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【人】 生贄 セレン[ けして裏切らない、 どんなときも、嘘を吐かない。 その主張を通すことも自己だとは、 未だ、認識できる域にないくらいには殺し慣れていた。 ] (287) 2019/04/09(Tue) 16:15:24 |
【人】 生贄 セレン……はい [ 夜気に侵され震える身体を忘れる程に。 けれど、傍目には震えていたらしく、 誘う声音に背を伸ばして慌ててその背を追いかけた。 外套を再び羽織るだけはして城の中へ、 長身の主とは逆に小柄の己は小走りとなって、 見たこともない城の荘厳さに息を飲むより先に。 追いついた主の一歩後ろで、片手をそっと握った。 子供が逃げ出すのを防ぐ鎖として大人に繋がれるもの。 ―――というだけではなく、 置き去りの不安を解消するための無意識の仕草で、 瞼を閉じて考え込んだ主を見上げ、それから ] (288) 2019/04/09(Tue) 16:24:41 |
【人】 生贄 セレンあの……、あなたの名を、どうか…… [ これまで幾人もの子供が城に送られたと聞いている。 その行方が不穏にも隠されているのも知っていた。 生贄として捧げられるのだから主人として扱え、と。 村ではそう言い聞かされているからこそ、 幾人もを迎えた男にとって普遍では退屈だろうと察して。 躊躇いの尾を踏みながら、彼の名を乞い願う ]** (289) 2019/04/09(Tue) 16:33:03 |
【人】 生贄 セレンなにも……何も、しません。 ただ、ぼくが……。 あなたをなまえで呼びたかったんです。 [ 夜を映す瞳を仄かに燈らせるのは、 綴る意志の欠片でもあり、感情でもあり。 怖い、死にたくない―― なによりも、もう捨てられたくない。 恐怖は未だ虫喰いのように巣食い、 その怖れがすぐに剥がれることは今はなくとも。 ] (377) 2019/04/09(Tue) 23:23:35 |
【人】 生贄 セレン[ 階段を登る――音もたてずに、その先へ。 案内される身であるから半歩後ろにはいるものの、 古城の吸血鬼に連れられる子供にしては鈍さもなく。 魅了の余韻は確かにあった。 舌は今頃痺れて舌足らずに陥って、 背も腰も熱を帯びたまま、 頬の熱は引かず白い肌を染めている。 さりとて、それに酔う様子はなく。 前の子供の部屋へと導かれて扉を開かれれば、 その広さに息を飲むくらいには自己を保てている。 そもそも個室などという発想はなく、 広いベッドに、衣装入れ、鏡、等々―― 高級品が並ぶことにも己に結び付く現実感がない。 ] (388) 2019/04/09(Tue) 23:45:52 |
【人】 生贄 セレン……あ、の…… [ 故に、困ったように立ち尽くして。 背を押されれば部屋に入りはするものの、 外套を抱くようにして、視線をニクスへ向けた。 ] (395) 2019/04/09(Tue) 23:48:09 |
【人】 生贄 セレン[ 城内の空気もまた夜の気配に包まれて、 柔い足音を響かせ、階段を上る最中に降る声に。 暫し思考を巡らせて瞬きを返した。 そういえばこんな大きな城でありながら、 城の主に傅く従者の姿が見つからない。 隠れている理由などないだろう。 それに、彼の言葉こそ己にとっては真実で、 これから自分が呼ぶ名はもう彼の名前だけ─── そう、理解して。 命令だという意識はなく、 自然な仕草で白銀の髪を揺らし頷きながら] (406) 2019/04/10(Wed) 0:55:34 |
【人】 生贄 セレンドレス…… [ 前に居た子供、に胸が痛むかといえば否だ。 他人を気遣えるほどには落ち着くはずもない現状で、 繋いだ手だけが居場所を知らせるようで未だ不安の内。 振り返る仕草を察して彷徨う視線は彼の紅眼へ。 するりと抜ける指を無意識に掴んで、 その柔らかな囁きに、やや俯きながら首を振る。 ここに居て欲しいと、縋るように横へ] (412) 2019/04/10(Wed) 0:59:23 |
【人】 生贄 セレン[ ――故に、手は繋いだまま。 自ら手離すなど過りもせず、 寧ろ、その掌に惹かれるように、 歴然とした身分差の距離を僅かに縮めて。 クロゼットの中に並ぶドレスを眺めた。 いかに小柄とはいえ男の身では、 目に余るというかなんというか無理が過ぎる。 心の天秤を傾けた先に在るのは小さな希望。 生きること以外に生まれたそれを、 言葉にするには僅かに躊躇いはあったけれど ] (417) 2019/04/10(Wed) 1:21:47 |
【人】 生贄 セレンどれも女物なので、その…… できれば、上着だけでも貸していただけたら。 [ この城に名を呼ぶような存在が、 彼の他には居ないと告げられたばかりなら。 残されたドレスでは小さく、 他に着るものは村で装飾されたシルクの夜着だけ。 生贄としての衣装がお気に召さないのは既知で、 なら、他に選ぶものがあるとするならそれしかない。 未だ手は離さずに。 肩に羽織っただけの外套をするりと落とし、 透けた絹地を晒して寒さに身を震わせる。 嘗ての虐待の傷は癒え、 村で振りかけられた花の香水だけが香る、 大人になりきれずにいる無垢さを示すように ] (418) 2019/04/10(Wed) 1:22:49 |
【人】 生贄 セレン[ 聞き分けの良いはずの生贄は、 繋いだ掌を引き寄せ、その甲へと唇を触れさせた。 敬愛とするには熱めいて 親愛とするには戸惑いの滲む ささやかな接触を手袋越しに ]** (422) 2019/04/10(Wed) 1:34:21 |
【人】 生贄 セレン[ ふたり。そう、今はふたりきり。 柔らかな足音すら響く城内にたったふたり、 だからこそ怖いなんてどんな言葉を綴れば通じるか。 人がいないから怖いのではなく、 手を繋いだ主が夜の怪物だから怖いのでもなく。 その場から放り出されることが怖いだなんて、 だから手を繋ぐのだなど言葉を織っても伝わるまい。 肩に掛けられた上着の重みに安堵するなど、 置き去りの生贄に慣れているだろう彼にはきっと ] 綺麗に、してきます。 [ 退屈を癒すだけの玩具だろうか、今は。 それとも、己は何か興味を引かれたのだろうか。 薔薇の香りに包まれ上目遣いで見上げるも、 反応は僅かに瞼が震えるだけで怒る様子はなく。 寧ろ、空気を揺らして笑う彼に ] (470) 2019/04/10(Wed) 20:23:23 |
【人】 生贄 セレンぼく、は…… [ 何がしたいかと問われて、瞬く双眸の光は淡く。 頑なに夜だけを映す異色の彩を緩ませれば、 視界に映る主の蠱惑にこれ以上揺らぐこともなく。 頬を撫でる仕草に、そっと柔らかな吐息を絡め、 直に触れてくれればもっとこの冷たさを温められるのに。 そう考えながら稚く髪を揺らし、緩く頷いて ] (471) 2019/04/10(Wed) 20:27:26 |
【人】 生贄 セレンニクスさまの役に立ちたい…… でもぼくに何ができるか、分からなくて。 [ 捨てられたくないから、ではなく、 羽織らされた上着の重みに引き出された安堵を綴る。 魅了の余韻であるふわりとした物言いも落ち、 浮かび上がった言葉をただ素直に、真摯に ] (472) 2019/04/10(Wed) 20:28:29 |
【人】 生贄 セレンぼくの番だと知らされてから、たくさん学びました。 文字の読み方、書き方、楽器の奏で方、歌い方。 夜伽も出来るように教わってきたけれど、でも…… [ 吐き出す吐息は細く不安定で、 撫でられていた頬だけが赤いまま。 掌を繋いでいた手指は自然と剥がれて主へと伸びた。 何処にも縋らず、掴みもせず、ただ胸板に添えるだけで、 手離されても大丈夫だと自らに言い聞かせるように ] (475) 2019/04/10(Wed) 20:33:39 |
【人】 生贄 セレンあなたの退屈を、 ……空腹を満たすことではなくて退屈を埋めるには。 何を……出来ることを、してもいい、なら。 [ もう一つ、村で聞いた生贄の子供の用途があった。 古城の怪物は人の血を啜って枯らす悪い化け物で、 それを恐れ、この豊かな土地には他に村が成り立たない。 子供を差し出すことで村の豊穣の独占は続く。 つまりは行き場のない生贄の最後は戻ることではなく、 この主に食われることなのだろう、きっと。 なら、この願いもきっと、自己の発露に近いと信じて ] (476) 2019/04/10(Wed) 20:49:53 |
【人】 生贄 セレン湯浴みは、されませんか。 一緒に……背を、流します……から。 [ 胸に添えただけの掌は知らずに動いて、服を掴んで。 小さくなった声音で、そっと懇願を囁いた ]* (477) 2019/04/10(Wed) 20:51:35 |
【人】 生贄 セレン[ 唇の動きを読むかのように視線をそこへ。 紅眼に囚われ動けない愚かな子供はおらず、 目許を染めて酔いはすれどその言葉を素直に聞く。 諭すような口調に罪悪感を育てる意はないのか、 問い掛けに続く言葉に棘もなくゆるりと首を横へ。 帰ってきた子供たちからの情報など無きに等しく、 口減らしに子を売るのが普遍な時世に、 用済みの行く末がどうなるかは想像に難くない ] (522) 2019/04/10(Wed) 23:17:32 |
【人】 生贄 セレンごめんなさい。 [ 湯浴みもそのひとつ。 媚を売るための術として詰め込まれた知識でも、 慰めや退屈を埋める一石になるのなら―― 冷たい指を温めて少しでも近付ければ、 今宵の時くらいは彼を満たすことが出来るかも。 そんな稚い発想は優しい声音に打ち砕かれて、 ほんのり声を沈ませて、素直に謝りながら ] (523) 2019/04/10(Wed) 23:18:25 |
【人】 生贄 セレン教えられたときは、生きる為に。 今は、ニクスさまの為……です…… [ 捨てられ、裏切られ、挙句に捧げられ、 要らない子供だと言外に位置付けられた自分へ、 退屈を癒せば居場所をくれると囁く主に。 少しでも、僅かだけでも届けば。 契約の楔が撃ち込まれたことを意識してはおらず、 ただ、己にも出来ることがあるならばと手を伸ばしただけ。 未だ、距離感を測りかねて届かない願いだったけれど。 それでも意志は見せるべく俯きがちの顔を上げて ] (524) 2019/04/10(Wed) 23:21:09 |
【人】 生贄 セレンこわいです。 独りは、もう嫌で…… [ それは、孤独の意味を知る寂寥を滲ませる声音。 けれど言葉とは裏腹に、灰と蒼の双眸を紅眼に捧ぐ ] (525) 2019/04/10(Wed) 23:31:56 |
【人】 生贄 セレン一緒に、居させてください。 [ 生贄として捧げられて、ものだと言い切った影はなく。 足元の不安定さに怯えて震えはすれど、 掴んでいた服を自ら離し、一歩後ろへと下がる。。 両手は羽織るに大きい彼の上着へ。 袖が長くて指先しか出ない大きさに苦心しながら、 どうにか頭を下げるに邪魔にならないよう抑えて。 ぺこんと髪を揺らし下げてみたものの案の定、 借り物の上着は肩から落ちそうにもなっている。 まるで滑稽な人形劇にしか見えないだろう。 実際、村出来せられた絹地もすぐに脱ぐと目されて、 危ういことこの上ないのを必死に留めていた ] (526) 2019/04/10(Wed) 23:35:17 |
【人】 生贄 セレンあなたを知るためにも。 そばに……いたい、です。 [ 風呂はひとりで済ませるにせよ、。 その後を心配する一言は、どうにも自信なさそうに。 おねだりのように甘くはなく、 懇願のようにただただ必死でもなく。 ぎこちなく表情を崩してみせながらいい添えた ]* (527) 2019/04/10(Wed) 23:44:04 |
【人】 生贄 セレン……はい。 [ すん、と鼻を鳴らし、滲もうとする涙を留めた。 死ぬのも、ひとりも、恐ろしい。 けれど古城の主が怖いとは思えずにいるのを、 内側へと呑み込み、大人しく頷きを返して ] (557) 2019/04/11(Thu) 0:55:08 |
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