ける。]


  ヴィク。
  左手、出して貰えませんか。

  ……失くしたら泣きますからね。


[この旅行中に渡そうと思って選んでおいた指輪。
インサイドストーンにアイスブルーのダイヤモンドがあしらわれたそれを、薬指に嵌めて、唇に永久の愛を誓った。]**

[待ち合わせ場所 集合時間30分前]

……どうするかな。本当のことを言うか、ごまかして消えるか。


[答えは、今日まで出ない。ただ、ある一人を除いて他のメンバーには真実を隠してある。一応他言無用とは言ってあるが、どこまで守られるだろうか]


……迷ってても、しょうがねえやな。表で真実を話す!


[運命のコインが掌へ。開けば、coinの面が]

[ぼくだって
ぼくの望みになんて気づいてやしなかった。


       
気づかないように蓋をしていた。


  一緒に
”生きたい”

         
”殺させたくない”


人間であろうとしたのは
  
ぼくがぼくでありたかっただけ。


悪魔がフリーレを殺す決意して
( 嗚呼その後、無茶なことをしようとして )

 ────少女はようやくそのことに気づいた。


願いを叶えて貰いたいなんて
出会った時から一度も思わなかったけど。]


   
ふーん、あっそ。



[言わないなら、いいや。
何だか色々吹っ切れて
普段よりも幾分穏やかな笑みを浮かべる。

───…それでも、まぁ
この先苦労をしないかどうかで言えば
自分で買った苦労だろう。


   
  
 ほら、

            
        いま
             も
  ]


  
 そう……。



[ この世界を守るだけに存在するものは
             容易に諦めて

新たな勇者《いけにえ》を求めるのみ

  転移が行使される刹那に
  精霊の王はフリーレの内から、離れた。]



( おまえの方から”行くぞ”なんて
        はじめて聞いた気がする )



[たったそれだけで少しはしゃいだ気持ちに、なった。]

[ 渡った世界でも少女は少女のままで。
  悪魔は悪魔のままで

  勿論この世界でも名前は違ったけれど
  青白き炎のごとく星があった。


   時折夜空を見上げては、指を差す。 ]


   あ、なあなあ!シリウス〜

         シリウス見つけた!

[よしこれで方向がわかると言えば
何に対してか呆れたような顔をされて

  むかつく顔するな!って
  いつものように理不尽に

        ぶつけたのは特大の火玉 ]


あはは! 
ざまーみろ!馬鹿ロキ!!



[ 少女が、従属のために真名を呼ぶことも
       
あれ
以来、生涯なかった。 ]**

……来たか。済まんな、急に呼び出してしまって。それじゃあ始めようか、個人面談を……


[待ち合わせ場所の河原にラッセルが現れたのを見て、微笑む。そして、2人が話す最後の時間が訪れた]


……皆には言ってあるが、俺は明日からチームを離れなければいけない。海外への、急な出張でな。


[他のメンバーに話した、偽りの理由を語る。嘘をついたセスは、ラッセルから顔をそらした。深緑色の髪を、秋めく風が揺らす]

……ってのは、嘘でな。実は俺、なんと言ったらいいのか……


[嘘を押し通そうとしたが、色々な意味で良心が傷み、本当のことを話し始める。そして、再びラッセルの方を向いた]


……なあラッセル。もし、俺がこの世界の人間ではないとしたら。俺が元の世界に戻らなくちゃならないとしたら……


[押し殺すように、あるいは絞り出すように語りだす。それでも、今度はラッセルから視線を逸らさない]

ほら、これが証拠さ。……って、こんなのが証拠にはならないと思うけどな。


[あの日、ドアに差し込まれていた手紙を見せた。ラッセルがそれを読んでいる間、足元の石を川に向かって放り投げる]


……これから俺は、元の世界に帰る。もう、カットバースの一員ではいられないんだ。


[足元の石が、水面に波紋をたてたのを眺めながら、少しだけ悲しそうに、そう呟く]

俺がやっていた監督と代表者業務は、マナに引き継ぐことにした。あぁ、本人の了解は得ているよ。……で、キャプテンなんだが……


[持っていたカバンから、何かを取り出す。それはいつもセスがつけていた、キャプテンマーク付きの背番号「10」のユニフォーム]


……お前が、引き継いでくれ。今のお前なら、周りのみんなも認めてくれると思う。だから、お願いだ。


[ユニフォームをラッセルに押し付けて、深々と頭を下げる。果たして、彼女はこの提案を受けてくれるだろうか]

……それじゃあ、これでサヨナラだ。元気でな。お前なら、きっと……


[何かを言いかけて、やめる。ここから先の言葉は、言う必要がない気がした]


じゃあな!カットバースを頼むぞ!……あっ、そうだ!もし、俺のそっくりさんがチームを見に来たら、是非歓迎してやってくれ!


[別れに涙は要らない。そう信じるセスは、ラッセルに背中を向け涙を流すことなく、その場を去った*]



 (  背に庇われるのはめっぽう苦手で、
    目くらましの術でもかけられたみたいに
    背筋が冷える心地さえしたけれど。
 
      …… 大丈夫、あの時とは違うから  )


 



[ ──────
ぱッ、ちん!


  独特の音を立てて、その姿は掻き消える。
  カラマツの杖が二人をどこへ導いたか、
  それは僕の知るところじゃあない
 
  記憶についてちょっとした融通がきいても、
  これ以上のデバガメめいた真似も、野暮だから。 ]*

 


 
─ ラベンダー畑 ─


[ 準備を済ませ花畑へと。
 男二人で見に行く場所としてはやや浮いてはいるが、
 早朝で人影もまばらな故、それ程は気にならなかった。
 逆に、女性観光客達からは何やら噂されているのが聞こえる。
 その内容は、かつてのカフェでよく耳にしたような内容で、
 当時を思い出し笑みが漏れた。

 手を繋ぎ青紫の世界へと辿り着く。
 早朝の風は一際快適であり、ラベンダーの香りも手伝い
 一層心地良い。]


  ……おい、大丈夫か? 寒いのか?


[ 時折がたり、とふらつきを見せる様子に立ち止まり、
 バランスを崩しそうになれば腕を握り掬い上げて。
 大丈夫か、と目線を合わせ顔を覗き込む。

 昨夜の影響だろうか。互いに本日の睡眠時間は長く無い。
 既に傷、損傷箇所はほぼ見当たらなくなったとはいえ、
 久々の反動は大きかった。
 更に夜を共に過ごしたとあらば、多少のふらつきも致し方ない。

 寒そうならば、ベージュの薄手のジャケットを肩に掛けて。
 サイズ的に合わずぶかぶかに見えるが、俺から見れば
 その姿すらも愛らしい。]

 
 開いてないのか、残念。だが折角だから休憩するか。

[ 丁度小さな販売所が見えたので、営業前だから丁度良いと
 椅子に座れと促して。
 座ったことを確認すれば、隣に座り、手を重ね暖めた。]

   
  ラベンダーミルクティーか。何だか美味そうだな。
  俺? 俺の推しは
エクストラバニラホイップアップルアプリコットダージリン



[ カフェバイト時代、ダブルryが原材料品切れにつき
 飲めなくなってしまった俺が嘆き、代わりに考案した品の名を出す。

 同時に、当時の記憶がふわりと蘇える。 

 「二人は仲が良い」と客に嬉しそうに言われ、
 苛立ちを覚えていた時のこと。

 距離が縮まってから、ダブルry勧めたら酷い顔になったこと。

 何時の間にか店の看板コンビになっていたた俺達の
 撮影用はめ込みボードが出来たという、前代未聞の出来事に
 遭遇したこと。

 ──全てが懐かしい。罵倒し合ったことも。
 早く辞めてくれないかと内心思っていたことも。
 当時の俺が、数年後こんな風になると聞いたら
 絶対に信じないだろう。]

 
[ その後体力は順調に回復し、今日も二人で楽しい時を過ごした。
 かつて乗ろうと約束した、クルージング船の乗船が叶った時。
 出発前から見たいと言っていた、イルカを発見した時の
 リーのはしゃぐ姿を見ると、思わず俺が保護者のような気分になり
 「あまり乗り出すなよ」と頭を掴んで引き戻したり。


 
──ああ、ここに来れて良かったな、と。
   俺が見たかったもの。欲しかったものは
   リーの嬉しそうな、幸せそうな姿なのだから。
   ずっと、見ていられる。

   そして、その隣に俺が居るのだから。



 今日も楽しい一日は、あっという間に過ぎ去っていく。
 旅程の残数が少なくなればなるほど、寂しさを感じてしまうのだが。
 ──同時に、引越しの日は着実に近付いている。]
 

 
[ 再び部屋に戻り、先程の興奮覚めやらぬまま
 外の景色をぼうっと眺めていた時。]

 
  ああ、構わないが。

  …… ……これは。

[ 声を掛けられ、言葉のまま左手を差し出す。
 昨夜糧となった二本の指は、既に以前と変わらぬ状態に戻り、
 色艶を取り戻していた。
 

  
  左手を出して欲しい。
  失くしたら泣く。

  この二つの言葉、昨日の誓い。欲した二本の指。


  
──── 結論に辿り着くのは、容易だった。]

 

 
[ アイスブルーのダイヤモンドの指輪をまじまじと見つめる。
 結婚指輪は給料何ヶ月分とよく言うが、
 改めてリーの経済力を思い知る。
 流石二十代にして都会の高級タワマンに一人暮らしする男。

 以前から結婚はとと友人に茶化されていたことはあったが
 はぐらかしていたのは、俺がもう少し甲斐性をつけてから、と
 密かに思っていたのはあった。
 確かに以前に比べ主演も何度か経験させて貰い、
 テレビや雑誌等にも出させてもらえるようになった。
 それでも、リーの隣に立っても良いのか、並べるのか、と
 いう思いは常に残っていた。

 それでも、昨日星の下で永遠の愛を誓ったのは。

 ──やはり、俺はリーのことが本当に、本当に大好きだから。

 絶対に離れて欲しくない。ずっと俺と共に歩んでいきたい。
 生涯を共にしたい。
 だから上手く理由をつけて、リーの家に押しかけることにした。

 俺のちっぽけなプライドなんて数年前に消え去っている。
 ただの弱い小者だ。だからこそ、プライドか愛
 どちらを天秤に掛けるかと言われれば、答えは言うまでもない。]
 

 
  ありがとう……。
  ……今日ほど嬉しい日は無い……。
  何だか、信じられなくて……でも、本当にうれ……。


[ 指輪を指に嵌め込まれる際の擽ったさに、あっ、と一瞬
 声が漏れたりもしたが。
 こんな時に気の利いた言葉が出てこない自分がもどかしい。
 普段ならば甘い言葉もすらすらと出て来るのに。
 もどかしさを抱えている間に無事、左手の薬指に
 指輪が嵌め込まれ、新しい指と輝く指輪をじっと見ていた時。]


  
……ん、っ……。



[ 唇と唇が触れ合った。
 一見普段と同じ、でも違う特別なキス。
 
 自然と腕を背に回す。
 言葉が上手く紡げないのならば、思いを伝えれば良い。
 
 最初は背を、髪を労わるように撫で下ろし。
 徐々に力を混めていく。
 離さない、これが俺の思いの強さだとばかりに。]
 

   
  ……無くすはずないだろ。
    最高の、最愛のプレゼントをさ……。
 
  リー、愛してる。これからも、ずっと一緒だから。
  改めて……これからもよろしくな。


[ 腕の中の愛しい、かけがえのない人を強く抱き締めながら。
 この時が夢では無いのだろうか、とは未だに思う。

 しかし、腕の中の温もりは何時までも消えること無く。
 その後も、愛する人の存在を確かめ合い続けていた。

 たとえこれが夢だとしても。
 目が覚めたらこの夢を現実にすれば良いだけのこと。

 俺達なら、それをきっと叶えることが出来るだろうから──。]*
 


[待ち合わせの場所は河原だった
何故河原なのかは分からないが、彼にとっては何かある場所なのかもしれない

遠くで、キャッチボールを楽しむ子供達の声が聞こえる中
個人面談は始まった]


 海外への出張?
 社会人の人って大変ですね…


[セスキャプテンは社会人だ
会社でそう言われたなら従うしかないのだろう
…と、素直に受け取ろうとして
嘘、という事を知る]
 



 話しにくい事なら無理しなくていいですよ
 嘘だってみんなには言わないですから


[自分でもわかるぐらい明らかに何か大きなものを抱えているようだった
こちらを見つめる目線を返す。心配そうにキャプテンの顔を覗き込む。

別の世界から来た話は…理解できなかった
したくなかったのもあったのかもしれない
それでも嘘だとは思えなかった

見せられた手紙が、確信を後押しする]
 



 いじげん、てんい、そうち…


[やっぱり意味わかんない
裏で何が起こってるかも知らない]


 ……よくわからないですが
 とにかくもう、キャプテンとはお別れって事ですよね


[悲しいとかそんな感情が来る前に
何も考えられなかった

そんなことになるなんて、昨日まで知らなかった
どうして最後にいうぐらいなら、先に教えておいてくれなかったのか
言っても仕方のない言葉が、漏れる]
 



 私が、キャプテン……


[あまりの怒涛の流れに理解が追いついてない頭で
ぼんやりと見つめるのはCマークのついたユニフォーム]


 ……わかりました。”預かります”


[押し付けられたユニフォームを丁寧に畳んで腕に引っ掛けた

言葉を選んだことは、バレてしまっているだろうか]
 



 
( ごめんなさい
 本当は引き受けたいけれど
    私には…時間もないし
    人を率いる才能も勇気も無い


       それに目指すべきものが、今見えたんです
       不器用な私には
       今はそれを目指すことしかできないから…… )


 


[去っていく姿に
さようならと無理矢理絞り出したが
ちゃんと声になってくれただろうか

聞きたかった言葉の続きも聞けないまま
何処かに行ってしまった姿は直視できない


抱えていたユニフォームの裾を濡らそうとしたものは
秋風に乗って飛んで行ってしまった]*
 

[室内練習場]

……以上が、キャプテンからのメッセージです。メッセージに従い、監督と代表者は私が引き継ぎます。キャプテンは……今のところ、空位とします。


[セスから預かっていたビデオテープを再生し、真実を知らされなかったメンバーに改めて真実を伝えた。静まり返るメンバーに]


セスさんがいなくても、私達は頑張らなくていけません。今こそ一致団結し、元の世界に帰ったセスさんに、「貴方がいなくても大丈夫」、そう言えるように勝ち抜いていきましょう!!

[そう、セス譲りの熱意を交えた甲斐もあって、沈んでいたメンバーの気分が再び高揚する。その様子を笑顔で見つめて、次の言葉を発する]


さて、今日は我がカットバースへの入団を検討されている方がいますので、皆さんにご紹介します。……どうぞ、入ってください!


[そう言い終えたのを聞いて、はいってきたのは……*]

[ここで待つように、と監督さんに言われ、しばらく。湿っぽい空気になったかと思いきや、すぐに熱気あふれる空気に変わり、ドアの外のセスは震えることしかできなかった]


大丈夫なんだよな……あー、帰りたい……
でも、ここで逃げたらダメだよな。色んな人にも世話になったし……


[そんな考え事をしていると、監督さんが入ってきてと言ったのが聞こえる。その声に、セスは意を決してドアノブを掴み]


よし、行くぞ……!


[回して、引く]

皆様初めまして!体験入団のセス・グライシンガーと申します!



ポジションは、バッテリー以外どこでも守れます!あまり上手くありませんが何卒宜しくお願い致します!



[深々と首を垂れたセスに聞こえたのは、驚愕の声か、歓迎の声か、それとも……*]

 
 
─ 数週間後 ─


[ 引越の日が来た。
 逃げるように数年足らず住んでいたあばら家を離れ
 リーの家(高級タワマン)へ荷物ともども転がり込むことに。
 リーの助言(小言?)もあり、荷物は大分減らし、大量に処分した。

 引越し当日も手伝って貰い、搬入だけなら午前中でさっと終了。
 事前にリーが家の受け入れ態勢を準備してくれていたのもあったが。
 さすがにきめ細やかさには定評がある。]
  


  な、新しい家、今度一緒に探しにいくか。
   

[ 荷物を開けていた休憩中。兼ねてからお気に入りだった
 ソファーに身体を投げ出し、リーに尋ねる。
 とても今日越してきたとは思えない住人っぷりである。

 
 そもそも、俺は『家が見つかるまでの居候』という名目で
 越してきたのである。
 見つかれば、自動的に家を出ることになるのだが。


      ──既に、その必要は無くなっているようなもの。]

 

 
  ああ、でも俺もリーも全国駆け回る仕事だから、
  別荘があれば楽かもしれないな。
  その際にまた色々な場所を楽しめるだろうから。

  それだけじゃない。
  前言ってたグランピングも、都合のつきそうな日教えてくれな。


[ ただでさえ多忙の二人、満足に片付けをする時間も無く、
 さらに新婚生活とあって大忙し。]
 

 
  あ、それと。
  左手出してくれるか?


[ 此方に来いよ、と指輪が光る左手を振り
 再び椅子の上から呼びつける。
 
 来てくれたならば白く細い指を幾度か撫でた後、
 インサイドストーンにスタールビーのダイヤモンドが
 あしらわれた指輪を、丁寧に嵌めこんだ。]


  ほら、これと対になってるように見えるだろ?


[ リーは既に自分用の結婚指輪を用意していたかもしれない。
 いや、している可能性が高いだろう。
 
 だとしても、どうしても贈りたかった。
 結婚指輪が余りにも嬉しかったから。

 何なら普段使い用で使ってくれれば良い。
 勿論使ってくれれば嬉しいに越したことは無いのだが。

 ──『ヴィクとリー』の日々は、これからも、ずっと続く。]*
 


[3年後]

[あの時スタンドから見ていた景色は
今ではグラウンドから見上げるものに変わった

今日の試合は交流戦。あの時と同じスタジアムにて。
初めて野球観戦をした日を思い出す
教えてもらった引っ張り打ちを武器に私はここまでやってきていた]
 



[あなたが帰ると知った日


私は、あなたの夢を叶える決意をしたんだ
それがきっと、あの日の1番のお返しになる
]

 


[そしてあの地で偶然にも打った右方向への初本塁打が決勝打になって
チームはその日勝ち星を掴んだ

帰ってきたホームランボールを手に
ヒーローインタビューで聞かれた事
「このホームランボールは誰に渡したいですか?」

定番なら親、あたりだろうか
両親に渡したい気持ちが湧き上がるよりも先
何故だか私はこの問いに即答していた]


 私の、恩師の人に渡したいです


[ナイター球場のライトと、カメラのシャッターの光が眩しい]
 


[自分のサインを入れたプロ初のホームランボール

キミは私の言う
あの時を知らないかもしれない
だけどどうしても渡したかった

グラウンドの中を駆け抜ける
深い緑色の髪の後ろ姿を見つけて、笑顔で声をかける]
 




  待たせてごめんね
     ……これ、”あの時”のお返し。**


 

― それから数週間後 ―


[愛する人に生涯を誓う指輪を贈り、
望み通りの反応を得た旅行から数週間。
予定通り、ヴィクが家に越してきた。

毎日「行ってきます」と「おかえりなさい」を言い合い、
同じベッドで眠りに就ける、夢のような日々。
ヴィクの嬉しそうな、幸せそうな姿を眺める度に、こちらまで幸せな気持ちになる。

自分一人の家でなくなったのを機に、二人用の大きなベッドを購入した。
旅先で共に過ごしたキングサイズのベッドには及ばずとも、それなりに質の良いダブルベッドだ。

今朝も彼は、未だ夢の世界の住人となっている。
相変わらず多忙な日々を送っているから、疲れが溜まっていたのだろう。

隣に寝転んだまま愛らしい寝顔を眺め、
額に掛かった前髪を払った。

額へと軽く口付けを落として、
起きる様子がなければ、耳元へと囁き掛ける。]




  ――ヴィク、朝ですよ。
  起きてください。

  起きないと――ーー…………


  食べちゃいますよ?


[スタールビーのダイアモンドがあしらわれた指輪を嵌め込んだ左手を、そっと彼の左手へと重ねて。
指を絡めて、ぎゅっと握り込む。

――さぁ、起きてください。
『ヴィクとリー』の為の、新しい家を探しに行こう。]**

 




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