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【秘】 遊惰 ロク → 発熱 ニエカワ 震えた花瓶、靡く髪。 あァやはり最早ヒトでは無いのだなと、 怯えより先にそんな事を考えた。 それから、直ぐに落ち着いた様子の彼を見て。 ガシガシと頭を掻く。 「……怒鳴って、悪かった。 シカシ、ンなことして助かったって――て、 ぇ? 」“好きな人”。友愛、親愛、尊敬の念。 そういう相手にも使う言葉だ。 けれども、今のは。 例えば教室の片隅、密めきあう女学生が用いる様な、 そういう意味で発せられたかの様に感じた。 「……、アー、お前サン。 あの医者のこと。…………好いてん、のか」 (-9) 榛 2021/07/07(Wed) 22:12:29 |
【人】 遊惰 ロク 間借りしている病室にて。 ベッドに腰掛け、音が弱まった外の方へ視線を向ける。 閉め切られた儘の雨戸。 外の様子は、何一つ窺い知ることが出来ない。 手持無沙汰、右手は耳介を弄っている。 幾らも開けた穴を埋める色取り取りの耳飾り。 白く光る小さな石はそこに無く、穴が一つ、空いた儘。 (1) 榛 2021/07/07(Wed) 22:31:33 |
ロクは、今日も死んでいない。 (a1) 榛 2021/07/07(Wed) 22:32:10 |
【人】 遊惰 ロク いつかの様に、空のタライを持って二階をふらつく。 弱まった雨風の合間を縫って、滴る雫の音が聞こえる。 意味も無く、雨漏る箇所を一つ一つ順に巡る。 その内の幾らかは新たに修繕されていた。 ――誰が、いつの間に。 その答えをとうに持っている様に思われて、 けれどもしかし、未だ認め切れずにいる。 伸びる廊下、フラリフラリと歩を進め乍ら、 躊躇いじみた間を置いて、それから開く扉があった。 開けようとしない扉があった。 何かを、誰かを。 避けながら、けれどもどこか探している様な足取りで。 男はタライ一つ抱えて彷徨っているのだった。 (3) 榛 2021/07/08(Thu) 2:34:13 |
【秘】 遊惰 ロク → 発熱 ニエカワ「……そうかい。 ほかでもねェお前サンがそう言うんだったら、 マ、おれがとがめてもしかたねェわなァ」 毒気を抜かれた顔をして、物分かりのいい事を口にして。 その実腹の中では、一遍くらいなら恨み言の一つも 言っちまっていいかなァ、などと思っている。 それから、カラリと笑って否を返す。 こればっかりは口先ですら頷く事が難しい。 「ハハ、そいつは無理なハナシだなァ。 お前サンを食うこたできねェよ」 (-31) 榛 2021/07/08(Thu) 9:21:40 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「ハ、そいつはよかねェなァ」 直截的な問いを鼻で笑う。 男も又、同じ様な消去法で眼前の人間こそを疑っていた。 ――否、この場の疑いよりも。 「おれァ、こう見えて稀代の臆病モンで。 人様この手にかけるなンざ、 とてもじゃねェができやしねェ」 口の端を吊り上げ、見据える瞳は憎悪で満たして。 あの子の願いとまるで反する、悪意の滲む言葉を吐く。 「どこぞのお医者サンとは違ってさァ」 (-34) 榛 2021/07/08(Thu) 12:27:30 |
【秘】 遊惰 ロク → 発熱 ニエカワ 減ってねェよ、そんな嘘を押し通すには分が悪い。 ヘラリと笑って誤魔化しかけて―― 続く言葉に、少しばかり強張った。 「……坊チャン、なンでそンなこと言うんだろ。 哀れみ情け、他力本願。はたまたヒトゴトだからかねェ」 三日月の口から軽い調子で飛び出す言葉。 しかしその響きと裏腹、男は心から問うている。 「――なァ、一足先に死んじまったお前サン。 おれァがんばってまで、生きなきゃならねェモンかなァ」 (-42) 榛 2021/07/08(Thu) 16:44:13 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「ア? ンなもんはじめっから滅入ってら。 あァ、商人サンから“は”なァんにも。 聞いちゃいねェよ」 言葉の繋ぎ目を少ォしだけ強調して、常の顔して笑う。 死人と口がきけた事、己の正気。 それらへの半信半疑が、僅かに信へと傾いた。 「ヘェ、死ぬ予定があったンだなァ。 ……なにがどうして今日だったンだろ」 白々しさを含んだ、心底からの疑問。 そういう風には伝わらないのかもしれぬけれども。 ――男は商人と取引をした。 ▼差し出したのはつまらない話、そのさわり。 求めたのは、命を一つ。■に餓える、その筈だった。 (-44) 榛 2021/07/08(Thu) 16:59:30 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「ッ、ハハ。 よく言えたモンだ、包帯のガキ巻き込んどいて。 ……熱のあった、ニエカワクン。 殺したのはお前とあの子だろ」 口から洩れたのは空笑い。笑い損ねた儘、問い質す。 咎めたって仕方の無い事と知り乍ら。 「懐いてたガキ、殺して捌いて。 腹ァ満たせりゃそれでヨシってか?」 (-46) 榛 2021/07/08(Thu) 17:14:23 |
【秘】 遊惰 ロク → 発熱 ニエカワ「……そうかい」 少年の願いに是も否も返せず、曖昧に保留する。 一人分欠けた死ぬ理由は、直ぐには埋まらず覆せない。 窓を見遣る。打ちつけられた板か、雨戸か。 恐らくそういったもので、外は窺えないのだろうけれど。 ――それから、少年の顔を見て。常の笑顔で話を逸らす。 「坊チャン、せっかくこうして話ができンだ。 今度こそ東京の話でもしてやろうか。 お前サンの話、思い出バナシでも夢物語でもいいや。 そんなのを聞かせてくれるンでもいいけども」 (-61) 榛 2021/07/08(Thu) 21:33:27 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「ハハ、賢しらに言ってくれンじゃねェか。 全員では生き延びられねェ、それくらい知ってたさ。 だからおれは食わなかった。 駐在に頼み事をした。商人と話をした。看護師を唆した。 ……お前サンらのとこ行かなかったのは、 あの子らに医者が必要だと思ったからだ」 大人は建前用意して、小さな子どもから殺していく。 それを男は知っている。 然し、殺しに至るまでにはまだ時間があると思っていた。 それくらいの情はあると信じていた。 信じたおれがばかだった。 「“未来ある子供”、そうだなァ。 リッパな言葉だ、あんまり正しくって涙が出らァ。 なあ、賢くてリッパなお前サン。 ――その中に病人のガキは入らねェのか。 脅かして唆してトモダチ殺させて食わせンのが、 “未来ある子供”にすることか?」 男は、人が人を殺して食う事を嫌悪したのでは無い。 大人が子どもを殺した事、別の子どもを巻き込んだ事。 ただそれだけが、据えかねた。▼ (-62) 榛 2021/07/08(Thu) 22:10:12 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ あの少年は“長くないってわかってた”と言った。 それが本当なのか、思い込みだったかなんて分からない。 本当に長くなかったのなら――それは、確かに。 ある意味で、“■■”だったのかもしれない。 “苦しまず、■■■■に殺され”て。 そうだとしたら、……そうだとしなくとも。 余所者の男の言う事は、子どもが描く様な絵空事だ。 大人に虐げられて生きてきた 一人の青年の我儘で、ただの子どもじみた癇癪だ。 ――――けれども、一つくらい。 この、クソッタレな人生で。 一つくらいは奇跡を願ったって、良かったろう? 「あの子らみんな生かしたかったんだ、おれは。 ――なァ、お医者サン。 ニエカワクンだって、生きたかったろうよ」 (-64) 榛 2021/07/08(Thu) 22:16:58 |
【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク 己が手を伸ばすより先、猫を拾い上げた腕。 辿って見れば、動くはずのない姿がそこに居て―― あまつさえ、話し掛けてきた。 「…………どォも、商人の兄サン」 沈黙ののち、慣れた笑い顔を浮かべて。 片手を軽く挙げて死人に応える。 「死んだクセ、当たり前みてェに口ききやがって。 あの世は休業中かねェ」 (-66) 榛 2021/07/08(Thu) 22:36:04 |
【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「お前サン、あとのことまで手ェ配ってくれたのか」 驚きに目を瞠ったのち、それをひどく嬉し気に細めて。 無意識のうち、幾分か柔らかな声を出す。 「……そいつはよかった。 ロクな生活してねェみてェだから どうにかならねェかと思ってたンだが。 おれァあの子ら怖がらせちまうだけだったからさ」 それから一転。あっけらかんと答える。 一人分欠けた、 漸く手にした 死ぬ理由。埋まりもせず覆りもしない儘、そこにある。 「ハハ、飢えるかその前に首括るか、 どちらにせよ死ぬのにかわりはねェかなァ。 ――そうだなァ、お前サンに頼んだのはそンだけだ。 どうしてあンな死に方したんだか、 是非にも聞きてェとこではあるんだけども」 (-71) 榛 2021/07/09(Fri) 0:09:42 |
【秘】 遊惰 ロク → 発熱 ニエカワ「お前サンの話も聞かせてくれや。 ホントにつまんねェかどうか聞いてやらァ」 次ンときでもいいからさ、と、 あるかも分からぬ先の事を口にし乍ら、 冗談めかし、笑い混じりにそう前置いて。 「そンじゃ、おれから話すとするかねェ」 都会の街並み、行き交う人々。 見聞きした様々のうち、愉快で明るいことばかりを。 多少の脚色と誇張を交えながら、面白おかしく―― 少年が耳を傾ける限り、時間の許す限り。 あれこれと語って聞かせたことだろう。 (-77) 榛 2021/07/09(Fri) 1:55:03 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「そンなら……ッ!!!!!」 詰まった距離、胸倉に手を伸ばし。 底無しを睨め付け、絞り出す様に呪詛を吐き出す。 「――――……、 ……“できるのであれば”なンて笑わせる。 そうしなかったのは、お前だろうが」 ギチリときつく握ったシャツ越し、掌に爪が食い込む。 これは優先順位の問題だ。 男は子どもを何より優先するものだと考えるけれども、 眼前の人間はそうでは無かったのだろう。 ――医者の切り捨てた“病人”は、 男の切り捨てた“大人”に等しいのだろう。 たったそれだけの、大きな違い。 故にきっと、埋まることは無い。 胸倉を掴む手で一度、体を揺すぶる。 その手に籠った力は徐々に抜けている。 「……なァ、生かすと殺すを選んだお前サン。 あの子の未来は、命は。 おれやお前サンのよか軽かったって、そう言ってンのか」 (-78) 榛 2021/07/09(Fri) 2:19:36 |
【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「あンな死に方選んだ訳を聞いてンだが―― ……。…………、―― ぇ、? 」初め、囁かれたそれこそが答えだとは思わなかった。 だから変わらぬ調子で言葉を紡いで、不意に途切れて。 沈黙の末、小さな声が口から洩れた。 半ば呆然とした様体で、死んだ男の顔を見る。 左の耳朶、光る飾りは妙に浮いていて。 ――死人ってのは、 死んだときの恰好で現れる決まりなんだろか。 そんな場違いな事を片隅で考え乍ら、 よく回る筈の口は、短く。問い掛けの形に動いていた。 こと 「……そンな理由で?」 (-87) 榛 2021/07/09(Fri) 14:26:51 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「……そうかい」 突き飛ばす様に胸元から手を離す。 沈黙の長さ、答える語調。 何より雄弁なそれらを前にして、虚しさが胸に広がる。 これは、余談だけれども。 女の医者――技師と、話をした時のこと。 男は、薬が足りてンなら大丈夫だなァ、と思った。 食う人数を減らすことをとうに決めて、行動に移していたから。 それで足りると、愚かにも信じていた。 その間違いは正されず、今もまだ、信じた儘でいる。 ダラリと手を下ろして、独り言ちる。 熱を失ったあの子との会話。尽きぬ悔恨。 「……おれァ、あの子に。 自分の分まで生きてくれなんて、言われたくなかった。 自分のこと、……ッ、“食料”なんて、 そンなひでェこと、……言わせたかなかった」▼ (-95) 榛 2021/07/09(Fri) 18:08:55 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ ベッドの上、シーツに包まれた死人を見下ろす。 眼前の医者を詰る言葉は―― そっくりその儘、この男自身にだって言える事だった。 手酷いエゴだ。 己が望んだ男の死体を前にして、 その死を弔うより先に、喪われた別の生を悼んでいる。 「――“仕方なかった”だってよ、お医者サン」 目を逸らす様に、雨戸の閉まった窓を見る。 雨の音が、ひどく煩い。 「仕方なかったンだと。長くはねェのわかってて、 どうせ死ぬなら、みんなが助かる方がいいってさ」 誰の言葉とも明言せず、そう告げた。 あの子は恨んじゃいない、なんて真っ直ぐには。 恨み言を吐き散らした口では到底、伝えられなかった。 (-96) 榛 2021/07/09(Fri) 18:15:09 |
【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク 目を逸らしていたそれを正面から突き付けられて。 指の先から心の臓まで、余さず冷え切っていく心地がした。 ――そりゃァそうだろう。 、、、 好き好んで死ぬ程――文字通り、死ぬ程―― 怖い思いをしたい人間なんて、そうそう居はしまい。 「……なンで、そこまでして」 なのに眼前の男は、それでも死んだと言う。 死ぬ事より反故にする事の方が重かったとでもいうのか。 あんなの所詮はただの口約束で、 舌先三寸、幾らでもカンタンに破れたろうに。 ――おれが死ぬとこ見たくねェって、 死んでほしくねェって、なんでそんなこと言うんだろ。 ぐるぐると糖の足りない頭の中で渦巻いて、巡らして、 考えるからクラリと眩暈がする。▼ (-106) 榛 2021/07/09(Fri) 20:36:57 |
【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「――だれに、手伝ってもらったんだ? あの医者ではなさそうだったけども。 そンで空腹じゃねェ飢えって、なんのことかねェ。 ……生かそうとしたって、だれのことを? “だから”って、なにがどう、“だから”なんだ? そンで。まるで見当がつかねェんだけども、 ――お前サンのほしかったものって、なんだろ」 “あれナニこれナニどうなってンの”と 五月蝿い子どもみたいに、尽きない問いを幾つも重ねた。 (-107) 榛 2021/07/09(Fri) 20:37:33 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「……だよなァ」 チラリとそちらへ視線を向けて、それから又逸らす。 そのまま、淡々と語りかける。 「作りバナシじゃねェって言っても聞かねェんだろ。 お前サン、耳塞いじまってスグには無理なンだろうよ」 知った口を効きながら、右手は無意識のうちに耳を擦る。 過去、幾つも声を聞いた。 それらに耳を塞いできた。 死人は優しいことばかりを口にする。 男はそれを知っている。 だからずっと只の幻覚だと言い聞かせてきた。 愈々それじゃ片付けられなくなったのは、あの子と話をしたからだ。 「あの子、お前サンのこと嫌いじゃねェってよ。 そんくらいは覚えててやンな。 ……そうじゃねェと、浮かばれねェや」 踵を返す間際、一度だけベッドの上へ目を遣って。 そンじゃこれにて。ヒラリと手を振り部屋を出て行った。 (-111) 榛 2021/07/09(Fri) 23:32:44 |
【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク 一つ一つ、キッチリ返された答えを聞いて。 尚も納得とは程遠くに居る。 近づく必要が、あるんだろうか。 商人の頭の左っかし。白く光るそれを見遣り乍ら、 己の右の耳介をトンと指で叩く。 「そいつのことかい。 ……ンな大層なモンやったつもりは、なかったんだが」 叩いた指の、爪の間。 黒く澱んだ赤色が僅かに残っている。 「おれが、言ったからって。 それ律儀に守って死ねるモンなのか。 商人ってのは、……ちげェよな、損が勝ちすぎてら」 堂々巡り、千日手。 ……それよかちっとはマシだと思うが。 あと幾つ重ねれば足りるのか、サッパリ分からない。 「……お前サン、どうして死んでくれたンだろ」 (-121) 榛 2021/07/10(Sat) 12:07:46 |
【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「『取引だから』『約束したから』、 それがそンなに大事なことかねェ」 駆けてった猫を目で追って、 消えた辺りを見つめ乍らポツリポツリと言葉を吐く。 「……産みの親は顔も名前も分からねェ。 上のきょうだいはいたらしいが覚えちゃいねェ。 とこ クソみてェな孤児院で何遍も盗みはたらいて、 隠すのばっかりハンパに上手になっちまったから 養子にとられてあいつらおいてく羽目になって。 銭盗って逃げても、女子ひとり迎えにいけやしねェ。 ――そンで逃げ込んだ先でガキも守れず、 手ェ汚さずに人様死なせた。 こんなロクデナシ、生きてく必要もなかろうよ」 いつかの問いのやり直し。 あの子らが生き延びて満たされて、おれも生きてる未来の話。 夢物語だと思ったから、簡単に答えられた。 男の出した本当の答えは、『そんな未来はやってこない』。 ふっと顔ごと視線を動かし、琥珀を見つめる。 紫に黒を僅かに落とした様な、暗い色した瞳で問う。 「なァ、商人サン。『取引』すりゃァ、おれのこと。 お前サンが死なせてくれんのかなァ」 (-138) 榛 2021/07/10(Sat) 14:53:32 |
【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「生き方、生き方ねェ。 それ言うなら、おれァロクでもねェ生き方しか知らねェや」 上着のポケットに手を突っ込む。 体を揺すって、弾みをつけて口を開く。 「一緒に育った子らがいんだけども。 あいつら、死んでたんだ。おれがあそこを出てスグに、 火事でみィんな死んじまったんだと。 ……おれァそのこと知りもせず、他人と手紙で話してた。 二十歳になったら会いに行くって、 ハハ、そんな約束、する相手ももういなかったってのに」 空笑って、ポケットの中、見えぬそこで手を握って。 あと一年もなかったのになァ、と呟いた。▼ (-146) 榛 2021/07/10(Sat) 17:15:54 |
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