人狼物語 三日月国


42 【突発完全RP村】実になりてこそ、恋ひまさりけれ【誰歓】R18

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 眠る前、やる気の無さそうな店員さんは
 戻りたいところを描いてドアを開ければ、
 元のところに帰れると言ってくれた。

 だから、今は、少しだけ。
 カウンター近くのソファで丸まって、眠る。

 微かに気配が動いて、柔らかな布の感触が自分を覆った。
 
  
あぁ、温かい


 あの子たちと過ごした日々を思い出して、
 苦悶の表情は、少しだけ和らぐ。

 夢の中で、歌が聞こえた気がした。
 旅人が、無事に帰れるようにと願う歌が
 
       
オニ

 見ず知らずの人間に、願ってくれる、その心が嬉しい

  
夢かな? 夢でもいいや

 
 すやすやと、眠る。
 その夢は、とても幸せな夢だった。**]
(1) 2020/09/12(Sat) 10:04:49
空腹な迷い人 レックスは、メモを貼った。
(a0) 2020/09/12(Sat) 10:06:20

【人】 空腹な鬼 レックス

― 幸せな夢の中 ―
[ 温かい毛布に包まれて
 温かい願いに包まれて

 異形の鬼は、すやすやと眠る。

 疲労と空腹の中、少し苦し気に、だけど安らかに

 大切なあの子と出会った頃の夢を見る。]
(11) 2020/09/12(Sat) 16:03:29

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  ……お腹が空いたな、やっぱり無理だよ

      
バケモノ

  僕らは、異形の鬼だから、人を喰うことを止められないよ

[ お腹が空いて、たまに
 寝静まった家に忍び込んでは、少しだけ生気を分けてもらう。

 それでは、足りなくて、あの子から生気を分けてもらう。
 それでも、足りなくて、僕は泣きそうな声を零した。

 生気も吸い過ぎれば、相手は死んでしまうから
 あまりたくさん吸う訳にもいかない。

 1日に大人数の生気を吸えば、怪しまれるし
 吸った生気から得る色々な想いが入り混じって、
 悪酔いしてしまうから、食事は一度に少しずつしかできない。

 だから、いつも空腹だった。
 あの子たちに出会う前は、好きなだけ貪ってから、
 いつも腹は満たされていたから、余計に辛い。]
(12) 2020/09/12(Sat) 16:03:31

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  『ダメだよ、レックス……君ならできるよ』


[ 黒い瞳がじっとこちらを見つめてくる。
 そんな君からも、すごく美味しそうな匂いがする。

  人と鬼が共存するなんて、どうせ無理だよ
  自分のように我慢ができない鬼ばかりなんだから


 そんな言葉を言おうと、口を開けば、
 ぎゅうと抱きしめられた。]

  『だって君……人を食べている時、泣いてたから
   泣きながら、謝ってたから……君なら、できるよ』


[ どきりとした。
 薄紫の瞳を大きく見開いて、焦る。

 いつ見られたのだろう。
 この子の前で、人を喰ったことはなかったはずなのに

 しかも、泣いていたことまで、知られているなんて
 恥ずかしくて、頬が熱くなるのを感じた。]
(13) 2020/09/12(Sat) 16:03:33

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  どう……して、……?

  『マフテさんが教えてくれた』


[ あの白鬼め、余計なことを。
 歳で言えば、あちらの方が上だし、能力的にもあちらが上。
 抗議をしても受け入れられないだろうな。

 ぐぬぬ、と内心、悔しげに呻いていれば、
 慰めるように頭を撫でられる――僕の方がずっと年上なのに]

  泣い謝っても、僕は人間を喰ったこと、
  喰いたいと思ってることは変わらないよ

  この先もきっと、変わらないよ
  今は、ちょっと物珍しくて、君たちに付き合ってるだけ

[ 恥ずかしくて染めた頬を隠すように、
 ――本当は信じたい気持ちも


 柔らかい女の子の身体を抱きしめ返した。]
(14) 2020/09/12(Sat) 16:03:36

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  あぁ、……お腹が空いたなァ

[ チカチカと、瞳に紅を滲ませながら、溜息混じりに呟いた]

  『どうしても、辛いなら……僕の血をあげる』


[ 差し出すように晒される白い首筋。
 ごくり、と喉を鳴らした。]

  君はずるいな……

[ その首筋に、軽く唇を押し当てて、小さく笑った。
 彼女の血を口にしてしまったら、
 もう後戻りはできない気がする。

 いや、この場合は、進めなくなると言った方がいいかな。
 この子たちと一緒に歩めなくなる気がする。

 だから、僕はただ笑って
 空腹のまま、しばらく彼女を抱きしめていた。*]
(15) 2020/09/12(Sat) 16:03:39

【人】 空腹な鬼 レックス

― 現在:漫画喫茶にて ―
[ 浅い眠りから、ゆっくりと目覚める。
 夢見が悪くなかったのは、温かな毛布のおかげが、
 それとも、無事を願ってくれた想いのおかげか。

 目をごしごしとこすりながら、のそりと起き上がった]

  ――――お腹が空いた

[ 相変わらずの第一声だった**]
(16) 2020/09/12(Sat) 16:03:42
―― むかしむかしのおもいで ――
[お菊、お菊、可愛い私の巫女。

 遠く昔、まだ私の神の力がもっと強かった頃。
 この里に私の神社があった頃。
 お前は甲斐甲斐しく私に尽くしてくれたね。

 時に星を詠み、時に雨を乞い、時に美しい祝詞を捧ぐ。

 でも、そんなお前とも最期の時だ。
 人間の生というのはなんと短いものだろうね。
 最期だというのに――、
 ああ、とても幸せそうな顔でお前は笑う]


 大丈夫だよ、お菊。私の可愛い子。
 眠りにつくまでそばにいよう。


[最期のその身に寄り添い頭を撫でよう。
 お菊の霊力なら私の姿もよく見えように]

 
 
 ……――――、うん……?
 今、なんと言ったかな?


[今わの際のお菊が何か言った気がしたが。
 よく聞こえずに首を傾げる。
 もう口を動かす事すらままならぬのだろう。
 
 せめてその動かぬ指先に手を触れよう。
 薄っすらと開く瞳に己の姿を映そう。
 そうして、次の言葉は聞き洩らす事がないように]


 ……ふふっ、お菊は心配性だな。


[よりにもよって、己ではなく神の心配とは!
 本当に面白い娘だと思った。
 だからこその、神に仕える巫女なのだとも]

[だからこそ、
 だからこそ、

 愛おしく、別れが惜しいと強く思った。
 
他の人間への普遍の庇護と慈愛とはまた違う。

 ”それ”がなんの想いか、よく分からなかったが]

[花を咲かせましょうと、お菊は言った。
 黄色くて愛らしい花を。
 自分の名前と同じ可憐な花を。
 私の周りに咲かせてくれるのだと言うのだ。

 きゅっとお菊の手を握り、最期の別れを]


 ありがとう、お菊。お前の事は忘れないよ。
 輪廻が巡ればまた会う日も来るかもしれない。
 
 姿形が変わろうと、
 私はお前の魂の輝きを覚えているよ。
 そうしてお前をきっと見守り続けていよう。


[いつか巡り合うその時まで、しばしの別れ。
 私は変わらずここにいよう。
 お前が咲かせた野菊と共に――。*]

 
[大の男がボクの目の前で膝を折り
 旋毛を見せる。
 光景だけでゾクゾクと背筋が震えてしまう。]


   ……ンッ、……クク、……良いぞ……


[温かくヌルヌルした擬似的な粘膜が
 指の一本一本に這わされれば
 創造主は恍惚と目を細め、被造物を褒める。]


   そう……はぁ、指と指の間も、丁寧にだ……
   ああ、あぁ、良い子……ん、は、ぁぅ……


[こうされるのは、存外、善いものだと知った。]
 

 

   クハハ、ボクも可愛がってやろう……そら、


[新たな発見をしながら――、
 甘く漏れてしまう吐息や
 独りでに踊ってしまう指先を誤魔化すように
 彼の口腔の中で指を動かし、舌に擦り付けた。

 彼はボディにも学習機能がついている。
 快楽として処理されるようになるまで
 どれ程かかるかわからぬものだが]


   ハァ……どうだ、嬉しいか?


[小さな足先全てを捻じ込んで仕舞えば
 足趾をバラバラと動かし
 思うがままに彼の口を犯した。

 返事ができぬと知りながらの質問は
 我ながら意地が悪い。]
 

 
[無理やりに動かすから
 上下の硬い歯列に指が触れる。

 ボクの骨など軽く砕けてしまう
 エナメル以上の硬度の歯たち。

 けれど牙を剥かれることはない。
 少なくとも、自我の芽生えたての今は。

 一層、ゾクゾクと震えが走って]
 

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 独り言が聞こえたのか、店員さんから声がかかる。>>25
 寝ぼけていた思考が、一気に目覚めて、一瞬だけ
 ぱちくりと、瞳を瞬かせた。]

  あ、あぁ、おはようございます

[ カウンターの向こう側で、何か動いている気配は感じるが
 それが尻尾だとは気づいていない。
 ――まさか、かなり心配させていたとは露知らず

 不思議な場所だ。
 外の世界とは、空気が違う。
 知らない場所なのに、知っているような気もする。

 店員さん、どこか人間とは違う気配がする。]
(33) 2020/09/12(Sat) 19:51:08

【人】 空腹な迷い人 レックス


 
  ご飯……作ってくれるんですか?

[ 軽食とは、どんなものか想像ができなかった。
 白鬼とあの子が食べていたものだろうか。

 こてりと、首を緩く傾げて思案する。

 血や肉や、生気以外は、口にしても腹は膨れないが。
 味を感じることくらいはできる。
 
 あとは、動物の肉なら、多少腹の足しにはなる。

 少し考えた後に、こくりと頷いて]
(34) 2020/09/12(Sat) 19:51:11

【人】 空腹な迷い人 レックス

  
  お願いしても、いいですか?
  何か、肉が入っていると、有難いです

[ そう言えば、店員さんはどこかへと消える。
 
  
ん? 足音が、ないような?

 
 小さな疑問が、ぐぅ〜と鳴いた腹の虫に掻き消された。
 向こうの方から、良い匂いがする。
 それから、料理をするときの音だ。

 あの子が料理する時も、こんな音だったな。と
 懐かしそうに耳を傾けていた。]
(35) 2020/09/12(Sat) 19:51:13

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 出てきた美味しそうなナポリタン。
 ソーセージでも入っていれば、それで喜んで]

  ありがとうございます

[ にこりと笑った。
 人間向けの、無邪気な笑みで受け取れば、
 目の前の更を興味深げに見つめて、
 フォークでくるくる、
 パスタを器用に掬い取って、口に運んだ。

 
赤くて
しょっぱい。
 美味しい味がした。

 お腹は、膨れはしないけど、]

  ――――美味しいですね

[ 作ってくれた人への感謝を込めて、そう言った**]
(36) 2020/09/12(Sat) 19:51:16

【人】 空腹な迷う人 レックス

[ "美味しい"を感じられるのは、
 自分がまだ、生きているという意味。

 そう言ったのは、誰だったか。

 普通の食事の味を、まだ感じられる自分は
 まだ、ただのバケモノに堕ちていないということだ。

 人が食べる食事をしていると、ふいに頭が、ずきりと痛む。]

  『折角、餌に困らない場所に送ったというのに
   随分と、やせ我慢をするのね
              、、、
   そこでなら、いくらでも食べていいのよ?
   だって、別の世界だもの』


[ 上品な女性の声が、愉しそうに嗤う。
 
  ――――あぁ、この声は
魔女


 今なら分かる。
 美しくて、冷たくて、恐ろしい声。
 
 恐ろしいことを、いとも簡単に言う。
 魅惑的な誘い文句で、戻れない場所に導こうとする。]
(45) 2020/09/12(Sat) 22:33:22

【人】 空腹な迷う人 レックス

 
 

 
『――――食べてしまいなさいな
 
           
バケモノ

       お前は、人食い鬼なんだから』

 
 
(46) 2020/09/12(Sat) 22:33:30

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  
 ――――ッ、!!


[ 頭が痛い。
 カランと音を立てて、フォークを落として
 頭を抱えて、蹲る。

 
 食べたい、食べたい、食べたい
 食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい


 血を啜って、肉を噛み千切って、骨を砕いて、
 甘くて、旨くて、蕩けるような甘美な食事をしたい。

 くらくらする、美味しそうな匂いは、外の世界に
 あの扉の向こうに、たくさんある。]
(47) 2020/09/12(Sat) 22:33:57

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
  
『レックス』


[ 今度は、諌めるようなハスキーな声が頭に響く。

 あの子の声が、
 傾きそうになった天秤の元に戻してくれた。

 あの子が嫌いな、鬼にはなりたくない。]

  っ、……はぁ、
  ちょっと休憩が足りなかったみたいだから

  えっと奥の個室で……休ませて、もらいますね

[ 本を読む為の場所で、休憩するのも悪い気がしたが
 ここで苦しんでいると、心配させてしまいそうだったから

 店員さんに一言告げてから、奥の個室に向かった。
 そこで、飢えの波が去るのを待とうと思って**]
(48) 2020/09/12(Sat) 22:34:22
空腹な迷い人 レックスは、メモを貼った。
(a5) 2020/09/12(Sat) 23:02:50

[…………いや、言えたら良かったんだけどさ。


 
笑われたら、すごい凹むじゃん。



  もっと、近くに感じたら……安心出来る?


[親指の腹でそっと由人の唇をなぞりながら
 アタシはまた質問を重ねる。
 恋人でもない人とキスするのは嫌って人
 結構多いから、そのつもりで。

 唇を重ねてもいいなら
 孤独を分かつ者同士、おっかなびっくり
 触れるだけのキスをするの。
 唇の形が分かったなら、もう少し深く。
 温もりを確かめるように
 舌先同士を擦り合わせて。

 ダメ、と言われたならそれはそれ。
 いつも通りハグをしながら
 狭いベッドで眠りにつくでしょう。]



[ 続けられた問いかけに揺れる。
いつだって触れられるのは、
体と髪だけだったのに。

親指が唇をなぞる。

ぞく、として、どくん、と打って。

そんな雰囲気になったことは
今までなかったし、彼がどっちなのか、
そんなことすら知らないのだとわかる。

その熱を識りたいと思う自分と
識るのが怖いと思う自分がいて

ただ、おずおずと重なった唇の
柔らかさは、とても好きだった。
絡んだ舌先の甘さも、同じ。
微かに歯磨き粉のミントが抜ける。]

 




   …ま、さ はる───、



[ 知ってはいたけれど、一度も
口にしたことのなかった本名を
その震える声に乗せる。


見上げた瞳に、灯るのは何色なのだろう。]

 





  わたくしは、とてもしあわせでございました。


 


 [ 共に星を詠み、雨を乞い  
      あなた様の祝詞を皆へと伝え。

  命尽きた後はこの地を護る人柱として。 


  わたくしは正しくあなた様の巫女でした。
  強すぎた霊力は人には手に余るもの。

  神のものは神へ返さなくてはなりません。
  わたくしの命は 神のために。

  この日がやってくることは
  ずっと前から決まっていました。
  だから何も怖くはありません。
  
  霊薬を含み、生命が還ることを感じながら
  わたくしは幸せを告げるのです。 ]



[  ああ、――ああ。


   なのに、―――ああ。 ]



  ―私は、知ってしまったのです。

   髪に触れる手が、指先の優しさを。
   私の名を紡ぐ音に焦がれる心を。
   瞳に映るその姿に、揺さぶられる思いを。



  ひとの身でありながら、
  あなた様の巫女でありながら

  わたくしは
  私という女は

  あなた様と離れることを拒み、
  叫び、悲しんでいるこころを


 ―わたくしは、知ってしまったのです。 ]




[ ―ぽつ、と。

   暗闇の中に咲くのは 黄色の野菊 ]




  『 もしも里が 滅びてしまうような日がきて
    この地がなくなってしまっても

    誰もあなた様を 護れなくなることがないように 
    あなた様を 忘れないように 』
  

[そして私も、お前を忘れる事がないように。
 例えこの地がなくなろうとも、私はここに。

 お前の最期の祝いが欲しい。
 お前の最期の呪いが欲しい。

 私をこの地に留める……、愛が欲しい*]


 
お菊

 ―私という魂が、たとえ在り方を無くしたとしても。
  たとえ全てを失って、何もかもが消えてしまっても。



  ――それでも、




 いつかの私が、またあなたの元へ辿りつけるように。




 『 ここに 野菊の花を咲かせましょう


     あなたが ここにいると わかるように 』
 
 



[ ―私が永遠に、あなたの側にいられますように。


 祝いを。
 呪いを。


 祈りを。 ]


 

[重ねた唇は、多分同じ歯磨き粉の味。
 だけど、思ったよりも高い粘膜の温度とか、
 少しだけかさついた唇の感触とか、
 また知らない由人が見えてくるみたいで。

 腕の中に抱きすくめて、
 舌先で歯列を割ると、中はもっと柔らかくて熱い。
 ミントの清涼感なんかよりよっぽど強い、
 生々しい味蕾の粒の感触。

 ああ、この舌が「美味しい」と思ったもの
 アタシは毎日一緒に食べてるのかな、なんて。
 そう思ったら、もっと深く知りたくなった。]

[乾いた由人の声が、“俺”を呼んでくれた。
 初めて、呼んでくれた!]


  ゆうと。


[少しだけ甘えるみたいな口調で
 口の中で由人の名前を転がすと
 なんだかとっても安心する。
 ふと目があったから俺は「大丈夫だよ」って
 慈しむような目を向けただろう。

 由人の目の前にいるのは
 いつもの化粧もなく、
 ありのままの男の顔した俺。]

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 皿を持ってきてくれた時
 店員さんの下半身が蛇であることに気付いたけれど。
 この世界にも、異形と呼ばれるものがいるのかと
 少しだけ親近感を感じていた。

 だけど、染みついた習慣で、
 人間向けの笑顔を受かべていた。

 異形でも、人間を食べないものもいるから
 怖い話はしないでおこう。

  君"も"人間じゃないんだね


 という言葉は飲み込んで

 揺れる尻尾が、面白くて、また小さく笑っていた。
 ――尻尾のある奴は初めて見たな
]
(93) 2020/09/13(Sun) 14:54:42

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 頭の痛さと、飢えの苦しさに
 フォークを落とせば、心配してくれる声が聞こえた。]

  だい、じょうぶです
  少し休めば、治まるんで……

[ チラチラと、瞳に紅を滲ませながら、
 フォークを拾って、皿に戻した。]

  残りは、後で……食べますね

[ 片手で皿を持って、小部屋へと歩いて行った。
 せっかく作ってくれたものだから、全部食べたくて。]
(94) 2020/09/13(Sun) 14:54:45

【人】 空腹な迷い人 レックス

― 個室 ―
  
[ 机の上にナポリタンの皿を置けば、
 掛けてくれた毛布にくるまって、丸まった。

 美味しそうな匂いから遠ざかって
 食べたい衝動が過ぎ去るのを待つ。

 あの子が嫌いな、鬼にはなりたくなから]
(95) 2020/09/13(Sun) 14:54:47

【人】 空腹な鬼 レックス

― 嫌いな鬼の話 ―

[ いつだったか、彼女に聞いた。]

  鬼と共存したいなんて、君は鬼が嫌いじゃないの?
  人間を喰うし、意味もなく殺すことだってある

  怖がったり、嫌ったりするものじゃない?

[ 白鬼なんかと一緒に旅をしているし、
 共存する道を探しているとかいうし、
 不思議そうにそう尋ねたんだ。

 そうしたら、彼女は泣き出しそうな顔で笑った。]

  『鬼は嫌いだよ、
   僕の大切なものを奪う"鬼"は、嫌い』


[ 大切なものを、きっと奪われたんだ。
 それなのに、なぜ共存を目指すのか不思議だった]
(96) 2020/09/13(Sun) 14:55:10

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  『親も、養父も、大切な友だちも、
   みんな、みんな、"鬼"が奪っていった

   だから、僕は
奪う"鬼"は嫌い
だよ
   だけど、それは"人間"も同じだって、知ってるから

 
(97) 2020/09/13(Sun) 14:55:27

【人】 空腹な鬼 レックス

[ そう、人間も同じだ。
 人同士で殺し合うし、大事なものを奪い合う。

 人間の方が、恐ろしい時すらある。
 そんな話をぽつぽつと話してくれた。

 小さな頃に両親を、
鬼に殺されて、

 引き取ってくれた養父も、
鬼に殺されて、

 大切な友人も、
鬼に殺された

 ――友人は、それを受け入れてたようだが


 だが、人間を愛する鬼もいた。
 護ろうとする鬼もいた。

 人と同じだと、気づいたのだと
 大好きな女の子が、鬼と共に生きる道を選んだから
 自分も共存の道を探そうと思ったんだ。

 そんな話をしてくれた]

   君は変な子だね、いばらの道だ
   白鬼は気まぐれに付き合ってるのかもしれないし
   僕だって、暇つぶしで付き合ってるだけだし

[ 鬼は、人と同じように成長する者もいれば、
 白鬼の様に長生きなものもいる、
 見た目を変えることができるものだっている。

 自分だって、見た目は彼女と変わらないけど
 ずっとずっと年上だ。]
(98) 2020/09/13(Sun) 14:56:49

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  『それでいいよ、やるって決めたんだ
   オーリャと約束したし、義父さんにも約束した』


[ いつも何を考えているかわからない黒い瞳が
 その話をした時だけは、キラキラと煌めていて
 すごく――綺麗だった。

 それから、彼女が大好きなオーリャという子に少し嫉妬した。

 その子のために、嫌いな鬼を受け入れようと決めて
 いばら道を歩むなんて……]
(99) 2020/09/13(Sun) 14:57:37

【人】 空腹な鬼 レックス

 
   …………僕も、なれるかな

[ 不安そうに、ぽつりと呟いた。
 俯いて、自分の掌を見つめた。

 今は綺麗だけど、この手はたくさんの命を奪ってきた。
 血の匂いは、消えはしない。]
(100) 2020/09/13(Sun) 14:58:21

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  君が好きになれる"鬼"に、なりたいな
  
  『君なら、なれるよ……きっと』


[ いつも無表情な彼女が、笑った。
 花が咲くように、愛らしい笑顔だった。

  ――あぁ、好きだな


 どんなに辛くても、我慢しよう。
 そう、胸に誓った。――それでも、欲求には抗えなくて]
(101) 2020/09/13(Sun) 14:58:48

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  
アァ、お腹が空いた
――ダメだよ

  
血が欲しい、肉を喰らいたい
――食べちゃダメ

 
  
もう食べてもいいよね
――それなら、僕を食べて


[ 彼女の首筋に、牙を突き立ててしまった。
 
 一滴、滴った血が唇に触れて、舌に触れて、
 
甘くて、美味しくて、
……でも、苦しかった。

 ほんの一滴、だけど、
 一滴でも口にしてはいけなかったものだった。]
(102) 2020/09/13(Sun) 14:59:46

【人】 空腹な鬼 レックス

 
  ごめん、なさい……ごめん、ゼノビア
  やっぱりダメなんだ……僕は、このままだと
  君を食べてしまう

[ だから、決めたんだ。
 
 とある町で聞いた噂。

 対価さえ払えば、
 どんな願いも叶えてくれる魔女

 
時の魔女 グロリア・ベアトリクス
に会いに行こうと]
(103) 2020/09/13(Sun) 15:00:15

【人】 空腹な鬼 レックス

  
  『ダメだよ、レックス
   魔女に願いを叶えてもらうなんて
   魔女に会いに行って、戻ってこれた人たちは
   ほとんどいないじゃないか。

   あそこにいったら、君は死んでしまう』
 
(104) 2020/09/13(Sun) 15:00:57

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 必死に止めてくれる彼女の声を振り切って、
 いくつもの街を通り過ぎ、あともう少しで辿り着ける。

 そんな時に、ここに来てしまった。
 でも、あの女の声が魔女ならば、噂は本当なのだ。

 どんな願いも叶えてくれる魔女は、実在する。]

  
生きて、帰ってみせる……

  
[ 飢えの苦しみ、もがきながら
 大好きなあの子の顔を思い出して、耐えていた。

 異形と人との恋物語
 悲恋となるか、それとも幸せなものとなるか。

 ずらりと並んだ本棚に、
 そんな物語の続きがあるかもしれない。**]
(105) 2020/09/13(Sun) 15:01:51


 [ 神にとって 名前とは

    とても大切なものだから。


  わたくしには あなた様の名を呼ぶことは 


  叶わなかった ]



【人】 空腹な迷い人 レックス

― 魔女の噂 ―
[ とある国、とある町。その近くにある小高い丘の上。
 森と湖に囲まれた場所に、そびえ立つ
 時計館と呼ばれる振り子時計の形をした館には、
 魔女が住んでいるという噂

 時に、グロリア・ベアトリクスと名乗り
 時に、ドミニカ・ベアトリクスと名乗り
 時に、―――――――――――と名乗り

 時と場所によって、その名も性格も異なっているらしい。

 金髪の美しい女性であること
 対価を代償に、どんな願いも叶えてくれること


 ただし、その二つは、共通していた。

 代償が何かは、館に行ってみなければ分からない。
 館から無事に帰ってこれたものは、多くは語らない。

 時に、殺し合いのゲームをさせて、
    生き残った者の願いを叶えたり

 時に、弟子の卒業試験のため、
    紛れ込んだ弟子を見つけ出させるゲームを行い
    舞台に残った者の願いを肩寝たり


 その時々で、代償の内容は異なっている。
 しかし、必ず人が――――
死ぬ

 魔女に願いを叶えてもらうということは、そういうこと。]
(123) 2020/09/13(Sun) 22:25:23

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 苦しみに喘ぎながら、魔女の噂を思い出していれば
 ふいに、また声が聞こえる。]

  『本当に、いつまで我慢をするのかしら?
   飢えで死んでしまわれると困るのだけど

      バケモノ
   ねぇ、人食い鬼さん

   そんなふらふらな状態では、ゲームに参加できないわよ』


[ 困ったわ。と言いながらも、まったく困った様子はなく。
 くすくすと愉しそうに嗤う声は、耳障りだった。

 館に到着する前から、館を訪れるものに干渉するなんて
 今まで、そんな話は聞いたことがない。

 なぜ、この魔女は、自分に干渉してくるのか。]

  『あら、不思議そうね。
   言ったでしょう? お前は、大事な駒なのだと

   久方ぶりの"ゲーム"で、必要な大事な駒なのよ』


[ こちらが考えていることを見透かしたように
 頭に直接、語りかけてくる声は、そう言った。

 "ゲーム"に必要な……駒。

 館で行われるゲームのことだろう。]
(124) 2020/09/13(Sun) 22:25:25

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
  (あなた自身もゲームに参加するんですか?)

  『それは――秘密、と言いたいところだけど
   そうね、お前には教えておいてあげようかしら?
   とある方法で、私も参加するわ。

   それから、無事に館についたなら、
   お前にやって欲しいことがあるのよ
   条件を満たすことができたなら、お前の生死に関わらず
   願いを叶えてあげるわ

   ただし――…願いそのままは、無理だけれど』


[ 嗤いを含まない真剣な響きだった。
 魔女が真実を言っているとはわかる。

 願いそのままはダメ。とは、どういうことだろう。]
(125) 2020/09/13(Sun) 22:25:27

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
  (あなたの力でも、すべての鬼を人間にはできない?)

  『違うわ、すべての鬼を人間にするには、
   対価が足りないのよ。

   せいぜい、お前を人間に変えてやるくらいね
   頑張り次第では、
   人食いの欲を抑える薬を作ってあげようか
   
   どちらにせよ、お前が払える対価で
   できることはこの程度よ』


[ 対価が足りない。
 そう言われてしまったら、どうしようもない。

 しかし、人間にして貰える、
 おまけに薬も貰えるなら僥倖だろう。
 ――頑張り次第のようだが、


 それなら、"ゲーム"に参加する意味は、十分にある。
 条件を満たせば、生死は関係ないという話らしいし。]

  (…………死んでも、生き返ることができるんですか?)

  『さぁ、それはお前の頑張り次第かしら
   条件も満たしていなかったら、
   生き返すことなどできないわ』


  (条件とは?)
(126) 2020/09/13(Sun) 22:25:29

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ しばらく、声は返ってこなかった。
 気まぐれに声をかけてくる魔女だから、
 無視をされているのだろう。

 そう思って、湧き上がる衝動を抑え込むように
 さらにぎゅうと、自分を抱きしめるように、丸くなった。]
(127) 2020/09/13(Sun) 22:25:33

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
 
 
 
『――――を――ことよ』
(128) 2020/09/13(Sun) 22:25:35

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 絞り出すように、微かに聞こえた声は
 魔女にしては、酷く切なげで、妙に胸の奥をざわつかせた。

 瞳を瞬かせて、誰もいないのに
 つい視線を周囲に巡らせてしまう。]

  (今、なんて?)

  『館に来る者が誰か、私は既に知っているわ
   彼らが来るのは、偶然ではないの

   そこにあるのは、ただ――――"
必然
"
   お前だけは、その"必然"の中にいないのよ

   だから、"ゲーム"に参加する前に死なれては困るの
   せいぜい、生き延びて、我が時計館にいらっしゃいな』


[ 先程の音が嘘のように、
 毅然と、そして、相変わらず愉しそうに
 
 くすりくすりと、嗤う声だけを響かせて、
            やがて、声は聞こえなくなった。]

  条件って……なんだろう
  死んで、運よく生き返ったとして…
 
(129) 2020/09/13(Sun) 22:25:38

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
  
――――生き返った僕は、本当に"僕"なのかな


[ 呟いた声は、誰に届くこともなく。
 
             静けさの中に融けて、消えた**]
(130) 2020/09/13(Sun) 22:25:41
[お菊はずっと巫女として私に仕えていてくれたからね。
 その強い霊力ゆえ、
 神子以外の生き方が出来ない子だった。

 もしかしたら、
 外の世界に、人の世に、憧れた日もあったやもしれぬ。
 
ついぞ聞き出す事もできなかったが。


 ならば今のエリサは自由なのだ。
 人の生活も、神との縁も持つ稀有な子。
 そんなエリサからまた私が人の世の自由を奪う、など。

 
 嫁にするのだと、
 神域に連れ去り人としての生を捨てさせるのと同じ事。

 それが――、今の。
 しかも、力も弱まった私がしていい所業なのか。
 分からなかった]

[「龍神さま」「おりゅうさま」「里神様」――、
 様々に人々から呼ばれ、信仰された。
 だが、真の名をついぞ人に明かす事などなかった。

 それは私に生涯尽くしてくれたお菊とて例外でなく、
 
呼んでほしいと乞うた時にはもういない。


 そう、例外ではないと――、
 ・・・・・・
 思われている、が]

 
[一度深く沈んだ意識が浮上していく。
 それと共に、むくりと反応するものがある。

 半ズボンの前立てを押し上げ
 窮屈さを訴えてくる其れは
 ごく一般的な女性にはないモノだ。]


   (ああ、……処理するか……)


[目を閉じたままもぞもぞ、
 自分で掛けた記憶のないシーツの下で身動ぎ
 下衣を寛げ、小さな掌でそっと握り込む。

 溜まるものはいつかは出さなくてはならない。
 生理現象で反応した時に
 処理してしまうのが合理的だとして
 ルーチンワークに取り入れたのはいつの事だったか。]
 

 
[黒のマニキュアを塗った伍本の指が
 熱を育て、硬く反り返らせる。

 こうして自分で弄っていると
 IQが200ほど落ちている気がして
 余り好きではないのだが
 溜めてしまうと知的活動に集中出来なくなるから
 もっと嫌だった。]


   
……ぁ、ン……、ふ……ッ



[何でボクはかわいい女の子なのに
 こんなモノが生えているんだろう――、
 そう思いもするから、処理に伴う快楽は認めがたい。
 故に、目を閉じたままの顔には
 不本意、と太字で大きく書かれていた。

 表情が苦しげだったからであろうか、
 見ていたものが起こそうという思考になったのは]
 

 
[それから青褪めた。
 赤くなったらう青くなったり忙しい。

 そうだよ、彼が居たんだよ。
 なのにボクったら、オナニーなんかして……]


   〜〜っ、つ、次の仕事だよ
   ホラ、これ処理して……っ


[シーツを捲って、
 フツウの女の子にはないモノを見せた。

 やけくそだった。

 ……それにいまの彼なら
 フツウじゃないものを見せられても
 変だと罵る声を持たないから。**]
 

[バターを手渡した時、ちょっと思っちゃった。


 「これ食べて、由人、なんて言うのかな」なんて。

 この先、生きていく気もなかったくせにね。]

[また来たいわ。


 ……なんて、言ったら笑われちゃうかしら。
 いいえ、アタシ自分で笑っちゃうわね。]


[ ひとに何か作ってもらうって
いつぶりだったんだろう。

まだ口に入れてないし、
ココットの中身はきちんと成形されてもいない、
不格好なただの白い塊だったけど、
それでもそれが、たまらなく嬉しかった。]
 



[ また来たいな、と

口から出かかったのを止めた。
……笑えそうにはなかった。]

 




    尊龍様……!





  [  わたくしは 巫女でした。
       わたくしは 生まれて、死ぬまで巫女でした。

    けれど 最期に望んだものは

    “この地の栄華でもなく、繁栄でも安寧でもなく”


   ― あなた様に 再び出会う こと でした ―



    それが 里の衰退を呼び 
    信仰の力を失ったあなた様の力が 
    弱まる事に繋がると知って なお  


    どうしようもないくらい 
    なりたかった “女の子”の願いを 込めました。

    あなた様は 嘘つきのわたくしを、私を
    どう思いましょうか ]




   [  輪廻の果てに
      わたくしの巫女の力を失っても
      
お菊

      私という存在の全てを喪ったとしても ]




  [   それでも 

           それでも 

わたくしは

                 私は 



あなた様に 再び出会えることを 






             望みました 

 
 




  [  ―――ここはわたくしと、あなた様にとって
        とてもとても繋がりの深い地。
 
    だから ひとつだけ 私の罪を 

             貴方へ聞いてほしいのです ]




   [  これは お菊の意思では なく  ]

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 漸く飢えの波が治まって、顔をあげた。

 はぁ、はぁ、と浅い呼吸を繰り返して、
 机に縋るように身体を起こせば、
 先程のナポリタンが目に入る。

 ゆっくりと、数度深呼吸をしてから、
 再び、フォークを手に取った。]

  すっかり冷めてしまったけど……美味しいや

[ 冷たいけど、美味しいと感じた。
 ソーセージを口にすれば、腹が満たされるのを感じる。

 少しずつ、少しずつ、
 普通の食事で満足できるようになればいいのに

 だけど、少しずつでは間に合いそうもなかった。
 きっと、近いうちに自分はあの子を喰っていただろう。

 許されないことで、仕方がないことで
 それでも、そんな未来を迎えたくなかったから

  ――優しい鬼になりたかった


 胸の内で、そんな願いを抱きながら、
 自嘲の笑みを浮かべた。]
(209) 2020/09/14(Mon) 21:01:45

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
  …………本当に、良い鬼なら、
  人の目に触れるところには出てこないのだけどね

  
(210) 2020/09/14(Mon) 21:01:47

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 何処かの物語の主人公が言っていた。
 "人前に出てこないゴブリンだけが、いいゴブリンだ"と

 鬼も一緒だ。
 人前にでてこない鬼こそが、良い鬼なのだろう。

 それでも――――…]

  ひとりぼっちは、寂しいんだ

[ 人との争いで、父は死に。
 人に見つかり、母は死に。

 自分は、それでも生きることを選んできた。
 一人で、お腹を空かせながら、闇の中でひっそりと

 一人になってから、1年、2年、3年。
 最初の頃は、野山の動物を狩って生きていた。

 だけど、寂しさに、孤独に耐えきれなくて。
 人に化けて、村に住んでみた。
 戦災孤児と偽って
――偽りでもないが


 だけど、見た目が変わらないことを
 訝しんだ村人に殺されそうになった。]
(211) 2020/09/14(Mon) 21:01:51

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 次に、その村から、ずっと遠い町に今度は潜り込んだ。
 孤児はたくさんいるから、そこでは上手く潜り込めた。

 だけど、孤児仲間が襲われているところ
 鬼の力で助けてしまった。

  ――『騙したのか、この
バケモノめ
!!』


 今でも憶えている。
 助けてやったのに、罵られて、石をぶつけられて
 ――――拒絶された

 人間と一緒に生きるのは、やはり無理なのだと思った。]
(212) 2020/09/14(Mon) 21:01:53

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ それから、10年、20年
 長い時間を一人で生きてきた。

 襲ってくる人間を殺しては喰って、腹が減っては、喰って
 食事をした後は、それでも罪悪感でいっぱいだった。

 男を喰った、女を喰った、子どもも喰った。
 ――襲ってきた父親を殺して
 ――周囲に知らせようとした母親を殺して
 ――たった一人残しては可哀想だから、子どもも殺した


 仕方がなかったんだ。
 生きるためには、仕方がなかった。

  ごめん、ね……ごめんなさい……


 美味しい食事に涙を流しながら、謝っていた。
 そんな時に、やってきたのが白鬼だった。

 近くの山小屋に、鬼と共存を目指している娘がいると
 そんな話を急にされた。
 自分が食べているものなど、目にも入っていないかのように

 そんな酔狂な奴がいるなら、会わせてくれと言った。
 食べてやろうかと思ったが、白鬼にとっても大事なようで
 
  
同族であろうと殺す。

 
 というような目で見られたのを覚えている。]
(213) 2020/09/14(Mon) 21:01:55

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
  鬼の養父とでも言うのかな……

[ 父親のような顔をした白鬼を思い出して、
 くくくと喉の奥で笑った。

 昔のことを思い出しながら、食べていれば
 いつの間にか、皿は空になっていた。]

  ごちそうさまでした

[ 手を合わせて、小さく呟いてから、
 個室を出れば、周囲の本棚に目をやった。

 よくよく見れば、ここにある本は読めるようだ。
 見たことない文字なのに、
 意味は理解できるというのは不思議な感覚だ。]

  こ、凍れる?

[ ふと目に留まった本を手に取ってみれば、
 そこには、人狼の娘の物語が描かれていた。]
(214) 2020/09/14(Mon) 21:01:58

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 愛しいと想ったものを、食べたいと思ってしまう少女。
 彼女にとって、食べるということが最大の
愛情表現
だった。

 初めて、自ら欲して食べたのは、初恋の少年。
 だが、それをきっかけに、彼女の両親は死んだ。

 両親は、村の人間には手を出さないこと、
 代わりに村を襲う連中を退けることを約束して、
 この村に住んでいたというのに、
 幼い娘は知らずに契約を破ってしまったのだ。

 その日から、彼女が新たな村の守護者になった。

 優しい獣になりたいと願いながら、
 人間と共存したいと願いながら
 それはきっと無理だと、――諦めながら

 しかし、そんな日々も
 人間側の裏切りにあい、終わりを迎えた。

 愛しい友人を食べ、初めての仲間を得て、
 仲間を守るために、自らを差し出した。

 本当は、人間と一緒に生きたかったのに
 大好きな子たちと一緒に生きたかったのに

 その願いは、諦めて。


 仲間のことを、大好きな子たちのこと
 彼らの幸せを願って、死んで逝った。]
(215) 2020/09/14(Mon) 21:02:00

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
  ……僕は、こんな風に諦めたくないから
  だから、願いを叶えに行かなきゃ

[ たとえ、それが悪魔に魂を売るようなことであろうと
 
 この願いだけは叶えたい。
 あの子との約束を守りたい。

 ぱたりと、本を閉じて、静かに瞳を閉じた。
 じわりと胸の奥に広がる熱を感じていた。

 愛しいという想いを、力に変えて進もうと]
(216) 2020/09/14(Mon) 21:02:02

【人】 空腹な迷い人 レックス

  
  
  『あはははははははははは!!!!
 
   いいぞいいぞ! その調子だ!!
   そのまま、一人くらい、
   喰ってから戻ってくればいい!!』


  
(217) 2020/09/14(Mon) 21:02:04

【人】 空腹な迷い人 レックス


 
 
[ 耳障りな嗤い声は、聞こえないふりをした**]
 
 
 
(218) 2020/09/14(Mon) 21:02:06
[お菊、お前はいつも他人の幸福の為に生きすぎたのだ。
 最期くらい己の願いを言っても罰は当たるまい。

 その願い。
 他ならぬ私も願った事。

 里の繁栄も、安寧も、案外と神抜きでもなんとかなるものだ。
 人とはそうした強かなもの。
 私の力が弱まったとて、世に在り続けられるなら構わない。


 本当に幸せにしたいと願う人間はただ一人。
 ならば、私はその人間の事だけ考え生きればいいのだ。
 ――そう、最初から簡単な事だったのだ]

 




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