【人】 遊惰 ロク 間借りしている病室にて。 ベッドに腰掛け、音が弱まった外の方へ視線を向ける。 閉め切られた儘の雨戸。 外の様子は、何一つ窺い知ることが出来ない。 手持無沙汰、右手は耳介を弄っている。 幾らも開けた穴を埋める色取り取りの耳飾り。 白く光る小さな石はそこに無く、穴が一つ、空いた儘。 (1) 2021/07/07(Wed) 22:31:33 |
ロクは、今日も死んでいない。 (a1) 2021/07/07(Wed) 22:32:10 |
【人】 焦爛 フジノミロクの死体を、見つけて。 どれぐらい時間が経っただろう。 フジノは部屋でひとり、硬いベッドの上。 雨風の音はだいぶ、収まった。 ……それを差し引いてもここは、こんなにも静かだっただろうか? 昨日、あの部屋には何人集まったっけ? 腹の膨らみを撫でながら。 フジノはぼんやりと窓から外を見つめた。 (2) 2021/07/08(Thu) 1:14:10 |
フジノは、今日も生かされている。 (a2) 2021/07/08(Thu) 1:34:58 |
【人】 遊惰 ロク いつかの様に、空のタライを持って二階をふらつく。 弱まった雨風の合間を縫って、滴る雫の音が聞こえる。 意味も無く、雨漏る箇所を一つ一つ順に巡る。 その内の幾らかは新たに修繕されていた。 ――誰が、いつの間に。 その答えをとうに持っている様に思われて、 けれどもしかし、未だ認め切れずにいる。 伸びる廊下、フラリフラリと歩を進め乍ら、 躊躇いじみた間を置いて、それから開く扉があった。 開けようとしない扉があった。 何かを、誰かを。 避けながら、けれどもどこか探している様な足取りで。 男はタライ一つ抱えて彷徨っているのだった。 (3) 2021/07/08(Thu) 2:34:13 |
【赤】 被虐 メイジ「……あはは……なーんちゃって……」 「…………」 「…………………」 メイジは、ひとり手術室にあった椅子に座り込み 膝を抱えて蹲った。 (*1) 2021/07/08(Thu) 3:24:12 |
【赤】 被虐 メイジメイジは、ふと顔を上げた。 それは誰かがいるような気がしてそうしたのか ただなんとなく顔を上げたのか ただ何もないところを見つめている。 「…………」 (*2) 2021/07/08(Thu) 14:45:44 |
【赤】 被虐 メイジ「オレさあ、駄菓子屋で働いてるって言ってたじゃん?」 「あれね、ウソなんだ」 「でもねーそういう、子供が喜びそうな 店に行ってみたかったのはホント」 「ほんとは、ちっさい工場でさ、雑用してるんだ。 良いか悪いかっていったらね、悪いと思う。 人使いは荒いし、電話番とかなんて一生したくない。 親父よりはマシだからなんとかやってた もしかしてオレって親父に感謝すべきかな?」 「君はあんまり外の世界を知らないみたいだったから オレのせいで夢を壊したくなかったんだ」 「ごめんね、嘘ついて」 つらつらと、懺悔のようなただの独り言だった。 (*3) 2021/07/08(Thu) 19:46:50 |
【赤】 被虐 メイジ「あと他に嘘ついたことあったかな?」 「……癖になってんだよね。嘘つくの」 「──、──……」 ぶつぶつ、つらつら、独り言を言っている。 (*4) 2021/07/08(Thu) 19:58:44 |
タマオは、独り言を聞いて思考した。 (t4) 2021/07/08(Thu) 21:02:11 |
【見】 流転 タマオ 己も己でどれだけ嘘をついてきただろう。この病院に来てからだけでも十指に余るほどだと思う。己を本官と指すだけでも数は増えるのだから。 舌先三寸、二枚舌。己の言葉はきっと羽根よりも軽い。 (@1) 2021/07/08(Thu) 21:03:13 |
【人】 焦爛 フジノひたひたと足音を立てながら病院の中を回る。 初日は、人がたくさんいると、思ったのに。 いつの間にか、人はどんどん消えていた。 あの嵐の中、他に行くところなんてないはずなのに。 皆どこへ行ってしまったのだろう? 「……だれか、いないの?」 ぽつりと零した言葉は雨風の音にも消されず、静かな部屋の中に響いた。 (4) 2021/07/08(Thu) 21:55:47 |
タマオは、「あ。はい、いないです」 通り過ぎざまに言うだけ言った。 (t5) 2021/07/08(Thu) 22:07:12 |
フジノは、誰かにとても軽い返事をされた気がした。かる〜い。 (a3) 2021/07/08(Thu) 22:09:53 |
タマオは、「あ、リョウクンお話出来ていて嬉しそう。よかったー」みたいなことを考えた。 (t6) 2021/07/09(Fri) 13:32:43 |
タマオは、気付かれない内にそっと去った。 (t7) 2021/07/09(Fri) 13:33:13 |
【赤】 被虐 メイジ刺し殺そうと思った。 ──最初は、身を守ろうと刃物を取った。 本当は、話がしたかっただけだった。 けれど、暴力に屈するばかりだった無力な少年に 確実に、急所を狙う力なんてなかった。 逃げるのに十分な傷だったことなんて、気付ける頭脳もない。 父親 ああ、脅威がまだ動いている、息をしている。 また"狼"が牙を剥いて来る。 ──次は殺されるかもしれない! ぼろぼろの壁際に寄り掛かる男 刻まれたふたりの子の名と数字。 かつては、幸福の記憶が染みついていたであろうボロ家 恐怖の感情に支配された少年は、牙を剥いた。 ……動かなくなるまで、恐怖が、消えるまで。 この手で、首を絞めて、息の根をとめてやった。 もう誰もいない空っぽの空間。 この嵐と共に沈んでいくことを、願った。 (*7) 2021/07/09(Fri) 16:55:34 |
タマオは、天井の雨漏りを修繕している。85くらいの技量が必要だ。修理ロール18 (t8) 2021/07/09(Fri) 20:21:31 |
タマオは、はちゃめちゃに厳しい感じだったのでそっと床にタライを置いた・・・・・・・・・。 (t9) 2021/07/09(Fri) 20:22:28 |
【赤】 被虐 メイジ「…………」 だれかが、傍にいたような気がした。 以前感じた悪寒はない。根拠もない。 ただ彼のことを思い出していたから そう思い込んだだけかもしれない。 メイジは、ふいに立ち上がって 干されていた"肉"をかき集めて、その場を後にした。 (*9) 2021/07/09(Fri) 20:44:06 |
【人】 被虐 メイジ雨風が弱まろうとも、助けがすぐ来る保証もない。 メイジは調理室でなにかを焼いている。 以前、それをやっていたセナハラの代わりをするように。 調理台に並ぶは、一夜干しの肉だった。 「……あ。焦げたかも……」 前に食べた時と同じにおいが漂う。 見様見真似。火加減はよくわからなかった。 (5) 2021/07/09(Fri) 20:53:42 |