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【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩──────……、 は……? [ 虚空を撫ぜて落ちる手を見届けながら わたしは水面を波打たせるように声を震わせる。 ] (-22) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 20:03:14 |
【赤】 従業員 ルミ[ 真意が読めなくて、わたしは目を細めて動きを止めた。 滲んだ視界を晴らすように眦を拭ってから、 途切れ途切れに紡がれる言葉へ耳を傾ける。 ] 嘘つき。 そうやって、またわたしから逃げるくせに。 ストーカーにそんなこと言ってまで逃げたいの? ──殺さないって最初から言ってるじゃない。 ああもう、どいつもこいつも、そうやって……!! [ 唇を噛み締めて、自分の腕に爪を立てた。 傷付いてくれと願った以上大差はないだろうけれど、 物理的に傷を負わせたいなんて思ってはいない。 行き場のない激情を彷徨わせながら、 わたしはもう一度、彼の顔を じ、と見下ろして。 ] (*59) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 20:03:42 |
【赤】 従業員 ルミ………………………。 …………逃げたら死んでやるから。 [ 目論見通りにはいかないと続けることは出来ただろう。 けれど同時に、彼の幻影を、貴方へ見ていた。 撫でられたかったわけじゃない。 そんな夢はもう小人たちの家に置いてきた。 ただ、もしかすれば、と微かな蜘蛛の糸を手繰ったの。 わたしから逃げないお兄さん。 わたしを、忘れないでいてくれる、お兄さん。 ] (*60) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 20:03:52 |
【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩[ この期に及んでわたしは、 思い出として留めるべき過去を捨てられなかった。 昔の幻影に現在を重ねる。 ──ただ行為から逃れるための計算の色が、 彼にないことくらい分かっていた。 ] (-23) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 20:04:00 |
【赤】 従業員 ルミ[ 熱を引き抜き、けれど警戒するように跨ったままで わたしは動向を見守った。 撫でられたかったわけじゃない。 だって、この恋が実らないのと同じで 撫でて貰えるわけがないって理解してるから。 撫でて欲しいなんて望めない。 * ]それだけのことをしてるって、分かってるから。 (*61) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 20:07:27 |
【赤】 会社員 雷恩[人は忘却の生き物だ。 覚えようとして取り組んだことさえ、1時間後に50%、 24時間後に70%、1か月後には殆どを忘れるという。 自分が忘れていることを詳細に覚えている彼女は、 毎日自分といた日々を思い出して記憶を定着させたのだろうか。 つきあっていた相手だって、毎日自分のことを想ってくれていた とは限らないのに。 10数年会わない間毎日。 それはどれだけの労力だっただろう。 忘れてしまうことへの恐怖もあったかもしれない。 覚えていなくても咎める人なんていないのに、 「忘れたくない」と思ってくれていたのか。] (*62) Ellie 2024/05/08(Wed) 22:12:03 |
【赤】 会社員 雷恩[片や、そんな労力も払わず思い出そうとしなかった 自分にも残っている記憶がある。 強く意識しなくても残っていたということは、 それだけ自分にとっても既に深い部分に 根付いていたということだ。 これから彼女が補完してくれれば、 ]もっと取り戻せる思い出もあるかもしれない。 (*63) Ellie 2024/05/08(Wed) 22:12:30 |
【赤】 会社員 雷恩[名前を呼ぶことがどうして逃げることに繋がるのか。 眉毛だけが疑問を浮かべるように動く。 騙して逃げようなんて計算が出来る男ではない。] ………………。 [痛いことに変わりはなくても、 同じ傷にはならないだろう。 だって、相手に離れられたという痛みと、 相手に恋心をぶつけられた痛みは 根本的に違うから。] (*64) Ellie 2024/05/08(Wed) 22:13:11 |
【赤】 会社員 雷恩[声が震えている。 瞼はまだ重く開きにくいが、手を持ち上げられるということは やはり薬の効果が切れ始めているのだろう。] ぅそ、ついて、なぃ。 [本当にならなかったことがあったとしても、 その時の気持ちは絶対に嘘の心算ではなかった。] ……にげるつもり、なら。 もっと動けるよぅになるまで、待ってる。 [こんな少しだけしか動かない状態で それをルミに明かすメリットなんてない。 動きを見せたのは、言葉と行動通り、撫でようとしただけだ。] (*65) Ellie 2024/05/08(Wed) 22:13:39 |
【赤】 会社員 雷恩[ルミはどんな表情なのだろう。 目を閉じていると何も見えない。] ……ここまで生きてきたのに。 昔のぉれのことに執着して、 ぃまからのぉれはぁきらめられンだ? [殺さない、とルミは言った。 その言葉はきっと嘘ではないだろうと今は疑っていない。 逃げたら死んでやる、とは。 罪悪感に苛まれろということか。 自分を加害した相手の自殺で此方の心が痛むと思っているのか。 忘れていたことを詰る癖、自分の中にルミを慈しむ気持ちが 残っていることを期待していないと出ない言葉だと思った。] (*66) Ellie 2024/05/08(Wed) 22:16:29 |
【赤】 会社員 雷恩……まだないてる? [摩擦がなくなり、水音を立てて外気に晒された性器が 萎れて落ちる。 二択で選んだのは、自分の望みと合致していると思っているから、 撫でる先を探してもう一度、先程よりもスムーズに 腕を持ち上げた。*] (*67) Ellie 2024/05/08(Wed) 22:17:21 |
【赤】 従業員 ルミ[ あの時間を忘れて、過去の貴方を記憶に埋めて。 きっとそうするのが一番良い道だったかもしれない。 わたしは貴方を傷付けないし、 貴方も忘れた過去を思い出すこともない。 諦めるのは生きていくだけならとても楽で、 ]けれど選べたのは無様でも縋りつくいばらの道。 思い出すたびに惨めで痛くて腕を切った。 血を流すたびに生きている実感があって でも、そこにはいつも、貴方はいない。 (*68) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 22:48:31 |
【赤】 従業員 ルミ[ 彼の声は震えながらも、言葉の輪郭を形作る。 持ち上げられた手を見やり、動向を注視しながら うそではないと紡ぐ声へ目を細めた。 ] そう思わせて逃げる算段かもしれないじゃない。 [ 理性では彼の言うことが正しいと分かっている。 感情が、一度消えた相手のことを信用できないだけだ。 ちがう。 信用できないという言葉すらも正しくはない。 これ以上、期待して傷付きたくないと 自己防衛に徹しているだけ。 ] (*70) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 22:48:41 |
【赤】 従業員 ルミ……諦めさせたのはお兄さんなのに、 なんでそんなこと言うの? わたしから離れて、勝手に消えて、逃げて 新しく女まで作って幸せそうで── 忘れてしまえるような昔の子どもひとりが、 …………ッお兄さんには他にたくさんの人がいても わたしには、わたしにはずっと、 昔のお兄さんしかいないのに!! [ どうして勝手に大人になったの。 どうしてわたしの知らない顔を他の女に見せてるの。 今からの貴方を諦めなかったとして、 貴方はわたしのモノになってくれるの? ] (*71) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 22:48:47 |
【赤】 従業員 ルミ[ 叶わない夢なら最初から星屑になって落ちてしまえ。 咲かない花なら最初から枯れて朽ちて消えてしまえ。 わたしのものにならないお兄さんなら、 いっそ過去に執着していた方が楽だった。 ────なのに結局今の貴方の傷を欲しがっている。 相反した感情と憎悪と愛情。 矛盾を抱えていることくらい分かっていて、 途方もない夢だけは見ないように自制して。 ] (*72) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 22:48:50 |
【赤】 従業員 ルミ…………おかげさまで。 [ ここで可愛く愛想を撒けるような女の子だったら、 ここで、強がって突き放せるくらい強ければ。 なにかを探すように持ち上げられる腕を見やり、 そ、とすこしだけ頭を下げる。 ────撫でられたいなんて、思う資格はないけれど ふれられたいと、願ってしまって。* ] (*73) 鬼葉 2024/05/08(Wed) 22:52:34 |
【赤】 会社員 雷恩[忘れることも覚えていることも 男には傷とならなかった。 より多くの人と過ごして経験してきたことを背負うには 一つ一つの思い出のウェイトを軽くしないと 動けなくなることを、人間の脳は知っていて、 それに強い意思を介入させた者だけが その最適化をカスタマイズすることができる。 物理的に流れた時間は同じ。 ルミが自分との思い出のウェイトを変えまいと 懸命に抗った結果負った痛みは、 「今」手当てすることはできない。] (*74) Ellie 2024/05/08(Wed) 23:37:23 |
【赤】 会社員 雷恩[だが、「今」痛んでいる彼女には間に合うと、 それを願ってしまった。 その想いが防衛本能から来るものと解釈することは 出来るだろう。 ストックホルム症候群と名付けたければそれで良い。 それで躊躇するくらいなら、動かしにくい腕に 無理に力を入れていない。] (*75) Ellie 2024/05/08(Wed) 23:38:27 |
【赤】 会社員 雷恩俺だけを、想って、ここまでひとりで 頑張ったって・・…聞いて、 俺は、ふつうに感動した、けど。 [悪意なく取った行動を詰られることよりも、 「ずっと昔のお兄さんしかいないのに」という言葉の方が 胸を抉った。 会えない相手なんて忘れた方が楽な筈だ。 頑張る必要なんてどこにもない。 だが自分にだけ執着したルミは 生きることを放棄せず 自分への恋を何度も反芻して定着させた。 取った手段は犯罪だが、それに至る感情そのものには 感動としか言い表せない気持ちを産んだ。] (*76) Ellie 2024/05/08(Wed) 23:39:03 |
【赤】 会社員 雷恩[ケホ、と咳をする。 無理矢理口を動かしたからか喉奥がヒリヒリする。] ……間に合わなかったか。 まーいいや。 [泣き止んだと聞いた。 本当かは知らないが、本当でも嘘でもやることは変わらない。 触った感触があった。 体温までは移らないほどの微か。 そこが頭でなかったとしても良い。 幾筋もの線が描かれた手首でも。] (*77) Ellie 2024/05/08(Wed) 23:39:46 |
【赤】 会社員 雷恩いーたいの、いーたいの、 …っ、おーれが、たーべた、 [ぎゅ、と拳を握り、自分の口元へ。 上手く操作出来ずに自分で頬を殴ってしまったが、 口は飲み込む動きが出来た。] (*78) Ellie 2024/05/08(Wed) 23:40:29 |
【秘】 会社員 雷恩 → 従業員 ルミ いーたいの、いーたいの、 おーれがたーべた! これでどっかに飛んでることないから、 痛いの戻ってこないよ。 ルミの痛いの、俺がうんこにして流してやる。 [小学生らしく排泄物の名前を軽々しく口にして笑った。 転んだ時も、傷を負った現場にいなくて後から気づいた時も、 撫でて拭った痛みの概念を どこにも飛ばさずに咀嚼したものだった。] (-24) Ellie 2024/05/08(Wed) 23:41:17 |
【赤】 会社員 雷恩10何年分だって食ってやる。 [流石に思い出した今は、消化活動については 口にしなかったが、 思い出し笑いで少し噎せたように笑った。 瞼の痺れが取れた。 最初に見る相手の表情は、どんな色をしていただろう。**] (*79) Ellie 2024/05/08(Wed) 23:43:03 |
【赤】 従業員 ルミ[ 女は彼と違って、経験してきた物事が少ない。 生きてきた世界とてそもそも狭いような生き物だ。 多くの人々と経験を知るよりも、 閉じ切った閉鎖的な世界で身を守ることを好んだ。 思い出のウェイトは過去に寄り過ぎた。 痛みも重みも麻痺するほどに時を重ねて、 昔を反芻し、飲み込み、追体験でこころを誤魔化す。 過去を今に当てはめて息をしているだけ。 そうするのが楽で、なにも傷付かずにいられるから。 ] (*80) 鬼葉 2024/05/09(Thu) 0:41:48 |
【赤】 従業員 ルミ…………なにそれ。 今更そんな、 体のいい言葉で騙されたりなんか…… [ ────死んでしまうのが一番楽だと考えたこともある。 こころを殺して生きていくより、 身体ごと死んでしまえばいいのかと。 けれど。 どうして苦しいばかりの世界で生きて来たのか。 死ぬことを別に恐ろしいとは思わなかったのに ──……それならば、なぜ。 ] …… [ 愛されようと色んな人に愛想を振り撒いて、愛を買った。 金を渡して夢を買った。 いくら繰り返しても満たされないまま大人になって、 ] (*81) 鬼葉 2024/05/09(Thu) 0:42:09 |
【赤】 従業員 ルミ[ 目的もなく生きていくのなら、それでも良かっただろう。 けれど傷を付けながら、 生きるために彼のアカウントを探って彼を見続けた。 それは間違っても感動する類の話ではない。 犯罪として背筋を凍らせることはあったとしても、だ。 ] ……べつに、最初から泣いてない。 [ 嘘だ。今更繕っても意味のないこと。 涙で罪を誤魔化すみたいで、それは── そんなことはしたくないだけ。 ちっぽけなプライドだ。 わたしが泣いて許されるのは簡単だけれど それを見せられる彼の気持ちはどこにいく? ] (*82) 鬼葉 2024/05/09(Thu) 0:42:32 |
【赤】 従業員 ルミ[ 彼の手が僅かだけ、体温も移らないほどかすかに触れる。 頭を少し下げただけでは届かなかったのか、 力の抜けた腕は、頭の代わりに醜いわたしの手首を撫ぜる。 長袖を着て見えないように誤魔化した過去の傷痕。 現在を生きるために過去で裂いた血肉の痕。 ────ひきつれた皮膚越しに感じた彼の指は おんぶして背負ってくれた時とは程遠い。 弱々しさだけが胸を打つ。 ] ────────……ッ [ なにをするのかと見ていれば、貴方は。 あの甘えとはまた違う懐古を連れてくる。 ] (*83) 鬼葉 2024/05/09(Thu) 0:42:48 |
【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩で、でも、かわりにお兄さんがいたくなっちゃう…… ルミいたいのへいきだよ? ……あ、もうっ、お兄さん! そういうこと言っちゃ、めっ!なんだから! [ 知識のない子どもでもわるい言葉だと分かる。 だめ!と年下のくせに妙なところでお姉さんぶって、 そのくせ怪我の痛みに両目を潤ませていた。 痛い、とあまり動きたがらなかった幼い子どもも、 不思議とおまじないの後は軽快に歩けるようになり 痛みを食べてくれた人の後ろへ引っ付いて。 ] (-25) 鬼葉 2024/05/09(Thu) 0:42:57 |
【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩……お兄さんって いたいのとんでけーじゃないんだね。 お兄さんがいたくなるのに、たべてくれるの? えへへ……やさしいねぇ。 あのね、でもね、ルミもおっきくなったら お兄さんのいたいの、たべれるようになるから! [ だから待っててね、と言って笑った。 その頃には彼も同じだけ時間を重ねて大きくなって 子どもの手助けなんていらなくなるのに。 どこにも彼は行かないと信じていた幼い頃。 撫でられては無邪気に喜べていた甘い記憶。 ] (-26) 鬼葉 2024/05/09(Thu) 0:43:46 |
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