【人】 法の下に イレネオ>>102 ダヴィード あなたがそんな風に気合を入れているのはつゆ知らず。これは鈍感な、ある意味ではお気楽な男だ。 「ないよ。そっちは?」 そして、そのままの軽やかさで世間話を。 これまでもゆっくり、ゆったり、のんびりと重ねてきたそれをもう一層と積み上げる。答えられずとも、はぐらかされても構わないくらいの浅い話。 貴方がどうであれ、この男は成人らしく大食らいで、かといって絶食にも耐えうる妙な対応力を持ち、辛いものも食べれば甘いものも嫌いではない────そんな便利な体質をしていた。貴方が何を好んだとしても、同行人として不自由ないだろう。 「なるほど。いいな、聞いているだけで楽しそうだ。」 「今日は外でも過ごしやすいしな。」 商店街の方に向けられた瞳からは、やはり厳しさは失われているのだろう。そのまま、滑るように貴方に注がれた視線からも。 可愛らしく、年下らしく振る舞う貴方にこちらは気を良くしている。年若い者を甘やかしたがるのは年上の性だった。職場では若者に分類されるから、なおさら。 「ピクニックは好きか?」 自分は縁がないけど、と暗に含ませる。これだって世間話だ。 #街中 (107) 2023/09/09(Sat) 22:41:33 |