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【人】 終焉の獣 リヴァイ[────静寂だけが二人の繋がりを証明する手段のようだ。 投げかけられた微笑みとは対照的に、見上げる夜色の女は唇を噛みしめ顔を歪ませる。 (同じ場所へ至れるとまでは思っていない。 微かな願いは届くわけがないとさえ思っている。 今まで通り送り出すのみの略奪者の仮面を被り、 血に塗れた腕を伸ばすだけの未来を見ていた。) ────力尽きたようなさまを見開いて認めると同時、 この世の終わりのような痛みが脳を襲って頽れた。] (31) 2020/12/12(Sat) 1:07:05 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[噫! 頂点に聳え立つのは月をも喰らいつくさんとする百獣の王を模した幻影の如き虚な姿と (影と混ざり合う、まるでキメラのようなそれは、月光病さえも彷彿とさせるような…) そこに至る迄の試練の如く降り注ぐのは 灼熱地獄にも似て非なる───冷酷非道な怪物の命をかき消さんとする 随分と”洒落た”カーテンコール!!] (33) 2020/12/12(Sat) 1:10:36 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ────────……… ッ !! [温度が上がる。 裁きの炎が堕ちてくる。 ばらばらと崩れ落ちる硝子片たちを避けながら、 ステップを踏めば、遥か頂上の仇を睨み上げるのだ。 そうして口の中に仕舞い込んだ短剣を砕かぬように感触を確かめ──────、] (34) 2020/12/12(Sat) 1:10:42 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[────苦痛と共に硬い表皮に覆われた巨大な身体を大きく振るわせる。 燃え盛る火炎に呼応するように、ひとたび大きな咆哮を上げた。 鱗を舐める高音をものともせず、嘗て諸国を超えて彼の元へ辿り着いた四足歩行が空間ごと揺らす勢いで何段かもしれぬ階段を登り始める。 目指すは頂上一点のみ。その先に臨む宿敵を───神を欺く憎き悪魔から大切なものを奪い取るために。 数多の武器を跳ね返す鋼の如き身体でも、 あの日の銃弾が脇腹を抉ったように、弱点はある。 女が完璧な怪物になりきれぬ証のように。 ちりちりと焦げる熱が臓器まで浸そうとも、 この自我だけは……生命だけは、燃やさせない。 大昔の聖人が海を割った逸話を繰り返すわけではないが───目には目を。歯には歯を。炎には炎を。 ご お ぉ───…… と、鋭い牙の生え揃った顎を大きく開け、蒼く燃え盛る焔 (35) 2020/12/12(Sat) 1:11:52 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[怪物の吐息にも似たそれは、見た目に似合わず凍えそうな死の温度を纏っている。 試練に立ちふさがる灼熱の壁を溶かし、一本道の活路を切り開けたのかどうか。] [否、作れなくとも構わない。その壁を突破し、彼奴に届けばそれでいいのだ。 どこまでも彼に温もりを与え続けた怪物が最後に届けるのは終焉を知らせる冬の到来。 左手には闇を、左手には約束を。誰よりも憎み■したかった者たちを壊すために目覚めたのだから。 凍てつく波動じみた炎を、遥か上の相手へと叩きつけるように吐いた後、 切り開いた活路を───開かれないのであれば、腹を焦がしながら。重い身体を引きずらせ、只管に玉座を目指し続ける。 口内にしまい込んだ短剣を振りかぶる時を待ちわびながら、燃え盛る瞳は真っすぐに相手を打ち付けながら。]* (36) 2020/12/12(Sat) 1:14:16 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[修羅を貫く真っ赤な旅路の道中で、数多のものを投げ捨ててきた。 最後まで使うことの無かった、約束だけをこの手に残して。 必死につなぎ留めた意識を代償に、この身に降りかかる災厄を全て受け止める。罅割れかけた精神がこれ以上は限界であると叫ぼうと───この夜だけ保ってくれたらそれでよかった。 (その後は、どこへなりとでも燃え尽きればいいのだ。 理性を失い、数多の人を喰らい、正真正銘の野生へ変われ。 だが───今は。今だけは。 略奪者ではなく、救済者としてあってくれ。 この場で朽ち果てるわけにはいかないから。) 掻き消えた絶対零度が示す道を辿るように一直線に百段を駆け上がろうとすれば、大気圏に触れて温度を上げる小惑星じみた火炎が眼前に迫る。 咄嗟に吐き出した吹雪は勢いを弱めていたものの、石段を砕け落とす前に威力を弱めることはできた筈。 何層にも分かれた炎が頭蓋骨にぶつかれば、元来の頭痛が更に速度を上げて、鱗の隙間から血が垂れ流された。 苦痛を振り切るように轟く咆哮が空気を震わせれば、焦げ付く身体をくねらせて、数多の命を喰らった巨大な口を大きく開き───絶え間なく涎を垂れ流す。] (40) 2020/12/12(Sat) 2:52:31 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[断頭台の如き刃の一撃を、身を捩って躱しきる。 四肢の骨が焦げる音がしたが、知ったことではない。 床に勢いよくついた前足にスナップを効かせれば、尾が大きく上へと踊る。そのまま勢いよく振り下ろせば────空間を大きく揺らし、砂埃のような瓦礫の屑が一帯を覆うだろう。 目くらましのようなそれに目を奪われていれば、 きっと獣の行方も、変わった姿も、認める早さは遅くなる。 衝撃を利用して一瞬のうちに宙へと躍り出た──── 大口を開けた獣と言うよりは、鱗に覆われた女の姿。 たったひとつの約束を抱えて、悪魔に襲い掛かろうとする、運命でさえも抗うちっぽけな存在。 赤から戻ったアイスブルーと、錆びることなく澄み切った刃の輝きだけが、これから起こる未来のことを物語るように。] (41) 2020/12/12(Sat) 2:52:34 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[刹那────月が翳る。] ッ 、 う゛ あぁぁあぁぁ!!!!!!!![咆哮と叫びが混じりあっていく。 飛び掛かった獣の姿が剥がれていく。 雲間に隠れた月明かりがわずかに照らすのは、高く跳躍した人外の一部を残した女が空気に躍らせる、漆黒に輝く黒髪の艶やかさ。 未だに痛む身体中の火傷の残響が示しているのは、“元の姿に戻るのはこれが最後である”という証。 鋭利な牙が生えそろった顎が、何にも穢れぬ短剣を振りかぶった両腕に代わり────獲物に喰い掛かる代わりに、その左胸を貫き通そうとした。*] (42) 2020/12/12(Sat) 2:52:41 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[──────────びゅいッ と黒翼広げた暗殺者独り 冬空を切って星まで堕とさんとばかりの勢いで振りかぶる。 心の臓を着地点とした短剣がどうなったのか、悪魔学に疎い己はすぐに判断などできず貫けてしまったとして...これから起こることなど、分からない。 それでも、ふと我に帰れば狂気の離れた身体を 抱き止めてやりたくて、思わず腕を伸ばした。 (誰だって意識のある確実な死は寒いものだから、 大切なのだと認めた者の最後くらいは寄り添いたい。 ……自分自身が征服者として奪ったものを、 まだこの胸の中に残ったわずかな人間性で。) 息さえぴったりと合わされば、抱き合う形をとって、 ───それから。] (55) 2020/12/12(Sat) 8:08:00 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ………ッ !? ふ……ッん────ぅ、 [御伽噺の口づけなんかとは程遠い、貪り尽くすかのように覆い被さられたそれに大きく肩が跳ねた。 甘さの中に錆びた香りが混じりこんだそれは酸素の代わりに強制的に流し込まれて、脳みそを強過ぎる刺激が塗り替えていく。 その味の正体が、嘗て自分が渡した小瓶の中身だということにすんでのところで気づけない。 逃げることを許されない確実な死を運ぶ餌付けを享受しながら、ファーストキスにしては酷過ぎるそれまでもを受け入れようとする。 互いが最後に共有するのは終焉へと至る迄の過程だったのか。理解しようとしても時既に遅し。 小さな身体が唐突に受け止めるにはその激情は果てしなく重く、きつく蓋をされ続けてきただけのしかかるものの多さに圧倒される。 幾ら閉鎖的で鈍感な精神と思考を持っていても、 過去に抱いたことのある感情への名前の付け方を知っていれば……己に向けられるそれがなんなのかくらいわかる筈。 ……自惚れているのかと思われても仕方ないかもしれないが。] (56) 2020/12/12(Sat) 8:08:05 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[鼓膜を揺らすのは、遅すぎるくらいの愛の懇願。大きく見開かれた片目の澄み渡った凍土が激しく揺れ、隠し切れぬ動揺を明らかにしていた。 ……些か物騒な赤い糸を繋げた激しさに朦朧とした意識をなんとか奮い立たせようとしても、微笑まれた相手の視界には蕩けた表情を隠すことができない己の情けなさが映し込まれるのみ。] …………どうして、私なんか、 (怪物なんかいたところで、) [思わず零れ落ちるのは、純粋な疑問。 その答えを聞く前に、終わりに近づく身体は冷たい床の上に頽れていこうとするから───反射的に相手を抱きとめ、包み込んで。 ゆっくりと正座するように腰を下ろしたその膝へ、頭を降ろさせようとする。] (57) 2020/12/12(Sat) 8:08:09 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ(……ぽた ぽた と。 その頬に流れゆくのは、枯れたと思っていた涙。 冷ややかな頬を伝えば、温度を徐々に失う相手の顔に 水滴を立ててしまうから、絶えず指先で拭っていた。) [………今からずっと昔。 幼馴染を喰らった日からだった。 どんなに慕われようと、ひとの関わりは自然と薄れていった。 自身の友好関係など、信頼関係など、誰かの蜘蛛の巣から零れた糸を伝っていたものに過ぎなかったのだ。 ( ”弱い”自分の代わりに、”智慧”を身につけた。 身につけても、私は─── 弱虫で、臆病者だ。 全てを守れるだけの力も 救える力もなかった。 だから、 「選んで」 「棄てた」。 修羅を歩む孤独な道が正しいのだと信じて。 ) ────……大事なものなんて、選べるものじゃないのに。 その先は、何よりも恐れる孤独があるだけなのに。] (58) 2020/12/12(Sat) 8:08:29 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[力尽きたあの子を抱き上げてから気づいた。 私は呪いなんて要らなかった。 ただ、大切な誰かが苦しんでいるなら、 その悲惨な苦痛に苦しんでいるのなら。 ────…… 傍で寄り添い、支えたかっただけ。 互いにひとりぼっちになりたくなかっただけ。] ………傍に、いてくれるのか? これからも、ずっと……私の隣に。 [今も舌先に残り続ける甘ったるさの味の源を辿ろうとすれば、漸く彼の意図がわかった気がして───叶わなかったはずの自身の悲願が届いたような、不思議な暖かさが広がって。浮かべたのは泣き笑い。 指し示されるはずのなかった“自分を持ったままの終焉”を約束された安息感だけが、この心を静かに満たしていた。] (返事なんて必要なかった。 返される内容さえも察しがついてしまう問いだから。 もう孤独に震えることも、泣き叫ぶこともない。 死の向こう側に至ってもずっと、寂しくないという事実が 揺らぐことなく目の前に差し出されているだけ。) (59) 2020/12/12(Sat) 8:08:50 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[プロポーズにも似た短い言葉に、乙女のように応えることは自分らしくもないだろうから。 ほんの少しだけ……死の間際に、痛みを我慢してほしい。 全てを奪われたあの夜の仕返し。火傷だらけの身体には、彼の所有印が未だ色濃く全身に残っていたはずだから。] [相手に覆い被さって、その喉元を引き裂かぬ程度に食らい付く。 口づけのお返しとしては少々野蛮な噛み跡をひとつ、そこにくっきりと浮かばせて───それが懇願への返事の代わり。 此奴は永遠に自分の獲物だと言わんばかりのマーキング。] [遅効性の毒薬がその身を激しい苦痛の末路へと誘うまで────あと少し。 死に向かうには寒すぎる季節の訪れを告げるのは、割れてしまった窓から降り注ぐ雨から変化した───……*] (60) 2020/12/12(Sat) 8:15:17 |
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