人狼物語 三日月国

69 【R18RP】乾いた風の向こうへ


【人】 第11皇子 ハールーン

 

 「へぇ……これおまえが作ったのか。
  大したものだね。あの頃は泣いてばかり
  いたのに。」


[優雅に躊躇いなく菓子に伸ばされる指は、それをその口へ運ぶ。その光景をただ見ていた。何も出来ないまま、声が出せなくなるのはあの頃と全く同じだ。呼吸が浅くなって無駄に動悸が早くなるところまで。
目は合わせていないのに、蛇に睨みつけられたネズミのようだ。]


 「うん、美味いな。ハールーン

  どうぞ?」


[一口齧られたショートブレッドを差し出されるというその行為を、一瞬、うまく把握できなかった。
眼前の、その菓子を、食べろというのだろうか。この、自らも毒でできたような人間の食べかけを。


毒物の扱いに長けているこの兄は、当然のように自身で効果も調べている。何度か倒れて居るのを見たことがあった。次の日にはケロリと笑って話すものだから、それもなお不気味で。──兄弟の間では、彼は体液は当然のこと、髪の先から爪の先まで余すことなく毒物であるという認識だ。

──あの指輪はしていない。

視線が自分を透かして後ろに注がれるのを感じた。ダレンを見てるのだと解ると、その後に発せられる最低な言葉の予想をしてしまった。

この場所では誰もイスハークに逆らえない。出来るとしてアンタルだ。けれど自分の従者を守れるのは自分だけなのである。]

                
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(127) 2021/04/22(Thu) 23:19:05