―― 少し未来の屋上で ――
[……ごめん、拒否されるのって、つらいよね。
無理とか言って、ごめん。
回した手の下、武藤の背がひくりと揺れるのが解ってしまった。
私の背に回した腕が強張るのも。
なんでと問うてくる声も、少し、震えていた。
>>180────それでも、だって、駄目だもの。
私は武藤の恋人に相応しくないよ。
そう思うのに、手放したくなかった。
私を女と知って、なお、好きだと真っ直ぐ告げてきてくれた、優しくて強い、この人を。
髪に触れて来てくれるその手だけで、嬉しさに泣きたくなってしまうのに。]