47 【半再演RP】Give my regards to Jack-o'-Lantern【R18】
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ただいま戻りました
[しばらくして再び部屋の扉をトントン。
ノックをし、許可が出れば部屋の中へ。
その頃には彼女の分の食事は運ばれていただろうか*]
[ 零れる安堵の吐息。
破顔し、紡がれる
"おかえり"という言葉。
蕩けた顔のまま、
目を細めてにこりと笑顔を作れば]
……ただいま。
[ と、嬉しそうに言葉を返そう。
たった一言、それだけなのに。
口にするだけで、ああ、本当に良かったと。
心の底から喜びが溢れていく。]
[ それから、先ほどより
元気になったと言われては
頬を赤らめながら
視線をあちこち彷徨わせ。]
……もう。
[ 少しばかり拗ねたような口ぶりで。
ふにゃっとだらしなく緩んだ表情は
彼の胸元に埋めて隠してしまおうか。]
[ このまま彼に寄り添い続けていたい。
…──そう思っていた矢先の事だった。
急に彼がぴくりと身動きしたかと思えば
己を背中に隠すように動いたのだ。]
…? ……どうか、されました…?
[ 一体、どうしたというのだろう。
彼の背中越しに、
霧の方へ視線を差し向けれども、
その先に何かが見えることはなく。
ぱちぱちと瞳を瞬かせて
ただ狼狽えるばかりであった。
そうして彼の背に隠された後、
一秒か二秒、僅かな時間が経てば]
[ ふと、ぞわりと鳥肌が立つ。
膝ががくがくと震えだし、
背筋に冷たいものが走っていった。
一拍遅れて上半身がぶるりと震え、
堪らず、彼の服を縋るように掴んでしまう。]
……ひっ!?
[ 何か、…魂を震わせるような
何かが、霧の向こうから近付いてくる。
そんな気配が感じられたのだ。]
[ どんなに目を凝らしても、
霧の向こうは見えない。
それでも、この、空気を凍て付かせるような
恐ろしい何かの気配は気のせいだとは思えなかった。
頭の中で警鐘が鳴る。
早く逃げなければ。そう思うのに。
足は凍り付いたように動かない。]
[ 恐怖に戦慄いていれば、彼の声が耳に届く。
その言葉の内容に、思わず目を見開いては
信じられないというような顔をして、
悲痛な叫びを上げた。]
え、そんな…!
私も時見様の御傍にいます…!
[ 此処に残ると、まるで
私だけを逃そうとするかのような言葉に、
反射的にそんな言葉が口を突いて出てしまった。
自分がこの場に残ったところで、
足手纏いになるだけなのに。
それでも、彼と一緒に、傍にいたかった。
離れたくなかった。]
[ ぎゅっと背中から彼を抱きしめる。
縋りつくように、離れないというように。
けれど、彼が続けて発した言葉に
一瞬冷静に思考を巡らす。]
────………………。
[ 暫しの間が空く。
彼の背中に顔を埋めたまま。
弱々しく言葉を発した。]
絶対に……絶対に……
……いなくならないでくださいね……?
[ 彼は何と答えただろう。
そのまま腕を離し。つま先立ちをすれば、
彼の頬に柔らかな温もりを残す。]
すぐに……すぐに戻って来ますから…!
[ そうして、潤んだ瞳を彼の方へと差し向けて。
何度も、何度も、彼の方を振り返りつつ。
名残惜しくも、
森の奥へと姿を消すのであった。]*
――夜・城内――
[ 見て分からないことってなんだろう?
怪訝に思うけれど、お腹の中で膨れる何かの感覚にそんな余裕ははなくなってしまう。お尻の穴もさっきよりちょっと広げられているみたい。]
はっ……はっ、……うん。
あとで、教えてね、ご主人さま。
[ でも笑ってと言われれば彼女を見上げて、
顎の下を擽る指が気持ち良くって笑い返す。
指が離れる頃にはいま生まれた違和感も
馴染んだ感じになっていた。]
へへっ。
賢くて偉いの。
[ さっきの姿勢は待て、のポーズ。訂正訂正。
伏せた姿勢から背中を起こす。
両手は膝に揃えて置いて、腰を少し浮かせて尻尾を振った。コリコリと身体の中で擦れる感触が不思議だけど少し気持ちいい。]
……ん?? どうしたの、ご主人さまっ。
[ そうしていたものだから、
ご主人様が黒いローブに着替えたことも、掛けてもらった魔術のことも、気づいたのは一瞬遅れてからだった。]
――夜・城内――
わぁ。夜なのに、街まで?
[ きらんと目を輝かせていた。
それはきっと楽しいこと。
楽しいお散歩。普段は見れない色んなものが見れる。
頭を撫でられ、リードを牽かれればたたっとベッドを降りてついていった。本物の犬の身体じゃない分、そう素早く動ける訳じゃなかったけど。]
……?? あれっ?
[ 城内を進む内に(4)1d6回ほど、魔物達とすれ違った。
可笑しげな笑い、くんくんと匂いを嗅がれたり、
訝しげに少し舐められたり。
何かが変な気がした。
アリアは前にもこうして確かめられてたような。]
わん! 行くー!
[ ぐいとリードを牽かれるとご主人さまの元へ駆け寄って、
転移の魔法陣に飛び込んだ。
そして現れた先は大きな街の外縁部。
ざわざわした気配、夜気に晒された素肌がぶるっと震えた。
毛皮がないせいだ。
――おかしいな、どうしてアリアに毛皮がないんだろう?]
――夜・街――
[ どことなく心細さを感じて口にした。
お散歩は楽しいことのはずなのに、何故だろう。]
うん、外……だね……?
お散歩。わん。
[ 少し進むとアリア達の方に気づいた兵士がいた。
鋭く掛かる声と視線が不安を煽る。
でもご主人さまが一言で封じ込めてくれた。
ほっとして、頼りになるご主人さまに身体を擦り寄せるようにしつつ続いていく。でも、そこから先で出会う人間たちは放置したままで――]
んっ……ね、ねえ、ご主人さまっ。
どうして、あの人たちにはさっきみたいにしないの?
何だか笑ってる。
じろじろ見てるよ、私のこと。
[ 裸身を刺してくるような街の男達の視線や声。
膝を着かずに手と足で歩く様子を後ろから見れば
性器もお尻も丸見えなのだから、
注意を集めてしまうのは当然だった。
酔客の関心に晒され続けて怯えたアリアは、
身を竦めるようにしながら進んでいく。]
ねえったら、ぁ、っ、きゅぅんっ!
[ 遅れてしまってまたリードを牽かれた。
おかしい。どうしてこんなに遅れちゃうんだろう。
って、言われてるのに。
って、お返事したのに。]
…………犬の、
『ように』
?
[ 鍵の掛かった錠前が開くような感覚。
それと共に私は今の状況を正しく理解する。
さあっ、と血の気が引く音が聞こえるようだった。
メイベルの命令に潜んでいた矛盾。
本物の犬に対して、犬のように、という言い方はしない。自ら答えたことでその暗示
は強化されていたけれど、相反する命令だと気づいた今、優先されるのは後から上書きされる命令になっていた。]
……わ……わたし、犬じゃ、ない……
……め、メイベル……?
[ 顔を青ざめさせて街路で止まる。
メイベルを見上げるけれど、また強くリードを引かれてくっと首が絞まり、咳き込んでは這いずり出す。
行く先には酒場。まだそこで下される命令のことは想像もつかず、動転した頭のまま縋るように四つ這いになって進んでいった。
もう犬ではなく、乳児がするようなはいはいの形。
それでも、出来るだけ急ごうと。]**
[ 先代魔王メフィスト。
彼は今にも息絶えようとしている敗者の言葉を聞き入れ、命を救った。
メフィストが知る人類は盲目的で、排他的で
善悪の境界を明確にせねば気が済まない、
旧き時代を忘れ洗脳された、どこまでも人間の善性を信じる者達。
幾度使者を送れど、ただ一人として帰って来なかった。
用意された話し合いの場は全て戦場だった。
父王の代で魔族は既に人類を諦め、
彼らと同じように同族を庇護し、宿敵を見定めた。
ついに首元へ迫るまでに育まれた勇者は結局、その力には届かない。
届かなかったからこそ、メフィストを驚愕させることを口にした。 ]
[ メフィストは隠された旧時代の遺跡へと降り立ち、
そこにある全てを見せ、世界の真実を女神の子たる勇者に告げる。
酷く動揺した勇者を城へ連れ帰ったメフィストは、
絶望し自ら首を差し出してくることも覚悟していたらしいが。 ]
つまり俺達がしていたことは、
化け物の討伐なんかじゃなくて、理由も知らないただの戦争だった。
色んな不都合を隠してしまった奴らはいるけれど、
どこにも正義は無いし、悪だと決めつけるのも難しい
簡単に解決出来ないような理不尽が重なり、作り出したのがこの世界。
……そういうこと、だな。
[ むしろ俺は、全てを知ることで生きる気力を手に入れていた。 ]
魔王、お前……
いや、あなたとあなたの民は人類を数え切れない程に殺めた。
俺の大切な人達も含めて、だ。
しかし、それはこちらも変わらない。そして力の差は圧倒的だった。
それでもあなたは俺に誠意を見せた。
[ 既に人間ではないことと、何の為に勇者にされたのか
それだけを指摘し深く心を砕いて殺す、その選択も出来たのに。
憎しみよりも、新しい可能性を選んだ。 ]
それは世界を救うなんてことじゃ、きっとなくて
多分沢山の人達を絶望させてしまうと思う。
新しい不幸も生まれるのかもしれない。
言い訳なんて出来ない、皆に恨まれる裏切り者になるんだろう。
でも、どうせ死ぬ為に生きてきたのなら……
[ 正義など、無いのならば。 ]
あなたの元で、もう少し足掻いてみたい。
[ 魔族の脅威になり得る勇者の代替わりを終わらせる為に、
これ以上無知なる被害者が生まれない為に、
教会による世界支配を終わらせる為に、
ある筈の人魔が争わずに済む未来を見つける為に。
対極であった両者の心は、既に同じ道へ向いている。
これが大切な仲間を殺した男に忠誠を誓った理由。
世界を本当の姿に戻す為に裏切り者になった経緯。 ]
[ 人類、ましてや勇者を迎え入れるという王の意向に
当然反発と不安の声があがった。
初代王の生前を知る者は既にその息子の魔王のみ。
旧き時代は魔族にとっても、御伽噺にも近い現実感の失せた過去。
生きる為に戦い、血肉を喰らい命を繋ぐことこそが彼らの意味。
永き戦争に一方の滅び以外の終わり方を求めるのは、
綺麗事の夢物語のようにしか思えなかった。
しかし、王を守ることもまた、魔族の意義であった。
敵を定めることで一つになっていたのは、人類だけではなかった。
目的を共有し、隣で武器を取り
同じ御方の命で動くことにより受け入れられてゆく。 ]
[ 各地に隠れ住む、背信の烙印を押された反教会派の人々を探した。
その者達は人も魔も忌避し静かに生きることを望んでいたが、
痣を見せて自身の体験と教会の真実を語れば、
ある程度の協力を望むことが出来た。
自分が生きている限り生まれない筈の新しい勇者に出会った時、
説得を試みた結果逃してしまい、教会に裏切りを知られたのは失態だ。
教会に新たな嘘の筋書きが加わる。民が魔族に耳など貸さないように。
人類だけが武器を振るっていたのではない。
どんな考えがあろうとも、魔族の歴史もまた血に塗れている。
“血を流さず言葉で全てを解決する“笑える程の理想論。
元より無かった可能性は、ゼロに等しくなってしまった。 ]
[ 背信者の数は、教会と争うにはとても足りない。
魔族という戦力を投入すれば、説得力が消える。
教会に攻め入らねば真実を明らかに出来ない、
しかしそうするには勇者を生み出す教会を止めねばならない。
数多の矛盾が足止めとなった。
激しさを増していった人類の攻撃、戦いの負担も比例した。
根の破壊を試みるにも、人類は当然強く抵抗し各地で争いは続く
長引けば長引く程勇者は強くなり、魔族の首を刎ねていった。
一人の勇者が土に還らなかったことにより、
その力を多少後退させられたとは思われるが
元より一代が十年続けば随分生きたと言われる程度の儚い存在
すぐに遅れを取り戻す、至るべき領域へと育まれていく。
見つけた種は一向に芽を出さず、
あの木だけが豊かな土の元、天を目指して伸びてゆく。 ]
[ そうして裏切りから百と十数年後。
────「最後の勇者」が生まれてしまった。
圧倒的だった。
まだ少年時代の面影を持った齢で、たった一人で魔王領に踏み込み
阻まんと立ち塞がった幹部は、ほぼ壊滅。
生き残ったのは自分と、鎧の如く堅い身体の獣人
それに元より能力が戦闘向きではなく前線に出ない参謀のみ。
竜族リヴァイアサンは、王を守る為に命を賭け、没した。
王妃となる前は戦場で牙を振い女将軍と呼ばれていたという。
凛として聡明で多くを語らない、夫たる方によく似た性格だったが
最期に撤退の命に従わない頑固さを見せた。 ]
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