決して口に出すことは出来ないが
　　　　浅見律との面談はよく覚えている。

　　　　あの時感じた強烈な違和感が
　　　　俺にはどうしても気になってしまい、

　　　　他のやつがいないタイミングで
　　　　俺は思わず聞いてしまったんだ。

　　　「なぁ、お前、あんま両親と仲良くねぇの？」

　　　　無粋な質問だったなら悪かったなと思う。
　　　　でも担任としちゃ見過ごせなかったのさ。*

　　　さてそんな浅見なのだが
　　　未だにクラスに馴染む様子もなく>>11
　　　机の周りには立派な絶壁が立っていた。>>12



　　　先生とはなんて無力な存在なんだろうと
　　　俺は思わず自分を呪ってしまったよ。

　　　行き詰まっていた俺が考えたのは
　　　呼び出しという名の個人面談だ。

　　　誰にも悟らせないように>>15
　　　浅見の抱えている心のリサーチを試みるために
　　　俺は浅見に�W手伝い�Wという建前を言い続けた。

　　　正直ウザがられると思ったんだが
　　　思いのほか俺の評価は低くなかったらしい。>>16>>17

　　　　「なんでってそりゃぁなぁ。

　　　　　これでもう何回目だよ。
　　　　　それとも、まだ言なきゃ伝わんない？」

　　　浅見は比較的賢い生徒だからなのか。
　　　今となってはもう�W手伝い�Wという口実も
　　　あまり意味を成していないらしく。>>18

　　　白々しさのあまり自分で笑ってしまいながら
　　　資料室に置かれたソファーに腰掛けると。

　　　俺は浅見に本題を告げたのだった。**

─── 半年前 ───

　　

　　
　　
　
　　

　

　　でも、そんな我が家でも
　　面談だけは避けられなかったようで。

　　世間体を何より気にするくせに
　　娘を蔑ろにし続ける、矛盾だらけの親の演技なんて
　　多くの保護者を見てきた人なら、
　　看破するのは難しくなかったのかもしれない。

　　たとえ、上辺だけはいい親に見えたとしても。

　　

　
　　


　　多分、この一言で分かるんじゃないだろうか。
　　信用も何もない、この一言で。

　　

　　

　　「……どうして、そう思うんですか？」

　　

　　
　　他の人に聞かれないタイミング。>>21
　　それでも、質問に質問で返したのは>>22
　　今まで言われたことがなくて戸惑ったから。

　　でも、違うなら違うって言って終わりの話。
　　それを、否定しなかったのは、
　　何よりの答えだろうから、隠しても無駄だと思って。

　

　　「仲の良い悪いで済ませられる話なら。　
　　　もっと簡単だったでしょうけど。

　　　一般的に見るなら、悪いんじゃないですか。」

　　

　　にこりともせず返す。
　　別にこの時は、あなたを信用したわけじゃない。
　　そのつもりだったけど。



　　

　　
　　馴染めと言われたところで馴染む術もないし
　　先生にひいきされてると悪目立ちして
　　いじめられるくらいなら、今のままでよかった。



　　

　　「何回目かなんて数えてませんけど。

　　　……言われないと、分かりませんね。
　　　何度も呼び出される不良生徒なので。」

　　

　　分からないわけじゃない、見当はつく。


　　ソファーに腰掛けるあなたを目で追いかけて。
　　本題を聞けば、ようやく私は自ら動く。*