浄化者 リヴァイは、メモを貼った。 (a3) 2020/11/30(Mon) 1:48:30 |
【人】 『ブラバント戦記』包囲突破作戦の折、アリン公は 最後の一人となる覚悟で戦い抜いたと云う。 物量で上回っていた彼の敗因を分析する学者らは 奇襲、準備期間、地理……と様々な要因を挙げるが、 最大の理由は“相手が悪かった事”に尽きた。 居城の広間にて捕えられた当主ジョセフは 死の間際まで皇帝を避難し続けた。 『宣戦布告を行わなかった卑怯者』 『青二才なんぞに命乞いはしない』 『貴様の様な男は卑しき魔物同然』…… (98) 2020/11/30(Mon) 9:20:59 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ しろかねの翳りがその頸を 断 つ。 ][ 父帝に剣を振りかざしたその時とは異なり、 唾棄すべき謀反人の頭は石畳に転がり落ちた。 その髪を掴み上げ、戒めの様に掲げる。 断罪とは呼べぬ二百年越しの報復だったが、 獅子がその爪と牙で一つの貴族の全てを奪い 歴史から消し去ったのは確かだった。 ] ……生まれ落ちた其の日から、 欠かさず貴様の死を望み歌い続けたが 聴こえていなかったのか? 其れは遺憾だ。 (100) 2020/11/30(Mon) 9:22:04 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 騎士団長に渡された毛皮で懐剣を拭う。 刀身には焼き焦がされた血が硬化してこびり付いている。 切り伏せた刹那に命まで燃やそうとしたかの様だ。] 加え、俺の様な男はこの俺だけだ。 ( 俺で最期にすべきだ ) [ その眼が、主君の死を見届けた敵兵をなぞる。 恐怖に竦み上がり、思わず声を上げる者までいる始末。 だが、而して屠った無抵抗の羔などに価値は無く。 ] [ 出生から将来に至る生涯の全てを火に焚べた心には、 仇敵の言葉など最早何一つ届かない。 ] (101) 2020/11/30(Mon) 9:22:53 |
【人】 『ブラバント戦記』アリン家滅亡の報せは公国諸侯にとって 十分過ぎる事実上の脅迫になっただけでなく、 其の衝撃性から遠方に至るまで知れ渡っては 異常な求心力によって各地の統治環境を狂わせた。 文字通りの火と血の雨を降らせた闘い振りは噂になり、 真の王の訪れを信じた人々が領土に溢れる。 彼をテリウス大陸全土の王と謳う者さえ居た。 アリン家が納めていた集落は『解放』されたが、 新皇帝は略奪や徴収を決して許可しなかった。 (102) 2020/11/30(Mon) 9:23:33 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム施しがあれば受け取るのは構わん。 だが、此方から要求する事は許さない。 奪い取るなど言語道断だ。 ────彼等は“今も昔も”余の民であるが故に。 ( 恐怖による支配を望んだ訳ではなかった。 とは言え、歴史書が其れを記す事はないだろう。 ……後の世など知った事ではないが。 ) (103) 2020/11/30(Mon) 9:24:01 |
【人】 『ブラバント戦記』緑樹の葉が落ちる頃には国に戻り冬に備える。 冬支度をし、暫くの平穏に息をつく事が出来るのは、 この国の深く積もる雪の功績でもあった。 同時に敵には充分な時間を与える事になる。 次の攻撃はこれまでの様には行かないだろうと、 世論も議会も721年度の計画を慎重に練っていた。 侵攻を恐れた近隣諸国から舞い込む無数の交渉。 金品や栄誉にまるで興味を示さない帝に、 女ならばと実の娘を投げて寄越そうとする王族。 仇ですらない彼等の憂慮は的外れであったが、 皇帝はいつしか供物として捧げられた女達の中から 一人を選んで妃として迎えた。 (104) 2020/11/30(Mon) 9:24:33 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 添い遂げられないと知っていて選ぶのは、 他国からの協力を得られる可能性があったから。 政略結婚など幾らでも目にして来たが、 いざ当事者となっては誰の眼も直視出来ず…… 家柄も、容姿も、振舞いも考慮はせず 唯一人悲しむでもなく、一度たりとも俯かなかった 凛々しい横顔の彼女を選んだのだ。 ] ( 選ばれた者が幸運なのか不幸なのか、 其れすら確かめるには時間が足りない。) (105) 2020/11/30(Mon) 9:25:06 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム( 選ぶ立場でありながら、誰と向き合っていても 『何かが違う』と過去に思いを馳せるなど──── 図々しいにも程があるとは解っている。 其れでも、夫婦の務めは果たさねばなるまい。 ) (106) 2020/11/30(Mon) 9:25:43 |
【人】 地名 真昼[引っ越して来る前、母さんは店の客を 毎日のように家に連れて帰ってきた。 体を売ってお金を貰う為で 僕に相手をさせることもあった。 客じゃなく、同僚を連れて来る日もあった。 前も後ろもよくわからないまま初体験は過ぎた。 相手をする頻度は次第に上がっていき 複数人まとめて、なんて日もザラになっていった。 母さんも隣の部屋か、同じ部屋で客の相手をしてた。 一度に沢山相手にした方がお金がたくさん貰えるから 僕もそれは効率的だなと思った。 客は勝手気ままに振る舞った。 ヤりながら殴られたり煙草の火を押しつけられたり ブッ飛ぶクスリを注射されたり――、 そんな非常識こそが僕にとっての常識。] (107) 2020/11/30(Mon) 9:46:59 |
【人】 地名 真昼[置かれた環境が世界の全てで 拒絶をするすべも発想もないまま完璧に順応した。 母と己が毎晩相手を変えて行っているのが 本来子を成すための行為だと知ったのは 身体がすっかり快楽を覚え切ったあとのこと。 ご飯を食べるのと水を飲むのと同じくらい セックスは日常に溶け込んでしまっていた。] (108) 2020/11/30(Mon) 9:47:09 |
【人】 地名 真昼[母さんは、お金が大好きだ。 DNA鑑定の結果と共にこの村にやってきて 僕らの世界は変わってしまった。 食べたことないような美味しい食事。 トイレと別にある泳げるくらい広いお風呂。 柔らかくてふかふかのお布団。 父と弟は、あたたかく僕らを受け入れてくれた。] (109) 2020/11/30(Mon) 9:47:17 |
【人】 地名 真昼[僕には物足りなかった。 客が帰り色んな体液に塗れてくたくたのへとへと 今日もよくがんばったねって掛けられる労いの声と 頭を撫でてくれる掌こそが親から貰える愛情。 他では、ダメなんだ。足りないよ。] (110) 2020/11/30(Mon) 9:47:40 |
【人】 帝国新聞 王城に一般市民が受け入れられることなど 何年ぶりのことだったろうか。 それほどの快挙を成し遂げたにも関わらず この若き女研究者は驕り高ぶらず、謙遜することも無く 実に慎ましく───悪く言えばネタを提供しなかった。 切れ長の青い瞳には全くと言っていいほど生命力がなく 視線は虚空を漂っているようにはっきりとしない。 「傷モノだが、顔は悪くはない」と王は絶賛していたが、 私はあの女に寒気さえ感じる印象を覚えていた。 何のために感染者を全て一夜の内に毒殺したのか。 4年も診療所を経営していながら、一体どうして。 ……彼女からは、生の気配が少しも感じられないのだ。 (112) 2020/12/01(Tue) 2:29:58 |
【人】 王室研究者 リヴァイ[「奇病の消滅を祝った宴が数日後に開かれる。」 恭しく会釈した執事はそう言って、此方に出席の返事をするようにと暗に促した。 拒否権なんて最初から存在していない癖に、いかにも相手自身の意思がそうさせたように仕向ける手法は変わっていないのか。 浮かんだのはそんな無感動な感想くらいだった。 自身を舐めるように見つめる視線から逃げるように生返事をして、与えられた無駄に豪華な客室から廊下に出た。 当てもなく歩く足取りは回遊魚のようにどこか力が抜けている。 どこまでも腐りきった国家だと思った。 自分たちのために命を捧げた少年少女に対して その献身に感謝の一つもせず、あまつさえ死を喜ぶなど。 そんな魂の抜けた人形の如きかんばせが不意に強張ったのは、もう二度と逢わないだろうと思っていた───否、“二度と逢いたくなかった”人間の声が聞こえたからだ。] (113) 2020/12/01(Tue) 2:30:17 |
【人】 王室研究者 リヴァイ 「……リヴァイ! なあ、リヴァイなんだろう? 返事をしてくれ────おい、 待て! 」[次の瞬間、踵を返して床を蹴って、彼とは反対の方向へ駆け出していた。 ハスキー・フーシャー。騎士学部兼男子寮長。 ───自身と同じ学年の、相棒とも呼べる存在だった。 彼とは故郷の話をしたことはないが、 まさか同郷だったとは思いもしない。思うはずがない! 一瞬見えた彼の翠の双眼は、酷く哀しい色合いに染まっていた。 足を止めてしまえば、きっと問い詰められてしまう。吐き出してしまいそうになる。 「万人を救う薬師になる」と言ったかりそめの夢も、それに反する数多の殺戮行為のことも、この国の終焉を辿る運命のことも───全て。] [それだけはどうしても避けたかった。これまでの計画が水の泡になりかねない。 同時に、運命の時が来てしまった時、彼でさえもこの手にかけなければならない事実に気づいてしまう。絶望の底に叩き落されたような黒い感情が溢れて止まらなかった。] (114) 2020/12/01(Tue) 2:30:41 |
【人】 王室研究者 リヴァイ[王都を没落させるからには、反乱因子は全て根絶やしにする他ないのだ。余力を残せば腐った種がまた育ってしまう。 そこにどんな善人が混ざっていようが、無垢な幼子が紛れていようが、等しく略奪を行わなければならないことが、征服者の絶対条件。 ……彼は学徒の頃から責任感に溢れ、真面目であった。 権力に唾を吐き、礼儀の欠片も無い己を叱咤し、 少しは人前に立てるように叩きなおしてくれた。 愚痴を言い合い、極稀に授業をサボる悪友であり、 生徒を束ねる立場特有の悩みも常に聞き入れてくれた。 どんな自分も否定することのない、尊敬できる存在。 汚濁の中に潜んだ、澄んだせせらぎのようだった。 どうしてこの国に暮らしているんだ、という混乱だけが募っていく。 逃れられぬ運命の歯車がゆっくりと軋み、新たな 痛 みを生み出していく。窓から覗いた月は、無情にも残り数日で満ちる事実を告げている。 済度の日取りは刻一刻と迫るばかりで留まることを許してくれない。 眠るという行為を重ねるごとに、狂気に意識が呑み込まれていく。]** (115) 2020/12/01(Tue) 2:31:05 |
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