人狼物語 三日月国

69 【R18RP】乾いた風の向こうへ


【人】 宵闇 ヴェレス

[ 宿の候補はすんなりと決まり、こういった時、大抵彼は自分の要望を優先してくれる。] 

 この国にいる間だけ使っておしまいもなんだし、どうせならずっと使えそうなのがいいかなって。

[ 彼は一刻も早く陽射しに弱い自分に日光を遮るものを与えたいようだが、店を流し見に歩いていると、場当たり的に選ぶには勿体ないとの思いが深まる。軒に並ぶショールにはひとつとして同じ意匠はなく、細やかな刺繍は名産品としても名を馳せるそうだ。陽が暮れてからゆっくり見たいのだと続ける。

 一番に勧められた宿はゆるやかな坂を長く登った先にあり、顰めっ面>>49に敬意を表して荷を任せるのに甘えてしまった。]

 着いたら何か冷たいものを飲もう。

[ 甘い酒は好きではないと知っている。まだ陽は高いから酒でなくても、薄荷水か、炭酸で割った果実水か。
 何らかの理由で手放された小規模な城は、今は宿にと姿を変えている。だらだらと坂を登っただけあって、ロビーからも既に街を見下ろす見晴らしの良さだ。

 予算も手の届く範囲なら、此処にしようとのダンテの言葉に否もなく頷く。
 生憎陽が登る様が見えるという一番展望の東の部屋には予算が追いつかなかったが、どの道朝日をまともに見ることなど望まないのだから構わない。少なくとも自分は。

 石造りの重厚な建造物は、強い陽射しを完全に遮り、足元にひんやりと底冷えさえ感じさせる。

 寝室と応接室は一続きだが充分に広く、湯船のついたバスルームが併設されている。窓は市街を見下ろすように大きく開かれ、市の向こうには大河が見える。一際目立つ豪奢な宮殿は、あれが王宮だろうか。高台だけあって風がよく通る。]

 天幕がある。

[ 荷物と下ろし落ち着くと長椅子に足を乗せ腰掛け、寝台の方を改めてみればシンプルな覆いだがいかにも城である、という印象でダンテに指し示しながら笑ってしまった。元々は王族の誰かの別宅だったのかもしれない。笑いながらひとつ欠伸を噛み潰す。元より寝入る時間もそうだが、昼の光にあてられた身体はいささか火照り気怠い。]**
(63) 2021/04/15(Thu) 14:26:43