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【人】 XI『正義』 マドカ[それこそ、僕に与えられた罰なのだと。 焼け落ちた家を呆然と眺め、 ただただ座り込んでいたあの日。 詳しいことは覚えていない。 ただ、焼けた木材の、 どこか甘いような酸っぱいような、 独特な香りに包まれて。 腕の中で冷たくなった小さな体の、 くったりとした重さだけを、 今日も今も覚えている。] (195) だいち 2022/12/11(Sun) 23:18:33 |
【人】 XI『正義』 マドカ[忘れようはずもない。 僕の背中に刻まれた、焼けた十字は 生涯決して消えることはない。 ちりちり、ひりひり。 今日も、今も、いつまでも。] (196) だいち 2022/12/11(Sun) 23:18:45 |
【人】 XI『正義』 マドカ[朝起きて、最初に鏡を見る。 鎖骨の間に刻まれた、 Ω の形をした『咎』を、指先でなぞる。それから、鏡の中の、同じ場所を。] “ お前は誰だ? ” [当たり前だが、返事が返ってきたことはない。 遠い遠い過去の、いつかの『自分』が犯した罪を、 今日も僕は贖い続けなければならない。 それを怠れば、早晩にしてきっと………僕は。また。] (197) だいち 2022/12/11(Sun) 23:19:06 |
【人】 XI『正義』 マドカもう、何も失いたくない、 [生まれた環境に甘え、のうのうと過ごしていた過去。 他の『証』持つ子供たちのような試練ひとつ与えられず、 まるで『人間』の子供たちのように 穏やかに日々を暮らした。 結果はどうだ。 15のある日、『不当に』与えられていた全てを、 紅蓮の焔に奪われた。 身代わりみたいにして、僕の家族は、 隣人は、あの子は、 みんな揃って命を落とした。 彼らにとっては理不尽に。 僕にとっては、『分相応に』。 不相応な生き方をすれば、 差し出さなかった以上のものを、奪われる。] (198) だいち 2022/12/11(Sun) 23:19:20 |
【人】 XI『正義』 マドカ[『教義』>>n7>>n8については、当時からも知っていた。 けれど、あまり気にしたこともなかった。 今ではそれが、『真理』だと分かる。 誰が何と言おうとも。 正しく『試練』を乗り越えてこそ、『証』持つ子供たちは 『人間』並の幸せを願えるのだと。 そうでなければ『証』持つ僕たちは、 幸せなど願えないのだと、 それこそが、『平等』なのだと、そう理解した。 どうして僕たちだけが、って、 理不尽を呪う感情は、随分前に殺した。 でも、あの頃……そう。 『彼』が僕をここ洋館へと連れてきて間もない頃。 ほんの少し、わずかに零したことがある。>>4] (200) だいち 2022/12/11(Sun) 23:19:53 |
【人】 XI『正義』 マドカこの世界は、理不尽だらけだと思う。 僕は、時々『平等』が分からなくなる。 本当の平等って、難しいよね。 だったら、いっそ…… (201) だいち 2022/12/11(Sun) 23:20:13 |
【人】 XI『正義』 マドカ[……そんな会話をした『世界』も、 あの日からそう時を置かずして姿を消してしまった。 ちょっと散歩に、くらいな調子で、 出かけたのを最後にして。 それももしかしたら、僕のせい?と、 泣くこともできず、胸を痛める。 涙を見せられたのは、後にも先にも 『世界』の証持つ彼にだけ。 恐ろしくて恐ろしくて、 自罰を重ねることしかできなくて。 わかりやすく痛みを請け負うことにして僕は、 故郷を焼いた焔で焼けただれた背中をそのままに、 だから未だにこの背がじくじく傷むのだ。] (203) だいち 2022/12/11(Sun) 23:21:06 |
【人】 XI『正義』 マドカ―― 3年前 ―― [洋館に招かれて以来、 代わり映えのない毎日を過ごしていた。 くるくると回る円環のごとく。 僕はいつだって、何者にも変わることができず、 ]ただただ『正しい』と信じる場所に 留まる事しかできない。 え……… 僕が、その……お迎えに? [洋館に集められた証持つ者が、 別の証を持つ者を迎えに行くことがあるのは、 知っていた。 なんなら僕自身、『世界』の証を持つ彼に迎えられたのだ。 けれど……僕にその役目が回ってくるとは思っていなくて。 驚いた、のが正直な気持ちだった。] (204) だいち 2022/12/11(Sun) 23:21:19 |
【人】 XI『正義』 マドカ[けれど、迎えに行った先で、 君が泣いているのを見てしまったから。>>61 僕はその姿を見た瞬間、 居てもたってもいられなくなった。] 泣かないで、 [泣いている子供を脅かさないように、 気を付けてはいたものの。 僕は足早に君に近づいて、 泣きじゃくる君の傍に膝をつく。 そして、迷うことなく君を抱きしめたんだ。] (205) だいち 2022/12/11(Sun) 23:21:29 |
【人】 XI『正義』 マドカ[あぁ、良かった。 君が、深い傷を負っていてよかった。 既に試練を乗り越えた君のことを、 僕は手放しに慰めてあげられる。] (206) だいち 2022/12/11(Sun) 23:21:47 |
【人】 XI『正義』 マドカ[記憶にはなくても、魂が覚えている。 『君』は『僕』にとって、きっと大切なひと。 君の寂しい泣き声が、僕をここまで導いた。 君が呼んでくれたから、僕は……] 迎えに来たよ。 『運命の輪』 。** (207) だいち 2022/12/11(Sun) 23:22:12 |
XI『正義』 マドカは、メモを貼った。 (a36) だいち 2022/12/11(Sun) 23:37:18 |
【独】 XI『正義』 マドカ/* 縁故メモ フォルス:初対面で顔見て吐く シャボン玉の思い出(あの子と遊んだ) チェレスタ:旅芸人のルーツが島群ならきっと芸に覚えがあるでしょう>>42歌参加する? シャルレ―ヌ:>>42参加するなら一緒になる シン:オートで負縁故対象 平穏に生きてきた人は戒めないと アリア:>>42参加するならここも一緒 女の子ばっかりかぁ シトラ:>>42参加するならry 女の子ばっかりだな、歌はあきらめよう ユグ:オートで慈愛の対象 過去が壮絶 (-48) だいち 2022/12/12(Mon) 0:20:24 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 3年前 ── [抱きしめた子供は、 『会いたかった』とまた泣いた。>>205] うん。……うん。 僕も、僕も君に逢いたかった。 [腕の中に収まった身体は、暖かい。 傷を負っていても、暖かかった。 返されぬ抱擁が、君のこれまでを物語る。 縋り付くことさえできぬその指先は、 きっと誰の袖を掴むことすら、 許されなかったのだろう。 『人間』の子供なら、 幼い時分に必ず親から学ぶようなことなのに。] (330) だいち 2022/12/12(Mon) 19:51:02 |
【人】 XI『正義』 マドカ[寒い夜、温もりを求めて手を伸ばせば、 掬い上げるように抱き上げられたことも。 暗い夜道で心細さに指を伸ばしたら、 その小さな手を包むように握られたことも。 きっと、暖かい布団に包まって、 優しい子守唄で微睡に誘われたことも。 ひとつとして、経験がないのだ。 求めれば与えられる、無償の愛など、 思いつきもしないのだ。 嗚呼本当に。 君はどこまでも可哀想で、 可愛い子だった。] (331) だいち 2022/12/12(Mon) 19:51:18 |
【人】 XI『正義』 マドカ 一緒に帰ろう。 君と僕の、いるべきところに。 [僕は、小柄な君を抱き上げた。 君くらいの歳の子なら、 子供扱いを嫌がられるのが普通だ。 けれど僕は、どうしても君に、 そうしてあげたかった。 僕がかつて家族から受け取っていたものを、 君にもあげたかった。 だって、僕だけが享受するなんてそんなの、 平等じゃないでしょう?] (332) だいち 2022/12/12(Mon) 19:51:42 |
【人】 XI『正義』 マドカ 暖かいお家があるよ。 お布団もあるよ。 おいしいご飯もあるよ。 誰も君を殴ったりしないよ。 怪我の治療をしよう。 一人じゃないよ。 僕たちは…… 証を持つ僕たちは。 みんなでひと所に集うべきなんだ。 [僕の言葉に君は、どんな顔をしたろうか。 君の表情が一つでも変わったならば、 僕はそれを嬉しく思ったことだろう。 そして洋館へとたどり着いた後、 止まることなくくるくると変化する君を、 僕はきっと愛してやまない。*] (333) だいち 2022/12/12(Mon) 19:51:59 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 現在 ── [廊下から、楽しげな声がする。 あの子の誕生日まで、あと1週間。 あの子も、可哀想な過去を持つ子だった。] ならば、お誕生日くらい、 楽しんでもいいでしょう? [何事にも、バランスが重要だ。 不幸を積み重ねてきたならば、 同じだけの幸せを。 幸せだけではいけない。 でも、不幸だけでもいけない。] (334) だいち 2022/12/12(Mon) 19:52:29 |
【人】 XI『正義』 マドカあの子は、喜んでくれるだろうか? [机の上に置かれた、彩色前の張子を眺める。 故郷では、子供のおもちゃといえば、 こういった張子のものが多く、 年下の子供達のために、 しばしばこの手で作ってやったものだった。 作業自体は、慣れて仕舞えばそう難しくない。 けれど手製の張子には、 お守りのような意味があるらしい。 そうでなくても、子供というのは 小さくて鮮やかなものが好きだ…たぶん。] (335) だいち 2022/12/12(Mon) 19:52:57 |
【人】 XI『正義』 マドカはぁ……行かなきゃなぁ…… [まだ真っ白な張子の人形を眺めて、 深い深いため息ひとつ。 どういった流通経路を持っているのか。 あの人は、頼めば大体のものを入手してくれる。 例えば、島郡の伝統的な塗料とかも。 しゃぼん玉があるんだ、きっとそう 頼んでおいた癖、僕は彼の売店へ 受け取りに行くのに、どうにも気が進まない。] (336) だいち 2022/12/12(Mon) 19:53:26 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 7年前 ── [結論から言うと、僕は彼の姿を見て最初に、 盛大に嘔吐した。 失礼極まりない。 今思うと本当に申し訳なさしかないのだけれど、 とにかく顔を合わせる度に、 具合が悪くなった。 吐いたのは、初対面の時だけだ。 ]念のため。 (337) だいち 2022/12/12(Mon) 19:53:51 |
【人】 XI『正義』 マドカ[初めに起こったのは、激情。 ほとんど殺意に近いものだった。 次に起こったのは悔恨。 まるで心臓が凍りつくかのようなそれ。 ほとんど同時に怨嗟。 心臓の半分が、灼熱の炎に包まれた。 それから…それから。 それら全てが最終的に、自己嫌悪に終着する。 その間わずか0.2秒。] う……ぇ、 [瞬間的に湧き上がった感情が、 まるで滝壺に叩き落とされたような衝撃を伴って 一挙に襲いかかったのだ。 いくら証持つ僕らが『人間』より 多少丈夫とはいえ、ひとたまりもない。] (338) だいち 2022/12/12(Mon) 19:54:11 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 現在 ── [それから7年、 どのような付き合いをしてきたか。 避け続けるわけにも行かない。 ここには僕らだけではない。 あらゆる感情をひとつひとつ殺して、 そうして理性で縛って己の足を叱咤して、 3年前にクロを連れてきてから特にそう、 クロが彼に懐いていることもあり、 少しずつ、少しずつ、 己の身体を劇物に慣らすような心持ちで、 近づく己の姿は一体、 彼の目にどんなふうに映ってるんだろうか?] (339) だいち 2022/12/12(Mon) 19:54:26 |
【人】 XI『正義』 マドカ[彼に用があるのなら、とりあえずは売店へ。 ここで暮らしていれば常識みたいなものだった。 だから、僕が向かったのは売店。 果たしてそこに彼はいただろうか? あるいは別のところで出会うかもしれない。 不意打ちだけはやめてほしい。 心の準備をさせてくれ。**] (340) だいち 2022/12/12(Mon) 19:54:39 |
XI『正義』 マドカは、メモを貼った。 (a56) だいち 2022/12/12(Mon) 19:56:48 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 僕の知らない彼らについて ── [『正義』と『力』は 殺し合いの末、相討ちとなった。 『正義』にとって『力』とは、 尊敬に値する人物であり、 同時に最高の好敵手だった。 間違っても、敵ではなかった。 交わす刃が互いを切り裂き、 振り切った刃の先から鮮血が散る、 それまで何度も交わしてきた、 刃のない刀の記憶が、 互いに太刀筋を覚えさせた。 けれど刃の狭間に見えるのは…… 覚えのない、殺意。] (592) だいち 2022/12/13(Tue) 20:08:26 |
【人】 XI『正義』 マドカ[彼らが最期、何を想ったのか。 それは経典のどこにも明言されていない。 それはそうだ、語る口は既に閉ざされていた。 綴られる言葉があったとして、 それら総ては赤の他人の憶測に過ぎぬ。 彼らの想いは、彼らの胸の内にのみあって、 彼らと共に終えたもの。 誰にだって、分かるはずが、ないのだ。 ────勿論、僕にだって。 ] (593) だいち 2022/12/13(Tue) 20:08:44 |
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