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金緑石 アレクシアは、メモを貼った。 (a1) 2021/09/30(Thu) 1:11:21 |
【人】 金緑石 アレクシア―宿屋― [──翌朝。 少女は暗い表情で宿屋の部屋に閉じ籠っていた。 昨晩、誰かが窓から部屋の中を覗いていたような気がする。 声を押し殺したので、同室者は気付かなかったようだが。 あの時、目が確かに合った。 夜半に明かりもなしにうろついているのは“良くない者”だと教わっている。 そうした輩に、もしも自分が宝石人間(ジェム)だと知られたら。 そう思うと眠る事が出来なかった。] (54) 2021/10/02(Sat) 22:24:35 |
【人】 金緑石 アレクシア―市場― [とはいえ、生きていれば空腹も覚える。 少女は荷物を宿屋に預け、顔を隠すようにしながら市場へと向かった。 そこで、少女は麦穂のような色をした青年を見つける。 背格好も、背負っている荷物も、見覚えがある。] ……ジル。 ジル!! [少女は駆けだした。*] (55) 2021/10/02(Sat) 22:25:56 |
【人】 金緑石 アレクシア[名を呼ばれた青年は足を止め、振り返る。 そうして故郷にいる筈の少女だと気付くと驚いたように目を瞠った。] 「アレクシア。どうして此処に?」 [息を切らす彼女の肩に手を添えると、気づかわしそうな視線を向ける。 少女の顔は泣きそうに歪んでいた。] そろそろ、故郷に帰らないといけないの。 だけどその前にどうしても貴方に会いたくて……。 [目の前に、彼がいる。 それだけで少女は胸がいっぱいだった。] (56) 2021/10/02(Sat) 23:51:01 |
【人】 金緑石 アレクシア「そんなに急がないといけないのか?」 [青年は眉尻を下げて彼女に問うた。] 「君の家族が心配しているかもしれない。 だけど、君はあの町で暮らしてきたじゃないか。 元気な顔を見せた方がいいだろうけど、今までそんな素振りを見せなかっただろう。」 [成熟期が来たからなのだと、伝える事が出来なかった。 例え人間とは違う形なのだとしても、子を生むのだとは言いたくない。 口を噤む少女に青年は言葉を重ねる事が出来なかった。] (57) 2021/10/02(Sat) 23:52:45 |
【人】 金緑石 アレクシア「アレクシア、良かった。 其処にいたのか。」 [そこに、聞き慣れた声がした。 青年は訝しげに相手を見たが、アレクシアは息を呑んだ。 旅に同行する筈だった従兄だ。 髪は隠しているが、同じ色をした瞳は隠せない。] 「手紙には必ず帰ると書いてあったから待っていたが、そろそろ時間だ。 一緒に帰ろう、アレクシア。」 [彼はアレクシアの手を引こうとして、阻まれる。] (58) 2021/10/02(Sat) 23:53:07 |
【人】 金緑石 アレクシア「ちょっと待ってくれ。 こちらも話をしていたところだ。強引過ぎるんじゃないのか。 アレクシア、彼は?」 ……従兄のサームです。 [想い人に庇うようにして引き寄せられ、アレクシアは束の間息をするのを忘れた。 けれど、従兄の事を聞かれれば、動揺しながらもそれに答える。 必ず帰るから心配しないで下さい、と確かに手紙に書いて残した。 彼らはそれを信じてくれたのだろう。 実際に、少女も帰ろうと思っていた。] (59) 2021/10/02(Sat) 23:53:45 |
【人】 金緑石 アレクシア「アレクシア。 こちらの人間と一緒にいられない事は分かっているだろう。」 [聞き分けのない子供を諭すように従兄は言った。 彼は少女より十歳年上で、お転婆な少女に振り回されながらも可愛がってくれた。 成熟期の周期の長い宝石人間(ジェム)にとっては、従兄の方が兄弟よりも年が近い事がよくある。 子もまだ小さいだろうに、少女を探しに来てくれたのだろう。] 「彼女と話す時間を下さい。まだ再会したばかりなんです。」 サーム、私からもお願い。 [青年に重ねるように少女は言った。 何だかんだで少女に甘い従兄は息をついた。 夕刻まで待つと。*] (60) 2021/10/02(Sat) 23:54:33 |
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