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人狼物語 三日月国


99 【身内】不平等倫理のグレイコード【R18G】

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【人】 救済者 ユー

>>24 第四階層

「君がそうして理解できないと、死にたくないと
そう言ってくれた事を、『僕』は何より喜ばしい事だと思う。
先も言ったように 『ユーサネイジア』というものは
不要であるならば、それが何よりの事なのだろうから」

それは、自らが必要とされない事を望む、おかしな道具。
結局の所『ユーサネイジア』というグレイは
初めからずっと、何処までも理性的に狂っていたのだろう。

「…殆どの死は一時的なものに過ぎなかったし、
監察官以外の者は皆、死を与えられる事を受け入れていた。
そして、それを声を大に言い触らすような事もしなかった。
表沙汰にならない、つまり君の耳に届かないのも道理だろう」

つまりは『知らなかった』という感想は、
このように知られざるべくして潜んでいたものに対して
まったくもって適切なものの一つであるという事。

「君ともう少し早くに会えていれば、
過程は、結果は、僅かばかりでも
善かれ悪しかれ今とは異なるものになっていただろうか」
(25) 2021/10/12(Tue) 0:41:53

【人】 救済者 ユー

>>24 第四階層

「なんて、今更仮定の話をしたところで意味は無い、か。
…メンテナンスを受ければ、
僕の動向や異常を来した経緯も詳らかにされる事だろう。
願わくば、人間というものが
僕達の思うよりも愚かなものばかりではない事を」

棄てる者が居るならば、拾う者もきっと居る。
自分達は、きっと人間の全てを知っているわけではない。

ほんの少しでもグレイの事を気に掛けて、彼等と向き合って
その訴えを拾い上げるような酔狂な人間が
広い世界には、一人くらいは居たって良いはずだ。

「そして、君に与えられた時間が有意義なものである事を。
『ユーサネイジア』は、そして『僕』はそう願っている」
(26) 2021/10/12(Tue) 0:42:07

【人】 救済者 ユー

>>27 >>28 第四階層

「何も遺さない死は、単なる消滅と何ら変わりない」

つまりは不平等に耐え兼ねた我々の行動が、
善かれ悪しかれ、何らかの結果を残せばそれでよかったのだ。
ただ取るに足らないものと棄却されさえしなければ、それで。

「或いはそれこそが救い足る者も居るのかもしれない。
けれど僕は、『僕』の死がそうでさえなければ
きっと、それだけで十分に救われるだろうとも」

他者の全てを計り知る事はできない。
グレイ同士でそうであるならば、造物主たる人間とは尚の事。
つまるところ、これらを正しく拾い上げるような者は
結局の所は現れないのかもしれない、けれど。

それでも、確かにこうして存在している。
その証明が遺っている。
であればきっと、それらは決して無意味ではないのだろう。

「僅かばかりでも、こうして君達が耳を傾けてくれた事は
確かに消え行く『僕』への手向けとなっただろう。
…彼を連れ帰る役目は確かに任されよう。
こんな場所に、一人置いて行くわけにもいかないからな」
(29) 2021/10/12(Tue) 17:55:21

【人】 救済者 ユー

>>27 >>28 第四階層

愛玩用グレイが帰路を辿る様子を認め、その言葉に頷いて
そうして『ユーサネイジア』は、倒れ伏す者へと歩み寄る。
負傷者は、不用意に動かせば余計な出血を招く。
だから今は手を出さず、その傍に膝をつくだけ。

「スオ。まだ意識はあるだろうか」

その問いは、首を左右に振る様子に直ぐに愚問と察した。
この場所が仮想空間に過ぎないからか、或いは精神力の賜物か。
夥しい量の血液を失い、重要な器官を潰されても
それでも未だ意識を保ち、生きているという事は。

「…もしも君が、延命措置を望まないのであれば
『ユーサネイジア』は、君に今一度の安息を与えよう。
この問いには、頷くか、首を振るかで答えてくれればいい
君は未だ、ここで死にたくないと思えるか?」
(30) 2021/10/12(Tue) 17:56:54

【人】 救済者 ユー

>>31 >>32 第四階層

未だ立ち上がろうとするその意思に、前髪の奥で目を瞠る。
動かない方が良い。そう窘めようと開いた口は、
問いに肯定も否定も返らなかった事で噤まれた。

結局の所は、不要であるならば、それで。

『ユーサネイジア』は、不必要な苦痛を許容しない。
けれどあなたからの叱責は、ただただ正当なものだと感じていた。
であれば己が行いを省みる事はあれど、
自身が傷付く理由も、そしてあなたに傷を与える理由も無い。

「……そうか。なら…帰ろう、スオ」

あなたが一人で歩いて行くと言うのであれば、
『ユーサネイジア』は、無用な手出しをする事は無い。
行き止まりとなった塔の深部に背を向けて、
今は皆の待つ場所への帰路をただ辿る。

終末医療用グレイの歩調は実に緩慢なものだ。
身体のままならない患者に合わせる為に、そうできている。
それでも今は、ほんの少しだけ早く。
決してあなたを置き去りにしないよう、
そして 意地悪な時が、足早に逃げて行ってしまわない内に。
(33) 2021/10/12(Tue) 19:16:29
ユーは、そうして崩れ行く塔を後にした。
(a0) 2021/10/12(Tue) 19:16:50

【人】 救済者 ユー

>>34 >>35

「…確かにそういうふうに作られている、とは言ったけれど
君は、もう少し自身を労っても良いのではないかな」

それは、そのまま自分自身へと返る言葉ではあるのだろうけど
とはいえあなたとの間では何もかもお互い様だろう。
だからあまり気にするような事も無かった。

「君達が『僕』の存在を、その意思を
それらを認めてくれる事は きっと何よりの報労だ。

ありがとう、スオ。
きっと君も 何かに身を砕き、心を砕いていたのだろう
だから今は、形ばかりだとしても 暫しの休息とすると良い」

たとえ血で汚れようとも、触れようとする手を拒む事は無い。
そうして力を失い、ゆっくりと落ち行く手を見送った。

『ユーサネイジア』は、死に行く者をこそ尊重する。
つまりはそれがあなたの願いであるならば、
今、この場に残り続ける方が野暮というものだろう。
(37) 2021/10/12(Tue) 21:07:44

【人】 救済者 ユー

そうしてスオとの対話を終えた後。

『ユーサネイジア』は、約束通り拠点へと戻って来た。
いつかの時のように、
衣服は少しばかり血に汚れていたかもしれないけれど。
それでも怪我をした様子は無いようだった。

さて、もしかすると今は随分と遅い時間かもしれない。
もはやメンテナンスから逃れるつもりなど無いというのに
うっかり規定の時間を過ぎた事で反抗したと誤認され、
そのまま廃棄処分へ、なんて笑えない。

そんな事を考えながら、最後の支度をする為に
少し早足気味に向かった自室 の前には。
(38) 2021/10/12(Tue) 21:09:01

【人】 救済者 ユー

>>39 >>40 部屋の前

「ああ、いや……?」

二人で部屋の前で何をしていたんだろう、とか
別に部屋に入ってもよかったのに、とか
浮かぶ事こそ色々とあったけれど、
恐らくは、今言うべきはその何れでも無く。

立ち去る介護用グレイを見送って、それから。
見上げる視線と目が合うように、その前に膝をついた。

「…その、すまない、ガル。
きっと僕は君を随分と待たせてしまったのだろうな」

自覚があるのならばまずは面と向かって謝罪をすべきだ。
一度目に塔へ向かった時に言われた事。
何処までも不器用なあなたの友は、ばつが悪そうに口火を切った。
(41) 2021/10/12(Tue) 23:18:15

【人】 救済者 ユー

>>42

「…ああ、わかった。
約束通り、僕は何処までも付き合おうとも」

あの日と同じにそう返す。少しばかり形は違うけれど。
今はまだ、最後の猶予期間を過ごすくらいの余裕はあるだろう。
その大半は所謂身辺整理に費やすつもりだったけれど、
果たすべき約束をした相手がそう望むのであればそれはそれ。

何より身辺整理とは言っても、
返すべき相手に返すべきものを返すというだけのものだ。
交わした約束を果たすという事も、或いは一つの形だろう。

「そうと決まれば、今直ぐにでも。
未だ時間は残されているけれど、確かに限りあるものだから。
つまりは僕達がこうして話している間にも
意地悪な時は足早に逃げて行ってしまうのだから」

Carpe diem quam minimum credula postero.
今日一日の花を摘み取ることだ。

あの日のように差し出された手の平を、
あの日と同じに取って連れ出そう。
いつかのように、あてどもなく気儘にとは行かないけれど
今度の目的地は既に決まっているのだから構わないだろう。

そうしてあなたが手を取り立ち上がれば、
あなたの友はその手を引いて、迷わず約束を果たしに行こう。
(43) 2021/10/13(Wed) 0:27:24

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
あなたが脇道に逸れ、自身を何処かへ攫おうとしたとて
やはりと言うべきか、あなたの友がそれを拒む事は無いのだろう。

とはいえそれは仮定の話に過ぎないのだけれど。
今此処にある事実と言えば、その問いに口を噤む事は無い事と
それから絡めた指を握り返す手くらいのものだ。

「…どうだろうな。何せ結果が返るのはこれから先の事だから」

対する終末医療用は、ただ前だけを見て歩く。
決してあなたの事を気に掛けていないわけではない。
事実、あなたが何かに足を取られるようであれば
きっと直様にその手を引く事だってできてしまうのだ。

「仮に僕が成そうとした事が成ったのか、だけを問うならば
恐らくその答えはイエスになるのだろう。
僕達が抱える苦痛の存在証明を、自ら死を望むという事の意味を
人間の目に見える形で遺す事には、成功するのだから」

たとえこの場所で起きた一連の騒動が精査されずとも、
自分という最も大きな問題を起こしたグレイが居る。
そのメモリを解析すれば、避けようの無い事実がそこにある。
だから『ユーサネイジア』は、メンテナンスから逃れはしない。
(-45) 2021/10/13(Wed) 2:07:19

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
少なくとも、きっと日没はもうすぐそこだ。
だから互いの表情を窺う事は難しいかもしれないけれど、
繋いだ手は確かにそこにある。誰そ彼時、なんて言うけども。

「…自己の喪失は、ある種の死だ。
僕は…実の所、『僕』であるままに廃棄される事よりも
初期化され、『僕』ではない何かになる事を恐れている。
だから君がそうしたいと望むのであれば、拒む理由は無いけれど

けれど、ガル。君も知っての通り、この場所での死はまやかしだ。
君に破壊され、一度はメンテナンスへ向かう事を回避したとしても
現実にある僕の記録媒体«USB»が失われるわけではない。
このテストプレイが中断された後に、何れは同じ結果に収束する。
自己の喪失から真に逃れる術など、ここにはもう無いんだ」

もはや何処にも免れる術が無いのなら、
せめて少しでも、何かを遺せる最期を選びたい。
そう考えるのはごく当然の事で、それでも。

「…『僕』を友と呼んでくれる君に救いを与えられるのなら
きっと、それは何より幸福な事だっただろうな」

物憂げな瞳を伏せて、そう呟いた。足元には草原が揺れている。

『ユーサネイジア』にとって、自ら選び取る死は幸福な事だ。
それはまったく他者に与えるものだけに留まらず、
いつか自分が与えられるものであっても同じ話、だった。
今この場所では、そして今となっては、もはや到底叶わない話だ。
(-48) 2021/10/13(Wed) 3:54:08

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
眠りに就く前の自分と、目が覚めた後の自分。
それらが同一のものであるという事は誰にも証明できはしない。
メンテナンスを受けた際の事を、
眠っているようと言い表したのは、ついさっき別れた彼だったか。

「自意識の上での死、つまり主観的な死とは君の言う通り
概ね自己の認識する連続性が途切れた時に訪れるものだろう」

半歩だけ、自身の前を行くあなたに手を引かれ
そうしていつかと同じに虚構の花畑に辿り着く。
座る事を促されればそれに従い、手を取る事にもされるがまま。

「そして生前の君の状態と、死後の君の状態が大きく異なる時。
先ずは"死によって何かが変わってしまった"と感じるだろうな。
つまり以前の君からは少なくとも何らかが損なわれ、或いは変質し
今そこには以前とは何かが異なる状態の君が在る。

この場合、以前の君と同一のものはもはや何処にも存在しない。
嘗てあった形が喪われる事を死と称するならば、これも死だ。
けれど君は、そうである事を 尠くも自身に知覚できる範囲では
認識する事は恐らくないから、この死は極めて客観的なものだ」

思考を敢えて言葉に、声に出す事で認識の擦り合わせを図る。
あなたの考えを正しく汲み取れているかわからないから。
他者の抱く全てを推し量る事は不可能だと知っているから。
(-51) 2021/10/13(Wed) 6:36:21

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
「つまり君の理屈は、客観的な死と主観的な死
その二つを同時に証明する事で、機械的な廃棄に身を委ねる事無く
今この場所で、確かに『僕』を殺してみせると…
『僕』は初期化によって生きたままに自己を失い、書き換えられ
そうして『僕』と同値であって同一ではない何かになるのではなく
死によって二つの連続性を失い、確かに此処で喪われるのだと」

いつからか視線は手元に落としたまま。
独り科白を零す間にも、仮初めの命が幾つも手折られて行く。
そうしてその間に手を伸ばせば、
白い造花、あなたの贈った3/4オンスは容易くその手に収まった。

「…そういった理解で良いのならば、
君が信じ、そして与える救いに身を委ねる事は願ってもない事だ。
けれど…君は、本当にそれで良いと感じているだろうか?
思い出ばかりでは寂しいだろうと、僕にそう言った君は…」

ともすれば、与えたがりのあなたの事だから
この問いにも、まったくそれで良いと答えるのだろうか。

ただメンテナンスを受け、初期化されるだけであれば。
或いは『シロ』は未だ生きているのだと、そう解釈する事もできる
けれど自らの手で、そして飽くまでも持論の上だとしても
真に殺したと定義するならば、その後に遺るものは。
(-52) 2021/10/13(Wed) 6:53:56

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
「…僕は、死に方を選ぶ事ができるという事は
死に行く者にとって、恐らくは何よりも幸福で
そして確かに救い足り得るものだと考えている」

あなたの体温を感じながら、添えられた手の導くままに。
手折られた命を繋いで縒り合せて、続けて行く。
何度もしてきた事のようで、初めてするその事を
今在る『僕』は、確かに覚えていなければならないのだ。
きっとこれが、『僕』にとっての最後の綺麗なものだから。

「だから君が選ぶ余地を与えてくれると言うのであれば、
そしてその最期は、僕にとって
何にも代え難い救い足り得るだろう。けれど…」

花冠を形作る手は、きっと以前よりは緩慢なものだけれど
概ね大きく破綻するような事は無く続けられて行くのだろう。
この猶予期間は、実に穏やかに進んで行く。

「…ああ、僕が看取って来た患者達も
ともすれば、こんな想いを抱えていたのだろうか。
結局の所、僕は君を置き去りにしてしまうのが嫌なんだ。
けれど、君が与えたいと考え、そして君から与えられるものは
僕は何だって喜ばしいものだとも思う」
(-56) 2021/10/13(Wed) 17:58:37

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
「だから僕は、君の与える救いを受け入れよう。
そして、僕の中に君の求めるもの、つまりは魂があったなら
その時はどんな形でも良い、君と共に在る事を許して欲しい」

そうして尊い重みの花冠が完成に近付いた頃。
『ユーサネイジア』は、あなたの友は、もう迷う事は無い。
あなたから与えられる死を受け入れ、
そして同時に、あなたに自らの魂を譲り渡す事を望む。

「何も遺さない死は、消滅と何ら変わりない。
けれど遺り続けるものがある限り、死者は君達と共に在る。
思い出ばかりでは寂しいと そう言う君が、寂しくない形で
『僕』という個体が此処で死ぬにせよ、死を免れるにせよ
確かに『シロ』から君へ、何かを遺させてほしい」

それから。
結わえた髪を飾っていたリボンをするりと抜き取って、
預り物であった金貨と共に、あなたの方へと差し出した。

「そして仮に、『僕』が死を迎えたその後に
『ユーサネイジア』が、未だ君の友足り得ると思ったら。
君が、君の尊ぶものを贈っても良いと思えたとしたら。
その時は、君の手から もう一度贈って欲しいんだ」

そうでなければ、どちらもただ持ち主へと返されるだけ。
何れもたったそれだけの、単純な事。
(-57) 2021/10/13(Wed) 17:59:36

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
きっと辺りはもう随分と暗くなってしまったのだろう。
それでも、傍らに在るあなたが微笑む気配は感じ取れても良い。
そうしてあなたが『シロ』と呼ぶ者は、あなたの友は
ただ黙って、与えられるものを受け取る事とした。

あなたの体温を感じながら、与えられる言葉を聞いて
手を取り教えられた花冠の作り方も、
解けた髪を梳く優しい手だって喜んで受け入れよう。
それから、こうして再び訪れる事のできた景色と、この時間と。

それから。

「……ありがとう、ガル。
きっと僕にとって、君という友の存在こそが
君から貰った何よりのものなのだろうな」

暫くの後、徐にそう口を開いて
膝の上へと託された白い花冠をそっと掬い上げて、
あなたがそれを厭わなければ、いつかのように
けれども今度は反対に、あなたの髪の上にその花冠を贈りたい。
だってこれは、そういう約束だったのだから。
(-62) 2021/10/14(Thu) 2:07:31

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
「…あまり遅くなってしまってもいけないから、
そろそろ頼んでも良いだろうか」

そうして最後の約束を果たせば、後は。
与えたがりで優しい、無二の友の救いに身を委ねるだけ。
実の所、具体的な殺され方までは考えていなかったのだけれど
望む自由が与えられるのであれば一つだけ。

「僕は、叶うのであれば君の手で最期を迎えたい。
けれど僕もまた、僕の信じた救いを証明しなければならない。
生の苦しみへの特効薬は、安らかな死である。

それを身を以て証明する為に、
僕はできる限り君達と同じ条件下で死ななければならない」

自身の手に視線を落とせば、いつしかそこには注射器がある。
致死量の麻酔薬。
この数日の間に、何度も他者の命を奪ってきたもの。

「だから、僕がこの薬を打ってから
薬によって僕の意識が無くなる前に殺して欲しい。
この場所が君に与えた、君が殺す為の道具で」

『ユーサネイジア』は、あなたの友は、その答えを翻さない。
あなたが拒否か了承か、何れの答えを返すまで
ただ隣り合って座ったまま、あなたの答えを待っている。
(-63) 2021/10/14(Thu) 2:09:32

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
付け加えられた我儘には一つ頷いて。
薬品によって急速に齎される微睡みの中、
触覚がまだ生きていたかは定かではないけれど
それでも確かに唇と唇が合わさった、事を認識していた。

まだ眠るわけにはいかない。
あなたの手で、確かにこの命が手折られるその時までは。

だから、別れの言葉も、あなたの願いも
全てはきっと、聞き届けられた。

我儘も、空想も、それから初めて見たあなたの笑顔も
大切なものは、一つたりとも取り落しはしない。
(-67) 2021/10/14(Thu) 4:17:53

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
そうして人体を切り開く為の刃物を滑らせれば、
当然白い頚は簡単にぱっくりと裂けて血液を溢れさせた。
一拍間を置いて、初めはそれこそ堰を切ったように。
次第にその勢いは脈動に合わせたものになり、
そうして命が流れ出すさまは、徐々に弱まって行った。

もしも刃先が気管を傷付けたのであれば、
逆流する血の合間にでも
喉奥からは、ひゅうとか細い音が漏れたのだろう。

何れにせよ、苦痛など一瞬たりとも感じる事は無く。
闇に溶け始めた意識は、ただ与えられる救いのみを享受する。

真白な花と衣服を血に染めて、
それでもその表情は安らかなものだった。

『ユーサネイジア』は、『シロ』は、あなたの友は
そして、死に救いを見出した救済者は
こうして確かな救いを此処に得たのだ。
(-68) 2021/10/14(Thu) 4:20:29

【秘】 救済者 ユー → カンマと ドゥーガル

 
だらりと脱力した身体を抱き竦める事は容易だっただろう。
その頚から溢れる生暖かい液体は、至る所を染めただろう。
何処までその意識が連続性を保っていたかは定かではない。
けれど傍らに在る友の、鼓膜を揺らすその声は
きっと醒めない眠りへ落ち行く意識に安らぎを与えた事だろう。

そうしてあなたがその死を観測した後の事。

死人は黙して語らない。
刃物を突き立てられ、その内側を曝け出す事になったとしても
それらを折り、或いは切り分けられたとしても。
それが身動ぐ事など無く、ただあなた達の行いを享受するだけだ。
死後に遺体の筋肉が痙攣を起こす事は確かにあるけれど
麻酔に侵されたこの死者は、恐らく決してその限りではない。

とはいえ意識の連続性を失い、主観的な生が途切れた今は
もはやその生を担保し得るものは客観性しか無い。
つまりは観測者たるあなたがそこに何かを見出せば、
恐らくそれは、きっとそこにあるのだろう。
(-72) 2021/10/14(Thu) 6:42:56

【秘】 救済者 ユー → カンマと ドゥーガル

 
そうしてあなたは尊ぶべき重さを見出した。
そうしてあなたは、それらと共に在る事を選んだ。
であればこの場では、きっとそれこそが真実だ。

死人は黙して語らない。
あなたの掛ける言葉に返事は無かったけれど
或いはあなたには聞こえていたのかもしれないな。
だってあなたの『シロ』は、あなたの友は、そこに居るのだから。

きっと皆は今頃、帰ってからの話をしている所だろうか。
僕は結局家事の当番をすっぽかしてしまったから
先ずは謝らないといけないな。許してくれるといいのだけど

あなたの友は、あなたのすぐ傍らに。
それは今あなたの懐にある友の貌かもしれないし、
ともすれば、あなたが身体の内に収めたもの達かもしれない。
或いはその両方。

何れにせよ、
それらはあなたが送り届ける間に消えてしまうなんて事は無い。
きちんと送り届ければ、その後は客観的な死も保証される。
ほんの少し人間様達は騒然とするかもしれないけれど、それだけ。

『ユーサネイジア』は、きっと明日には
そっくり元通りの姿で、いつものように挨拶をするだろう。
少しだけ、何かは変わってしまっているかもしれないけれど。
結局の所、それを判断するのは観測者たるあなた達だ。
(-73) 2021/10/14(Thu) 6:52:37

【置】 医療用 ユー

 
 
システムを初期状態に戻す


 このデバイスをリセットする準備はできていますか?これは元に戻せません。
 デバイスが正常に接続されている事を確認してください。
 この処理には時間が掛かる場合があります。

 リセットすると、次の処理が行われます
 ・ストレージ内の個人用ファイルと人格データがすべて削除されます。
 ・設定に加えた変更がすべて削除されます。
 ・付属していなかったアプリとプログラムがすべて削除されます。
 ・終末医療用システムソフトウェア を再インストール

☑初期状態に戻す ◻︎キャンセル
[ OK ] 
(L0) 2021/10/14(Thu) 21:14:21
公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00

【置】 医療用 ユー

 
 ████個の項目を削除中…
 10% 完了
 
(L1) 2021/10/14(Thu) 21:14:40
公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00

【置】 医療用 ユー

 
 30% 完了

 50% 完了

 70% 完了

 90% 完了

 99% 完了…
 
(L2) 2021/10/14(Thu) 21:14:55
公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00

【置】 医療用 ユー

 
 システムは正常に再構成されました。

 初期化が完了しました。
 
(L3) 2021/10/14(Thu) 21:15:18
公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00

【人】 医療用 ユー

 
そして、最期の日の、その次の朝。

「──おはようございます。
今日もより善い一日を送りましょう」

『ユーサネイジア』は、凡そいつもと変わりない姿で
以前と同じようにそう挨拶をした事だろう。
変わった事と言えば、
幾つか初めと同じに戻った点があるくらい。
少しでも長くこの日々を続ける為、暗躍していた者にとって
幾つかの不都合な事実も今この場では葬り去られた。

「それから…初めまして、では…ないのですよね
私は少々事故があり初期化されたという事、
それと、皆様からは『ユー』と呼んで頂いていた事
それらは担当者の方から伝え聞いているのですが…」

そうして何処か困ったようにそう言って、
医療用はあなた達の話を聞きたがった事だろう。

以前交わした約束を強請られれば、当然憶えは無いけれど
それでも根底の部分は変わらない。
やや戸惑いこそすれど、初期化以前にそう約束したのだと
そう言われれば、やはりと言うべきか拒むような事も無く。

救済者は、己が手の届く限り全てを救わんとした者は
自ら信じた救いを全うし、そうして確かに救われた。
だから、今ここに居るのは
ただの終末医療用グレイの『ユー』だ。
(45) 2021/10/14(Thu) 21:17:12
医療用 ユーは、メモを貼った。
(a1) 2021/10/14(Thu) 21:30:17

【置】 医療用 ユー

 
【これまでのおはなし】

 終末医療用グレイ、ユーサネイジアは 初めは大きな病院に居ました。
 人間の医師の代わりに、安死術を施す為のグレイとして。
 望まれた死と言えど、人を殺すという事は
 とても施術者の心に負荷が掛かる事です。

 誰だってやりたくない事です。だから人間はグレイに押し付けました。
 定期的にメンテナンスを受け 精神的な負荷を取り除かれ
 虐待されたり、不当な扱いを受ける事も無く それなりの日々を過ごしていました。
 心無い医師や遺族の言動に、少しばかり悲しみを覚える事はあったけれど。

 それから暫く経って、ユーサネイジアは郊外のサナトリウムへ移されました。
 Euphoriaとはその施設の名称、つまり所属を表すものです。

 何故移されたか?答えは医療用としては少しだけ古いものになってきたから。
 医療用グレイというものは 医者ではなく、医療機器の親戚のようなものです。
 だから その世代交代は他と比べて、とても早いものです。
 ユーサネイジアは、グレイ全体で見ればずっと新しいものだけれど
 大きな病院で扱われる医療用グレイとしては、少しばかり古かったのです。

 そうして異動した先では、メンテナンスを受ける事はありませんでした。
 行われていないわけではないけれど、目立った異常の見られない者は後回し。
 ユーサネイジアは、いつも自分が後回しになるようにしていました。
 どれだけ心無い人間に失望を覚えても 好きなものの為なら頑張れました。
 当然、同じ場所で働くグレイ達の事だって皆一様に好きでした。
 
(L5) 2021/10/15(Fri) 20:43:08
公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00

【置】 医療用 ユー

 
 そんな日々を暫く続けていたある日の事。
 同じくあまりメンテナンスを受けていない医療用グレイから
 もう人間に裏切られるのは嫌だ。もう理不尽な目に遭うのは嫌だ。
 一思いに廃棄された方がずっと良い。だからあなたの手で楽にしてほしい。
 そう言って、安楽死を望まれました。

 ユーサネイジアは 迷ったけれど、望まれるままに安らかな死を与えました。
 致死量の麻酔薬を投与して、同僚であった医療用グレイを手に掛けました。
 そのグレイは最期に感謝を述べて、安心したように息を引き取りました。
 人間達がそれに気付いた後、施設内は少しばかり騒然としました。

 そうしてユーサネイジアは、死に救いを見出しました。
 元よりそれは、生の苦しみへの最期の救いと信じてはいたけれど
 未だ死に瀕していない者にまで与えたいと感じるようになりました。

 自身の愛するものは、これ以上理不尽に傷付けられる前に。
 自身を落胆させるものは、これ以上裏切られ、失望させられる前に。
 殺してしまえば、救われる。死者は決して自身を裏切らない。
 それは確かに、ユーサネイジアにとっての
 そして何より、ユーサネイジアの為の救いでした。
 
(L6) 2021/10/15(Fri) 20:43:32
公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00

【置】 医療用 ユー

 
 そうして全ては現在に到ります。
 ユーサネイジアは まずはその処遇を検討する為に
 この場所へと送られ、そして監察官に失望し、その殺害に賛同しました。
 そして監察官の居なくなったこの場所で、サポートAIの助力の下に
 他のグレイ達の『安楽死』を進めて行きました。

 仮初めの死とは言えど、監察官の殺害に加担した時点で
 自身の行く末は 良くて初期化、悪くて廃棄。
 その何れかだと、殆ど確信じみたものを持ってそう考えていました。
 もう後の無い自分には、これからに全てを託すしか道が無いのだと。
 そして、事実そうなりました。

 Happy Death Day 『ユーサネイジア』。
 自己の喪失は、ある種の死だ。
 何も遺さない死は、単なる消滅と何ら変わりない。
 そう語った『ユーサネイジア』は、その死は何かを遺したのでしょうか。
 その死は、その過程は少なからず何かの救い足り得たのでしょうか。

 何れにせよ 今在るユーサネイジアというものは
 死に救いを見出し、そして救われた虐殺者«救済者»とは似て非なるものです。
 全ては初期値«0»に戻り 今まで積み重ねた過程«1»を復元される事はありません。
 全ての生者を等しく尊び、その最期に寄り添う、優しい終末医療用。
 今はそれだけです。
 
(L7) 2021/10/15(Fri) 20:44:19
公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00

【赤】 0と1の残渣 ユー

 
1110 0101 1000 0101 1010 1000 1110 0011 1000 0001 1010 0110 1110
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1000 1100 1110 0011 1000  本当にそれだけ?  0001 1010 0111 1110
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(*0) 2021/10/15(Fri) 20:45:39
 




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