人狼物語 三日月国


13 【完全身内村】ANDRO_ID

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視点:


【人】 AI研究  波照間 ハテマ

■秘密抜き ハテマ→アカツキ


アカツキの外見は、普通の人間と変わらない。
服の下には機器と接続するためのプラグがあるけど、それ以外はほぼ同じだ。


アカツキを作り始めたころは、スポンサーとか偉い人にどやされながら渋々やっている感じだったけれど、彼の姿が……人間と変わらない彼の姿が目の前に現れるころには、もう夢中になって作業をしていた。

早く、その伏せられたまぶたを開き、赤い瞳を見せて。
ほら、口を動かして笑うんだ。
人格? 最低限初期設定をするだけに止めておこう。
キミはまっさらで生まれて、自ら世界に触れて、自分が感じたまま振舞うといい。

寝食を忘れてアカツキをいじっていたもんだから、マツリカちゃんには随分迷惑をかけた。
手を止めようとしない僕の口元に栄養ゼリーを運んでいるところなんて、傍から見れば老人介護だよね。
マツリカちゃんもそんなことするために助手になったんじゃないだろうに。ごめんね。
(1) TSO 2019/08/30(Fri) 2:32:20

【人】 AI研究  波照間 ハテマ

心の底から30年間寝ていたい僕が、珍しく心血を注いだだけあって、アカツキは完璧だった。
既存のアンドロイドとははるかに一線を画す。
スポンサーはアカツキを欲しがったけど、僕しかアカツキのメンテができないと告げて、更に「作るならいくらでもご自由にどうぞ」とアカツキの設計書を渡したら、喜んで帰っていった。
マツリカちゃんは、スポンサーを同情の目で見ていた。
彼女曰く「あんな設計図を解読できて、更に組み上げるなんて、先生以外無理」とのことだ。
まあ……調整のたびにきったない字で書きこみをしまくって、その書き込みの方に本文より重要な情報が入っていたりするからね……。


アカツキは、起動直後でこそ少し覚束ない様子だったけど、すぐに、難なく自我を形成した。
成人男性として生きていくためと言うにはおよそ必要以上の知識をインプットしていたから、処理するのに時間がかかると思っていたけれど、そんなことはなかった。
彼は世界を観察し、自分の中に記録された膨大な情報を捌くことを、たった1か月弱でやってのけた。

その過程も記録してある。
今見ると可愛いよ。怒られるからあんまり出せないけど。
とにかく、アカツキは試行錯誤の上、少しひねくれて気が強い、しかし面倒見が良い「性格」を選び取った。


最高だ。
思った以上、いや、その上の上の上を行っているよ。
キミはきっと、僕のかわりに……。


そう、思っていたんだけどな。
(2) TSO 2019/08/30(Fri) 2:33:14

【人】 AI研究  波照間 ハテマ

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僕は、カモミールティを振舞った後片づけをしているアカツキの背後に、ゆっくり近づいて行った。
カップを洗っている手を止めて、アカツキが振り向く。

「なんだ。欲しかったか? でも起こしても起きなかったから……」
「あの……なんで……」
「うん?」
「なんで……あの怪しげな誘いに乗ったんだい……?」
「…………」
「……何か、この生活に不満がある……?」

目を伏せてぼそぼそと言う。
アカツキ、キミが欲しがるならなんだってあげるのに。
それとも、キミの願いは僕じゃ叶えてあげられないことなのかな。*
(3) TSO 2019/08/30(Fri) 2:33:38

【人】 AI研究  波照間 ハテマ

■秘密抜き ハテマ→マツリカ


科学者にとって「やる気」って重要な才能だ。
僕にはそれがない。
マツリカちゃんには、ある。

彼女はいつも、周囲にエネルギーを振りまく存在だ。
押しつけがましくはなく、愛されるかたちで、いつの間にか懐に飛び込んでくるようなやり方で。

正直、僕の助手におさまってるなんてもったいないと思う。
科学者っていうのは社交性に欠けている生き物だから、マツリカちゃんがその愛嬌で科学界の波をいなせば、どこにだって行ける。
それなのに、なんで、よりによって僕なのかな。

僕は人を育てることにかけては壊滅的に不得意だから、マツリカちゃんが僕の下についたときに、あーあと思ったんだよ。
もったいない。ご愁傷様。どんな凶縁かは知らないけど、僕のお世話役なんてツイてないね。
(12) TSO 2019/08/30(Fri) 21:01:37

【人】 AI研究  波照間 ハテマ

……それでも。
それでもマツリカちゃんは、毎日元気だった。
「可愛いさで許して!」とふざけてみせる彼女は決して道化ではなく、僕の研究室に必要な換気をもたらした。はきはきしてよく通る声とか、愛らしいオーバーリアクションとか、真摯な情熱とか、etc、etc。
僕の気ままな態度にも辛抱強く付き合ってくれる。
僕がやる気をなくして寝てしまい、ぼんやり起きたらマツリカちゃんが手配した研究道具と環境……僕に必要なものが一切揃っていた、なんてことも、1度や2度じゃない。

……んー。
うれしいんだけどね。
(13) TSO 2019/08/30(Fri) 21:02:24

【人】 AI研究  波照間 ハテマ

「マツリカちゃん、あの黄色い生き物の話は聞いた?」

アカツキの細胞修復の実験のために、3つの試験官に入れた溶液とアカツキの欠片。
それをぼーっと見つめながら、僕は、我が助手に話しかけた。

「知ってるよ……何か、頼んだんだね……」

目の前で分裂を繰り返して増殖していく細胞。
じっと、見つめる。
この、生き物にとってはあまりに原始的で当たり前の自己修復作用を、アンドロイドに搭載するのは難しかった。
……ああ、3本の試験管の中で有機体が溶けていく。
失敗だ。
儚いな。
自然が作ったものを人間の手で再現することは、こんなにも難しい。

「僕は、マツリカちゃんに幸せになってほしい……だからさ……」

無になった試験管を見つめながら言う。

「キミの願い、が、僕にとって、その……好いものだといいな……
だってそうじゃなきゃ……」


「僕は、きっと、邪魔をすると、思うから」

ああ、そうなりませんように。*
(14) TSO 2019/08/30(Fri) 21:03:20