[ 気付くことは多かった。
夢の中の“誰か”が兵士であろうということは、
二度目の日記で確信していた。
抑々この見張り台に置いてあるという時点で、
その可能性は高かったけれど、
二度目の日記には『日々の仕事や訓練』とあったのだ。
夢の中、そのひとは“左手”で白い何かに触れた。
左利きなのだろうか、あるいは、右手に何かを持っていた?
それとも、もっと何か他の理由。
持っていた“何か”を口元に当て、
誰かに報告をしたみたいだと言いながら、
その暫く後に、遠くの誰かと『通信』をしていたり、と
自ら書いている。
通信をしていると知りながら、日記には“何か”と記していた。
自分が本当に優しい人かは分からない、と語る。
自分のことは自分では分からないものだ――
という意味にも見える。
けれど、“人”。
どこか、自身を遠くに見ているような、
まるで、もう一人の誰かを見ているかのような言い回し。]