【人】 銀の弾丸 リカルド>>76 ストレガ 「そんなに難しいことを言わないでくれ。 そもそも安服を俺は持ってない」 もう初めからここに来ることが間違ってるような事を宣い肩をすくめる。 行き場を失ったワインの瓶を両手で抱え、困り果てた表情を浮かべた。 「別に、作業が終わってから飲めばよかろう。 俺も持っているだけで飲むつもりはないしな……、いつ酔った上司に呼び出されるかわからん」 とはいえ、珈琲でもいいのなら最初から珈琲を買えばよかったなと、見せつけられた物を見下ろしながら呟く。 安酒を飲むよりはよっぽど良かったし、そもそも祭を楽しむために来たわけではない。 だから誰かをひっかけろという言葉にも消極的な顔を見せるだろう。 「そんな事をしている暇はない。 男にせよ女にせよ、体を武器にすり寄ってくるようなのは苦手でな」 「まぁ……、その先に隠された真実が眠ってると言うなら、いつだって行くが」 スゥ、と冷めた目をその路地へ向け、それからやっぱり、首を横に振った。 別に娼婦や男娼を差別しようというわけではない。 ただ……どうにもそういうやりとりは苦手であるのだった。 (79) 2022/08/11(Thu) 8:53:06 |