【人】 狡兎 ツィオ【どこかのバー】>>50 >>51 ラウラ 頬に触れられる。笑顔のまま、それを受け入れる。 その掌に、自分の掌を重ねて、頬を寄せた。 「……そう」 饒舌な男が。 寡黙に相槌を打った。 と、同時に――後ろ手に振れていた"果実"から――。 気付かれないように、指を離した。 「分かった。 今のキミが望むものがそれなら。 俺としてはそれが聞けただけで十分幸せだよ」 自分は、誰かから奪ってやることはできる。 ただし、逆を返せば奪ってやることしかできない。 唇だって、心だって、身体だって、思いだって、 だって。 望まれれば何でも、傷一つなく奪うことはできる。 ▽ (52) 2022/08/20(Sat) 16:38:20 |