【人】 黒崎柚樹[うん。 鍵なんか、かけてないよ当然。 そういうところの警戒心が足りないのだと、武藤には幾度も幾度も言われ続けていたことだけど、武藤相手に警戒心を抱けというのも無理なお話で。] ………………ぁ……、 [視線がいくらか下を彷徨った武藤と、かちりと目と目が噛み合って。 私ときたら、絹を裂くような悲鳴が出ることもなく、硬直したまま、晒した肢体を隠すこともなかった。 やかましいのは、"見られた"とばくばくし始めた己の心臓くらいのもの。 武藤は何か言ってたのかな。 でもあんまり私の耳には届かないまま、ぱたりと扉が閉められる。 思考も身体の硬直が取れるのに、それから何秒必要だったのかも、判然としない。頭の中がろくに動かないまま、のろのろと無表情で身支度を調えて。 髪からはぽつぽつとまだ滴が落ちてきていたけど、構いやしないと、ジャージの肩にバスタオルを羽織った状態でバスルームを出たのだった。] (364) 2023/03/03(Fri) 17:23:02 |