人狼物語 三日月国


176 【R18】実波シークレットパラダイス外伝【身内】

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【独】 経理課 望月 ロビン

時は旅行の最終日のいつか。
いつもみなが朝食会場として使っている、プールサイドに立つ。
浴衣、はさすがに気がとがめたのか、限りなく襟を抜いたビジネスカジュアルの範囲だ。
テラスに居るのは、社長と望月の二人だけ。

「……はい、はい。そうでしたか。解決したのであればよかったです。
 富武クンに異動届を取り出された時は、覚悟はしたとはいえかなり冷や冷やしました。
 部下として、決して失いたくない人材であるのは確かですから。

 鹿籠クンも、おそらくは……ただ、長期的なケアは必要なんじゃないかと思います。
 結局は自身の心の持ちようの話であるわけですから、解決とは言いづらいかと」

言葉は堅苦しいものの、内包する気持ちとしては純粋な心配だった。
彼らにとって今より満たされる環境は、もしかしたらどこかにはあるかもしれない。
けれどもそれは衝動的にこの場を離れて、当て所なく探して見つけられるものではない。
いつか羽ばたくことを選ぶのだとしても、それまではちゃんと面倒を見ておきたいというのが本音だ。
それが、傲慢な言い回しと立場であったとしてもだ。

そう、と同意する旨の言葉が社長から向けられる。
報告はきちんと受け取られ、これからの彼らの苦難を可能な限り取り除こうとするものがあるだろう。
社長は、彼らを見てくれるはずだ。もう取り落としかけたりすることなんて無い。
それで、と話は続けられる。水を向けられたのは自分の方の事情。
以前より考えたことは、どうするのか。望月は少しだけ笑って、口を開いた。

「はい、それで
海外事業所への異動
の件は……もう少しだけ、保留にしようかと。
 まだ僕はこちらに居て、彼らのことをきちんと見守っていかなければならないと思うので。
 教育のし直し、ですね。彼らも、……勿論、僕も。精進いたします。もう少しだけ、社長の元で」
(-2) redhaguki 2022/10/01(Sat) 22:42:52

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

珍しく払われた手は、ちょっとびっくりしたような顔で自分の眼前に掲げて見つめたりしてたけど。
気にしない、それくらい。そんな一手を気にするような繊細な人間ならこんな態度はしていないのだ。
もうちょっとばかり、それこそ猫じゃらしで遊ぶみたいに頭を撫でようとして、
払われたり払われなかったり、物珍しい態度を受けていることを楽しんでいたかもしれない。

果たして自分の番、あるいは相手の番かもしれない、ということをきちんと理解していたか。
理屈としてはわかっていても、人間そういう想像は直面しないとはっきり浮かべられないもの。
誰だろうね、なんてあんまりにも呑気な相槌を返していたかもしれない、ところで。

「ははは、もっと色々やってる人もいるもんだよ。
 なんて苦労を語っても仕方ないな。……でもこれでちょっとでもいいなと思ったらさ。
 もう少し楽な手段だとかグッズだとか、選ぶくらいなら手伝うよ。髭周りは特にね」

少なくとも髪はあんまり興味が無くても、口周りがすっきりするのは気持ちいいものではあるだろう。
ね、なんて押し付けがましく言って、ようやく離れて自分も浴衣に袖を通す。
ほんのりと漂う甘い匂いはいつもどおり、朝から完璧な生き物の出来上がり。

その後は、件の朝の風景があったわけだ。
(-4) redhaguki 2022/10/01(Sat) 22:59:04

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「信クン、おかえり」

ようやく食事に迎えるだけの準備が出来たのは、朝ああして声を掛けてから、
あの大変な野球拳があって、落ち着いてからのことになった筈だ。
尤も望月のほうは軽く一発抜いただけにとどまったのに対して、
貴方はけっこう散々な目にあったあとだろうから、ちょっと疲労困憊かもしれない。
その辺りは社長から栄養ドリンクが配られているだろうから、元気になっていただいて。

四日目のその日は互いに同じ部屋を充てがわれていて、仕切りのこっちがわを使うことになってた。
他に同じ部屋となっていたのは榑林に緑郷。女性と混ぜるわけにはいかない。
だから必然、前後に何があろうと四人部屋内部の部屋の割り方まで決まっているはず、多分。
先に部屋に戻ってきた男は、夜気に晒された体を温めるために温泉を浴びたあと。
ただ、服装は浴衣ではなくて、ネクタイこそ締めてないもののジャケットにシャツ、
足元はチノパンツに革靴としっかりビジネスカジュアルに着替えていた。

「お店、二階のダイニングバーにしたんだけれどいいかな。
 キミが僕を探しに来た時に、僕が夕食を食べていたところだよ。
 テラス席も静かなんだけどさ、半個室のブースがあるから話はしやすいと思う。
 ……すぐ行ける? それとも向こうで待っていようか」
(-5) redhaguki 2022/10/01(Sat) 23:08:43

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

ひどい声だな、とは言わないものの表情にはちょっと表れた。片眉を上げる。
短い待ち時間を他の場所に行って過ごすわけにもいかず、部屋のベッドに座ってくつろぐ。
手元にある本は相手にとっては知らない国の言葉で書かれたガイドマップだった。
一旦目を上げてから、着替え始める様子を見てまた本に目を落とす。

「折角着替えるてのに、焦って来させて汗だくにさせるのも悪いよ。
 予約だって部屋内の端末から連絡できるし、向こうに迷惑かけることもない」

さすがに着替えているのを凝視するほどデリカシーがないわけじゃない、なんて。
人が触手に襲われてあっぷあっぷしてるところは凝視するんだから妙な話だ。
そこはまあ、きちんと社長や技術者が見張っているかどうかの違いでもある。

相手が着替えるのを待って、足元もきちんと履き替えて。
連れ立って、今日の目的地に行く。他には部下しか知らない、ちょっとした穴場だ。
社員旅行で来ているんだから揃って食事をするのが概ね当たり前だし、
食事の出る時間と被ってたら当然旅館サイドに食事を頼んでる人間はそちらの施設に縁がない、
というごくごく単純な話の結果でしかないのだが。

店に着けば、席の予約をしていたとおりに奥へと通される。
前述の通りもともと人気の少ない店内の、奥の半個室は余計にがらんとしている。
イベントがあったり、食事の時間とズレていればもうちょっと賑わうのだろう。
配慮か時期に恵まれたのか、壁の一方は窓に面している。
とっくに日の暮れた風景は空と建物の境界もわからないが、灯る明かりは夜景を綺麗に魅せた。

「コースでお願いしちゃったけど、大丈夫かな。
 酒は飲み放題じゃないからちゃんとセーブしてね、あんまり飲んじゃダメだよ」
(-8) redhaguki 2022/10/02(Sun) 0:14:52

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「少しならいいけど。潰れてもいいけど、話を忘れでもしたら僕もちょっと怒るかも」

冗談だ。相手が潰れてしまったとして、呆れこそすれ怒る自分の姿は想像出来ない。
そんなだから甘やかしているだとかなんだと言われるのかもしれないが、
実際、怒る気もしないのだろうから仕方がないだろう。

「僕もビール、ヒューガルデンで。……はい、瓶二本。大丈夫です。
 ……うん、何から話そうかな。おいそれと人にするような話じゃないからなあ。
 どんな順番で話すべきか、てのはわからないけど」

イタリアからひょっとするとスペインあたり、日本風にアレンジしたイタリアンが運ばれる。
格式高い、というよりかは洒落たものであることを優先したような店の佇まいだ。
実際、こうして色んな人を呼び込むリゾートの店としてはそれくらいのほうが客も親しみやすい。
6種前菜の盛り合わせに、旬の肴料理、マデラソースの牛フィレ肉。
それから雲丹のトマトクリームソース。
ドルチェには、いちじくのソースが掛かったクレマカタラーナが運ばれてくると説明があった。
一通り目を通し耳を傾けつつ、あとは運ばれてくるままに任されるだけ。
料理を待つ間に、最初に頼んだビールが運ばれてくる。
ピルスナーに慣れた相手には、爽やかなホワイトビールは少し新鮮かもしれない。
他に誰も見ていないから、当たり前に瓶の半分を注いでグラスを傾ける。
下戸、と嘘をついているのを忘れたかのように、自然な仕草だ。

「……信クンは、子供の頃どんなふうだった?
 僕は中学の途中まで、向こうに居たからあんまりこっちの習慣がわからないんだ。
 前に言ったよね、確か。半分スウェーデンで、四分の一がノルウェー。
 こっちの血は残りの四分の一だけ。母の家の都合でこっちに定住することになったって。

 名刺の名前と名義の名前、違うだろ。"望月諒"じゃ、あれこれ聞かれて大変なんだ。
 だから開き直って、名前は呼ばれ慣れてるほうで名乗ることにしたってのも、言ったっけ」
(-13) redhaguki 2022/10/02(Sun) 1:13:41

【秘】 経理課 望月 ロビン → 経理課 富武 瑛

指の腹でさんざんにいじめぬいた胸元も、いくらか腫れが目立ってきたなら手を放す。
代わりに、部屋から持ってきたサコッシュの口を開けて中身を取り出した。
プラスチックの飾り気のない瓶の中には、粘度の高い液体が入っていた。
それが何で、どうするためのものなのか、なんてのは説明する必要もない。

「そうかもね、でも不安にならなくていいよ。
 日本人のよりかは柔らかいから。……圧迫感はだいぶ強いかも」

じんわりと硬度を増すごとに息は深く、荒くなる。
相手の手の中で寄り添いながら膨れてきた肉棒は、グロテスクな色味を増してきた。
それが先走りを絡めてそそり立つ様子にちら、と目を落として、
その際に相手の唇が何を求めているか、というのも視界に収めた。

「素直だね。雛が餌をねだるみたいにしちゃって……
 次はどうしてほしい? 自分の口できちんと説明できたなら、ご褒美をあげるよ。
 瑛はいい子だから、ちゃんとできるね?」

なのに、欲しい物を与えるまでにはもうワンテンポほどお預けを食らわせる。
下を向いて唇同士の距離を近づけて。息が触れ合いそうなくらいなのに、何も与えない。
相手に任せたぶんだけ空手になった手は、急に相手の尻肉を持ち上げた。
押し上げた肉質、それによって露出させられた秘部が、今どうされたがっているか。
わかっているからこそ、相手に言わせるのだ。
(-15) redhaguki 2022/10/02(Sun) 1:46:33

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「はは、僕飲めないわけじゃないよ。……ああでも、多分信クンは覚えてないんだけど。
 最初の歓迎会の時さ。僕がまごついてた時に目の前にドン! って水のピッチャー置いた人がいて。
 なんだと思って見上げたら、信クンだった。多分飲めない酒に困ってると思われたんだろうな。
 ……ぜんぜん、そのときの信クンのほうがベロベロに酔ってたけど」

だから、もし覚えていたならそのときのイメージが強いのかもね、なんて添える。
下戸ではないのは相手は知っているはずだけど、酒が好きか嫌いかまでは言っていないかもしれない。
互いに長い付き合いだ。片方しか覚えていないことは、多分きっと様々にある。
自分が、相手にとっておぼえていないことを覚えているのと同じように。

「ははは、信らしいな。元気な子供だったの想像つくよ。
 怒られても凝りずに危なっかしいことして、……なんだか今も変わらないな、それじゃ。
 今でも子供みたいなところあるもんな、信クンは」

他愛ない話をしている間に料理が運ばれてくる。食器を扱う手先は手慣れたものだ。
箸を使う所作にも申し分ないのと同じ。なんら不都合があるようでもない。
他人に食事風景を見られるのをいやがるほど、不格好な手付きをしているわけではなかった。
切り分けた料理のひときれを、口に入れる。ふつうに、食事をしている。
そういう風景だって、やっぱり相手には物珍しい姿に感じられるかもしれない。

「で、子供の時は、向こうの家は結構広くってさ。帰ると仕事で両親もいなくて。
 誰かが帰ってくるまで、父さんのコレクションの映画を色々見てたりしてたんだ。
 ……その中の一つが印象的でね。1920年代くらいのアメリカを舞台にした作品で、
 今じゃ考えられないような、派手で向こう見ずなパーティの様子が映されてたんだ」
(-17) redhaguki 2022/10/02(Sun) 2:22:09

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「いや絶対信クンだったね。普通、ピッチャーごと置かないでしょ。ちゃんと覚えてる。
 でも別にからかってるとかじゃなかった、多分真面目に気を使ってるんだろうなと思った。
 それがなんか、おかしくてさ。……でも気遣いは嬉しかった。そう、覚えてる」

相手を見る目が和らぐ。遠いいつかの記憶を辿って、懐かしむときの顔。
その頃から相手はそういうことをする人だったのを、望月はきちんと記憶している。
普通からしてみれば論理的ではないことをするのがかえって人の気を和らげる。
なんでも理屈立てた行動で解決を試みようとする自分には、出来ないようなことをする人だ。

互いに、目の前に置かれた食事に着手している頃だろう。
脂の乗った旬の魚であったり、質のいい牛フィレ肉をカトラリーで扱って、口に運ぶ。
少し口の中がくどくなっても、ホワイトビールの爽やかな風味で唇を湿らせればさっぱりする。
普通の、食事だ。値段相応の質の良さに囲まれた、ちょっと気取ってはいるものの、ありふれた。

「はは、確かに。今日は忙しかったな、本当に。
 ……そうそう、第一次が終わった直後の話だったかな。狂乱の時代の話。
 色とりどりのドレスに豪華な食事、へべれけな人々がジャズに合わせてダンスを踊る。
 すごい映画だったな。……映画自体も結構語りたいとこはあるけど、ひとまずおいといて。
 その頃からかな。自分の中でなんとなく、映画を見るときの傾向を理解し始めた」

食器が皿を掠る音。カトラリーを扱う手先。一口、唇を開いて肉を口の中へと運ぶ。

「白雪姫。セブン。バベットの晩餐会。アメリカン・ビューティー……色々観たけど。
 印象的に感じるのはいつも同じだった。同じ、共通する場面ばかり。
 最初のうちはどうしてこんなにドキドキするかもわからなかったのに、とにかく求めた。
 ただ感動してるんだと思ってた、気づくまでは。気づくまでは、わからなかった」
(-19) redhaguki 2022/10/02(Sun) 3:05:23

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「僕だったらコップ一杯を差し出すと思う。
 ……でもそれってあからさまだし、後で何かお礼しなきゃな、って思うだろ。
 そういう強迫性は全然感じなくて、ただ、胸のつかえが下りる感じだったよ」

傍から見ればこっけい話だ。けれどそのほうが場に適していることもある。
まばたきをする。湖の底を映し出したような、青緑のアクアブルーが睫毛の向こうに見える。
金のふちどりの間で、はっきりと目の前を観ていた。シャッターのように、瞬きが重なる。

「胸が高鳴るのは感動しているからじゃなかったし、映像美にやられたわけでもなかった。
 あれが一つの目覚めだったのかもしれない。……出来ればもっと普通のものでよかった。
 とにかく自分でも説明しきれないものがあって、きっかけは、ソレだったんだと思う」

店の中にはごく小さな音で音楽が流れていた。トランペットの音の印象的なジャズ。
ちょうど、最初に言っていた映画に似合いそうな音だ。それで会話がかき消されることはない。
けれど、隣の音は聞こえない。店内の音はほとんど、少しも。
ごく近い、テーブルを挟んだ向こうの音だけが聞こえる。

食器が皿を掠る音。カトラリーを扱う手先。

一日目、ちょっと食事の時間をずらしただけで済ませようとしたら、声を掛けられて。
ほんの短い時間、不慣れな食卓を囲むことになってしまったこと。
二日目、酔いつぶれて部屋で休んでいるあなたに水を飲ませた時にわざわざ目を塞がせて、
見せないようにしていたものがなんだったか。追い縋るような指が何に触れていたか。
今目の前に映る風景の、何を印象的な色の薄い目の中に捉えているか、だとか。

あなたは、思い出すことがあっただろうか。わざわざ思い返しただろうか。
きっと無い、そんな些細なこと。些細な話。ありふれた日常の、何の変哲もないもの。
だからこそ誰から隠匿すべきと思ったこともないだろう、そんな些細なことが。

(-21) redhaguki 2022/10/02(Sun) 3:33:36

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「……信はさ、僕が"そういうもの"に縁あってほしくないと思っているみたいだけど。
 僕がキミの仕草に何を眼差しているかってのは、とうとう気付きゃしなかったな」

手元、口元。おとがいが動くさま。咬合面が噛み合わされ、喉の奥へと嚥下する。
その僅かな筋肉の動き、伴う所作。唇に残った僅かな食物の油脂。
それを一つも見逃さないまま見つめ続ける碧眼の、瞼はわずかに血色が滲んでいた。
空調はなにも悪いところもなくちょうどよく効いているというのに、僅かに首筋に汗をかいている。
肉の薄い鼻筋や頬骨に明らかに朱がさし、息はゆっくりと深く、熱く沈んでいる。
いくら相手が目を背けようと今までいていたのだとしたって、もう、わかるだろう。
答えは目の前にあり、相手自身もまたその答えの一つなんだから。
 
 

望月ロビンは実は、
他人の食事風景に対して性的興奮を覚える
性癖の持ち主だ。
 
 
 
(-22) redhaguki 2022/10/02(Sun) 3:40:07

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「……信。僕もさ。キミはずっと憧れに足る人間だと思ってたし、人に話してきた。
 僕は信のこと大事なものだと思ってたし、でも、どっか手放すべきだと思ってた。
 でも多分今までが、知らない時間がちょっと、長すぎたんじゃないかな、僕たちは。
 信がどうして今みたいに僕の事を持ち上げて語るのかってのは、僕は知らない。
 僕のほうは、……今話した通りだよ。歓迎会の時からずっと、すごいやつだなと思ってた」

ちょっと差し出して揺さぶったところで、簡単には受け取らないだろうというのは目に見えていた。
だからこうして勝負を仕掛けている。きっとここで諦めて曖昧な言葉を受け取ってしまったなら、
これから先は二度と相手の印象を払拭する機会なんてのは得られないかもしれない。

グラスの中のビールを一口二口含んで、口の中をさっぱりさせる。
既に食器からは手を離して、代わりに椅子の背に手を掛けて引き、立ち上がった。
少し身を乗り出して腕を伸ばしたらそれだけで届きそうであるのに、わざわざ机の横を回る。
通路側を背にして相手の座る椅子の前に立つ。つまり壁際に追い詰めた形になっている。
のらりくらりとかわされてしまうことのないように、視界を塞いで。

「本当に、そうだと思ってる? ……思ってるなら、そんなふうに予防線張るみたいに言わないよね。
 僕は、キミの秘密を知ってしまった時にさ。……そりゃあ混乱もしたけれど。
 でも自分だけは知って、知らせないままで、ずっとやっていくのかなって考えて。
 キミと対等で居たいから、自分も打ち明けようと決めたんだ」

床材に片膝をつく。いくら背丈に差があってもこれなら自分のほうが見上げるようになる。
まるで傅くように見上げた相手の、片手を取って、食器を指の間からはずさせて。
空になった手を、代わりに己の顔に触れさせた。頬骨、口元にかけて。
僅かに顔を傾けて、自分よりも小さく細い指に自重をうっすらと乗せた。

「信、もう僕たち互いの理想化した姿を追いかけるのは、辞めにしないか。
 ……今ここにいる僕のことを見てくれ。普通のありふれた人間としての僕を。
 僕はキミに性的魅力を感じているし、すごくドキドキしてる。
 信は、どう思う。僕のこと。……軽蔑した? キミで興奮する僕は、認められない?」
(-25) redhaguki 2022/10/02(Sun) 4:33:01

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

自分に自信のある人間だ。恵まれた体と精神を持ってここにある、金色の獅子だ。
だからこうして称賛を受けることになんら引っかかりは感じないし己を"そう"だと思っている。
けれど、その上で。そんなふうに相手が自分を卑下するのはあんまりおもしろくない。
そう言いたげに眉をひそめ、大きくゆっくりと首を横に振る。

「僕と信は、違う人間だ。同じようにはならない。
 僕はキミのこと尊敬してるし、キミもそうなら、……嬉しいよ、たぶんね」

それから。頬に当てたあなたのてもそのままに、相手の表情を見上げる。
これだけ近くなった瞳は少しも逃すこともなく相手を見つめたまま、逸らされもしない。
頷いて、相手の言を聞いて。……少しだけ間があってからため息を付いた。
勿論、相手がこの旅行中にどんなふうに他者に振る舞ってきたかなんてのは聞いちゃいない。
けれど、"知らない"なんてことはない。あったら、シャワーブースでキミと二人になったとき、
適当なところでほっておいてお開き、なんて呑気なことをしていたはずだ。

「……待ってあげたいつもりは、ある。出来れば僕だって信の望みは聞いてあげたい。
 でも僕はキミが追いついてくるまで、待てないかも。キミが思うような上等な人間じゃない。
 今だって自分がどういう人間かを黙ったままこの場に連れてきてキミの所作に欲情してるんだ。
 キミとセックスしたいし、頭の天辺から爪先まで全部食らいつきたいくらいに思ってる。
 僕がどれくらい、キミに触れるのを我慢して、大事にしてきたかわかるかい、信」

目線は焼け付かすように見上げたまま。手の内に収めた手を、掬うように握り直す。
好きなようにしてしまえてしまっている相手のてを己の顔の真正面に持ってきて。
指の節目、骨の浮き出ている起伏に至るまでに丁寧に口づけを落とす。勝手に、だ。
まるで淑女に忠誠を誓うみたいような構図ではあるが、そんなお綺麗なものでは残念ながら無い。
相手はどんな思いで我慢してきたのだか、なんてことを全て推し量ることができるわけじゃない。
だから、こちらからは勝手に追いすがらせてもらう。触れたいから、耐えられないから。

(-28) redhaguki 2022/10/02(Sun) 6:09:11

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「キミが我慢するのは、いい、別に。キミが納得できるまで僕だって待ってられる。
 ……でも僕のほうはもうキミにお預けを食らって待ってられない」

溜息が手の甲にほうと落ちた。熱っぽい息は体の内側の炎に炙られたその熱だ。
ここで余裕ぶって待てるとそう伝えて、それでお開きにしたなら格好ついただろうな。
けれどもそんなふうには出来ない。してしまえない。
己の胸中を曝け出し、箍を一つ外してしまったのだから。今まで通りになんていかない。

シャワーが床を叩く音が響いていたあの時、きっと望月は今と同じ目をしていた。
あなたの目元を覆い隠して己がどんなふうな目であなたを見ているかを隠していたとき、
自分が見つめる目の熱をまだ恥じていられた時、今と同じ目をしていた。
すぐ傍にあるアクアブルーの内側に、どうしようもなく浅ましい熱が抱え込まれている。

僅かに、背伸びをするように背筋を伸ばして体を前に突き出した。それだけで距離が近づく。
もう息がかかりそうなくらいだっていうのに、瞬きも少ない目は他へ惑ったりもしない。
手放すのさえ名残惜しいまま握りしめた手から、大げさな心臓の拍動が、伝う。

「信。……キスしていい?」
(-29) redhaguki 2022/10/02(Sun) 6:09:23

【秘】 経理課 望月 ロビン → 経理課 富武 瑛

ふ、と小さく笑うような吐息が落とされる。
望まれる通りに、突き出された口元に同じものを重ね、舌で唇をつつく。
これまでの前戯で荒くなった呼吸が、抑えがたいように口端から溢れた。
性急でないものの、じんわりと全身を高めるような行いが体温を上げる。
緩慢な責め立ては、肌が触れ合うだけでぴりぴりと滲みていくような刺激になった。

「とんでもなく淫らな子だな。……よく今まで隠せていたなと思うよ。
 大丈夫だよ、こんなところで止めてしまったりやしない。
 淫乱なお尻の奥深くまで、ちゃんと満たしてあげるからね」

ローションボトルの中から適量を取り出し、一部は性器に絡む相手の指を包むように塗りつけた。
手を取る、というには強引に指を開かせて隙間にねじ込み、また熱の塊を握らせる。

もうひと掬いは、相手の胴を越えて向こう側に渡した手指の中に。
求められている先、肉の間で焦らされて待ち構えている窄まりに這わせ、
肉襞を押し広げるようにして馴染ませ、徐々に液体を奥へと押し込んでいく。
初物でもない穴はさほど時間も掛けずに済むのだろう。無理の無い程度に、体の中に指を捩じ込む。
体躯の大きさに見合って長く太い指は、今まで相手がされてきただろう性交の痕跡をたどるように、
徐々に関節から先を埋めて腸の中をかき回した。
(-37) redhaguki 2022/10/02(Sun) 12:41:19

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「どんな人間なんだよ、僕は。……そりゃあ、人に見せる顔くらいはちゃんとしようとしてる。
 でもどうしようもないところだってあるし、みっともない真似を晒すことだってあるさ」

今みたいに。普段の望月からしてみれば、こんなに余裕もなく詰め寄って懇願するなんてのは、
どうしたって考えられないことだろうというのはわかる。それくらい珍しい振る舞いだ。
形振り構わずに何かを推し進めるなんてことは、いつもだったら選ばない手段だ。
火を点けたのはあなただし、それを良しとして覆い隠すのを止めたのは自分だ。

頬骨の上の皮膚を染めるのは単純な欲情や性欲ばかりでない。緊張だってする。
相手に抱いている気持ちのどれだけが通り一遍の言葉で代替できるものなのかはわからないが、
きっとそれらもまた心臓から染み出して熱を灯すのに貢献しているんだろう。
己に向き合い、相手に向き合っていきたい。その思いで目をそらせずにいる。

「……必死な顔になってるんだろうなってのは、わかる……」

内側から表出した自信がそのまま顔に張り付いたみたいな普段の面構えに比べれば、
今は眉の力も緩み、目尻は僅かばかり下がって。唇は緊張で動きも固い。
息をするたびに、熱っぽい息のせいで薄く開いた口元から僅かな空気の流れる音のする、
プロムに出たティーンエイジャーみたいな取り繕いようも知らない顔だ。
踊りに誘うように手を取ったまま、追い縋って手放せもしない。

髪に触れる指の感触に、息を呑んだ。口元に固く力が入って、感触は良くはなかっただろう。
余裕を持って待ち構えられていたなら、もう少しくらい甘やかなものになっただろうに。
ほんの短い間の感触を追って、細く息が吐かれる。追いかけようとした動きは、言葉で留められる。
僅かばかり不満そうに唇を尖らせて、けれども相手の言葉を覆してまで捕まえはしない。
指の間に収めたままの、節くれ立った手へと少しだけ力を込めてはおく。
今ばかりは余裕があるのも、手綱を握っているのもどうやら自分ではなく彼の方らしい。

(-42) redhaguki 2022/10/02(Sun) 15:26:30

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「わかった。ちゃんと戻る。折角の料理が冷めちゃうのは、お店側にも失礼だ。
 ……今、自分で言ったんだからね。気の済むまで貪ってかまわないって」

ゆっくり、ゆっくりと息を吐いて、鎖を引きちぎってでも飛びかかりそうな気持ちを押さえる。
掴んだままの手をそうっと相手の膝の上に戻し、膝を立てて立ち上がる。
まだ背を丸めたままの姿勢、片手は机について、片手を己の顔に近づける。
人差し指と中指の裏に、リップノイズを伴った口づけを落とす。
それを返すように、相手の唇へと。人差し指と中指の裏側を一瞬寄せて、触れて。
一旦は抑えが利いたように、自分の席へと戻った。

それからは、まだ胸の内に穏やかな熱を秘めたままではありつつも食事に集中する。
リングイネに絡んだ雲丹のトマトクリームソースは美味しいし、
続いて出てきた素朴なドルチェは、表面にフォークを入れたなら音を立ててカラメルが割れる。
小気味いい音と、シナモンの香り。
甘いものは好きだったろう、なんていつも通りの気楽な言葉を投げかけて、
相手が甘いクレマカタラーナを口に運ぶ様子を、コーヒーを片手に眺めたりなんかして。

……真意のわかった上でこうして眺められる食事が、落ち着くものかはわからない。
けれども対面する男はなんとも、満足そうだった。己を苛む嗜癖ばかりのためではない。
それを打ち明けて、受け入れて。自分と食事をしてくれる人がいる、というのは、幸福だ。
単純な欲動のためばかりでない火が胸の内に灯るのを、なんとなく感じていた。

食事を終え、ホワイトビールもしっかりと空にしたなら、さもなんでもないことのように会計を。
望月は、下戸じゃない。少し口にしたくらいじゃそもそも酔ったふうにはなりもしない。
酒には強いし、酒は好きだ。様々な言い訳に支障が出るから、誰かに教えたことはない。
そんなことも、短い食事の合間にぽつぽつと打ち明けたような気がする。
言えなかったことがある。今だからこそ言えることがある。
そういうことを頭のどこかで強く実感しながら、部屋までの道を歩いて帰る。
(-44) redhaguki 2022/10/02(Sun) 15:31:54

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

普通の恋人同士よりかはなんとも遠く、もどかしく、その癖肌の距離の近い関係性。
机を囲んで向こう側で、あなたが当たり前に過ごす様子を見ている。
銀に光を照り返すの食器が口に運ばれ、一口ずつを咀嚼する様子であったり。
顎が動く間隔、息をする合間。吸い込まれる酒の流れさえ、鮮明に視界に収める。
人からすれば奇妙な話だろうな。けれどもどうしようもなく目が惹かれるのだ。
それさえ、許容されている。……それが何より大事だ。

まだ己に向けられる言葉に遠慮というか抵抗の混じる様子を、仕方なさそうに眺めもする。
急になにか変転があるなんてのは難しい話だ。だからこそ、ゆっくり、これから。

部屋に入り、足元をスリッパに履き替える。あとはもう出立まで使わないだろう。
ここで過ごすにあたって必要になる場面はほとんどないような施設につくりだし、
かしこまらなきゃいけないような用事というのも、今きちんと終えてしまったわけで。

間仕切りを挟んで片側。自分と、彼が今日この日宿泊しているほうの空間。
ここまで歩いてくる間にはいつもどおりに会話があったのが、
扉を開けて部屋に入って以降、スイッチを切り替えたみたいにぱたりと止んだ。
ゆっくりとした足取り。多分、ほんの数歩のうちに相手に追い越されてしまった。

「信、」

引き止めるというにはなんとも抑揚の察しづらい声だった。呼気と紛うような小さな声。
振り返るより前に、後ろから手を伸ばして抱き竦めて両腕の中におさめてしまう。
背丈の違いを有利に働かせて肩をしっかりと抑えて、首を傾けて髪の中に鼻をうずめる。
朝よりかは時間が経って、同じシャンプーの匂いはだいぶん薄れてしまっているだろう。
夕方の余興のあとにひと風呂浴びたとしても、洗い晒してすぐではない人間の体温。
かすかに嗅覚をくすぐる人間の匂いがある。生きた人となりを思わせる匂い。
ぴったりと寄せた体温はじんわりと酒精の影響もあって暖かく、ごくかすかに汗ばんでいる。
それに、相手からすれば腰の上の辺りにあたる弾力のある固さは明らかに興奮を示すもので。
他の誰でもなくあなたにそれだけのものを感じているのだと、伝わってほしいところだ。
(-48) redhaguki 2022/10/02(Sun) 17:23:11

【秘】 経理課 望月 ロビン → 経理課 富武 瑛

「ふ、そうだね、今まで……頑張ってきたんだろう。
 えらいね、瑛。キミは、よくやってきているよ」

ついばむように唇を食み、神経の通るところを尖らせた舌先でなぞる。
荒い呼吸を挟む度に、混じった唾液が唇の合間からこぼれ落ちた。

「僕は、……そうだね、ちゃんと気持ちいいよ。安心しなさい。
 でもどうしようか。今ここで一緒にイキたい?
 それともお腹の中まで抉られて、一番奥まで満たして欲しい?
 ……選んでいいよ、どっちがいいんだい」

直接与えられる快楽の強さに、僅かに眉がひくと動いた。余裕を保つのも大変だ。
深く息をして抑え込みながら、何を求めるかを丁寧に聞き取っていく。
血管の浮いた表面は脈打ち、それ自体が生き物のように時折跳ねた。
内股に力を入れている辺り、責めに快楽を得ていることはちゃんと伝わるか。

それに負けてしまわないように、肉の合間から体内に割入った指がぐるりと粘膜をかき回す。
陰茎が勃起すればその裏の前立腺の位置もわかりやすくなる。
指で押し潰し、押し返すようにぐりぐりと刺激しては追い詰めさせる。
果たしてちゃんと最後まで我慢できるか。責め立てる手は優しいが、容赦はないかもしれない。
(-51) redhaguki 2022/10/02(Sun) 19:23:10

【秘】 経理課 望月 ロビン → 経理課 富武 瑛

「よく言えたね、……じゃあこっちは、先に楽にしてあげるよ」

相手の手指に己の手を重ね、性器を握る指を一本一本伸ばして外していく。
代わりに相手のペニスに指を添えると、亀頭のほうへと送り出すように擦る。
もう随分と苦しそうなのだから、これだけはっきりとした刺激を与えても問題ないだろう。
あとは指の輪で振るようにフィニッシュを迎えさせてやるだけだ。

いくらか呼吸を整えたなら、体を起こし浴衣の裾を払う。
ここまで来たら少しばかりの動きづらさが勝ってくると、上半身も袖と肩を脱いではだける。
ほとんど腰に巻き付いているくらいでしかないものの、きちんと脱ぐほどの暇もない。

「片足上げて。もうだいぶほぐれたみたいだし、問題ないだろう。
 ……そんな不安そうにしなくていいよ、これっきりってわけじゃないんだ、何もかも」

相手は横向きに寝そべらせたまま、縦に重なる足の間に身を滑らせる。
上げて、とは言うものの片足の腿に掌を添えて体側へと折り曲げてしまえばそれで十分だ。
もうだいぶん固く勃起している性器の先が、温められたローションに塗れた尻穴に添えられる。
あともう少し押し込めば満たせるだろうものを、その寸前で止めてしまう。
寝かせられた相手の顔を見下ろして、余裕ぶった顔で微笑みかける。

「教えて。どんなふうに、犯してほしいか。キミがたまらなくなるまで」
(-56) redhaguki 2022/10/02(Sun) 21:36:18

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

いつも、誰かの隣を歩く時は相手に歩幅を合わせるようにしている。
長い脚から繰るコンパスに合わせられる相手のあることなんてのは、ほとんどないからだ。
ただ、その日はほんの少しばかりいつもより合わせる足にはムラがあったかもしれない。
互いにうまく隣に並べずちぐはぐになりながら、やっと部屋までたどり着いたりしたんだろう。

ジャケットから腕も抜かず、部屋に入るより前とほぼ変わらない服装のままだ。
すう、と髪と皮膚の匂いを嗅いで、かすかに腕の力を強めた。言い様のない心地で満たされる。

くしゃりと潰すように頬ずりをして。髪の先にめがけてリップノイズを響かせる。
自身の指先を通じての口づけもそうだし、貴方の指へ落とした口づけも、そう。
顎元によく触れた手もそうだし、卓球の後にあなたの後頭部に触れた唇もそうだ。
何かと、これまでの関わり合いの中で己や他者の口元に係る動作が多かったのを覚えているだろうか。
それらもまた、先程明かした人には言えない性癖に由来するものの一つなんだろう。
あからさまにすることに、躊躇はだいぶんなくなったらしい。

「……セックスしようか」

例えばいつもであったなら、ジャケットはちゃんとハンガーに掛けて、
身だしなみの基盤であるものをさりげなく保持してから持ちかけることも出来たろうに。
今はそうした余裕もなくて、ただ愚直に余裕もなしに働きかけるのが精一杯だ。
そろそろと息を吐く。こみ上げる感情をなんと呼んだものか。
どきりと心臓の動きを早くするものをどうにか押さえつけて、腕の中から相手を解放する。

近い方のベッドに向けて、ほとんど寄り添うように連れ立って歩く。
相手にもやりたいこと、動く自由はあろうに、それを優先させてあげられるほどの余裕が無くて。
半ば、腕の力と歩いた時に軽く肩を推してしまうような動きで誘導してしまうようになるのだろう。
あんまり格好の良いものじゃない。いつもはこんな無様な導入はしない。
願わくばいつもこうじゃないとわかってもらえるのを祈るばかり、そう考えるのさえ後のこと。
近い方のベッドサイドに相手を座らせると、肩に手を掛けて背を丸める。
目の前の顔に近付いて、柔らかく唇を重ねた。ついばむような口づけは、徐々に深くなっていく。
(-61) redhaguki 2022/10/02(Sun) 23:15:27

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

「……そう?」

曖昧で対象のない言葉が何に向けられたのか、あなたの理解が追いつくのは後のことになるだろう。
望月当人としては、ヤリすぎて、と言う言葉が果たして相手の言うべき言葉であったかに尽きる。
そもそも単純な体力だって見た目通りの差があるのだ。別に、指摘したりはしない。

相手の唇を追うように口を動かしては、はふ、と息を吐いて唇を食む。
まだ遠慮がちなところのあったキスは、相手がついてきているのを理解すると徐々に奔り始める。
舌先を捩じ込んで、口腔の奥深くまで追い詰めて神経の走る箇所を舐め上げる。
唾液の落ちるのだって一切構ったふうではない。噛みつくみたいに粘膜を押し付ける。

目もくれないまま乱雑にジャケットを脱ぐと、ベッドの下に落とした。
同じように、ベルトの金具を指で弾くように外して抜き去る。しゅる、と音がした。
アクアブルーは間近にある相手の表情を追い、反応があるのを見逃さないように視界に収める。
息を大きく吐いて、次に相手の衣服に手を掛けた。シャツのボタンを手早く外していく。
そのまま、服の合わせから肌に触れた掌が首の付け根から臍まで辿るように下りていく。
触れる掌が熱い。まるで、同じくらい熱のある箇所を探しているみたいだ。

「ごめん、……大事に出来ないかも。
 無理はさせないつもりだけど。熱くて、苦しい」
(-64) redhaguki 2022/10/03(Mon) 0:00:18

【秘】 経理課 望月 ロビン → 経理課 富武 瑛

亀頭を包む指の中で、奔流が外へ湧き出すのを感じた。
親指の腹で鈴口をなぞり、最後の一滴まで絞り出すように小さく通った孔を潰す。
溢れた精液を指に絡め、まだ萎えきらない幹に塗り付けるように擦った。
まだこれきりで終わりじゃないのだ。もうすこしだけ元気でいてもらおう。
やがて睾丸のほうまで下りた指は、つうと体液をなすり終わって離れる。薄く、糸が引いた。

「……悪い子。キミは思っていたよりずっと、欲しがりだ。
 ひとから線引して離れて、なんてのは合わないよ、そう思う。
 何もかも、欲するままにしたならばいいさ」

セックスのことばかりで話が終わればいいのに、案ずるのはどうしても相手の行く先。
こんなこともまた一つ、明くる日のための原動力になったならそれが一番いい。

頷いて、濡れた入り口に亀頭を押し込む。減り込むように徐々に進み入る。
呼吸とともに少し、また少しと内側に収められ、前立腺に当たる頃に腰の動きは止められた。
足の付根に添えられた手は、掴んだ腿を起点として固めて。
そこを基盤に揺さぶるように、亀頭が何度も浮き上がった痼を突いた。
亀頭の僅かな起伏に引っ掛けて、ローションで濡れた内壁が執拗に抉られる。
揺さぶる力は強く、それだけで相手の上体はつられて引きずられるかもしれない。
(-73) redhaguki 2022/10/03(Mon) 0:55:42

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

混じり合った唾液がどことなく甘いように感じる。滑らかに互いの体液が混紡する。
その中にホップの苦味がごく薄く混じることで余計に、生々しい粘膜の味を感じる。
髪の間を梳く指の感触にぞわりと震えて細く息を吸い、鼻の奥で掠れたような声を上げた。
僅かに細められた目が恨めしそうに相手の顔を見て、唇が外れる。

代わりに、口づけは耳元に落とされた。耳を食み、ごくわずかに歯を立てる。
耳の形をなぞって濡れた唇が点々と触れて、舌先が耳朶の起伏に差し込まれた。
十分唾液で濡れた舌は耳の孔を舐ってさすり、水音を立てながら繊細な器官を犯す。
その合間に問われる言葉に、ふ、と考えて。

「僕は、……、
 ……"どっち"でもいいつもりだったけど、こうして対面するとダメだな。
 キミのこと抱き潰して細い体にペニスを突っ込んで、メチャクチャにしたい。
 外聞もなく乱れて、僕の名前を呼んで欲しい。死にそうなほど欲しがってほしい。
 キスしたいよ、どこもかしこも。歯を立てて齧る代わりに、痕をつけてもいい?」

聴覚へ、吐息混じりの声が回答を告げる。まるで口説き文句だ。
肌を撫で回していた手が再度腹の上で止まった。皮膚と肉の下には腸がある。
肛門から遠慮もなしに突き込んだならどこまで入ることになるのだろう。
卑猥な想像に喉を鳴らして、臍を指の腹で浅く穿った。かり、と爪が立てられる。

「信は? 僕もキミのお願いを聞きたい、聞かせてよ。
 遠慮じゃない、僕のエゴとして、キミの願いを満たす権利を僕にちょうだい。
 ……スパの後、シャワーブースでどんな想像をして満たしてたか、僕に教えて?」

指はもう少しばかり下りて、相手のベルトに。
これまた見えもしないのに、ベルトの金具を外していく。先よりかは少し落ち着いた動きだ。
ベルトを引き剥がして、チノパンツの合わせを解いてジッパーを下ろす。
その下で膨れたものがあるなら、開放するのは些か苦労したかもしれない。
下着の上から、手を触れる。ひとなでしたところで、腰を浮かせてチノパンツごと腿の半ばまで下ろさせ下着に手を掛けた。
(-76) redhaguki 2022/10/03(Mon) 1:34:00

【秘】 経理課 望月 ロビン → 経理課 富武 瑛

「もっと、素直になってごらん。
 体も、心も。誰に構うこともなく振る舞ってみたらいい」

言葉とともに、指は身体の稜線を伝って再び胸先とつうと掠る。
先より滑りの増したせいで皮膚同士が密着する。くる、と乳頭の周りで指が弧を描いた。
大きな手でいっぱいに指を開けば、多少無理はあっても左右両方に届いてしまう。
弱々しくじれったい刺激は、体の中心に抜き差しする間に亘って絶えず与えられる。

「、……本当に。身体はこんなに、素直なのにね」

耳へ聞こえる嬌声の甘さに、しようのない子だとまた微笑む。
陽物全体を締め上げる柔らかい感触に僅かに眉に力を入れて耐えながらも、
今優先すべきは自身の快楽よりも相手のそれだろう。
身体を揺さぶりながら腰を大きくグラインドし、開発の進んだ神経塊を丹念に突く。
生来の性感帯ではないふたつだけでどれだけ上り詰められるのだろう。
腸壁を抉る執拗な責め苦は、あなたが達するまで続けられた。
(-80) redhaguki 2022/10/03(Mon) 6:43:03

【秘】 経理課 望月 ロビン → 経理課 富武 瑛

敷いたクッションがずれるくらいに体が揺さぶられる。大の男の体重と力では当然だ。
触れ合った肌が弾むくらいに体を合わせて、呼吸や相手の身じろぎに追従するように抜き差しする。
締め付ける内臓に何度も擦り付けていれば攻め手であってもずっと余裕でいられるわけではない。
大きく息を吐いて、喉を鳴らして。次第に呼吸だけで己を落ち着かせるのは難しくなってくる。

あなたの体が震えて昇り詰めて、絶頂を迎えるのを見届けてからゆっくりと陰茎を引き抜いた。
まだ張り詰めたままの性器を、ひくつく肛門に擦り付けるように扱いてようやく息を詰まらせ、
臍の下に渦巻く欲求を吐き出す。どろりと、白く濁った精液がまだ収縮しきっていないだろう穴を汚す。
てらてらと体液やローションで生々しく濡れた性器から手を離し、僅かに呻きの混じった息を吐いて。
サコッシュからウェットティッシュを取り出すと、手先や性器を拭って清め始めた。

「……どうだろう、気分は落ち着いた? それとも、まだ足りない?」

相手の着衣や体に気を遣ってやる前に、まず今の状態について聞こう。
一時の慰みのつもりではあっても相手の気分が落ち着いてくれなければ仕様がない。
子供を寝かしでもするみたいに、穏やかに声をかける。
(-94) redhaguki 2022/10/03(Mon) 19:34:03

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

耳元に寄せた唇は、問うた声が終わるとともに熱い息を吐いて、耳朶を柔く食んで。
代わりに己の聴覚へかえる回答に、溜息めいた声がこぼれ、さらさらの唾液が糸を引く。
頬に触れるだけの口づけをするのは、あなたの言葉と態度に愛らしさを覚えたから。
急には動かない。丁寧に、慎重に。あなたの手付きや行動を阻害しないよう、感じ取って。

「……かわいいひとだな、キミは。
 そんなふうに告白されて嬉しくないはずがないだろ。もっと情けなくなってくれたっていい。
 姿勢は、どんなふうだった? 前から、それとも、後ろから?」

口にするつもりのなかったのだろう言葉が、どれだけ己の欲情をそそることだろう。
下着の内側から姿を表した性器の、皮と幹の間に人差し指を添えてゆるゆると刺激する。
鈴口から外側に向けて指で線を引いて、けれどきちんと手で扱いてやったりはしてくれない。
代わりに足の付根に落ちた掌は、恥骨の形を浮かび上がらせるように撫でて、ゆっくりと腰に回る。
一度は発散して使い古した妄想を再度呼び起こして、それを再現させようとする。
頭の中に思い描くほどの望みであるなら、叶えてやりたいと思うのが普通じゃないか?

「余裕があったらで、いいんだけど。
 僕のことも脱がせて。触れられたいんだ、キミに。
 タイミングだとか順番だとかはなんでもいいよ。したいように、して」

乗り出した上体は、肩で肩を押すように近付いて。相手の腿の外側に片膝を置く。
脱がして欲しい、というのだから相手の腕の稼働が悪くならないようにはしないといけない。
けれどもこれだけ近くにあなたの匂いが、肌の温度があって耐えられるわけがない。もどかしい。
僅かな時間さえ離れているのが惜しいように、首筋に埋めた面は顎の下に口づけた。
舌を這わせ、吸い付いて痕をつける。浮いた筋や骨に歯を立てれば、浅い傷がつくだろう。
浴衣の袂から見えそうかどうかなんてのは、今は配慮さえ出来やしない。
ただ、目の前にある肌を苦しめない程度に口先で味わいたいだけだ。
獣みたいに上がった息が、シャツと皮膚の間で溜まってほんの少しだけ湿気を増す。
(-103) redhaguki 2022/10/03(Mon) 20:34:40

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

抗議されている声をよそに、頷きながらあなたの声に耳を傾ける。
聞きようによれば可笑しく思えそうな妄想を聞かされて、けれどそれが相手の望む姿なら。
聞かされた側だって、それを想像しないわけではない。吐いた息に、震えた声が混じる。
既に斑な模様の描かれた首筋にいっそう強く吸い付いて、黒ずんだ点を刻みつけた。

下からいくんだ、というのはさすがに虚を突かれたらしく、物申したそうに唇を引く。
けれどもその性急さに愛らしさを感じるくらいには今は夢中になってしまっているのだ。
焦らすように腰の横を抱えていた指に力が入り、薄い身体に食い込む。
今すぐにだってひっくり返してしまいたいのを耐えながらに、臀部を大きな掌が抱え持つ。
さんざ撫で回してから、足回りにまとわりついた着衣をちゃんと膝まで下ろしてやる。
あとは自分で足を振るってどうとでも振り落とせるはずだ。

「そんなに、欲しいんだ。焦らなくていいよ、取り上げたりしないから。
 ……わかる? 僕だって、信に触れられる前から、もうこんなになってる」

元より体型にフィットして窮屈そうな下着は、脱がすにはちょっと物理的な抵抗もあるだろう。
黒い布地の中に収納されていた性器が、薄い布の中からはずみをつけて現れる。
張り詰めて上を向いたペニスは、自重で揺れながら目の前のあなたに向かって振れる。
規格外というほどではないまでも、何度も風呂場で見たときのそれよりかはずっとグロテスクだ。
腹筋に力が籠もる度に大げさに揺れる血管の浮いた肉棒は、ちょっと穏当でさえないくらい。
そう遠くないところにあるだろう相手の性器と隣り合って、違いがよく見える。

(-113) redhaguki 2022/10/04(Tue) 6:43:48

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

下衣を全て脱がして、シャツだけ残っている腕を一度万歳でもさせるみたいに上げさせる。
その際にシーツの上に押し倒すように力を掛けて、ベッドの上に痩せた身体を横たえる。
あまりやたらに皺にならないように肘まで少しずつ腕を抜いて、背側を引いて。
顕になった脇を見下ろして、赤い舌を潜り込ませた。唾液の滴る肉が皮膚をぞりぞりと舐める。
下がそうなのだからこちらもすっかり整えて、なんてことはないだろうに、構うことはない。
その間にもシャツをすっかり引いたなら、上半身も無防備にさせてしまう。
先んじて丸裸にしてしまった身体はちょっとずつ位置を変えて、シーツの中心に移動する。

「……存外いい眺めだな。すごく唆る。さして変わらない、見慣れた身体なのに。
 これから抱き潰してさんざんにファックするんだって考えるとたまらなく愛らしく思えるよ」

顔を上げて。白いシーツの中に横たわる相手を見て、小さく感嘆の声をあげた。
部屋に帰ってきた後に、間仕切りの向こうに気を使って明かりは弱めただろうけど、
光がもれない程度にベッドサイドの明かりはあるだろうし、カーテンを透かす月光はあるはずだ。
弱い光を受けた身体は、言いようもなく扇情的に見える。
覆いかぶさって下肢の上に座り込むようにしたなら、腹の上で己の性器が揺れているのだろうから、
余計にこの先を想像させられてしまって胸が苦しい。やっとのことで息をしたような気分だ。
(-114) redhaguki 2022/10/04(Tue) 6:44:08

【秘】 経理課 望月 ロビン → 経理課 富武 瑛

「そう? 無理しなくていいよ。身体も辛いところあるだろうし」

こちらでやってしまって問題ないのならあちこちの体液は拭き取ってしまうだろうし、
されるがままにしているのが情けない気持ちになるようだったら相手に任せるだろう。
こういうことも後戯のうちだ。なるべく、相手に気分のいいようにはしてやりたい。

どうしても行きよりかは少し形の崩れた浴衣を着直して、相手の横に座る。
手は頭にぽんと添えて、髪でも撫でてやるみたいに。目元は少し陰になるだろう。
早々に行動させようとはしないし、相手に多くを求めたりやしない。
身体が冷えてくるようであれば、傍に設置されてあるだろうブランケットを被せる。

「……どうせしばらく誰も来やしないだろう。
 落ち着くまで休んでいたならいいよ。キミも色々、考えることはあるだろう」

少しの戯れではありこそすれ、思い詰めるような気持ちを払拭できたなら、いい。
ひどく回り道にはなりはしたものの、彼を突き放すつもりであったわけではないのは事実だ。
子供を寝かすような穏やかな態度のまま、相手の気が済むまでは傍にいるだろう。
もう少しだけ、キミが巣立っていくまでは、ちゃんと。
(-115) redhaguki 2022/10/04(Tue) 7:32:50

【秘】 経理課 望月 ロビン → 開発部 忌部 永信

随分と余裕をなくしているくせに、矜持ばかりは立派に持って、相手が動けば待つ姿勢は取る。
もどかしげに外されたボタンがやっとのことで外されるのを待ち、両腕が解放されるのを待ったろう。
その間に己に触れる指があったなら、いかにも獣みたいな呼吸をして己を抑えもしたが。
背中の表皮がぞわりと泡立って肩先まで温度をあげる様子は、いっそ威圧めいている。

「楽しいかはわからないけど、喚起されるものは色々、ある。
 キミの肌の匂いから骨の起伏まで何から何までほしいんだ、それじゃ理由にならない?」

骨や筋の間に皮膚の張った関節の裏を舐めている時間はそう長くはありはしなかったろうが、
けれどもちょっとばかり制止を受けたくらいで止めたりもしない。やりたくてやっているのだ。
心臓から離れた毛細血管の伸びた指先から、こうした体温や人の匂いの濃いところまで、全部。
肩の下からあげた顔、目つきは何も恥じらう姿だけを愛でているものじゃなく、真剣だ。
テーブルの向かいを超えてあなたの手を取ったときからずっと捕食は続いているのだ。
……そうは言われたって、やられる側はたまったものじゃなく恥ずかしいのだろうけども。

「……ん」

懇願する声を聞いて、考える。短い間ではあったものの頭の中に思考を巡らせ。
なにかを天秤に掛けて、小さく頷いた。

「いいよ。……あっち向いて、僕の上に乗って」

一度、覆いかぶさっていた身体を引いて足側に座り込む。
それからあなたの手を取って体勢を入れ替え、自分がシーツの上に寝転んだ。
手先を中心にあなたの身体の位置をあれこれ操って、自分の頭を跨がせ四つん這いにさせた。
つまるところシックスナインの体勢まで持っていって、望みは叶えさせるつもり。
代わりに何をするかは想像の通りだ。肉付きの薄い腿を、両手でしっかりと掴む。
(-120) redhaguki 2022/10/04(Tue) 20:19:03
 




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