>>116　ゲイザー

「お仕置──？」

　キファは束の間呆けた顔をした。
　次の瞬間、キファは熱い紅茶を浴びせられていた。

　→

>>116 ゲイザー

　例えるならキファは、深淵を覗いてしまったのだろう。



　２３３年の貫禄も、何もない。
　ただの憐れに捕食される仔鼠だった。





　→

>>116 ゲイザー

　仕舞いにはキファはぼろぼろと涙を零し、泣き始める。
　無様だった。
　だってだって、キファはずっと、死なないために生きてきた。
　死ぬのが怖かったから。
　
　きっと、キファはどこかで驕っていたのだ。
　自分たちは盤面を握っているからきっと、大丈夫だって。



　……その為には、二つの手段がある。
　ゲイザーに情報を全て明かし、解放して貰うこと。
　ゲイザーを何とかして、行動不能にすること。

　前者。駄目だ。サダルを危険に晒すのは駄目なのだ。
　後者は？　でも、自分の腕力じゃゲイザーに勝てない。

　どうする？
　どうすれば？


→

>>116 ゲイザー

　そこまで思考が至った瞬間、あることを思い出す。
　ブラキウムからも貰った薬が、まだ懐に入ってる。

　腕は動く？　無事だ。唯、恐怖で動けなかっただけ。
　指一本が、何だ。あと９本残ってる。

　キファは臆病であり、慎重だった。
　普段こんな命を賭した行動になんて、まず出られないのだ。
　じゃあ、何故。

　サダルが好きだから。

　……これは言うなれば、愛の戦いだった。
　今まではゲイザーが圧倒的に優勢だったのだ。
　でも、今は。




　縋るように、懇願するように、
　ゲイザーの耳元へ囁きかける。
　あぁ、憐れなキファ。

　→

>>116　ゲイザー

　キファは、永きを生きている。
　いつか使うであろう知識を、沢山取っておいた。
　押さえつけられて殴られ続ける時の対処だって。
　キファは冒険者としての体力を持たないが、
　知識だけは一杯有る。　

　ゲイザーがキファの囁きを聞こうと耳を近付ければ、
　キファはその細い腰に手を滑り込ませる。

　人体は、このようにされると為す術を持たない。
　そのまま縺れるようにくるりと倒れれば、さあ。
　今度は、キファがあなたを押し倒す番だ。

　腕を交差する形で捉え、虚弱な片手で全体重を掛けて固定する。
　キファは、懐から──何かの小瓶を取り出した。

　この会合に居る人間ならそれが何か理解できるだろう。
　ブラキウムが配達していた小瓶。
　効果がそれぞれ異なることだって、理解できる筈。

　→

>>116　ゲイザー

　だから、これは記載を読んだキファだけが把握している。
　これは、強力な惚れ薬の一種だ。

　効果の一つに、即効性の脱力感、高揚感、
　体温の上昇がある。

　それを口に含むと、
　ゲイザーが暴れないように両手でしっかりと固定し──

　あなたに口付けをした。……口移しだ。
　あなたが呑み込むまで、捻じ込んでやる。