>>80続き

　「─────この瞬間だけはさ、天国みてえだよな」

本物がどんなところか知らねえけど。

　「天国に行きたくて死ぬ奴もいるくらいだ。
　　きっと良いところだろうな」

強いやつも弱いやつも、
正しく生きることが出来れば訪れることの叶う場所。

裁きの後で、あの天使の二人に会うとしたら
そこ行くしかねえんだよなぁ……などとぼやく。

　「なあアルバリ。
　　天国にいけるチャンスあるとしたらさ。

　　あの地上に戻ってでも
　　……おまえはそれを掴みたいって、思うか？」

[シャフリヤールのおっさんは、死んでるのか生きてるのかわからない感じで、酒を飲んでいた。

そして"それで良い"みたいな様子が、俺には好ましく映る。『生きる場所になんらこだわりが無い』『自分は自分』だと、そういう感じ。


俺も、自分はそうなんだと思ってたけどね。

けれど煉獄は息苦しい。血が足りない。相棒がそう呻いていて、なんだか俺も死にたくなってた。もう死んでんだけどさ──そうここは、やっぱり、生者の場所じゃないんだ。]


　ねぇ、シャフリヤール……サン。
　アンタは生者の世界に未練なんてなさそうだね。


[って言ったらなんて返ってきたっけ。気だるそうなご尊顔が、まんまるお月様を見てる、その目は子供のように。

『タコ・ヤーキ』と『オコノ・ミヤーキ』　　の作り方、従者に教えてやろっか？　まァすぐ飽きるんだろうけど。
　
もしかして、生前、出会っていたら、アンタを殺してたのは俺かもしれないね。なんて朗らかに他愛ないセリフを零したりして。うっかり昔を懐かしんでしまった。
──なんだろね、この人の前だと、何もかもが等しく無駄で意味のないものになって、且つそれに安心を感じてしまう。

神様とやらがいるなら、俺はこんな感じがイイね。]

[片翼の天使がなにか言っている。

……聞こえない。
聞こえない。



聞こえない。





ああ、嗚呼、聞こえん。

俺には、そんなものは存在しない。

など。なぞ。


そも、俺は、

己

アイとは――――何だ？

天使の瞳が何かを。
俺の何かを見通している。

緩やかに、満たされたとばかりに、溜息。



――――目の前の天使から倦怠を奪われた瞬間だった]

[――――また、愛だ。

しかし、もう片割れの天使の口から聞くそれに比すれば、邪気のない乙女のなりをしたこちらの天使の言葉は、それほど障るものではなかった。
故に、多少は脳漿を澄ませてものを考えることもできたのだろう]

愛するものの傍が、落ち着く場所、か。

フン、愛など、それこそ空虚そのもの。
人の気の迷いの極致ではないか。
そこに安住できるなどと、どうして思える？

[言葉にしつつ、俺は自らの過去に、地上での過去とその結末に、想いが向く。

何もかもが不毛な無意味な俺の生でも、最も空虚で、皮肉で――――]

愛に迷ったものにあるのは破滅だけだ。

ならば、愛なぞ初めから要らん。

自らが愛を求めることはもちろん、
他者からの愛などというものは――――！

[だが、その言葉は、すでに天使には届いていなかった。
俺の曖昧な態度に答えを求めず、約束の言葉と笑顔を残して、彼女はその場を去っていた。

それは、無惨を晒す俺を目の当たりにすまいとする、天使の慈悲だったのかもしれない……]

■ドラマシーン　絆取得
■相手：ナディル
■場　所：タウンの外※任意可

成否判定：(3)(1)^2d6

>>32



何服目の煙だったか。
ぽわ……と吐いたあとを追うように
シャフリヤールの右眉が上がった。

『──貴様、なぜ此処にいる？』

フ、と笑って、知らんよと返す。

「ある日、唐突に流星に撃たれた。
誰からも何処からも沙汰など有りはしない。
こちらが聞きたいくらいだ。」

『──貴様の『罪』は、何だ？』

「そうだな…、此処煉獄に堕ちたからには
我にも罪は有ろうな……。」

誤魔化そうかとも思ったが、
隠すほどのことでもないかと思い至る。
すう……と甘い煙を咽んで、ゆっくりと吐いた。
　

5:突然動物になってしまった！
6:不思議なアイテムでどうにかした。

相手：ナディル
アイテム：空飛ぶ絨毯


なぜかは知らんが蟻^animalになっていた。
ファルーサのなんか、アレか？
それともナディルには見えているとかいうヤツになぜか俺が変身しているとか？

ググ、アラビアンだともうなんでもありだからな、仕方ない。
おい、そこな精霊。何とかしろ。願いを叶えろ。
何、魔法のランプを三回こすれ？
貴様そういうのじゃないんだろう？？

ああーーよくわからんが、空飛ぶ絨毯でひとっとびすれば、こう、なんか元に戻る術も見つかろう。
おい、そこな蟲、みさいるか、みはいるか、どちらでもいい。
ゆけ。


こうしてなんやかんやあって俺は元に戻った。
この挿話エピソードがやがて千夜一夜物語なる物語の一つとなろうことは、俺には知る由もなかった、いや、なっていないのだった。

>>87

「……だそうだ。」





ラナーの声が俺を刺す。
幸せの運び手……そんな善いものだったのだろうか。

目の前の靄を払うように首を振る。
今更それを悔いたとして、何になる。
怠惰はジンの性質のひとつ。
勤勉なジンなど世に在ろうか。

「……で？
シャフリヤール、お前の罪は何なのだ。
対価を払わぬことはあるまい？
桃の香が薄れる前に、腹の内を開け。」

まだ、宴席の灯は点されたばかりだった。