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【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ傍 に居るじゃないですか。君は。一緒に居るって言いましたよね。 信じていますよ、信じています。 ――一緒に居たかった? 君が 欲しかった。 君の 命が 欲しかった。君と、 「掃守さん…………」 友情でもない、恋情でもない、家族愛でもない、 他人に言われた、 "仲良く見えた" 、それを本物にしたかった。 全て後になって、自分が何をしたかったのか気付いて。 「俺もやっとわかった。自分のやりたいことが 自分のやりたいことじゃなかったって」 殺したかった気持ち と、傍に居たかった気持ち が溢れて、どうしようもなくなってしまった。 ――その上もう君への気持ち以外でも自分は埋められている。 (-110) 2022/03/12(Sat) 1:42:48 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「それでもやってしまったことを、後悔したくないです。 君の事を好きな気持ちも、君を殺したい気持ちも本物でした」 「君が、もう誰にも届かない場所に居るのが、嬉しいです」 「君が、隣に居ないのは寂しいです」 「幸か不幸か、は、……思うところがあるので、後にするとして」 「今君に手を伸ばそうとしていることが、感じたことが」 「これが、一緒になりたいってこと、だと、思う?」 「それを"理解してくれる"なら、 之からこの物語を一緒に終わりにしに行きましょう」 (-111) 2022/03/12(Sat) 1:50:31 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「意地悪」 抗議の声と共に浮かべた笑みは自然なものだった。 死者は影を落とさない。死者の歩みは響かない。 けれど確かに傍に居て、それでも傍に居る事を証明できない。 ただ、生者にとって都合の良い夢にしては、随分と我儘なもの。 それが今ここにある夢の続きだった。 「…僕も、今はあの時殺しておけばよかったと思ってる。 多分、きみに触れられたらきみと似た事をしていたとも思う。 生かそうとしてるわけじゃないから、同じではないけど… 幻滅されても、ひどいわがままでも、そうしたいような事」 半ば独り言のように言葉を返しながら。 ぼんやりと灯るエレベーターのランプを見上げた。 最上階に辿り着いた時にはきっと、結末は決まっている。 そんな漠然とした予感があった。 「きみに死んで欲しくないのに、きみを殺したくて。 少しでも長く一緒に居たいのに、早く終わらせたくて。 きみと生きていたいのに、きみと死にたくて仕方ない」 二律背反、自己矛盾でいよいよおかしくなりそうだ。 これって死んだ事でおかしくなってしまったのかな。 或いは、案外本当は、自分ってそんな人間だったのかも。 自分でもわからないのだから、何れも定かではないのだけど。 (-115) 2022/03/12(Sat) 4:17:22 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「僕はあの時、手遅れなんかじゃないときみに言って」 滅多に人の言葉を否定しない自分が、否定を叩き付けた時の事。 「今も確かに何もかもが手遅れではなかったんだと思うんだ」 それがたとえ願望じみたものであったとしても、 ただ願望ばかりというわけでもないのだとは、思っていて。 「でも多分、今にして思えば。 手遅れではなくとも、そこから先がなかったんだろな」 「いつからかはわからないけど、なかったんだ、僕達には」 欲しかったものは拾っても、踏み出す先がなかった。 互いにそれぞれの理由で身動きが取れなくなってしまった。 優しくない世界に引かれた、優しさで舗装された道の先。 行き着いた先、どこまでも優しく残酷な袋小路がこの場所だった。 閉塞感とぬるま湯に満ちた水槽のようだった。 「だから、二人で終わらせに行こう。 また失敗するかもしれないし、それに もしかしたらすごく後悔したくなるかもしれないけど、でも。」 茫とランプを見上げていた視線を隣のきみへと戻して。 触れられずとも手を重ねて、 心よりの笑顔と共に未だ名付けられない想いを贈ろう。 「それでも、そうだとしても僕は、きみと一緒に居たいよ」 (-116) 2022/03/12(Sat) 4:20:37 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「意地悪、……あれ。 俺はなんで、こんなに言い訳をして」 ふ、と、言葉がリフレインして。 よろけるように一歩二歩と、空に近づく景色へと近づいていく。 「俺は、だって、君のことが」 好きならば、じゃあ、つまり? 幸せに、してあげたかったんじゃないのか。 「君が、望んだから俺は一緒に」 彼の幸せを聞けばよかったのに、諦めたのは自分。 だから、もう、これは、全部俺のせいで。 「……なのに、なんで、君にまだ聞いて」 なんで許してくれる? なんで、一緒にまだいてくれるの。 俺と生きて、死んでほしいほど好きだから? どうして、そんなこと、何を言われても理解できなくて。 「……、あ、れ」 自己満足の近道の中、一番欲しかった人。 それなのに、それを手放してたうえで、 その命に首輪をつけたのは自分だった。 だから、こんなに。 (-136) 2022/03/12(Sat) 18:03:46 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「、」 既に壊れた心は戻らない。 「……たい、な」 同じ気持ちななどなれなくとも、 もう、瞳の色は同じだと思うから。 「……いたい、 たいよ」 もう、 連れていくね 「連れ去ってよ、掃守さん」 エレベーターは、何故か屋上へと直通でたどり着く。 こんなときもご都合主義で、俺たちは非現実を夢を見ている。 「失敗や後悔の先にも、君は傍に居るんだよな。 ずっと。居るんだ、ここに、そう。だから」 試すような真似をしてしまいました。 君がどれ程俺の事をみてくれているのか、好いてくれているのか。 それが聞きたくて、俺は、この問いをもうしゃべるわけもない死人に投げ掛けていたんでしょう。 殺してよかったんだ、俺達は救われている。 死ぬことが正しくて、それが求められた停滞になる。 これが良いことじゃないですか、って。 (-138) 2022/03/12(Sat) 18:23:23 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ邪魔な障害物を消して、柵も取っ払って。 縁まで来たところでようやく君と目があった。 何度か瞬きをしてから、どうしようもなく涙がこぼれそうになって、触れることのない手を伸ばした。 「君を背負うことから逃げていて、ごめん。 一緒にいようか。これからもずっと。 死んでも、離しません。 何処かにいかせません、君は俺のものです。 そして、……俺も。 ……運が良ければ、いつまでも変わらずに。 君のものに、なるんじゃあないですか」 なんとも、情けない言い方をするのは。 自分はとても不運だと知ってしまっているから。 そんな、死んだあとの君がどこにいくかすら、無駄なことを気にし始めてしまう前に。 深く、深呼吸をした。 (-139) 2022/03/12(Sat) 18:35:22 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『そうですね。おかしな話だ』 自分の知る限りでは、脳や心臓が動かなくなれば人なんてそこで物語の幕が下りるものだから。その先の蛇足なんて誰にも紡げないものであると思っていたから。 『でも、それでもいいと思います』 『カミクズさんが後悔しないのなら』 『ここにはおかしいからやめろなんて、意思を取り上げ押しつぶしてくるような法も人もありませんから』 死者にとっての都合のいい話があってもいいじゃないか。どうせ全てが水泡へ変わっていく夢なのだとしたら。 誰かだって言っていたでしょう? 『W最後に楽しかったなって思って死ねるなら、 それは幸せな事ですからW』 『消えてなくなり本当に死を迎えるまで、それを追い求めてもいいんじゃないでしょうか』 ▼ (-142) 2022/03/12(Sat) 19:25:41 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ 貴方の本心を黙って聞いていた。死んでから自覚した思いを拾い上げていた。 名残が生者に出来ることなど、ほんのささやかなものでしかなくて。手を伸ばしてもすり抜けてしまう。 そんな光景を思い浮かべて、苦い味が胸の中に広がった。 『遺される側は辛いとは時折聞きますけど』 『 その場 に遺される死者も、辛いのでしょうね』▼ (-143) 2022/03/12(Sat) 19:26:01 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『後悔は特にしませんが』 馬鹿正直に前置きを述べた。この青年はもう天秤が一つの存在以外に傾くことなんてないから。躊躇いなく身も蓋もないことを述べてしまう。 『貴方とまた話が聞けてよかったなと思います。俺にとって有意義な時間でした。 もう少し話をじっくり聞きたかったとさえ考えるほどに』 今後の活動の為に聞いた話だけではなくて。 いつも曖昧に笑ってひた隠しにしていた貴方の本心を聞いているこの光景が見れたことも、青年にとっては歓迎すべき利であったのだ。 ▼ (-145) 2022/03/12(Sat) 19:26:21 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズWこの場所は、ここで誰かと過ごした時間はW Wきみにとって少しでも、納得とか、満足の行くものでしたかW 『』 入力中。けれど、それも一瞬のこと。 『いいえ』 『と答えたら、貴方はどうしますか? ……半分はいで、半分いいえと答えるべきでしょうか。』 『俺は最初、命を返しに来たんです。 俺は臓器移植によって助かって、今こうして生き続けることが出来たから。 周りからは救われた命を無駄にするなと言われたから、惰性で生きて批難されるくらいなら提供者として死んで無駄なく命を使おうと思った。 貴方の次に、立候補するつもりでした』 『でも生きる理由そのものに出会いました。 そのせいで俺は欲が出るようになりました。 人と過ごす時間がもっと欲しいと思うようになりました。 足りない。全然足りない。 生き続けるのであれば、この狭い箱庭のちっぽけな時間だけじゃ満足できない』 勢いのままに、ペンを走らせて入力した。力が必要以上に込められる。 『……そう、思うようになりましたよ。 自分が何かをこんなにも強く欲するなんて、思っても見なかった。』 ▼ (-147) 2022/03/12(Sat) 19:29:15 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『生きる理由となった者と過ごす時間以外についても。 考えさせられることが多かった。何も思わない、なんて時間は一つもなかった。あればあるだけ、欲しいとずっと満足しないままかもしれません』 『当然、貴方との時間も』 しっかりと、念を押すように答えた。 貴方がどう考えようと関係ない。 青年にとって、例外なく貴方との時間にも思うことが沢山あった。それだけだ。 (-148) 2022/03/12(Sat) 19:31:23 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「一つだけ、曲解しないで欲しいのは」 一度重ねた手を引くように差し伸べたまま、 珍しくきみの先を行って、足音もなく屋上へと踏み出して。 澄んだ空気の中、冷たい風が一つ吹き抜けても、 死者の乾いた血に塗れた髪が舞う事はなかった。 「それは全部、僕がそうしたいから勝手にしてるって事」 まっくらな瞳は、今も変わらないままで、でも。 抱え込んだ暗闇は、きっと最初よりずっと重く澱んでいて。 ふと空を見上げて、果たして今日は死ぬには良い日なんだろうか。 そんな益体もない考えを抱いた。 「僕は多分それって、きみもそうなんじゃないかと思ってて」 「死人に口なし、死んだら終わり、それはそう。 生きてる人にわかるのは、今ここにある僕の事だけ 死んだ後の僕の事なんて生きてる人にはわからない ただ、今ここにある夢の続きの終わりが少し変わるだけ」 「だからこれが僕の救いになるだとか、 或いは、きみの救いになるだとか、それが良いか悪いかとか。 そんなふうに思うのは、きっとそれこそが逃げなんだろうな」 「だから── もういいよ。 死ぬなら死にたいってだけの理由で死のう。 あれこれ理由を付けて正当化するのも、もう終わりにしよう」 (-163) 2022/03/13(Sun) 0:23:39 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ滔々と穏やかに言葉で最期を綴りながら、 夢のない夢の縁へ、ゆるりと足を進めていく。 足取りは迷いのないものだった。 「今の僕は心から笑えてるんだと思う、それは本当の事。 でも、あの時置いていかれたくないと思って泣いたのも 触れられなくたって、涙も嘘じゃない、本当の事。 きみに誕生日を祝ってもらえて嬉しかった事も、 きみに殺されるなら、それでもいいと思えた事も。 きみと生きていたかったのに、きみの死を願っているのも」 「また失敗しても、後悔したくても後悔したくない事になっても。 それでも一緒に居たいと思うのも、本当の事」 「それくらいきみの事が好きで、大好きで きみじゃないと嫌なのも、本当の事」 「きみにずっと僕のものになって欲しいのも本当で、」 「でも、ここできみと死にたいのは、 ただここできみと死にたいからだ」 そうして今際の縁へと辿り着いて、振り向いた。 そこにあったのは、多分。 きみへの重たい感情だけを残して、全てを投げ出したような。 行き着いてしまった先の、けれど晴れ晴れとした笑みだった。 (-164) 2022/03/13(Sun) 0:24:46 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 不運 フカワ「ずっと考えてたんだ。」 この行き止まりで語るべき事と言えば、あとはそう。 「僕はあの時きみに、 わかりやすい言葉で言うなら、きみの事が好きだと言ったけど 正確にはきみの事をどう思っているんだろうって」 誰の代わりにもならない人。 一緒に生きたかった、一緒に死んで欲しい大好きな人。 これが恋愛なんて、 実にわかりやすく伝わりやすい言葉で言い表せたなら。 どんなにかよかっただろう、とさえ思う。 「──結局はわからなかった。 僕にもわからなかったから、全部あげる事にしようかなって」 「四つの愛も、その中には分類されない愛も、 それからもっと大きな枠組みのものも、愛以外も全部。 僕がきみに抱く、感情のすべて」 「ああ、結局ここでは喧嘩はできなかったけど」 「きみが持っていきたいものだけ、持っていくといいよ」 きみにとってのツバメには、なれなかったかもしれないけど。 それでもせめて、きみのさいごに寄り添うツバメの亡骸に。 なんて願いは、分不相応なものでしょうか。 (-165) 2022/03/13(Sun) 0:25:56 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズ「──そうだ、そういえば。」 「そう、失敗した時の事は、一応考えてて。 だって人生って思い通りにいかないものだし、 確実に死ねる方法なんて、正直他殺くらいしかないから。 だから僕は次善の策になり得るものを 今度はちゃあんと考えておいたんだ。聞いてくれる?」 「あはは…笑わないで聞いてくれるといいな」 「あのね。これで上手にきみが死ねなかったら、その時は」 「──僕、きみの事を殺しに行くよ。」 「記憶転移が僕に味方してくれれば、だけど… どれくらい待たせる事になるかは、わからないけど でも、何となくできる気がしてるんだ。 僕じゃない僕が、きっときみの事を殺しに行くから ここで一緒に死ねなかったら、その時は。」 「待っててね、邦幸さん。」 (L3) 2022/03/13(Sun) 0:26:48 公開: 2022/03/13(Sun) 0:30:00 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズもう幸運も不運も祈らない、ただきみの確かな死を祈ろう。 祈るばかりは癪だけど、死者にできる事はそれだけだから。 全部自分のせい、生きて苦しんで罪悪感を贖うなんて選択肢 僕にはもう選べない選択肢。 それを一人で選んで自分勝手に満足するなんて、 ずるいから、羨ましいから、やめてくれないかなぁ。 そんな綺麗でも何でもない、どこまでも身勝手で我儘な、 それでも、心よりの気持ちで。 ──本当は、罪悪感に耐えられないのは、僕ではなくて。 ──きみの方だったんじゃないかと、今となってはそう思うんだよ。 (L4) 2022/03/13(Sun) 0:27:22 公開: 2022/03/13(Sun) 0:30:00 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 不運 フカワ「じゃあ、いこうか」 ふ、と。 穏やかに笑みを零して。 「先にいくから──ちゃんとついてきてね」 きみに向けて両腕を広げて、後ろへ、さいごの一歩。 「おいで、邦幸。」 ──あ、やっぱりこれはちょっと恥ずかしいかも。 そんなどこまでも場違いな照れ臭さを感じながら。 ぐらり、視界が傾いで、 浮遊感に身を委ねる。 消えた柵の向こう、縁の向こう、広がる空を背に、身を投げ出す。 今度は、自らの意思で。 不思議と、もう怖いとは思わなかった。 死ぬ事よりもずっと怖くていやだと思う事を知ってしまったから。 (-166) 2022/03/13(Sun) 0:27:53 |
カミクズは、きみに手を伸ばして。 (a48) 2022/03/13(Sun) 0:28:00 |
カミクズは、さいごの一歩を踏み出して。 (a49) 2022/03/13(Sun) 0:28:05 |
カミクズは、世界を手放した。 (a50) 2022/03/13(Sun) 0:28:09 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 怪物 ユス当然ながら覚えのある言葉に、少しの間。 『あはは』 『そうですね 夢でくらいは』 『夢でくらいは、幸せになったって、いいですよね』 眠りから覚めれば消えるような、淡く、脆く、幸せな夢を。 二度と覚めない眠りの中に閉じ込めて、 誰にも話さずそっと抱いて眠るのだ、なんて。 ああ、言葉にするだけなら、随分綺麗な夢物語だな。 (-181) 2022/03/13(Sun) 6:57:30 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 怪物 ユス『そうじゃなかったら そうだなあ』 『きみにとってはそうだったんだなって、思うだけ、かも』 少し残念だとは思うかもしれないけど、結局は他者の感傷だ。 あなたのいいえ、の仮定にはそんな答えを返して。 それから、あなたの話に、また少しの間。 『そうですか』 『無駄な命なんて、僕は無いと思いますけど』 『少なくとも、本人以外の誰かが決めることじゃない』 本人が、嗚呼人生は無意味だったと嘆く事は、良いのだけど。 生きる事も死ぬ事もその人の自由で、その舵取りは本人次第。 少なくとも他者が勝手な評価を下して良いものではなくて。 無味乾燥な生はあったとしても、無駄な死は存在しない。 そもそもの話、意味ある死など本来存在し得ないのだと思う。 仮にあらゆる死に意味を見出そうとするならば、 災害、事故、病気、唐突な理不尽に命を奪われた多くの人間は。 ただただ、うつろへ向かって走っていた事になるのだから。 或いは、そうだな。 それに優劣を付ける事そのものが間違い、というよりも。 そもそもの話、全ての命には。 最初から、大した意味なんて無いのかもしれないな。 ただ、その過程に何かを見出す者も居るというだけの話。 (-182) 2022/03/13(Sun) 6:58:22 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 怪物 ユス『でも、そっか』 『きみにとって、少しでもなにか得るものがあったなら』 『僕の勝手な感想ですけど、よかったなって思います』 清掃員は、あなたの得たものを知らないけれど。 仮に知ったとしてもきっと、あなたがそれに満足しているのなら。 何を思っても、きっと『よかった』とは言ったんだろう。 何せ今のあなたの気持ちは今のあなたのものなのだから。 あなたがそうだと言うのなら、それは誰にも否定できないものだ。 始まりと終わりそれそのものには、大した意味は無くたって。 その過程に何かを見た事は、決して無価値ではないはずで。 その時の感情は、その時抱いた気持ちは、たとえ遷ろえども。 決してそれが嘘だった事にはならないはずで。 ならきっと、それで良いのだと、そんなふうに思うから。 『これからを生きていくきみ達に、 暫くは手も声も届かなくなってしまうのは悲しいけれど』 『でも きみが振り返れば思い出は変わらずそこにあるから』 『それは、ここでの時間も、それから僕も』 『きみが覚えている限りは、ずっと。』 (-183) 2022/03/13(Sun) 6:59:26 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 怪物 ユス『でも、だから、ユスさん』 『ここで一度、お別れですね』 夢の続きという今の距離は、懐かしむには近すぎるから。 現実を生きていくきみ達は、夢の名残だけを持っていけばいい。 『僕も、その、情けない話ですけど。 きみには何かとお世話になっていましたから。 最初に気を遣ってくれたのもそうですし、 一緒に掃除をした事も、それから今も。だから』 『ありがとう。それから、さようなら。』 『帽子は、テーブルかベッドの上に。』 『僕の部屋の中の事は あまり気にしないでくださいね』 ──雑然とした、ある種の生活感に満ちた部屋。 もう帰る主の居ない、現実には存在しない部屋。 VR内に今この一時のみ再現された、部屋の主の人らしさの縮図。 床に落ちているのは、優しい色使いで描かれた一冊の絵本。 めでたしめでたしで終わる、誰もが知っている物語。 変わった所と言えば、一つだけ。 最後の── 神さまが、天使に貴いものを持って来させる頁。 それ以降が切り取られただけの、 何の変哲もない、未完の絵本。上葛掃守という人間が、最後に遺した憎悪と失望のかけらだった。 (-185) 2022/03/13(Sun) 7:02:28 |
カミクズは、『幸福な王子』の絵本が嫌いだった。 (a56) 2022/03/13(Sun) 7:02:37 |
カミクズは、正しくは、ふたりをそっとしておかなかった神さまが。 (a57) 2022/03/13(Sun) 7:02:42 |
カミクズは、それをうつくしいものと持て囃し吹聴する読者や世間が。 (a58) 2022/03/13(Sun) 7:02:47 |
カミクズは、物語を都合良く脚色する傍観者が、嫌いだったのだと思う。 (a59) 2022/03/13(Sun) 7:03:08 |
【秘】 不運 フカワ → 亡骸のツバメ カミクズ1,2。 「……やりたいから、か、全部。 わかった、そっか、長い夢、だった、なあ……」 もっと、見たかったなあ。 やっぱりずっと、後悔をしながら、ゾクゾクしている。 幸せになると思えた事も全部現実を逃避したもの。 助けられたと思った事も、助かったと思うことも全部事故を満足させるだけ。 それでも逃げたくはないな、向き合うと決めたそれから。 君が許してくれる事が嬉しいから。 34,35。 「生きていたくないって思うことが悪いことだと思い込んでいたのに。 それまで、君は許してくれるんだ」 (-210) 2022/03/13(Sun) 15:49:52 |
【秘】 不運 フカワ → 亡骸のツバメ カミクズ「ああ、死にたくてしかたないな」 「ようやく、一緒に死にたいって気持ちが理解できた」 "運良く"死ねたら、俺は君が手に入って。 "運良く"生きることが出来たら、俺は君の"代わり"を探すんです。 俺がやりたいこと、ですね。 「喧嘩は……へへっ。 少しでも拒まれたら、今なら殺しちゃいそうで。 今みたいに死んでもらわないと、出来ないな」 「持って行くね、全部、こうやって、全部」 死んで居る君だから、生きて居ない君だから。 それが個人を見ているかなんて、今は関係ない。 66,67。 それでも、そう、君は 上葛掃守 だった。誕生日を迎えるはずだった、俺が生まれたことを祝った人間。 其れを忘れることも、覆ることも、上書きされることもない。 (-212) 2022/03/13(Sun) 15:55:06 |
【秘】 『 』の フカワ → 亡骸のツバメ カミクズ格好つけるだとか、特別を意識するだとか。 そんなことはもういらないな。 「――掃守、待ってくださいっ」 浮遊感。風の音。 さいごの一歩を踏み出した。 そして、いつか、追いつく。 80,81。 想像以上に怖くない、落ちる景色も、誰かと一緒なら。 それに、待っている人がいるから、何も 。 (-219) 2022/03/13(Sun) 16:21:09 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 『 』の フカワ結局のところ、許す許さないの話ではなかったんだ。 「──もしも、仮に。 生きていたくないと思うことが、悪いことなのだとしたら」 だって僕はそもそもの話、それを咎める事はできないのだから。 「僕ってとんでもない大罪人だ」 夜明けはいつも憂鬱だった。 けれどきみの隣であれば、憂鬱なばかりでもなくて。 だからきっと、今日は死ぬには良い日、だ。 ──さあ、誰の手も届かない所で死のう。 何処にも行かず、死んでも離れず、ずっと同じ夢を見よう。 他の誰に捲られる事も無い、さいごのページをふたりじめ。 誰にも観測されない物語の結末は、幸福でも不幸でもなくて。 誰に"めでたしめでたし"で締め括られる事もなくて。 エンドロールが流れなければ、 声を潜めて口々に感想を囁き合う観客だって居なくって。 それってきっと、この上なく満足のいくものだ。 (-241) 2022/03/13(Sun) 19:22:53 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズああ、でも。 重力に身を委ねる瞬間の、更にそのほんの僅かな間だけ。 少しだけ、投げ出したものが追い付いて来たらしい。 ──ただ生きたかっただけの少女に本当に必要だったものは、 きっと隣で一緒に考えてくれる人だったのだろうな、とか。 ──僕の事を友人と呼んでくれたきみは、 僕がこんな選択をしても、悲しんでくれるのかな、とか。 ──この場所で死ぬ理由を失い、生きる理由を得たきみは 僕と近"かった"きみのこれからが、少しでも長く続くといいな、とか。 ──ああ、きみのくれた花の事を聞き損ねてしまったな、とか。 ──誰かからきみのことを奪っていく事は、 本当にひどい事で、それだけは確かに僕の罪、なんだよな、とか。 きっと誰もが誰かにとっての生きていて欲しい人だった。 でも、お利口にしていたって、奪われるばかりなんだ。 喜劇のように報われやしない、この優しくない世界では。 一方的に奪われて、報われる事なんて一度もなかった! 嫌だ、嫌だ、嫌だ!どうかさいごくらい、我儘を言わせて! いつまでも僕ばかりが奪われる側なんて、不公平じゃないか── (L7) 2022/03/13(Sun) 19:23:40 公開: 2022/03/13(Sun) 19:30:00 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズそんな後悔の形になりそこなったようなもの、 それから誰に届く事も無い慟哭、悲鳴、言えなかった『助けて』。 それらの後に残ったものは、やっぱりきみの事だった。 仮に僕にはきみしか居なくても、 きみには僕しか居ないわけじゃなくたって。 そんなことはもう関係がなくて。 関係がないとは言っても気にしないわけじゃない、でも。 そんな事はわかった上で、やり方は色々考えているんだよ。 きみがこっちを見てくれるまで付き纏うから、覚悟していて? だって僕は、できそこないでも猟犬だ。そうでしょう? きみが首輪を付けず手放したって、ずっと傍に居るものだ。 愚直なまでに、執念深く、どこまでも。 そんな手に負えない想いを抱えて、今一度は眠りに就こう。 願わくば、このまま二人眠りたいとは、思うけれど。 でも知っているよ、人生って上手くいかないものだって。 だから。 きみとずっと一緒に居る為に、僕は努力を欠かさないよ。 (L8) 2022/03/13(Sun) 19:24:29 公開: 2022/03/13(Sun) 19:30:00 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 『 』の フカワ──ぐちゃぐちゃの肺から空気が押し出される。 既に一度死んでしまったからか、 痛みは夢の中のようにぼんやりとしか感じないけれど。 ほんとうはもう、起き上がるのすら億劫な、惨憺たる有り様だ。 ああ、でも大丈夫だ、まだ息ができる。 まだ息ができる、言葉を吐き出す事ができる。 きみに贈る、さいごの願いを。 「──おやすみ、邦幸」 「ずっと傍に居てくれて、」 「ずっと一緒に居てくれて、ありがとう」 「これからも、ずっと」 「ずっと一緒に居よう」 「だから、死んでね」 「僕達に、夜明けが来る前に、早く……」 「ここで、僕と死んでね」 夢の中のようにぼやけた意識、その視界が涙で滲む。 でもこの涙は悲しみからのものではなくて、後悔でもなくて。 ただただ、どこまでも、安堵と、それから。 今、胸を満たすこの感情は。 ああ、これはきっと、多分。 よくない感情、だ。 (-242) 2022/03/13(Sun) 19:26:34 |
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