【人】 ]『運命の輪』 クロ―クロのむかし― 「ふん……厄介なモンを押し付けられちまった」 [「運命の輪」の証を持った赤子を押し付けられた老婆は悪態をついた。夫には先立たれ、嫁いびりをした為に一人息子にも出ていかれ、そのせいで余計に性格が荒れ、村人から距離を置かれて暮らしていた人物である。 それでも赤子を見捨てなかったのは、彼女も寂しさを感じていたのだろうか。子守歌を歌うような、甲斐甲斐しい世話をしたわけではなかったが、赤子は死なずに幼児まで育った。 「僕にはお父さんとお母さんはいないの?」と幼子が聞けば「捨てたんだよ、お前のことは」と面倒くさそうに答えてくれた。だからクロは、自分のことを捨て子だと思っていた。 質問すれば一応、気が向けば答えてくれるので、クロは自分が証持ちという存在であることを何となく理解はしていた。] (606) 2022/12/13(Tue) 20:31:10 |