― ありふれた一日・X日前 ―
[火薬の匂いと混じり合う、生臭い臭気。
数多転がる、生命から只の有機物へと変わりつつあるもの。
黒々とした大地が未だ飲み干し切れぬ濡れた赤の上を征く姿は、場違いなまでに白い]
『 助、け、 ・・・ 』
[足元で空を掻く手。呼ばう声。
真白い裾には遠く及ばないが、ついと身を翻して軽く腰を折る]
ああ、ごめんね。
時々間違われるんだ。
特に俺は、よくヒトに似ているらしいから。
[囁きがその耳に届くより、緋雁の振るう刃が身に食い込む方が、ずっと早かっただろう
>>15]