[現小満の能力は稀有な方であると言え、直接人に作用するものだ。
悪意を持てば簡単に他人を害することができ、他の
雨水や大雪のような
そうした能力持ちが受けてきたように奇異の目に晒され人から遠ざかっても何らおかしくないもの。
それが巷で天使などと呼ばれ
(本当に本質にそぐわぬ字だ)
疎まれることなく平穏に暮らせていたのは、ひとえに運が良かったことと、本人にまるで悪用する気がなかったのが幸いしたのか。
いや、誰しも能力に苦しんだ者は、悪用のつもりなどなかっただろう。だから苦しむ。
人を根本から変えてしまいかねない力を持った灯守りは、その力の影響範囲をごく狭くすることで律してきた。
悲しみを取り除くこと。
穏やかな日常を返すこと。
心が充分に癒えたら、預かった記憶を戻すこと。
それで充分だ。それ以上は手に余る。]