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![]() | 【秘】 →ふと机の上を見ると、 まるでしまい忘れたように、 ノートが一冊、開いて置いてある。 何気なしにそれを手に取って、驚いた。 見覚えのある字で、見覚えのない言葉が並んでる お話を読んでどう思いましたか?なんて 私、書いたおぼえがないのに きっちり私の字は、スイミーの感想を綴ってた。 どこか感想がずれてるようにも思ったのは、 その子が途中から授業を聞いていたから、 なんて、私にはわかるわけがない。 ……そんなことより、 もっと驚いてしまったのは、 (-34) ししゃもん 2023/02/11(Sat) 12:14:33 |
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![]() | 【秘】 →「 あなたは、だれ…… 」 文字をなぞりながら、口の中で転がして、 その意味を、さぐる。 そうして鉛筆を取り出せば、 その隣に、好きな犬のぬいぐるみの絵を描いた。 吹き出しを添えれば、 まるでこの子が喋っているようにも見える。 (-36) ししゃもん 2023/02/11(Sat) 12:15:06 |
![]() | 【秘】 →「 こんにちは わたしは やよい 」 私、という漢字はまだ習っていなかったから 当時の私はひらがなで綴る。 「 あなたは だれですか? 」 この時の気持ちを言葉で言い表すのなら、 わくわく、だろうか、どきどき、だろうか。 言い表せない感覚を抱きながら、 私はノートを閉じたり開いたり。 (-37) ししゃもん 2023/02/11(Sat) 12:15:23 |
![]() | 【秘】 →朝になって目が覚めて、 ノートを開いてみたけれど、 まだそこに、文字は増えていなくって ちょっと残念に思ったりもして。 もちろん学校の授業なんて上の空。 算数の時間だって国語のノートを開いたり閉じたり 体育の時間、ノートを置いていくのも名残惜しくて (-38) ししゃもん 2023/02/11(Sat) 12:15:42 |
![]() | 【秘】 →私が次に、その文字に気付くのは たぶん、もうすこしあとのこと。 またいつもの不思議な感覚≠ 経験した、直後のことだった。 ** (-39) ししゃもん 2023/02/11(Sat) 12:15:53 |
![]() | 【独】/* >>63 ここでやよいが断言したとことか、はづきちゃん辛いんだ、知ってる〜〜〜〜知ってる〜〜〜大丈夫、やよいが幸せなのは今だけで突き落とす気満々だから… 任せて… (-63) ししゃもん 2023/02/11(Sat) 22:56:37 |
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![]() | 【秘】 →気づいたら私はいろんな人に囲まれていた 知らない顔、見たことのある顔、 同じ通学路の子、 大丈夫?と聞かれてはじめて、 私が不意にぼんやりとして、 下校中の地面に座り込んでいたことを知る ここはどこ? いまはいつ? そんなことよりも、 私は確かめなければいけないことがあった 私は家まで走る。 どきどきしながら、わくわくしながら そうして家に着いて真っ先にしたことはただ一つ (-78) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 8:57:57 |
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![]() | 【秘】 → どうやらその子は、 自分が誰なのか、わからないみたい 彼女も桧垣やよいだなんて 私は到底考えもつかない それよりも、 本当にお返事が返ってきたのが うれしくて、まだどきどきしていて (-80) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 8:58:28 |
![]() | 【秘】 →「 そうだよ、ユキちゃんはわたしのお友だち きのうのしゅくだい、むずかしかったなあ あなたは、名まえがわからないの? 」 (-81) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 8:58:43 |
![]() | 【秘】 →それからすこし鉛筆を置いて 考える 視線の先には、今月のカレンダーがあった お父さんとお母さんの日記で、見たことがある やよいは、本当は三月に生まれるはずだったんだって だけど、お母さんのおなかが気持ちよくって、 四月の頭まで、出てきてくれなかったんだって 三月だから、やよいちゃんにするはずだった むつき、きさらぎ、やよい。 昔は月をそんなふうにあらわしたのだ、って テレビでみたことがある。 (-82) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 9:00:59 |
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![]() | 【秘】 →私にできた秘密のお友だち。 私は、彼女をはづきちゃんだと疑わなかった ううん、本当の名前があったのだとしても 彼女がまさかやよい≠ナあるなんて これっぽっちも思わなくて ──── それがどれだけ残酷なことなのか 私は、知ることもなく生きてきた (-102) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 19:12:33 |
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![]() | 【秘】 →秘密の交換日記には互いのことを書いた 今日起きたこと、今日見聞きしたこと。 わからない宿題のプリント、 はづきちゃんに聞いてみようとしたけれど どうやらはづきちゃんにもわからないようで 空けておいた空欄は、空欄のまま残ってた そんなこともあったな。 (-104) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 19:12:58 |
![]() | 【秘】 →どうやら、私が不思議な感覚に陥ってる間、 はづきちゃんが私の代わりをしているのだ、 そう気づいたのは、小学生も高学年になったあと 友だちは相変わらずあんまりいなかったし 親戚の家も居心地はよくなかったけれど 私には、はづきちゃんが居たからがんばれた。 私に起こる不思議を、 今か今かと待つ私がいた そんな時には犬のぬいぐるみを抱きしめて どうか奇跡が起こりますように、って。 目が覚めると、猫のぬいぐるみを抱いていたから それもなんだか不思議のひとつだったけど やがてノートがスマホのメモに変わっても、 私たちの不思議は、変わらなかった。 (-105) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 19:13:15 |
![]() | 【秘】 →不思議なことが起こらない日は、 私がはづきちゃんの代わりをするものなんだ、って 私たちが大きくなるうちに随分と理解していた。 (-106) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 19:13:28 |
![]() | 【秘】 →例えば日記には、 斜め後ろの席の愛智くんのことが書いてある。 明日は一緒に放課後勉強をする約束をした、とか 来週土曜日に図書館で待ち合わせ、とか。 はづきちゃんが、 日曜に、朔也くんとカフェに行く約束をしてることとか ほら、そういうことが綴られてることもあった。 私がはづきちゃんの代わりに行ったのに まるで「私と約束をした」みたいに接してくる不思議も なんとなくそういうものかな、って 気づかないふり。 (-107) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 19:13:53 |
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![]() | 【秘】 →例えば高校に入って、 幼馴染と再会したときのこと。 こんなふうに、綴られている。 「 今日は、びっくりすることがありました。 高校で私の幼馴染だという子に出会ったの。 名前は、結城朔也くん。 といっても私、昔のことは憶えてなくて 朔也くんのことも、実はアイマイ。 雨なのに傘がなくって、財布を落として、 さらに道に迷ってたんだ。そんなことある? 今日は朔也くんが友だちになってくれたこと 私、とてもうれしかったんだ。 いつか、はづきちゃんのことも、 朔也くんに紹介できたらいいな。 やよい 」 (-109) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 19:14:45 |
![]() | 【秘】 →私は、彼からわたし≠ェ 花束みたいなキャンディと、 テディベアの小さなぬいぐるみを 受け取ったことを、知ることはできた? それともそれはふたりの秘密かな。 (-110) ししゃもん 2023/02/12(Sun) 19:15:22 |
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