267 冬暁、待宵の月を結ぶ
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| 【人】
終わりも冬、温もりを風に攫われる季節
────そして、別れの季節。
(0) 2024/06/13(Thu) 21:18:34 |
[ コンビニ限定のミルクアイス。
普段のミルク味だけじゃなくて
メロン味も出てたから別々のを買って
分け合う時間。
彼氏彼女ならこうするって役割を
二人で考えてなぞっていく時間が
楽しくて、幸せで。
二人で作り上げた甘い時間。
この時間は嫌いじゃない。 ]
[ ラーメン好きなんだ?
今度あのお店行こうよ、
あそこの塩ラーメン本当に美味しいから、なんて
他愛ない話をして、二人きりの時間に浸る。
こんなふうにのんびりするのもいいね、
今度は私の部屋に来る?なんて
軽い気持ちで誘ったりもして。 ]
[ お互いの体温が感じられる距離、
誰にも見せたことのない無防備な笑顔。
怖さなんてあるはずがなかった。
私を傷つけるようなことはしない
それがたとえ義務感からだとしても
大切にしてくれてる君だから信じられる。 ]
[ 初めて名前を呼ばれた、
それに反応する前に唇に触れる柔らかな感触。
驚きに目を見開いて、
それからゆっくり目を閉じて受け入れた。
胸の鼓動が聞こえてしまいそう、
どうしてこんなにドキドキするんだろう。 ]
[ 長いような、短い時間。
エアコンが効いているはずなのに
心なしか体温が上がったような気さえして
でも、君の言葉で冷水を浴びせられたかのように
すぅっと現実に引き戻される。 ]
……なんで謝るの?
[ キスされて嫌だ、なんて思ってないのに。
なんでだろう、謝られただけで
心が騒めいて仕方ない。 ]
恋人、なんだからこれくらい普通でしょ?
[ 慌てたように離れる君を追って距離を詰めて ]
[ 初めて、名前を呼んだ。
今まで名字でさえ、出来る限り呼ばずに
ずっと君、って言って来たのに。
何処かでだめだって思いながら、
もう、止まれなくて。 ]
[ 曖昧な線引きを踏み越えて、
君に抱きつくと、胸元に顔を埋めたんだ。 ]*
[ 溶けていくアイスクリーム
分け合うほど口の中にはメロンとバニラが混ざって。
お互い縁がなさそうに見えて
いざ食べ合わせると相性がいいのは
まるで僕達のようだって。-
何気ない会話の中に
勝手に自分たちを照らし合わせて微笑ましくなる。
幸阪の部屋に行ってみたいと頷いたのだって、
ただ幸阪のことを知りたくて。
なんの用事がなくても
こうして話せるということが
当たり前じゃないことを知っているから
幸阪じゃなければ
こんなに話が弾むこともなかったはずだ。 ]
[ 幸阪にだってバレていたはずだ。
幸阪にその素質があったと思っていたとはいえ
僕達の関係が始まったその時は
幸阪でなければダメな理由なんてなかった。
僕がたまたま最初に出会った彼女が
たまたま僕と似た気持ちを抱えていたから。
僕を受け入れてくれていたから。
それさえ同じだったら。
幸阪ではない誰かだって不都合はなかったんだ。 ]
[ それでよかったんだ。
だって僕達に未来はなくて
僕達はいつか、離れ離れになるから。
なのに、なのに──。 ]
[ これ以上は役割で片付けられる域を超えている。
二人の心を交ぜ合わせた時、
二人とも幸せだったとしても
あるいは二人とも不幸になってしまったとしても
痛みを背負うのは幸阪の方だ。
ここから先は…………。 ]
[ 弱腰が作り出す見せかけの理性。
誠意という名の謝罪に隠れた、逃げ。
そんなものはまるで無意味なんだと
幸阪の言葉が蔦のように絡みつく。
この先の自傷行為は
役割の一環なんじゃないかって。
僕の心の逃げ道が示されて。
それでも僕の心を締め付けるのは
赦しではなく、彼女の懇願。
してもいい、じゃなくて。
したい、という声。胸元に顔を埋める仕草。
まるで、行かないでと、言われた気がして。
]
[ 僕は幸阪結月を手折る。
待宵草の芳醇な香りに酔いしれ、
引き寄せられる獣のように。
他ならぬ君だからいいんだって。
他の誰かの物語では大団円になるはずの
それでいて僕達二人にとって、
最も残酷な愛の調べを奏でながら。 ]**
|
[ 気づけばあっという間に冬になった。
あと数ヶ月もしたら 幸阪と出会って一年を迎える頃。
秋のまだ服装に迷う時期を超えて もうすっかりとコートまで羽織る季節。
僕はといえば いつものように幸阪に会えば ご機嫌な様子になるのは相変わらず。
ひとつ変わったことがあるとすれば 付き合い始めた頃より その距離がぐっと縮まったことくらい。 ]
(1) 2024/06/14(Fri) 23:50:58 |
[ 蝉が鳴く昼下がり
近くの小学校が午後の授業の予鈴を鳴らす中、
僕は彼女との秘め事に耽ける。
不安に思わせたくないと丁寧に愛でる傍らで
大切な人を乱してしまいたい願望に挟まれて
葛藤すればするほど、心地良かった。
お姫様みたいに抱き上げ
ベッドに寝かせて、何度も口付けをするのは
溢れた愛情と独占欲の裏返しだ。
制服のリボンのフックを取り
ひとつひとつボタンを外すと
その度に真っ白な肌を覗かせる。
初めて見た女の子の身体は
言葉が出ないほど美しくて
しかもその相手が結月なんだって思うと
僕はもう止まれなくなってしまった。 ]
|
おはよ、幸阪
[ 毎日のように交した挨拶 夏休み明け、僕は幸阪に言ったんだ。
幸阪の家に迎えに行くから よかったら毎朝一緒に学校に行こう。 僕がそうしたいんだ、って。
幸阪が僕のわがままを聞いてくれていたら 今日の挨拶はきっと彼女の家の前になるはずだ。 ]
(2) 2024/06/14(Fri) 23:52:08 |
| [ いつものように手を繋ぐ。
でもいつもよりももっと近く、 指先同士を絡めると、そのままぎゅっと握る。 ]
(3) 2024/06/14(Fri) 23:54:40 |
[ 指先で、唇で、肌で、
感じるのはかけがえのない恋人の味。
まだ花開く前の美しい蕾
時間をかけて待宵草の花を開けば
頭がその香りに酔ってくらりとする。
すぐに自分の手で花弁を散らすのに
まるで花の蜜を舐めるように
楽器を奏でるような烈愛は
結月を蕩けさせるまで続けて。 ]
| (4) 2024/06/14(Fri) 23:57:10 |
| [ いつもなら楽しい登校の時間 でも僕は彼女の前だというのに 浮かない顔をしてしまう。 これでは幸阪に気を遣わせてしまうかも。 でも、あの日の反省を踏まえて 幸阪にはハグ以上のことはしていないし 名前だって呼ばないように気をつけている。
だから、これは、言わなきゃいけないんだ。 ] (5) 2024/06/14(Fri) 23:57:58 |
[ いつも寝るだけのベッドが
想いの丈を語るように大きく鳴く。
飲まれればもう引き返せない。
沼にハマっていくみたいに
奥底で彼女と繋がる度に
彼女の中に感情まで引っ張られそう。
シワになるのも構わず脱ぎ捨てられた夏服に、
すっかり汗をかいたコップは
中の氷が今にも消え入りそうで。
それでも僕は
結月を求めるのをやめない。
だって僕は結月のことを… ]
結月のこと
僕でいっぱいにしたい。
僕のことしか考えられないようにしたい。
|
ねぇ、幸阪
あのさ、僕……
(6) 2024/06/15(Sat) 0:00:05 |
結月は独りじゃない。
世界に置いていっても
僕は置いていったりしないから。
僕だけは、結月の味方…だから。
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転校が、決まったんだ。*
(7) 2024/06/15(Sat) 0:02:05 |
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