202 【ペアRP】踊る星影、夢現【R18/R18G】
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“狼”というのは人喰いの化け物の総称です。
獣の呪い、月の狂気、あるいは一種の病……なりかたは様々ございます。
わたくしはその中でも最も愚かな……自らの手でたましいを引き裂き、獣に堕ちた者。
旧い魔術でございます。ヒトのたましいを善と悪との二つに割り、悪を滅する。ある求道の者が、己を高みに至らせる道としてそれを行いました。
失敗だったのか、そもそも術が不完全だったのかはわかりません。ともかくそうして、その者はたましいを切り離すことができず、不完全に繋がった二人となりました。それが、わたくしとあの人です。
落ち着いて聞くのよ。
このままじゃ、貴女は変なところに飛ばされてしまうかもしれない。
今の私はまだ力を足りないから……ごめんなさいね、貴女が元いたところに送り返せないの。
ここに長く居るのは危険かもしれない。
私は……いいけれど、貴女は巻き込まれたんでしょう。
[自分のせいかもしれない。
よく似た彼女を見れば、そう思わずにはいられない。
何かが作用し、こうして彼女を引きずり込んでしまったなら、どうにかしてまず無事を確保しなければ……。]
……私が元いた世界なら、行かせられるかもしれない。
力の道筋がまだ残っている……そう、そうだわ。
[ほのかにあたたかな耳飾り。
触れればふわりと光の粒が集まり――道しるべが生まれた。]
は? 何言って……?
[訳が分からない。
でも仮に夢だとしても、真剣に聞かずには居られない雰囲気があったし、まだ幼馴染が起こしてくれる様子もなかった。]
お姉さんの元いた世界って?
え? アスルって誰!? 外国人!?
[幻想的な光の道が現れる。
それを辿って行けとお姉さんは言い、時間さえあればどうにかしてみせるから、と自分の手を握りしめた。
ほぼ同じ顔をしていながら頼りになる表情で、優しさに溢れていて、淡い紫の瞳は強い意志を感じさせる。
アスル、という名前を口にしたときだけ。
切なげにも思える色が混じったのは気のせいだろうか。]
ええい、行くしかないか。
[夢なら起きて幼馴染を揺さぶるしかない。
なんで早く起こさないのって。
それに、このまま本当にどこかに迷い込むことになったら、会えなくなる気がして、恐ろしくなったのだ。
前に進まなければいけない、と思った。
あのお姉さんはともに来ないのだろうか。
元いた世界なら、道しるべが生まれたなら、一緒に来るんじゃダメなのかなと思うけれど。
しかし、光は自分が通ると消えていった。
光の終着点が見えてくる。風の音がする。
あの森の中だったらいいのにと思いながら、幼馴染の姿があればと願いながら、深呼吸して飛び込んだ。*]
お、かえり……?くっきー。
[いきなり抱きしめようとするとか、どうかしていたのかもしれない。
我に帰ると伸ばしかけた手を下ろして、コテージの中へと入ってくるくっきーと連れ立って室内へと戻る。
……あれ?
くっきーってこんなに胸あったっけ。
つーか、全体的にこう、柔らかそうになってるような……?
声もなんか高いし。
女子だと知った後から女子にしか見えなくなってはいたけど、脳内補正?
こんな変わるもん??]
……ええっと。
…………おかしなことになったわね。
[そっくりな少女を見送ったら。
今度は別の道が開けていた。
なんの意志なのか、悪戯心なのか、――ここにいても自分の力は吸収される一方で増える様子がないのは分かっていたから、何はともあれ、動いてみないと仕方がないのだけれど。
というか、そもそも巫女って消えたらどうなるのか。
なんていうのは、何も語られていないのだ。
歴代の巫女もこんな騒動に巻き込まれていたのかもしれない。
アスルにまた逢えたときは、そんな話もしよう。]
……あら、これも、なにかの道しるべ?
[あの少女と繋がる何かが、この先にある。
そう感じながら、ゆっくりと歩み、知らぬ世界へと。*]
…………、
っ、え、あ、うん?
ゆず、……ッ……
[違和感を感じる肢体から目を逸らして、視線のやり場に困っていると、柚樹と呼んでと囁く声に息を詰まらせた。
そう呼んでみたくないわけじゃないけど、急に呼ぶのも恥ずかしいし。
それに、告白だってまともにしてない。
“かわいい“とは告げたものの、ひどく悲しそうな顔で“なんで“と返されたのは昨晩のことだ。
寝る前だって、泣くばかりだった理由も聞けないままでいて。
急に名前で呼び出すとか彼氏面し出したみたいで何なのこいつってならない?
いや、呼んでって言うからにはその方がいいのか。
混乱したまま答えられずにいると、甘ったるい声で囁きが落ちるのを、呆気に取られたような表情で聞いていた。]
[かわいいは好きって意味はそうだよ。
気になる女子に言えって言ったのはくっきーじゃん。
だから他の女子には言わないようにしたし、くっきーだから言ったわけで。
それでも伝わってないとは思ってなかったよ。
だから実際鈍感なんだろうな。
警戒心は持って欲しいし、無茶だってしてほしくない。
言ってること、殆ど合ってるよ。
オレの考えてること、察せられるっていうのも本当かもしれないな。]
……うん、そうだな。
オレは、くっきーが、
黒崎柚樹のことが好きだから……、
[嫣然と微笑む彼女の頬に手を伸ばす。
象の皮膚とは程遠い程に柔らかい肌に確かめるように触れると、一度目を伏せてひとつ深呼吸をして。]
わたくしは滅せられるべき側でした。
ですから、この身の内には怨嗟や、嫉妬や、嘘。そういった様々のものが渦を巻いております。今は静かにしておりますが……時折騒ぎ出すこともございます。
わたくしを無理に殺せばたましいの繋がったあの人も死ぬことになります。だからあの人はわたくしを殺せず、逆に憐れみを覚えて、自分のせいでわたくしが生まれてしまったのだと言ってわたくしを庇護してくださいました。
わたくしは、ヒトの世界に守るべきものなどございません。ですから、ヒトの世界の外から、ヒトを喰らい続けました。その度にあの人はかなしい顔をしました。
それに、ヒトではなくとも、ヒトの理がわからぬではないのです。わたくしが、ヒトであるべきでありながら、ヒトではありえないことくらいはわかります。ですから……わたくしは、世界に捨てられた身なのです。
| [ばっしゃーん!!]
[夜の湖に今度は派手な水音と、水飛沫が上がった。 そこに彼がいたなら気付かざるを得ないだろう。 湖のほとりに、突然光に包まれるようにして現れる姿。
淡い月色の髪に、淡い紫にも青にも揺らぐ瞳。 白い踝まで隠れるゆったりしたワンピースに似た装束に、魔法使いかファンタジー漫画の登場人物が着ているような青いローブは繊細な銀の刺繍で彩られ、重厚でありながら軽やかで。
目が合えば、ゆったりとたおやかに微笑みを浮かべる。]
……なんだか派手な登場で、ごめんなさい。
[天原珠月にそっくりな女は申し訳なさそうに眉を下げてから、びしょ濡れのまま、綺麗な礼をした。*] (19) 2023/03/05(Sun) 1:59:08 |
[そのまま手を浮かせて、思い切り頬を挟むように手のひらを打ち付けた。
バチン!!と大きな音が響いた後、同じ高さにある瞳を見据える。]
お前に“かわいい“とは、言ってない。
言ったことない。
[そこは本当に大事なとこだから。
手のひらの痺れからは頬にかかった威力の程度が窺えたけれど。
オレが惚れてるのは、手加減をする方が許さないと言うような女なので。
脳裏に浮かんだ光景を、今はすんなりと受け入れられたから、慰めるように頬を撫でることもなく、手を離した。]*
[それからアスルは、巫女は力を使い果たして消えた。と、長老衆へと告げて、そして工場へは前々から言っていたことを実行するために。といって飛行機を借りていった。
――――そして三か月後。
アスルは現在とある小さな島にいた。別にここで暮らしているとかいうのではなく島から島へと移動中であり、その中継地点に浮いている小島で今日は休んでいたというだけである。
既に野営用のテントが張られ、簡素なスープをつくり乾パンと頂く。野営料理としてはこれに干し肉でもいれれば少し豪勢になるが、今日はいいかと、どこかやる気もなく無精して食べ終えた。]
………新月か
[感傷に浸るように、パチパチと火が跳ねる音。自分以外は誰もいない静かな夜で――誰もいない夜を密かに求めていたのだろう。そんな夜のことだった―――]
[空から女性が降ってくる、ゆっくりとゆっくりと誰かを待ち望むように淡く光を帯びて―――]
いやいやいやいやまてっ!
[ちっともよくはない、上から降ってくるのは移動中に落ちたとか。ゆっくり落ちてきたのはそういう力が、あるいは浮遊を宿した装飾品を身に着けているとか説明はつくが]
このタイミングでかよっ!
[それは新月だから、とかでもなくもっと切実な問題である。
ただただシンプルに、アスルが真っ裸だったのだ]
[そこまで話して、息をついた。
喰わずにいられないことは重荷ではあるが、
はじめからヒトではないのだから諦めはつく。
そして、誰を守るでもなく、喰いたくなれば狩ればいい。
だが楓は違う。
そうせざるを得ずにそうなるのではなく、
自ら選んでヒトを喰っている。
かつては自身も確かにヒトであったというのに。]
[なお、真っ裸だったのは別段変な意味はない。
お茶でも沸かして飲もうとしていたのだが、その前に水浴びをしていたのだ。水浴びのためにと当然脱いでいたアスル。
結果。振ってきた淡く光る人影は野営用のテントをぐちゃぐちゃに潰して――おかげでよいクッションにはなっただろう――なんかもうわやくちゃになったのだが、多少の怒りをぶつけてもいいだろう。等と思っていたが、着替えのズボンだけ履いてから近づき怒りの一つでもぶつけていいだろう。と思っていたのだが、倒れていた女性の顔を見た瞬間それも忘れた]
・・・・・・・・・ペルラ?・・・・・・
[そんな呟きは彼女の耳を揺らしただろうか。そして]
はぁ・・・目が覚めたか?
[焚火の近くに布を敷いて、降ってきた女性が横たえさせていた。その女性が意識を取り戻したのはいつ頃だったか。
はす向かいに位置に座っていた男はそこで声をかけたのである。
ぐちゃぐちゃになったテントは荷物だけ出せるように一部取り払われ、ズボンだけは履いて上半身はローブを体に羽織っており前は開けたままの姿だ。
そんな男の顔は彼女にとってとても見覚えがあり、同時に差異を探せば多かっただろう。
彼女の幼馴染は身だしなみという点でしっかりしているため、目の前にいる彼のように無精ひげを生やしていることはほとんどない。
髪はより乱雑であった、が、そこは水浴びした後に色々あったからであるのだけど、違うのは何より年嵩が増しているように見えただろう。
体格も彼女の幼馴染のように平均的な男性的なものと違い、鋭利に引き絞られたものであった。
呼びかけた低い声も似ているものの、重さ渋みを増して聞こえていただろう―――と、他にもあったとしてもどこまでを認識していたかはわからない]
で、お前さんは何処行きの飛行船に乗ってたんだ?
拾っちまった以上は飛行士の倣いとしてそこまでは無理だったとしても…近くまで運んでやるよ。
[彼女は外界を移動中にやんちゃして落ちたのだろう。そういう風に思っていたアスルは名乗りもせず、やる気もなさそうに聞いたが、珠月にとってはちんぷんかんぷんだっただろう*]
……。
[足を踏み出したら、そこは空だったのだ。
悲鳴をあげる暇もなく真っ逆さま。
なんなのよこれー!
こういう時ってペンダントが光って浮くんじゃないの!?
と心の中で叫んでも仕方のないこと。
真下には確か誰かいた気がするし、何かをぐちゃぐちゃにしてしまった気もするが、でもおかげで柔らかく受け止めてもらって、ふわふわしていた意識が途切れたのだったが……。]
……。
[目が覚めてから数分か、数十分か。
ひたすらじっと目の前の男性を見つめ続けていた。
いや、どちらかというと睨んでるというべきか。
瞬きすらサボり気味で、焚き火に照らされ乾燥して痛くなってきたが、まだ逸らさずにあざやかな紫に映し続けて。]
似てるけど……。
もしかして生き別れのお兄さんだったりしないよね……?
ドッペルゲンガーなら会わせられないな……。
[半分以上、現実逃避なのは自覚していた。
でも少しの間くらい待ってほしい。
自分そっくりのお姉さんと変な場所で出会ったかと思うと、別の世界に行かされたところまではいい。良くないけど。
その上幼馴染そっくりさんと出会うのは聞いてない!
これが映画なら要素詰め込みすぎでダメなやつではないか。
最初は髪の色と目の色に驚いて。
でも、本人と見間違えることはなかった。
それほど雰囲気が違ったからだ。
今語りかけてくる声も幼馴染とよく似ているけれど、低さや渋さだけでなく、含まれるものが違っているのが伝わってくる。]
へ? 飛行船? 飛行機じゃなくて?
いや飛行機から落ちたら普通死んじゃうと思う……。
[やる気なさそうな響きだ。
おそらく面倒ごとが舞い込んだと思っているのだろう。
このそっくりさんには申し訳ないが、こちらも色々とトラブルに巻き込まれて頭がぐるぐる状態なのである。
正直泣きたいし、わー!と叫びたいくらい。]
あのー……うーん……。
ここって日本じゃないですよね?
[一応聞いてみる。一応。]
あとここって夢の世界でもないですよね?
[さらに一応。どこか縋るように。
それから突然、自分の頬をパチンパチンと叩き始める。
夢じゃない、とポツリと呟き肩を落とした。*]
[川辺に佇んだ姿の背後から柚樹の肩に手を置いて声をかける。
振り返った顔と目が合えば、微笑みを浮かべた。
柚樹の瞳には、恋人と見た目には何も違わない姿の男が映っていることだろう。
取り乱したり焦った様子もなく、穏やかな口調で語りかける。]
[つらいことは全部、忘れていいよ。
幸せな記憶ほど、覚えている方がつらいことがあるって知ってるはずだよね、と笑みを崩さないまま、頬へと手を伸ばした。]**
[
朝のコテージの爽やかさにも長閑さにも見合わない、皮膚を打ち据える乾いた音
が響いた直後、空間には濃密な林檎の香が漂ったことだろう。
それは熟れて、熟れすぎて、腐り落ちる寸前に似た、咽せるほどの甘い香り。
"柚樹だったもの"の両頬の皮膚は、濡れた紙を指でたぐり寄せた風な不自然な皺が幾筋もできていた。]
ふ、フ、
ふフふ、フふ、アは、あハは!
ねエ、誰ニ操を立テてるノ?
"柚樹"ハ、あンたは要ラない、
あんタじャなイっテ、言ってルノに?
ひドいなア。
ヒどイ。
ひドーイ。
[脳を揺らすような甘い腐臭をまき散らしながら、"柚樹だったもの"はけらけらと笑い続けている。
"ポンコツの武藤"の代わり、"完璧な武藤"が、彼女のところに行ってるよ、もう遅いよ、と耳障りな笑い声が不快極まりない臭気と共にコテージに満ちていた。*]
[まっすぐに私を見つめる目。
穏やかに微笑む表情は、私がよく知る、"恋人の武藤"の顔。]
むとう……記憶、戻った……?
[武藤は、私の武藤なの?
縋るように見つめる眼前、武藤は私を幾度も"柚樹"と呼んで、優しい言葉をかけてくれた。]
…………ぅ、ふ、ぇ……むと……む、とう。
会いたかったよ……。
[なんだか信じられなくて。
抱きつくにも抱きつけなくて。
確かめるように、武藤の胸あたりのシャツを小さく掴んで、俯いた。]
[いつだったかも、こんな感じで立ってお話したこと、あった気がする。
あの時は、思いが通じ合った後で。
でも、"恋人とか無理だよ"と私が言い出したんだっけ。
あの時はすごく武藤を困らせたな……なんて思い出す端から、視界が滲む。]
むとう、武藤……会いたかった……っ。
[記憶、ぜんぶ戻ったの?
溢れる涙を隠そうともしないまま尋ねようとしたところで、頭がゆっくり回り出す。
今、武藤、何て言った?"
愛してる
"
って。
"つらいことは、忘れさせてあげる
" って。
────"これ"は武藤じゃない。
気付いて、私はそっと武藤(のような何か)から身体を離した。]
…………武藤、は。
"愛してる"なんて、そうそう口にできないんだよ。
[静かに、でもはっきりと、眼前の"武藤"へ告げる。
人への思いを口にするのが本当に苦手なあの人。
あんなにコミュ強で、いつだって人に囲まれているのに、こと、こういう事に関しては、笑ってしまうほどに不器用で。]
……それに武藤は、"忘れていいよ"みたいな事は、言わないよ。
[私が死んでしまう悪夢。思い出したくもない悪夢。
自分があの事故での唯一の死者だったのだと告げられたあの夢の中、私は"武藤から自分の記憶を消して欲しい"と切に願った。
武藤はその願いを口にする私の傍ら、「忘れたくない」「絶対忘れない」と吠えていたっけ。]
私たちは、辛いことは、分かち合う。
どんなに辛いことでも、無かったことにはしないし、忘れない。
[そもそも武藤がね、どんなにくだらないことでも片端から覚えてる人なんだよ。
私は武藤のそういうところも、大好きなんだけどね。]
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