【人】 仮面の役者 フランドル>>23 アイシャ きっと率直な賛辞を受けて、眉を下げて笑った後。 貴方が両手で差し出した花を、役者は片膝ついて受け取った。 その光景は宛ら舞台のワンシーンのよう。 「どうにもね、改めて言われると気恥ずかしいものだ。 けれど、きっと君の言葉に恥じない私で居ようとも。 ……さて、さて…」 役者は徐に立ち上がり、提げていた短杖を手にとって。 かつん、と床を一度叩いた。 「──皆へと花を贈る君にも、贈られる花が無ければね!」 舞台の上ほど声は張らず、けれど淀みなく謳い上げる。 そうして貴方の前に舞い降りるのは、一輪のカランコエ。 その花言葉は、貴方なら知っているかな。 「たった一時ばかりの幻、心ばかりの贈り物ではあるけれど。 どうか受け取ってくれるかな、小さなレディ?」 (28) 2021/12/11(Sat) 0:28:58 |