人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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さらに、これは男が逮捕されて暫くの話。

男は、牢から姿を消した。
男が収容された牢はもぬけの殻になった。
けれど、誰もそれを大事にはしなかった。
巡回の刑事も、問題なかったと報告した。
そこにはただ、しんとした牢だけがある。

#牢獄

さらに、さらに、その後の話。

十数分の空白の後、男は自ら牢に戻ってきた。
素直に牢に入り、鍵が閉まれば腰を下ろした。
その足取りは確かだった。瞳は前を見ていた。

イレネオ・デ・マリアの牢は、酷く静かだ。

#牢獄

「…好きなんですねえ、みなさんのことお」

裏切られたくないというのはそういうことだ。
同意を得られたことで女は確信してくすりと笑う。
あなたにとっても大事な人達なのだ。それを知れただけでも女には大きな収穫だった。

「ふふー。そおですかあ。」
「あたし、結構うさんくさいかなあって思ってたんですけどお」

聞かれなければ言わない、聞かれたとしても答えないつもりだったことの数を数える。
幾らでも不審に思える要素なんて、あっただろうに。

だけど、『捕まって欲しくない人』の話をした時くらいから、あなたのそれには気付いていたのかもしれない。
…少なくとも悪しくは思われていないこと。それくらいは、女にも。

急に立ち上がったあなたにはぱちくりと――することもなく、女はただその瞳でにこりと笑う。
何のことやらぴんと来てはいなくとも、そこには多分に母の影響も残されていた。
…女について調べなかったあなたが知るはずもないけれど、女の母は、娼婦だったから。

励ましの言葉には少しだけ浮かぶものがあった。
誰か
にとっても、いい娘でいられていただろうか。
使い勝手のいい駒だとしても構わなかったけれど、…そう思われていた方が、ずっと嬉しいのなんて当たり前だった。

そうする間に徐々に近寄るあなたに今度こそきょとりと目を瞬かせた。
だってまさか、思ってもいなかったから。
それも今『人を信じられない』といった男の口から。

「――あ」

その手が髪に触れた時。
多分誰かの手の平とも重なって。

それは本当に似ても似つかなかったと思う。
粗雑で下手くそなあの手とあなたの手では、
きっと昼と夜ほどにも違うSono differenti como la note e il giorno


だけどそれだけが理由じゃない。
見透かされた心地への動揺と、何より、何も知らないあなたからその言葉を貰えたことが。
――まるで本当に
認められた
みたいに思えてしまって、ゆらりと視界を歪ませた。
どっちつかずの蝙蝠が、居場所をひとつ認められてしまったように感じられた。

「……っ、ごめ、なさ……」

元からいろんなことが重なって溢れる寸前のグラスだった。
溢れ方も分からなくなってしまったから溢れず済んでいるだけだった。

しとりしとりと、雨粒のように頬を伝い落ちる。
急に泣いたって困らせるだろうに。今度は止め方の方がわからなかった。
慌てて眼鏡を取り払い涙を拭う。
それでも簡単には、止まってくれそうにない。

「ルーカス……ルチアーノ、さん?とは別の人?
 猫か酒場を探せば見かけられるって聞いたわ」

「……思った以上に警戒されているのね。
 わたしたち、こんなふわふわした夢の中なのに。
 欲しい情報がどうにも決め手に欠けるから、
 明日の夢にもう少し期待をかけてみてもいいかもね」

アペロールスピリッツを2つ念じて取り出してから、
片方を貴方の方のテーブルに置きなおす。

「有能だと思われても駄目だなんて、有能な人って大変なのね……私は一度も言われたことがないから、ちょっと羨ましいくらいだわ」

喋らない。

例え血が流れようと、爪が剥がれようとも、喋らなかった。

「……………………
牢に入る前に墓にぶち込まれるぞこれは


想像通りの結果に本気で命の危機を感じている。
それはとてもとても仲睦まじい女同士の縁故に。

確かに男は貴方の身辺調査もしなければリスクを度外視で手伝いをしていた。
だからこそ知らなかったのだ、この依頼の一番の爆弾が貴方という存在と自分の女癖の悪さであった事を。

「あー……謝らんでいい。
 最悪俺の尊厳がなくなるだけだ、安い」

だがそんな制裁はすぐには起こらないことは凡そ分かっている。
何故なら次に連れて行かれる候補に挙がった名前の中には―――

「……好きなだけそうしてればいいさ。
 お茶でも飲むか、ご主人様。好きな茶葉を持ち込んでるんだ。
 珈琲はなあ……練習中で自信はないんだが……」

貴方が何か無理に話さないように背を向けた。
この後に言わねばいけない事もある、落ち着く時間も与えるべきだろうと。

グラスを差し出した。いつも通りに。

いつも通りにカウンターの向こう側にいる。

「賢明だと思いますよ。
 この状況下で一人でいて良いことはあまりない。
 共にいる相手が信用ならなければそうともいかないが」

お互いにそこまで腹を割って話せていないわけでもなかったはず。言外にはそう示して。

「大したものは出せませんが、
 迷惑にはならない程度に勝手に寛いでください」

何をするでもなくソファに座っていた男はさも何も気取ってないかのように。家の中は最低限の日用品が点々と置かれているだけで、どことなく殺風景であった。

――しばらくは、どう頑張っても涙は止まることなくて。
ついでを言うならあなたの言った、『紅茶』やら『珈琲』やら『練習中』やらで勝手に泣く時間を増やしていた。
それでも飲む気はあるらしく、ぐずぐずの顔で頷いた。

珈琲でも。紅茶でも。
どちらでも多分
とっても美味しい


「………………はい…」

そうしてカップを傾けて、ようやく落ち着きを見せた女の目は腫れなかなか酷いものだ。
それでも溜め込んでいたグラスの中身は、随分軽くなったように思う。

「今はテオの近くが一番落ち着くと思ったから。
 誰かの邪魔になるのも嫌だったの。上司の前で泣くわけにもいかないしね」

少しおどけたような言い方。大分落ち着いてはいるようだった。
あなたの言葉にも、前向きな感情を込めた頷きと笑みを返す。少なからず信用があることはやはりうれしいものだ。

「お気遣いなく〜。押しかけたのは私の方だもの」
「それにあなたが帰ってくるまでの間も、じっとしてたらダメになりそうだったから。
 ぐるっと街を歩いてきたんだけど……」

こんなに色々買っちゃったから、と手提げ2つ分の荷物を軽く持ち上げる。
焼いたチーズのいい香り。
翌日の妨げにならないくらいのミニサイズワインを添えて。

あなたの隣にスペースがあるのなら、ソファに腰を下ろして。
いつもの調子ならここで寄りかかってやっても良かったのだけど。流石に理性が働いたようだった。

「あんまり、家に物置いてないのね」

「……顔洗ってケアをしてくれ。
 流石に美人の顔が台無しだ明日に響く」

爪は、と言いかけてまたなにかの琴線に引っかかっても困ると口を噤んだ。
女が泣いているとき口は災いの元、余計なことは言わない方がいい。身を持って学んだ。

「泣かすだけなら良くするんだがなあ……」

対処法と止め方を知らない無法者はため息をつく。
そうしているとその一通の電話がやってしまった。


その電話から届いた連絡で男は固まり動かなくなる。
そうして次に息を吐くころには怒りの形相になっていた。


『……の奴から定期連絡がなくなりました』

          『電波が傍受されてる可能性が』

   『あの時と同じ場所から、これは警――』


「Cavolo!! あんのクソッタレ……!」

床に携帯を投げつけそうになったのを抑え息を整えた。
貴方は男慣れをしていないと言っていたのに、ここで声を荒げるのも良くない。


「……悪いなお嬢さん、少々仕事に不手際があったみたいだ。
 実は俺は人気者なんだ、お陰で随分ご執心なお客様が居てなあ。
 部下が数人連絡がつかなくなった、
 警察を嗅ぎ回ってるのがバレたんだろう」
 
運が悪かった、と。それにしても悪いことは重なるものだ。

「今日中にこの場所を移動できるか?
 そうだなあ……三日月島まで行けとは言わんが」

と適当なホテルの場所を言いながら貴方とは視線を合わせない。

「狙われてるのは俺だ。
 その上次の執行対象にも上がってるらしくて中々笑えん。
 主催の方は他の候補者もいる、後回しの可能性はあるが……

 しばらく顔を合わせん方がいいよなあ?」

貴方を一人にさせてしまうことにひどい罪悪感があった。
本当は今日までのように会話は少なくとも顔を確認したくあるのだ。
それでも、仕方ないことだってある。

だからかその言葉はこれまでで一番静かに、
わかりやすく哀愁を帯びて落とされた。男は存外正直者だ。

それのことばかり考えている。


「んあ、いやルチアーノだよ。愛称。
 猫か酒場ねえ……ま、間違いではないわな」

「俺達が向こうの立場でもそうしただろ。
 念には念を入れて損は無いってね
 どうしても後手に回らざるを得ないのもままならん所だ」

カクテルがテーブルに置かれれば、
遠慮なく一口、グラスを傾けて。

「有能だと思われれば単純に仕事が増えるしな。
 そう思われて良い事なんて少ねえよ」

少なくとも、周囲の信頼は得られるのだろうが。
それと同時に厄介事も舞い込む事になるだろう。
それをこの男は厭っている。

【人】 コピーキャット ペネロペ

「──お待たせしました、ビーフシチューですっ」

#バー:アマラント は今夜もいつも通り。
雨時々曇り、生憎の空模様ではあるけれど。
実はマスターの得意料理はシチューだったり、
なんて耳打ちする店員もいつもと変わりない。

「空いたお皿、お下げしますねっ」

#バー:アマラント
(26) 2023/09/19(Tue) 21:44:07
空気の緊迫を感じ、息を呑む。
あなたの伝えた内容のほぼ大半は、きっと存外にすんなりと呑み込めた。

目を伏せる。
嫌な想像ばかり過るのは仕方のないことだ。
そうでなくとも、女はこの日、

…それでも。



「――残念です、ねえ。」

笑顔だ。感じた寂寥は声音に乗らない。
女はあなたと違って嘘つきだ。
いつもそうやって何かを誤魔化して生きている。

「とても優秀さんでしたから、助かっていたんですけどお」

結局泣き腫らしたままの赤い目だけれど関係はない。
今はただ、あなたの心残りにならないように。
少しでもあなたが、自分のことに集中できるように。

泣きじゃくる子どもが、いつだって心の中にいる。
行かないでって。ひとりにしないでって。
だけどそれを隠して笑ってきた。

今日だって、今だって、同じだ。
子どもの頃からずっと繰り返していることを、今も、ただ繰り返すだけ。

「……行ってくださあい。」
「ホテルは自分で、何とでもできますからあ。」

「あたしもここを、すぐ離れます。」
「…ふふ、何の備えもしていないわけじゃありませんから、大丈夫ですよお。」

「守られるだけのお姫様じゃ、ありませんしい」

それこそ顔のケアだとかは後回しだ。
デスク上に置いていた大切なものたちだけは確かに回収し、着々とここを離れる支度も済ませていく。

「落ち着いたら、また、連絡をくださいねえ」
「――お兄さん」

へらりと笑う。大丈夫。…きっと、また会える。

「置いたって俺の心を動かすものは、
 そうそうあるわけじゃないですから……」

「寝心地の良いベッド、
 座り心地の良いソファ、
 あとは多少の趣味さえあれば、それで」

大窓の外、バルコニーの方を見遣れば、
花壇と秋の花が幾つか覗いている。
それしかこの部屋の色どりに寄与していないのである。

「そっちは落ち着かなくて衝動買い、ですか?
 何となく納得しますね、あんたが女々しい真似してると」

ローテーブルへと視線を向ける。
拡げたければ拡げてやればいい。

「……いやだねえ、ここで泣かれてもそんな振る舞いされてもちっとも安心できやしない」

「貰った前金は返さんがもう報酬はいらん。
 その分ネイルや服に使ってくれ。あと豪華な食事。
 散財するほどにはならんかっただろうが、十分あの出費は痛手になっただろ」

ああ金はどこからかとかも気になる事はまだ残ってるな。
だが女は謎が残ってる方が輝くかだとか、また余計なことが頭をよぎった。
やはり中々に自分は疲れているし誰かの為に動くなど性に合っていない。
しかしここが一番踏ん張らなければいけない時間である。


「俺は早い所自分のものを片付けに行くとする」

これ以上自分のせいで誰かを巻き込みたくなどないから。


「勿論? また連絡する、平気な顔してな」

せめて貴方だけでも無事で居て欲しい。
余計な約束をしてでも、甘ったれはそう願わずには居られなかった。

「そう、なの。困ったら彼を当たってみるといいって聞いていたんだけど……」

部隊から名前の挙がっている一人だ。検挙されるのもそう時間はかからないと思うと、どこか陰鬱な気分になって俯いてしまう。

「そうなんだけど、ボロを出さないで良くできるなって感心するわ。私ならコードネーム、呼び間違えちゃいそう。
 優秀な子が揃ってるって事なのよね。強敵だなぁ……」

こちらも合わせてグラスを一口、飲んで。

「有能扱いも無能扱いも何かしらのデメリットがあるのね。
 中庸にみられるのが一番平穏な生活は送れそう」

ネイルや靴や、豪華な食事。
女はただそれについては、曖昧な笑みを返すだけに済んだ。

そんな用途にこのお金を使ったことは1度もない。
使わなかった分は使わなかっただけ貯め込まれ、此度ようやく日の目を見たというわけだ。
つまり何ら痛手でもなかったという話だが、やっぱりそのことも結局あなたは知る由もない。

「はあい。じゃあ」
「…ご連絡、楽しみにしてますねえ」

このホテルを離れる準備を進めながら。
笑って女は、あなたを見送ったことだろう。

そうしてきちんとこのホテルも離れ。
次のアジトは、またあなたの知らない別のホテルなのだった。


「あいつ、顔が広いからな。人気者の宿命ってやつかね」

盗み見た話では耳聡い者から順番に、と。
名前と長所が知れ渡っているという事は弱点にもなり得る。
凡庸である事のメリットもまた、そこにあるのだろう。

「あんたにとって敵でいいのか?穏健派だしまあいいのか。
 ま、強引且つ唐突に施行された法案とはいえ
 流石に優秀な奴が集められてるだろうしな」

「まあ実働部隊ともなれば色々恨みも買うだろう。
 そのうち尻尾は出てくるだろうさ」

「言葉の綾で、つい……
 実際にどう集められたかはわからないから、
 味方か敵かはわからないけれど……
 でも打倒したい法案なのは事実だから……敵?」

「命じられていたりするなら恨みは私はないんだけどね…
 いずれにせよ、もう少し待つしかないのが辛いわ……」

「あとは置くなら私くらい?」

当然、冗談。話しながら、ローテーブルにチーズとろけるパニーニやサラダ。ローストポークにチーズや生ハムの切り落とし。デザートにはカットフルーツのパックを並べている。
それぞれ、食べきれるよう量は抑えられているようで。ワインも多くて1人2杯くらいといったところ。
ワイングラス、ある?なんて聞きながら。

「まあ、私の部屋も同じくらいね。殆ど使ってないし……
 あとは貰ったものが置かれてるくらいで」

視線を追って、秋の花が目に入ると。ふふ、と小さく笑う。
家でも育ててるんだなあ。

「……兄弟同然で育ったひとがね、捕まったんですって」
「弟の方はあなたも知ってる顔かもしれないわ、警察の子だから」

だから、どうしてもね。と、一つだけ小さな紙袋をソファにのこして。
眉を下げて笑う。


「法案に賛同したか、単に仕事としてやっているか、
 何らかの取引、弱みを握られたか……思惑はそれぞれだろうな」

「間違いないのは例の法案が街を荒らしてるって事だ。
 マフィア、警察、一般市民を問わずな」

誰彼構わず向けられる矛先は街の日常を壊していく。
それは誰にとっても本意ではなかったはずだ。

少なくとも、件の法案に賛同した者以外にとっては。

「この夢も予知夢までは見せちゃくれないらしいな。
 ま……急いても事は動かない。次を待とうじゃねえの」

夢の景色は移り変わっては薄れ、消えていく。

そして、そのうちにまた、目が覚める。

プランがあった。

雨の日だって
#バー:アマラント
はいつも通り。
日中は程々に過ごしやすくとも、
夜になるとやっぱり少し冷えるもので。

──マスター、何か体があったまるようなもの頼めるかい?
 ああ、すぐに出せる」

マスターの得意料理らしいシチューは具沢山。
なんだかちょっぴりお得な気分になれるかも。
ライ麦香る食事パンと一緒にどうぞ。彼女が好きな取り合わせ。


見つけたぞ
』『今日のそいつも
当たり
だな?』
『そして俺の観測範囲では此奴が
最後の
一人だ』

あなたの留守電に一件。
メッセージがあった。

アリーチェ・チェステ

『武運をお嬢さん』

たった十秒ほどでその声は消えた。
賭け直せど無情にも使われていない電話番号を示す電子音が受話器からは流れる。

だがきっと、その男は変わらず貴方の味方で居続けている。

正義仲間を信じている。