人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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鳥葬 コルヴォは、メモを貼った。
(a0) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:28:17

鳥葬 コルヴォは、メモを貼った。
(a1) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:28:41

【置】 鳥葬 コルヴォ

 
 
「結局のところ、俺は一人で生きていけるほど強い人間ではなくて」

「死んでいく人間の全てなんて、到底受け止めきれるような人間でもなくて」

「一人でも、誰かとでも、生きていくっていうのは苦しみに変わるばかりで」

「一緒に死ぬにしたって、それは死ぬ以外に選択肢の無い奴だけでいい」

「何から何まで、ただ自分の為にしていることで」


「だから俺は一人で死ななきゃならなかったんです。」

「そう思っていたんですよ」

 
(L7) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:30:25
公開: 2022/08/25(Thu) 17:00:00

【置】 鳥葬 コルヴォ

 
 
「けれど今更になって、それも違うと気付いてしまった。」

「だから俺は、」

「あんた達の運が良ければ、その内あんた達の思う通りになって」

「俺の運が良ければ、その内俺の思う通りになる」

「どちらも運が悪ければ、どちらにもならない。」


「それでいいって事にしようと思うんだ」

 
(L8) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:31:12
公開: 2022/08/25(Thu) 17:00:00

【置】 鳥葬 コルヴォ

 
最後の夕暮れ、最後の夜の、その前の事。
そして、誰かと港の埠頭で再び会う少し前の話。
僻地の廃倉庫での、誰も知る事の無い、観客の無い幕間。

「俺にとって、明日が続いていく事は苦痛だった。
 いつか終わりが来る事だけが希望だった。
 ……続いた先に、一握りの希望さえ信じられなかった事を」

誰にも手を伸ばす事さえしなかった者は、
何を得る事も無い。
誰も悲しませたくなかったからこそ、
遠ざける事しかできなくて。
誰の言葉も真と信じていたのに、
そこに希望を信じる事ができなくて。
結局は最後の最後まで、
誰の手も取る事ができなくて、


ごめんな、許さないでくれ


この血を吐くようなひとことが、誰にも届かなければ良いと思う。


無宗教者に、懺悔する先は無い。
あてのない言葉は、人知れず夕暮れ前の薄闇に溶けて消えた。
それでいい。祈りの真似事は終わり、立って行くべき先は決まっている。

そして黒衣が翻り、重苦しい靴音の後、廃倉庫は今日もまた静かになる。

次の夜も、その次の夜も。
もう二度と、この場所で、掃除屋から誰かへの弔辞が告げられる事は無い。
(L9) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:32:54
公開: 2022/08/25(Thu) 17:00:00

【置】 鳥葬 コルヴォ

 
そうして、生者達には今日も変わらない夜明けが来て。
名もなき烏はもう何処にも居ない。それが全てだった。

烏は亡骸を晒さない。
人の営みから遠い何処かの夜闇にて、
ぽとりと枝から地面に落ちて、それで終わり。

烏同士は目を啄かないが、
屍となれば共食いをする。
屍は同族に啄まれ、
後には何も残らない。


事実どのような結末に至ったのかは、今は定かではないこと。
確かな事と言えば、もう誰の死を弔う事も無いという事だけ。
(L10) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:34:11
公開: 2022/08/25(Thu) 17:30:00

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー

音も無く、幽鬼じみた影が一歩、また一歩と近付いて。
それが発する声は、やはり随分と生気の削げたように聞こえる。
柔くも鋭くもなく、ただどこかうつろに底冷えしたその音を
対話とその他のどちらともつかない距離で聞いて、息を吐く。

「烏は選り好みをしない。
 仕事とあらば何だってやりましょうとも。けどね、
 身内の死体をどうにかしてやろうってのは、結構なことですが」

見せたくない、ではなく、見せてやりたくない。
敢えてそのような言い回しを選ぶ事から、身内のものと推測した。
それを選ぶ人間は、世に居ないわけではないけれど。

掃除屋に処分を頼む・・・・・・・・・って事が、どういう事なのか。
 あんたもわかってないわけじゃないだろうに……」

掃除屋に処分される。人によっては、それそのものが冒涜になる。
持ち込まれた遺体はバラバラに切り刻まれて、炉で焼かれる。
キリスト教圏では土葬が主流で、その理由を思えば、尚の事。

「……まあ、いいさ。
 それがこっちに一つとして利の無い仕事だったとしても。
 死んだ奴にだって、見るに堪えない姿を晒さない権利はある」

「お時間頂けりゃ結構。どうせ後は時間潰しだ」

どこか冷めた声色は、あなたのそれとはまた異なるもの。
何ら信の置けるでもない相手からの、大した益も無い仕事。
それでも理由はどうあれ了承を返して、何処へも足は向けない。
一度相手の言葉を待つ。用事のある者・・・・・・は何処に、と問うように。
(-29) unforg00 2022/08/25(Thu) 23:33:58

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


「せめて人知れず葬ってやるしかない事もある」

見切りをつけたような、或いはがっかりしたような。
或いは失望か諦めのような。その焼け残った灰のような冷たさは、
何れも向ける先はあなたではないものだけれど。
それはあなたの知った事ではないだろう。その逆も、また然り。

「わかるとは言わないが、わからないとも言えやしないな」

肯定はしないが、否定もしない。
共感と理解は必ずしも片一方を伴うものではない、別々のものだ。
何れも正しくそれを行う事ができるほど事情を知りもしない。

けれど空回る思考の末に選んだその選択が、
結局は何処までも生者の自己満足でしかない事は知っている。
今更道理や正しさを説いた所で、どうにもならない事なのだと。
ただどうしようもなく、その事だけを知っている。

だから他人事の男は、他人事ゆえに肯定も否定もしない。
客観的に見て、客観的な事実だけを認めて、ただそれだけを言う。

そもそもの話、あなたの話の何処までがはかりごとでないかなど
あなたと死者の間柄を知らぬ者からすれば、
少なくともこの時点では、まったくわかったものではないのだ。
(-44) unforg00 2022/08/26(Fri) 22:06:42

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


けれど何れにしたって、どうだって良い事でもあって。
何せどうにもならない事なのだから、なるようにしかならない。
心の底にはいつだってそんな諦めが広がっているものだから。
リスクを、最善を、想定はするけれど、何れも信じてはいない。

尽くを失って来た人間は、何にも手を伸ばそうとはしない。


だからあなたが先に背を向けたなら、喪服姿はその影のように。
人間二人、三人ほどの距離を開けて、粛々と後ろをついて歩く。


嗚呼成る程、たしかに半分だ。

そうして開かれた扉の先。
別れ花じみた花弁と、後部座席に横たえられた女の上半身。
そんな光景を一瞥して、他人事の思考はただそれだけを思う。

名もなき烏は生者の顔など逐一覚えてはいないし、
そうでなくたって、今ここで眠る女は知った顔でもなかった。
けれど未だ記憶に新しい報告が脳裏を過りはしただろう。
それを聞いた時、思う事が無かったわけでもない。けれど。

今ここで言う事なんて、なんにもありはしない。
弔いの言葉一つ言いはしない。それは自分の役目ではないから。
(-45) unforg00 2022/08/26(Fri) 22:07:22

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


悪意に晒されて、酷い仕打ちを受けて、剰え既に朽ち始めていて。
今は善意によって、丁寧に整えられて、こうして庇護されている。
それでももうどうにもならないアンバランスな亡骸。
もはや何処にも行き場の無いそれを、せめても一思いに葬り去る。

いつだって、ただそれだけが自分のすべきこと。
あなたの痩せ我慢を気にする人なんて、今は何処にも居やしない。

「……このまま俺の仕事場まで送ってもらえます?
 生憎と、今夜仕事があると思ってなかったもんで。
 持ち歩くのに難儀する道具は一つも持って来てないんですよ」

「用向きのある奴をこれ以上待たせるのも酷な話だ。
 何より今から取りに戻って、
 それを待つなんてのはあんたも手間でしょう」

運転は任せます、免許持ってないんですよ。
思い出したようにそれだけを付け加えて、
仕事場である僻地の廃倉庫の場所は簡潔に伝えられる。
この男の根城たるその場所に赴くかは、あなた次第だけれど。

それをあなたが許容するなら、二人と一人の道中は何事も無く。
やろうと思えばやれる、なんてのはきっと互いに同じ事。
掃除屋が手を出す事は無い。あなたが何もしない限りは。

今この時に限り後部座席が死者の為の寝台であるならば。
乗り合わせるにしても、きっとそこは避けるべきなのだろうな。
(-47) unforg00 2022/08/26(Fri) 22:08:42
鳥葬 コルヴォ(匿名)は、メモを貼った。
unforg00 2022/08/27(Sat) 2:36:40

鳥葬 コルヴォ(匿名)は、メモを貼った。
unforg00 2022/08/27(Sat) 2:36:57

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


あなたの素性にも、その腹の底にも、大して興味は無かった。
仮令何者であったとしても、もう誰も懐に入れるつもりは無くて。
初めから、これは何処までもそんな薄情な人間の言葉なのだから。
そのようなものが、誰の心に留まるなど期待するはずもない。

何れにしても、確かな事といえば。
あなたが何者であっても、掃除屋にとっては重要な事ではなかった。
あなたは死者の前で無粋な真似をするような人間ではなかった。
今はただそれだけが判れば十分だった。

「だが、何も得るものは無かった。」

「あんたも、あんたが手を差し伸べてやろうとした相手も。
 少なくとも、あんたの思ったようなものは、何一つとして。」

死者は黙して語らない。
少なくとも、凡そ大半の人間にとってはそうだ。

ともすれば、それ以外の何かは得ていたのかもしれない。
それでも、あなたがそうして描いた望みの通りにはならなかった。
だから生者にとっては、今ここにある事実だけが全てでしかなく。

日常の中、薄っすらと死の気配が漂う車内は、静かなものだった。
死者は何も語らず横たわり、及ばなかったあなたの思慮を物語る。
後には破綻した願望の跡と手遅れの悔悟ばかりが虚しく転がって。
心の軋むようなその独白を、慰めるようなものは何処にも居ない。

その疵に寄り添うようなやさしい答えなどありはせず、
けれど、物言わぬ屍体や壁と言うには幾許か聞く耳を持って。
それを聞き届けるものだけが、確かにそこにあった。
(-72) unforg00 2022/08/27(Sat) 20:02:00

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


対話とも、一方通行の話ともつかない距離感の助手席で。
夕闇の中、目的地へと着くまでの、長くも短い道中の事。
取り繕わないあなたの言葉を聞いて、息吐くように笑った。

「俺があんたの仕出かした事を幾つか知っていた所で、
 今更何にもなりやしませんよ。
 起きた後に何をしたって、そこには何の意味もありはしない」

「後には何も残らない。たった一つ、俺達の、後悔を除いて。」

持ち込まれた遺体に何ら関わりが無いのは、言うまでも無い事。
あなたが何をしていたとて、何もしないのも本当の事。
無い仮定として、あなたが唯一の友人を殺めていたとしても
この掃除屋はきっとここで何をしようともしなかっただろう。

「…そうは言っても、腹の底も知れない人間の前で、
 ちっとも構えもしないなんてのは。
 それはそれで、却って疑わしいもんでしょう?」

なんてのは、今のあなたの様子を鑑みれば
随分と皮肉の利いた言葉になってしまうのだろうけど。
たとえば付け入る隙があれば、誘い込むような怪しさがあれば。
魔が差す事は、或いは猜疑が首を擡げる事はあるだろう。

掃除屋は、相手が身内であっても、それ以外であっても。
何れにしても、同じだけの線を引いていた。
互いにそれをしない為の均衡は、必要なものだった。
事ここに至ってしまえば、それも不要なようだったけど。
(-73) unforg00 2022/08/27(Sat) 20:02:31

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


「結局は。さっきも言ったように、後は時間潰しなんだ」

「俺はこの後どうなろうと構いやしない。
 あんたも、そこの知り合いを連れて帰ったら……
 その後は、どうなるんだかな。」

回りくどく取り繕う事を止めたあなたの言葉は、
もはや殆どそれなりの事をしていると白状したようなもの。
そこには幾らかの差こそあれど、それはこちらも同じ事で
そして今している事も、互いに随分と勝手な事だろう。

いったい、自分勝手に行動を起こしたツケというものは。
果たして誰にとって、どれほどのものになるのだろうかな。

結局の所、掃除屋もあなたに答えを求めてはいない。
互いに何を語った所で、恐らく殆どは互いに殆ど関係の無い話でしかなく、
だから何れに答えが返って来ようと、或いは何も無かろうとも。
きっとじきに二人と一人を乗せた車は目的地へと着いて、
そうしてきっと、この夜もまた、一つの死が葬られる。

名もなき烏の仕事場たる僻地の廃倉庫。
広くがらんとした庫内には、あたかもそこがガレージであるように
花屋のものとは違う、一台の商用バンが乗り入れられている。

暗い夜に、内部全てを照らせるだけの灯りは随分と目立つものだから。
灯されるのは幾らかの作業灯だけ。
薄暗く、人の営みの気配の感じられないその場所は、
ともすれば、その倉庫そのものが、一つの棺のようだった。
(-74) unforg00 2022/08/27(Sat) 20:03:21

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー

掃除屋というものは、依頼者を取り巻く諸般の事情に対して
如何なる理由があったとて、何を言うのも褒められた事ではない。
常ならば当たり障りのない相槌を返して、それで終わる事。
けれど今そうしなかったのは、どうしてだっただろう。

何を仕出かすかわからない、という後ろ向きな信用は続いている。
随分な言い方をしている自覚も。そうなる事も予想はしていた。
さりとて予想していて何になるでもなく。一度、鈍い音の後。
口の中で呟くように、遅れて広がる鈍痛に小さくぼやきを零した。

「……気は済みました?
 他人に知ったような顔をされたくなかったのなら、
 あんたはそれをもっと大事にしまい込んでおくべきだったよ」

「それともあんた、俺に何か期待してたんですか?」

その後にもう一度耳障りな言葉を吐いて、今はそれだけ。
何も死者の眠るすぐ傍で口論をしようってわけじゃない。
それは直接的な暴力も同じ事で、報復に手を出す事もなかった。

わかっている。それがもはや内に抱え切れず分水嶺を越え、
心の内から零れ落ちてしまった苦悩の表出でしかない事を。
摩耗しきった精神や思考に正論は何ら正の影響を及ぼさない。
そこに何を求めていたかなんて、あなたにさえ不明瞭な事だろう。

求めるものも、今よりもう少しましな道も、きっとわかりやしないこと。
それをわかっていて、態とその事を考えさせるような事を言う。
もはや正しさでは救われも納得もできやしないのだとしたら。
そんな思考の袋小路に行き着いた時、あなたは何を選ぶのだろう。
やがては自分と同じような考えに至るのだろうか。或いは、それとも。
(-114) unforg00 2022/08/28(Sun) 23:58:47

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


今は取り留めの無い思考に考えを巡らせる猶予も無く。
それから程なくして、配達車は目的地へと辿り着いてしまう。

助手席から降りて、男が腕の中に抱え上げたものを見遣る。
既に幾らかその中身を失ってしまった、華奢な女の上半身。
仮に今ここにあるのが全身であれば、話は違っただろうけれど。
けれど半分だけのそれは、解体するまでもないと判断した。

先に倉庫内に停められていた方の商用バン。
特別用向きもなしに連れて歩くには持て余す道具の最たるもの。
火葬車のバックドアを開け、炉内から火葬台を引き出し、
先に炉に火を入れて、男の抱えた遺体を火葬台に寝かせた。

そうして遺体を横たえた台は炉内へと収められ、
それきり火葬炉の扉は重く閉ざされて。
それが彼女の姿を見た最後の光景になる。

火葬に掛かる時間は焼かれるものの体格や体重に左右される。
女性の、それも上半身だけであれば、そう長い時間は掛からない。
たとえ既にその遺体が朽ち始めていたとしても、
火葬炉というのは、焼かれる臭いは殆どしないようにできている。

やがて、きっとまだ夜が深まり切らない内に扉は再び開かれる。
炉と焼け残った灰から幾らか熱が去った頃。
(-115) unforg00 2022/08/28(Sun) 23:59:26

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


灰と、幾らか残った骨は台の上から容れ物に移される。
骨壷なんて上等なものは無いから、何とも無骨な保存缶の中。
ただ淡々と納められて、あなたの方へ差し出された。

「どうぞ。連れて帰るくらいはするでしょう」

受け取らないなら、掃除屋の方で"処分"されるだけ。
少なくとも、それはあなたの望む事ではないだろう。
未だ目に見えて、あなたの手の内に戻るものだから。

「それで。先に用があった方は済んだわけですが。
 あんたはどうしたいんでしたっけ?」

受け取るにしても、受け取らないにしても。
仕事は済んだとばかりにもう一つの用は切り出される。

あなたは最初に、自分より先に用事がある、と
そう言って彼女の事をこの掃除屋に任せたものだった。
であれば結局、それだけが用向きの全てではないのだろうと。
(-116) unforg00 2022/08/29(Mon) 0:00:08

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


相手の全てなど、語られざる事など、他者に判るはずもなく。
失ったものを数えても、それが掌の中に戻る事は無い。
そしておそらく、今はもう、それらを知った所で手遅れだった。
つまるところ、全てはきっと、何ら意味の無い事で。

けれどこうして何かを選ぶことに、
僅かばかりであったとしても、意味らしきものがあったなら。
そんな届かぬ祈りじみた考えがあったのかも、最早定かではなく。

今はただ、何も言わず、あなたに干渉もしない事だけが確かな事。
軈て亡骸が形を失っても、やはり烏にはあなたに問う罪なんて一つも無かった。
結局の所は、何もかも全ては自己満足であって。
あなたを罪に問うた所で、烏は到底自分が納得できるとは思えなかった。



ああ、そう。
そうして首を振った後の返答に、ただそれだけを返して。
開いたままのバックドアの内側、火葬炉の手前。
その僅かなスペースに遺灰の納められた容れ物を一度置いて。

がつ、ごつ、重たい足音は対照的に。
あなたが訥々と言葉を語る間にも、何歩か火葬車から離れて行く。
掃除屋の仕事着が重たい理由は、数多の死を吸ったから。
そんなフィクションのような理由でなんか、あるわけもなく。
(-126) unforg00 2022/08/29(Mon) 4:46:02

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


その間にも、つたない問いがただ流れていく。
それを聞いていないわけじゃない。確かに聞いているからこそ。
結句気休めでしかなくとも、仕事の場からは離れる必要があった。

両親、仲間、友達、奪われたものを奪い返すべき相手。

その内の幾許かは、或いは、あなたの手によって。

名もなき烏はおおよそあなたと同じようなものを失って来た。
けれどそれが等価であるとは思わない。
その重みは人によって異なるような、似ているだけで違うもの。

何れにしても、手の届く限りの殆どのものを失ってしまった時。
後に残された者のやりきれなさというものは、
いったい何をどうすれば納得が、満足がいくものだろう。

「本当はもう、答えは出てるんだろう。
 何も変わらない。あんたの空虚は、永遠に満たされる事は無い」

少なくとも、それを埋めてやれる人間は居なくなってしまった。

「あんたは、あんたが死ぬまでそのままだ・・・・・・・・・・・・・

生きている限り、この耐え難い苦しみは和らぐ事無く続く。

その言葉を否定できる人間も、今この場には居ない。
続いた先に、たった一握りさえも希望を信じられなかった人間が
生きていれば、いつかは、ひょっとしたら、なんて。
そんな何処までも無責任な希望を他者に語れるはずもない。
(-127) unforg00 2022/08/29(Mon) 4:47:26

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


だからただの一人の死にたがり パスカル・ロマーノ からあなたに差し出すものは、
終わった先の安息の示唆と、それに行き着く手段だけ。
喪服の懐から音も無く拳銃が抜き出され、銃口をあなたへ向けて、

「楽になりたいなら、あんたは早く死ぬべきだったのさ・・・・・・・・・・・・・・・

「──Addio. ソニー・アモリーノ 天使の子供 

同じく自らに向けられたそれに構わず、引き金を引く。簡単な事。

殺すつもりはあったけれど、生きるつもりがあるでもなかった。
名もなき烏にも、或いはそれ以外の誰かにも
ここであなたを殺さなければならない理由は無かった。

死にたい人間は、死ぬしかない人間は、死ぬべきだ。
そうでないなら、せいぜい生きていればいい。
このような行動に出た理由なんてのは、そんな思想だけで。

乾いた銃声が鳴り響いたなら、それは幾つだっただろう。
がらんどうの倉庫が誰かの棺となったなら、それは誰だっただろう。
誰に何処までの言葉が届いたかも定かではない。一つ確かな事と言えば、
夜が明ける頃には何れの姿もそこには無いという事。


願わくばどうか、殺すなら上手に殺してくれ。
もしもあんたがしくじった時は、俺もそうする事にしよう。
そんな思いがあったかは、やはり誰も知らぬこと。
何せそれを語る者は、結局は何処にも居やしないのだから。
(-128) unforg00 2022/08/29(Mon) 4:50:38

【秘】 紅烏 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


返る言葉を聞いて、最後の一瞬。

ただ息を吐くような、音のない笑いが、銃声に呑まれて消えた。

何もかも、諦めのついたような笑みだった。




斯くして血染めの烏は地に落ちた。

或いはあなたの影法師であって、
或いはいつかあなたの行き着く姿であったかもしれないもの。
それと向き合って、それを認めてしまったから。
それがすっかり姿を消したって、もうきっとあなたの道は変わらない。

──曰く、ドッペルゲンガーを見る事は、死の前兆なのだと言う。
(-161) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:33:12

【墓】 紅烏 コルヴォ


返す返すも、運の無い人生だった。

望んだ事は叶わない事ばかり。だからいつしか望む事さえ諦めた。

諦めた、つもりになっていただけだった。


奪われたものは、奪い返すべき相手からは得られなかった。

未来があって欲しいと願った人々は、やはりその大半を見送る事になって。

受けるべきであった、誰かを殺めた報いを受ける事も無く。

もしも果たされる時が来るなら、ずっと先の事であればいい。
そう思って口にした、他愛無い口約束を果たす事も無かった。

見届けるべき死の全ても、その目で見届けるに能わず。

それらの不誠実を、無力を、差し伸べられた手を取れなかった事を。

誰に謝る権利が自分にあっただろうか。

わかっていて、友人の全てを徒労にし続けた自分に。
(+0) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:33:45

【墓】 紅烏 コルヴォ


けれど、いつかの昔に奪われた終わりは取り戻された。

誰かの道は途絶えても、確かにその先を歩いて行く誰かが居る。

全ては叶いはしなかったけれど、全てが叶わなかったわけでもなく。

良くも、悪くも、結局自分は何もしなかったのだから。
そんなものか、とも思う。

望む事も、望まない事も選べなかった、半端者には相応しい結末だ。


だから、見届けて来た全ての死だけを連れて。

家族も、帰る場所も、行き着く先も求めない必要ない

名もなき烏は、何処へ行く事も選ばない。
(+1) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:34:03
コルヴォは、もう誰の元にも戻らない。きっと子守歌を聞く事も無い。
(a9) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:34:09

コルヴォは、もう誰の死を葬る事もない。その必要がない。
(a10) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:34:19

【置】 紅烏 コルヴォ


それでも、うっかりいつか、何処かで再び逢う事があったなら。

誰にも許しを請いはしないから、許さなくていいから。

その時は、ただ怒ってはくれないか。

家族・・の望み一つ拾い上げられなかった、このちっぽけな男の事を。
(L29) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:34:43
公開: 2022/08/29(Mon) 20:50:00

【墓】 紅烏 コルヴォ



本名:
パスカル・ロマーノ
 身元不明のため、不詳
死因:失血死と推定される
発見場所:廃倉庫
遺体の様子:
僻地の廃倉庫にて、言伝を受けた同所属の掃除屋が発見。
見付かったのは焼け残った灰だけだった。
遺体の状態から死因を特定する事は困難であり、
現場に残っていた血痕から、失血死と推定されている。


(+2) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:35:40