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【人】 異国の道化師 マッド・リヒター[彼女の手は温かかった。それは、10年前に握った時と変わらない温かさ。優しさ。あの時名乗ってもらった名前さえ今の今迄忘れていたのに、この温もりだけは忘れていない。] [……10年前の事。子供達の中で1人、離れた場所で手品を披露する彼の様子を窺っていた少女……目線が合った時、マシューは帽子の鍔を少し下げ、微笑みながら会釈した。子供達が帰った後も変わらない距離で様子を窺い続けていた。マシューは声を掛け、恐々とした彼女に手品を披露した。次第に彼女からは笑みが溢れ出し、開花したガーデニアの様な美しくも明るい笑顔を見せてくれていた。その笑顔が、彼は好きだった。] 『ねぇ、マシュー、また会える? また魔法を見せてくれる?』>>277 [あの時、何て声を掛けたのだろうか。彼女の笑顔の中には其れ迄表面に出ていた哀しさが少しずつ見え隠れしていた。雨漏りの様に。そんな表情を察しながらも……卑怯者のマシューは、帽子を深く被り只微笑むだけ。何の返答もしなかったのだ。やがて、サーカス団の出国が始まり、其れを言い訳として逃げる様にこの国から去った。笑顔を見せてくれた優しい少女からも。] (292) 2020/05/18(Mon) 14:01:50 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒター[今……目の前のジゼルは大人になっていた。道化に堕ちた愚か者ですら、包む程に優しく。彼女は微笑みながら彼の名前を呼ぶ>>278。そして、少々の熱が籠りながらも丁寧な口調で囁く。] 『お会いにならなければいけない方が、いらっしゃるのではないですか?』 [その通りだ。私は、向き合わなければならなくなった。過去の自分と……あの時から自らの罪の象徴となった姫君と。それを、彼女は透視能力でもあるかの様に指摘した。それには彼も面食らってしまう。] ー 嗚呼……、あの時から、子供だった彼女の方がこんな私より大人だったかもしれない。 確かに。だけど……。 [咳払いして、緊張で裏返りそうな声を整える。] 未だ時間はあります。 あれからの事、"私"が居なかった10年間の事……貴女の話を聞きたくなりました。お付き合い願えませんでしょうか? [今度は、ゆっくりと。腰を添えて、彼女の話を聞こう。あの時と同じ、星が空を覆う迄の間……ジゼル、彼女と寄り添う事に決めた。*] (293) 2020/05/18(Mon) 14:02:00 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒター[綺麗な瞳から流れ星の様な一雫を見せ、彼女はカーテシーを行う>>294。勿論、マッドもにこりと笑み、帽子の鍔を摘んで御辞儀で返す。しかし、彼女は直ぐにまた手を取ってくれた。近くのベンチへと誘導される。置いたままのたこ焼きを残して。] あー……。ふふっ。 [思わず胸の辺りから風の様な笑みが溢れ出た。釣られてか、ジゼルも同じ様に笑う。>>295、こんな彼女を見ていると、大人も子供もどうでも良くなって来る。そう、最初から関係の無い事であった。大人だから、子供だから……ではなく、対等な『人』だ。敬意を持つべき『人』だ。彼は愚かで傲慢だった。どんな高い役職に就いても、年齢が数十と離れていようと、必要なのは"相手を敬う心"。] (322) 2020/05/18(Mon) 20:43:17 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒター座っていてくれ。私が取ってくるよ。 [既に2人はベンチに座っていた。立ち上がろうとする彼女の肩をポンと叩き、声を掛ける。そして、マッドはシルクハットを手に取った。] しっかりと"ココだけ"見ててね。 [人差し指を唇に当て、にやりと不敵に笑いかける。彼がシルクハットの中に手を突っ込むと、あっという間に肩迄沈んでいった。程無くして、その場に小麦粉と生姜の焼ける匂いが漂った。帽子の中からは湯気が出る。マッドが沈んでいた手を引き抜くと……置いてあった筈のたこ焼きは彼の掌に乗っかっていた。たこ焼きの容器を彼女の掌に置く。] さぁ。君の事も聴かせて。 [再び帽子を被り、ピンと鍔を弾く。そして彼は、自分のたこ焼きを摘みながら、ジゼルの話を待った。] (323) 2020/05/18(Mon) 20:43:36 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒター〜〜〜 [>>316 >>317、ジゼルは今迄の事、今日迄の事を、饒舌に話してくれた。最初に声を掛けた時より聴きやすい。その声は笛の音の様に軽く、弦楽器の様に心地良い。困らせてしまった事だけで無く、温かい日常の話も聞けた。幸せそうに話す彼女を見て、つい頬が緩んでしまう。彼女の周りにいる人々も(何名かは思い当たる人物がいた)彼女をまた支える様に賑やかで、何故か此方迄安心した。] [そうして話を聞いていると、いつの間にか空は闇に染まり、無数に輝く星達が顔を見せていた。しかし、時間は気にならなかった。彼女の話は面白くて、止まっていた時間を数百倍速で再生されているかの様に刺激的であった。彼の心も彩と灯りが燈り始めている。その鼓動を、彼自身も感じていた。] ー 出来れば、このままずっと……。 [イキイキと話す彼女を見て微笑んだ。*] (324) 2020/05/18(Mon) 20:44:17 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒター[>>340、そんな彼女の不安は当たってしまったのかもしれない。そろそろ王宮では儀式の準備が始まる時間だ。彼女と離れたくは無い。だが、"彼女が気づかせてくれた。"向き合わなければいけない現実に。其れを無視する事等出来ようか。] ……ごめんね。もう時間切れみたいだ。 [触れ合っていた肩を離し、ベンチから立ち上がる。これで少しは星に近付いた筈なのに、未だ、全然遠く、憎らしい程美しく輝く。そんな星を見ていると、視界がグラつく。彼は眼に手を当てて、頭を軽く振った。しっかりしなければ。] ……! [余りの突拍子も無い出来事に"目が飛び出る程"驚いた。そして、"自分の手の内と身体に未だ残る感覚"。これは、奇跡なのか?頭が真っ白になる。否、此処で目を逸らしてはいけない。『マシュー』は帽子を鼻の上迄深く被り、ジゼルに向き直った。] (357) 2020/05/18(Mon) 23:20:44 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒタージゼル、君に受け取ってほしい。 [其れは、五芒星と三日月が重なった"星の飾り"。五芒星と三日月の中心には赤い宝石が埋め込まれている。それが重なり、1つの印となっている。まるで、支え合う夫婦の様な。] 祈っていて。『魔法』は"実在する"って。 そして、信じてて。必ず私は帰って来ると……。 [目を塞いだのは彼女の顔を見たくなかったから。引き返してしまいそうになるから。返答の隙も与えなかった。彼女に甘えてしまうから。だから、私は、"必ず帰ると只誓って"行ってきます。また、貴方に『ただいま』を言う為に。] [彼は最後に口元をニッと形作ると、帽子の鍔を一気に足元まで下ろし、その場から姿を消した。*] (358) 2020/05/18(Mon) 23:20:56 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒターー 王宮付近の空の上 ー [これは儀式の準備が行われる少し前の話。] [満天の星空の中……1つの白い風船が夜空を舞っていく。子供が誤って手を離し飛ばしたものか?その風船は、高く高く飛んだが、決して闇に吸い込まれる事無くふわふわ漂った。] [王宮のベランダ近く迄来ると、その風船から手を離し、マッドは敷地に足を踏み入れた。その手には銃が握られていた。 足がベランダに付く直前、体を捻り、コマの様に回転する。足が地に付く頃には、黒い礼服は紅色に染まり、手にしていた銃は騎士が常備している種と同じサーベルになっていた。鞘は彼の肩から垂れた紐により襷掛けになっている。サーベルを鞘に収め、帽子の鍔を下げながら王宮内部へ侵入する。] スタッ、スタッ、スタッ……。 [彼は真っ直ぐに奥の奥、玉座の間に向かう。彼にとって歩き慣れた王宮を目隠ししたまま歩く等造作も無い事であった。彼の横には衛兵、来賓、使用人……加えて複数の招待客達で賑わっていた。彼らにはマッドが見えていない。"マッドと同じ様に。"時たま肩や腕をぶつけたが、誰もが"何処かの無礼者にぶつけられたのだろう"と肩を軽く上げ、大して気には留めなかった。そして……遂に彼は"御前"に辿り着いた。2つの玉座。シュテルンポレール殿下と……ユウェル王女。] (362) 2020/05/18(Mon) 23:28:34 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒター[彼に迷いは無かった。止まる理由も無い。此処でもう一度、背を向ける理由等何処にあるのか。彼は跪き、帽子を外して胸に当てた。] 殿下、そしてユウェル王女。 [突然現れたマッド……否、『マシュー』に2人は驚いた。今、顔に白粉は粧していない。其れどころか、顔には深くシワが刻まれ、道化師とは掛け離れた歴戦の将校の如き圧を醸し出していた。軍服さえ着ていないものの、かつての''騎士団参謀総長マシュー・ド・リヒテンシュタイン"そのものだ。王女は覚えていた。目を合わせた瞬間、ピクリと反応する。] 本当に……本当に御立派になられました。 御結婚を、心より祝福致します……! [遂、声を大にして再び頭を垂れる。此れには周りの衛兵や来賓達にも気付き、正体不明の来客にザワッと王座の間が揺れる。そして、古株の使用人や衛兵達が口々に伝う。"国宝泥棒の逆賊マシュー・ド・リヒテンシュタイン"。中にはサーベルを抜く騎士もいた。ジリジリと周りを詰められているのを感じた。しかし、彼は頭を垂れたまま動かなかった。"王女の命令が無い限りは。"] (363) 2020/05/18(Mon) 23:28:43 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒター[王女は玉座から立ち、片手で衛兵隊を制す。] 『あの日、タナバタで王族が使う予定だった星の飾りを盗んだのは貴方なの?』 [王女は問う。"左様です。"彼は返答した。] 『今日は其れを返還しにいらしたの?』 ["いいえ。王女様に跪く為です。"] 『では……その星の飾りは今、何処にあるの?』 [王女は質問を投げ掛けながらマシューへ近づく。心臓の鼓動が起爆しそうな程鳴る。心臓に釣られ肩も揺れ、身体自体が振動する。此れには一瞬間を置いたが、マシューは声の芯を立てて言う。王女の前に剣を立て祈る様に。] ["今は、私が最も持つに相応しいと『選んだ』女性の手の内にあります。"] [王女の命を待たず、遂、彼女の顔を見上げる。マシューの"ブラックオキニスと同じ色の瞳"が真っ直ぐに彼女と目を合わせた。王女は目を丸くしていた。王女から見て、あの"堅物なマシュー"が星の飾りを盗んだ動機が"それ"だったのだから……。王女は、暫く呆気に取られた表情をした後、マシューの横をスッと通り過ぎた。] (364) 2020/05/18(Mon) 23:29:14 |
【人】 異国の道化師 マッド・リヒター『これは……トンデモない"魔法"ね。』 [王女の口から、ふふっ、という息が漏れる。彼女はそのまま玉座の間から一歩踏み出そうとした。使用人の1人が、王女に声を掛ける。"儀式の準備がある故お急ぎ下さい。"と。王女は振り返り、玉座に向かい今も跪いているマシューを見る。そして、広間全体に聞こえる様、声を発した。] 『星の飾りとは、長き歴史に渡り星と星の"絆"を象徴して来たのだ。その"絆"を、"愛"を、引き裂かんとする者は此のブーヨプスキュリテの恥!この男を咎める者は、我が国の敵と知れ!』 [その声は、此の国家の声だ。17の女子の小さな声では断じて無い。ふーっ、と息を落ち着かせ、ユウェル王女は玉座の間を後にした。何処か、10年程前の少女の様な面影を夜の風に流して……。] [マシューは言葉が出なかった。玉座の間の赤いカーペットに只ジッと視線を落とし震えるだけ。ポツリ、ポツリと、夏の通り雨の様にカーペットに涙が滴る。やはり、少し待っても言葉は出ないまま……。マシューは、帽子の鍔を摘み、ギュッと足先まで下げる。みるみる内に帽子に身体が吸い込まれ……王座の間から、彼の姿は消えていった……。] (365) 2020/05/18(Mon) 23:29:38 |
(a103) 2020/05/18(Mon) 23:39:34 |
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