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【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優検問を抜けた僕は、体育祭ムードに辟易していた。 「 めんどくさい…… 」嘆息する。昼休みのことだ。 そのままどこかで昼寝でもして、サボってしまおうかと思った。 それらしい所を歩いていると、君の姿を見かけた。 知らない女子だ。少なくとも同級生ではなさそうだと思う。 「ねえ、そこ、昼寝にはいい?」 何となく下級生と思ったから、そんな声をかけた。 /* 役職能力行使、『ランダム』の導きにあいました。 よければお付き合いくださいませ。特に何もありませんが。 (-2) oO832mk 2021/10/27(Wed) 21:10:55 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優ふうん、と僕は吐息を漏らした。 確かに季節の割に、寒くもなさそうでいい場所だ。 「そう。じゃあ少しスペースを借りるよ。 ちなみに1年?2年じゃないよね」 敬語が返ってきたのを見てほぼ確信していたけど。 これで同学年や3年だったらあまりにもあまりだ。 同学年の顔を全て把握してるとまでは言い難いし。 僕は尋ねながら、日差しの下に胡座をかいた。 そこまでやって気付いたんだけど、隣に知らない人がいるのに寝るのはちょっと無理だな。 彼女が眠るか、ここを離れるまではこうして空でも見上げていよう。 幸い、いい秋晴れだ。 (-11) oO832mk 2021/10/27(Wed) 22:06:51 |
【人】 朝日元親「………はぁ」 憂鬱になった。朝から嫌な単語を聞いたものだ。 いつも通りに早めに登校をして、その放送を教室で聞いていた僕は、溜息を悟られないようにまた窓の外を見た。 今日はあのやる気に満ち溢れた女性との姿がない。 酷くどうでもいい事だったので、すぐに忘れた。 (5) oO832mk 2021/10/27(Wed) 22:09:34 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優問われれば、僕は視線を戻す。 前髪の隙間から、後輩の顔を見た。 「2年。名前は朝日」 名乗る必要は本来ないような気はしたけど。 不便だから名乗っておいた。 「そうだよ。サボり」 続けて、悪びれもせず僕は答えた。 取り繕うつもりもないし。その必要も感じられない。 「嫌いなんだよね。体育祭」 (-24) oO832mk 2021/10/28(Thu) 0:26:31 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「牛丸さんか。覚えとくよ」 これから先話す機会があるかは分からないけど、まあ3年生よりはあるだろう。 あと数ヶ月であの人たちは卒業するんだし。 「へえ、そりゃいいとこ見つけたね。 僕もだけど、キミも。 嫌いなのはどっちも。でも1番は運動かな。 好き好んで疲れたいとは僕、思わないから」 口にしたあと、牛丸さんはそう思わない可能性もあるなと少し思った。 まあでもいいか。運動が嫌なのは、本当だし。 (-31) oO832mk 2021/10/28(Thu) 0:51:40 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「そうだよね。どっちもいる。 でもどっちも参加だ。……面倒ったらないよ」 短く嘆息した僕は、少し考えた末に結局尋ねることにする。 「牛丸さんは? 運動、好き?嫌い?」 嫌いといえば同意を示すだろうし、好きだといえば理由を尋ねるだろう。 どんなところが好きなの、と。 (-62) oO832mk 2021/10/28(Thu) 10:20:42 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「……それは……」 黒いタイツの上、白いサポーター。 視線を向けたあと、大体の想像をつけた。 少なくとも常から運動嫌いな僕は、サポーターなんてもののお世話になったことはない。 「運動部、かな。牛丸さんは」 (-108) oO832mk 2021/10/28(Thu) 20:26:13 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「応援係って。体動かすからそんなものしてるんでしょ」 選手かどうかは知らないけど、普段走ってはいるのだろう。 それくらいは僕にも想像はつく。 そのサポーターの大仰さには気付かないけどさ。 「でも楽しみなんだ。 応援で楽しめるのは羨ましいけどね。 走りたいもんじゃないの?陸上部って」 (-125) oO832mk 2021/10/28(Thu) 21:56:00 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「へえ、高跳び」 テレビやなんかで見たことはある程度。 勿論実際にやったことはない。 「何mも跳ぶんでしょ、アレ。 よく怖くないよね」 チチ、と鳥の鳴き声がした。 見上げると空を飛んでいく。 「まあ確かに思ってたのとは違ったかも。 長距離とか短距離とか、そんなんが浮かぶよ、僕は」 (-127) oO832mk 2021/10/28(Thu) 22:25:29 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「……へえ。それは興味なくはないけど」 運動が嫌だという割に、僕は乗り気な方と思う。 何故なら『好き好んで疲れたいとは思わない』、その言葉の方が建前だからだ。 「そりゃそうだろうね。 僕はこうだから、そういう競技には参加させられたことないけど。まあいるよねどこにでも。 異能を理由に面倒そうな競技参加させられたりさ」 (-138) oO832mk 2021/10/28(Thu) 23:17:34 |
【秘】 朝日元親 → 朧げな陽光 守屋陽菜「いますよ、先輩」 僕は開いていた本を閉じる。教本だ。教科書ではない。 本屋で買った、デザインについての本だ。 僕はよく、1人になるとこの手の本を読んでいる。 「わざわざありがとうございます。 マイクの本数に変わりはなさそうですかね」 僕は今回もあまりマイクに向かう気はない。 ただ台本そのものは必要なものだ。 頭に入れておかないと、当日なにかあったときに困る。 「あと、あんまり派手にドア開けて。 立て付け悪くなったら先輩のせいですよ」 (-141) oO832mk 2021/10/28(Thu) 23:28:32 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「実際に走らないのに、お試し体験?」 潜められた声。僕は訊ね返した。 よく意味が呑み込めない。 「へえ。便利だね。 僕は残り物には福がある…そんな感じだ。 運動系じゃないけど、借り物競争とかに推薦されたりするから正直辟易してる」 看護師とか保育士とか向いてそうな異能だなと思った。 異能による向き不向きと、本人がなりたいものは別だから口にはしなかったけど。 (-145) oO832mk 2021/10/29(Fri) 0:07:54 |
【秘】 朝日元親 → 朧げな陽光 守屋陽菜「いいですよ別に。 暇だっただけなんで」 積極的に体育祭の準備に関わりたくなくてサボっていただけだ。 勉強をしてる素振りを見せれば、案外教師にも文句は言われない。 台本を受け取る。付箋のされた位置を開いて確認をした。 先輩が案外マメなのは、今に始まったことじゃないと思っている。 「ご名答。そりゃ根にも持ちますよ。 だからもう壊さないでくださいね。 壊すならマイクにしてください。 そうしたら新しいマイクを買うための予算、生徒会から降りるかもしれませんよ」 1つ壊して1つ手に入れるのだから差し引きはゼロ。 でも少し型のいいマイクが手に入るならプラスかもしれない。 前のマイクとどう違うのか、比べてみるのも楽しいかもしれないと思う。僕はそういうのが好きだった。 (-147) oO832mk 2021/10/29(Fri) 0:17:43 |
【秘】 朝日元親 → 朧げな陽光 守屋陽菜「そりゃそうですね。 さすがに今はやめてくださいね。 やるなら体育祭が終わってからにしましょう」 教本と台本を整えて、鞄に入れる。 大まかな変更点は頭に入れたつもりだ。 そうして顔を上げると先輩のにやけ面が目に入った。 前髪の隙間から、僕はそれを見る。 「……好きなんですよ。子どもの頃から。 なかなか触る機会もないし、役得と思いますけどね」 仕掛けが気になるとか仕組みが気になるとかもある。 でも何よりこの手の機材の無骨さが好きだった。素直に恰好いいと思う。 「寧ろ放送したくて放送部ってってのが俺にはよく。 部員も全員が全員、目立つのが好きってわけじゃないですし」 ならどうして放送部なのか。 そういう僕も機材目当てなら軽音部という選択肢もあった。 柄でもないので今ここにいる。 (-161) oO832mk 2021/10/29(Fri) 1:26:28 |
【秘】 朝日元親 → 朧げな陽光 守屋陽菜先輩の言葉に、つい僕は口許を緩ませる。 半年後にはいなくなる先輩に、本当に大惨事を期待するわけがない。 「───冗談ですよ、勿論」 伸びた前髪の隙間からも細めた目は見えやしない。 それでも口は弧を描くから、笑っていることは分かるはずだ。 「そんなに分かりづらいですかね。 みんな似たようなもんじゃないですか? 僕だって先輩が何考えてるか、よく分からないわけですし」 教本と台本を片付けた僕は、そのまま鞄からコンビニパンの袋を取り出した。 例の如く、消費期限は切れている。 まだ下校のアナウンスは鳴っていない。 それを鳴らすのまで放送部の仕事だ。 放送をしない僕はその時間に拘る必要はないが、所属する以上はそこまでいるつもりだった。 帰宅の準備だけ早々に終えた鞄を、床に置く。 廃棄パンの袋を開けた。ジャムパンだ。 (-190) oO832mk 2021/10/29(Fri) 10:22:19 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「……へえ。気になるね。 高跳びもだけど、その異能も。牛丸さんの友達?」 便利な異能と思うかと言われるとそうは思わない。 他人に干渉する異能は扱いが難しいんだろうけど。 「そう思われて推薦されるだけで、別にそんなことはないんだけどね。 だから本当に、ただ迷惑な話だよ。 これで活躍しそうな異能なら、それはそれで──」 僕は一瞬、言葉を止める。 思いの外自分の異能の話で イラついて いたらしい。「──好き勝手言われて、競技に駆り出されるんだろうから。 それに比べたらマシだけどさ」 (-195) oO832mk 2021/10/29(Fri) 13:44:11 |
【秘】 朝日元親 → 朧げな陽光 守屋陽菜「それなら僕はどうとも思われなくてもいいですけどね」 そう意志を示したところではい分かりましたと気に留めずいてくれる人がどれくらいいるかは知らない。 でもこの部室は無礼講だから、告げるだけは告げておいた。 ジャムパンのジャムはいちご味だ。 パンはパサついているし、ジャムも少し風味が落ちている。 「美味しくはないんじゃないですかね。 無料で手に入れたものだから、値段相応の味ですよ。 普通の人にはお勧めしません」 残り物には福がある異能。 残り物である廃棄パンで身体を壊す恐れはない。 だからこうして食費を浮かせようとしていると、先輩に話したことはあったかな。 浮かせた食費は本代や資格代に消えている。 今日読んでいた教本だってそうだった。 仕送りのある寮暮らし。バイトもしているとはいえ、興味のあるものを買うだけのお金は欲しい。 (-240) oO832mk 2021/10/29(Fri) 20:15:03 |
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