【人】 XIV『節制』 シトラ[ だから、洋館に来て驚いたの。 誕生日が毎年当たり前に祝われていたことに。 一年目は、一方的に受け取るばかりで 二年目になって職員さんを頼れるようになり 三年目になって初めて 唯一の特技を生かせるようになった。 事前に欲しいものが尋ねられていたならそれを、 尋ねられていなかったなら 消耗品やお菓子を小さな箱に詰めて。 拒絶されたり、遠慮されたりしない限りは 誰にでもおずおずと。 誕生日のわからないひとには、年の初めに贈ろうとした。 ──けれど、 あのひとの誕生日だけは あのひとが来た一年目は、お祝いできなかった。 前日まで悩んで、悩んで、悩み続けて 肝心の誕生日当日に、わたしは ひどい高熱を出して寝込んでしまったのだ。] (636) 2022/12/13(Tue) 22:24:21 |