【墓】 陽炎 アベラルド【アルバアジト】 親代わりのつもりか、と聞かれたことがある。 笑って「そうだよ」と返した。 喜ぶ顔が見たくて、今まで何度かプレゼントをあげた事がある。 ぬいぐるみも、チョコラータも、風船も。 自分が身を置く世界がどこだって、少女が実の娘じゃなくたって、真っ当に育って欲しいと思うのはおかしい事じゃない筈だ。 せめて、大人になるまでは無事でいて欲しいと。 それを見届けるまで死ねないと思っていた。 それもすべて過去の話になるのだろう。 彼女の手を握ってやれる機会はもう無い。 明日渡そうと取っておいたチョコラータの箱に隠したメッセージカードの内容は、いつどこで、誰が見つけるのだろうか。 拾った命に落とした命を見つけられるなんて思いもしなかっただろう。 「悪かった」も「愛してる」も「ありがとう」も、今となっては届かないんだ。 (+5) 2022/08/18(Thu) 1:19:29 |