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【人】 人造生物 ユスターシュ――…待って!待ってください!! [咄嗟に女に声をかける。 その声が聞こえたか、暗闇にぼぅと白く浮かぶ女の顔が ゆっくりと此方を振り向いた。] 『…ユ……シュ……』 え…? 『ユスターシュ…!』 [名前を呼ぶのと同時に、女は此方に駆け寄って僕に縋りつく。そのやせ細った腕の何処にそんな力があるのかと思うくらい、強く強くしがみつかれて] (55) 2022/11/30(Wed) 20:42:30 |
【人】 人造生物 ユスターシュ『ごめんなさい…ごめんなさい……!! ずっと謝りたかった、貴方に謝りたかった!! 愛してたのに!愛して、いたのに……!!』 [影街の暗夜の通りに、ただ女の啜り泣きが響く。 僕に縋りつきながら譫言のように綴られる声にはもはや正気の色はない。 ただ、悲嘆と悔恨が入り混じった泣き声に、僕は身動きが取れなくなってしまった。] ……貴方は…。 [こんなことって、あるんだろうか。 もしかしたら、と思うことはあった。 この街にくれば会えるかもしれないと。 会ってみたいと思うことは確かにあったけれど…でも、本当は怖かった。 主様を裏切り、陥れたという彼女に出会ってしまったら あのときのような黒い気持ちに飲み込まれてしまいそうで恐ろしかった。 今度こそ、主様の望んだような生き物になってしまいそうで苦しかった。 だから、心のどこかで彼女や、彼のことを考えないようにしていた。] (56) 2022/11/30(Wed) 20:43:37 |
【人】 人造生物 ユスターシュ[だけど、目の前の女が僕を見て、主様の名前を呼んで。 そして、口にしたのは謝罪だった。 …訳が、わからなかった。 とはいえ、このままじっとしているわけにもいかなくて。 少し思案した後、しがみつく彼女をどうにか制して 影街近くの移住区にある安宿に滑り込む。 その安宿の主人と思しき老人は、ちらりと僕と女を一瞥した後、 手にしていた新聞に視線を戻して、一言呟いた] 『その女はやめとけ。 どの途長くは持たないし、面倒なことになるだけだ』 [どういうことかと問いかければ。 嘆息と共に老人は女の素性について教えてくれた。 女が嘗てはこの街一番の劇場の花形女優だったこと。 男絡みのトラブルがきっかけで酒と薬に溺れ、パトロンだった男からも見放されて影街にやってきたこと。 此処に流れてきたときには既に病に犯されていて、もう長くは持たないこと。それでも時々体調が良い時は昼夜問わず歌いながら辺りを徘徊しているのだ、と。] (57) 2022/11/30(Wed) 20:44:11 |
【人】 人造生物 ユスターシュ[結局、その夜は老人の宿に一泊させてもらうことになった。 そうして翌朝、老人に教えられた女の家へと向かう。 荒れ果てた小屋のようなその家には、藁を敷いたベッドの外には家具らしい家具も殆どなくて。これが、嘗てこの街一の花形と謳われた女性のものかと、なんとも言えない気持ちになる。 そっと彼女をベッドに寝かしつけたところで、ふとベッドの下に何か箱のようなものが隠されていることに気づく。 手を伸ばした先にあったのは、部屋に似つかわしくない上質な造りの、やや大きめの宝石箱。 ベッドで眠る彼女の顔をそっと一瞥してから、鍵のかけられていないそれを開けてみた。 …中に入れられていたのは、小さな銀貨と青い石の嵌められた白金の指輪。 美しい刺繍の施されたやや古い絹のハンカチ、銀と真珠のブレスレット。 少し無骨なピン留めと―――やや分厚めの封筒。 封筒の中に入っていたのは、束の間、正気を得たときに書かれたものだろう、女の絶望が綴られた手紙だった。>>50>>51] (58) 2022/11/30(Wed) 20:46:55 |
【人】 人造生物 ユスターシュ[手紙を読み終えたとき。 …確かに、悲しくはあったのだけど。 でも、それ以上に胸に去来したのは安堵だった。 ――…よかった。 主様は裏切られていなかった。 一人ぼっちではなかった。 ……主様の大事な人を、殺さなくて本当によかった。 主様たちに、思うところがないわけではない。 それでも、今はただ。 ベッドで寝息を立てる彼女に寄り添うことを選んだ。] (59) 2022/11/30(Wed) 20:47:59 |
【人】 人造生物 ユスターシュ[それから一週間。 僕は彼女の傍に寄り添った。 店主さんに貰ったお金を遣り繰りして、パンや生活に必要な品物を買い揃える。 それでも足りなければ主様の地下室から持ち出した宝石類を売りに出して。 部屋を掃除して、清潔なシーツをベッドに敷いて。 なんとか食べられるものを作って匙で掬っては彼女の口に運ぶ。 僕と出逢ってから、彼女は見る見るうちに弱っていった。 一度ベッドに寝かせて以降、彼女はベッドから起き上がれなくなっていた。 立ち上がることも、身体を起こすこともできないまま、ただ、ぼんやりと歌を唄って、主様の名前を呼んで何かを思い出したように微笑うだけ。 あの夜、主様と同じ顔を見て、謝罪を口にして。 そうして、心残りが消えて安堵してしまったのかもしれない。 …そう思うのは、僕の命も決して長くはないからか。 彼女と出会って、一週間経った日の午後。 彼女…ドナータは、自室のベッドの上で眠るように亡くなった。] (60) 2022/11/30(Wed) 20:49:50 |
【人】 人造生物 ユスターシュ[死に顔は、穏やかなものだった。 年齢で言えば決して若くはない。 嘗ては美しかっただろう容姿は酒と薬でボロボロになり、 手も足もやせ細り、頬もこけて瞳も落ちくぼんでいたけれど 文字通り転寝をしているみたいな穏やかな顔だった。 その安らかな表情は、どこか無邪気な少女を思わせるもので。今更ながらに、主様が愛した女性の面影を彼女に見ることになった。 彼女を看取った後、どうにか安宿の老人に頼み込んで居住区の共同墓地に埋葬してもらうようお願いした。 彼女…ドナータがただ、名も無き影街の住人として存在を忘れられてしまうのが、嫌だったから。 彼女の棺に嘗て主様が贈った品物を共に入れて。 彼女が、主様と同じ場所にいけますようにと祈った。 主様も、僕が行くより愛し合った彼女に一緒にいてもらったほうが、きっといいだろうから。] …。 (61) 2022/11/30(Wed) 20:51:33 |
【人】 人造生物 ユスターシュ―― ジョスイ邸にて ―― [向かったのは、主様の嘗ての親友が暮らす屋敷。 屋敷の前までやってきて、当然のように門番に止められれば。] この家のご主人にお伝えください。 僕の主…『北の賢者』が借りていたものを返しに来た、と。 [そう門番に告げて小さな包みと封筒を門番に託そうとする。 包みの中身は、嘗て賢者が剣王より借り受けたピン留め。 北の地で互いに背を預け、共に此の地へやってきた 掛け替えのない親友から借りたもの。>>41] (63) 2022/11/30(Wed) 21:38:48 |
【人】 人造生物 ユスターシュ[もう一つの手紙には、差出人こそ書かれていないが賢者が愛したドナータが影街で息を引き取ったこと。 数年前に賢者が遠い地で命を落とした経緯について事細かに記されていた。] 『――貴方を許せと言われたら、それはできない。 ですが、僕は貴方に復讐するつもりはないし、 貴方を害そうとも思いません。 この街に来て、僕は色々な人や物を見てきました。 その中には貴方に支えられてここまできたという人もいました。>>48 僕は、貴方の人となりを全く知りません。 主様は、貴方のことを強欲な人だったと記していました。 でも、その強欲さがこの街に活気をもたらしたこと、 そして、貴方の強欲さに掬い上げられた人たちがいたこと 僕は僕自身の目でそれを見てきました。』 (64) 2022/11/30(Wed) 21:39:55 |
【人】 人造生物 ユスターシュ『主様の命に反しますが、僕は、復讐を望まない。 人間は、一人だけでは生きていけなくて。 誰かの命が失われるということは、 その人に連なる誰かが悲しむということだから。』 [主様が殺されたとき。 ドナータが息を引き取ったとき。 あのとき感じた張り裂けそうな悲しみや苦しみを、他の誰かに感じてほしくない。 それは、僕の願い。 僕自身が生きて、この街で生きる人たちに触れて思ったこと。 主様の親友にとって『美』こそが己の全てを賭して全うすべき道だというならば。 復讐を選ばない、誰かを悲しませないことが僕にとって選ぶべき道だ。] (65) 2022/11/30(Wed) 21:41:33 |
【人】 人造生物 ユスターシュ『貴方が突き進んできた『美』を貫く道に 破滅させられた人もきっとたくさんいたと思います。 僕の主様やドナータのように。 でも、貴方の『美』への姿勢に掬いあげられた人、 救われてきた人、貴方を愛した人だって きっと同じくらいいたのではないかと思います。 あらためてほしい、とは言いません。 だけど、時折でいいから自分の進んできた道を省みてほしい。 貴方の人生に関わった人たちに思いを馳せてほしい。 そして、そのなかに貴方を愛する人がいたならば ――どうか、その愛を大切にしてあげてほしいです。』 [もし、この手紙を読んだとして。 彼がこの言葉に耳を傾けてくれるかはわからない。 それでも、なにかしら石を投じたかった。 僕にとっての大切な人を、忘れないでほしかった。 彼に向けられた愛が切り捨てられることのないよう、願った。 そこに関して杞憂なのは知る由もないけれど 何れにせよこの手紙が屋敷の主の許に届く頃には、 包みと手紙を持ってきた者は既にその場を後にしているはず]* (66) 2022/11/30(Wed) 21:42:21 |
【人】 影街の魔女 ブランシュー後日 ヴンダーカマーー フェスが終わり、数日も経たないうちに影街はいつもの通り淀みの中に沈み、魔女はいつも通りの生活に戻る。もうずっと、この街の誰も生まれていなかった頃からそうだったように。 店を訪れる者がいれば、魔女はいつも通り応対し、多少馴染みの顔があれば少しは深い話も交わすだろう。 「久しぶりね。顔は覚えているけれど、少し感じが変わったかしら。前に来たのは…いつだったか。 私?私はいつも通り。客にはあれこれと言われるけれどね。 女神とか…悪魔とか…ねえ。 そりゃ若さはいただくけれど、私は別に善でも悪でもないのよ。あるのは善い客と悪い客… いえ、正確には善い取引と悪い取引かしら? 人間ってのも色々よね。 奇跡みたいなことを願うのに、寿命もかけられない程度の気持ちで軽々しく頼んでくるなってのよ…」 (67) 2022/11/30(Wed) 22:17:40 |
【人】 影街の魔女 ブランシュ「この間もね、どこぞの富豪のお嬢さんが来て、永久に続くような白さを頼んだから叶えてあげたのに、後であれこれ難癖つけてきて… しょうがないから私も折れて、改めて叶えてあげたけどね? 風雪にも色褪せずむしろ一層増す、永遠の美白ってやつを。」 (68) 2022/11/30(Wed) 22:19:18 |
【人】 影街の魔女 ブランシュ「ま、この街も色々あるし、多少落ち込むこともある(?)けどね。私は元気です。 考え方は色々あるだろうけど、私はいい女が一番美しいと思うのよ。 どんなって?…他人に依らず輝き続けられること…かしら。 まあ、他人の若さに頼ってる私が偉そうに言えることでもないんだけど。 ま、妹みたいに世間を離れればいいんだろうけど、それはつまらないものね。私は飽きるまではここでずっといるつもり。 …さて、何かお望みはあるかしら。 よーくくよく考えて取引に来てくださいな。 返品はきかないのだもの。 限られた命、大切にしなければ、ねえ?」 魔女はそうして、ずっと楽しそうに話していた。 (69) 2022/11/30(Wed) 22:19:44 |
【人】 影街の魔女 ブランシュ…それとは全く関係ない話だが、街から遠く離れた渓谷の底で、ある冒険者が一体のスケルトンを見つけたが、武器も持たず、襲ってくる様子もなく、ただ一体で彷徨するだけであったため何もせずに去った。 冒険者はコスタの酒場でその話をしたが、日々舞い込む美の話にすぐに忘れ去られ、スケルトンは今も谷底を彷徨い続けているのだという** (70) 2022/11/30(Wed) 22:20:06 |
【人】 大富豪 シメオン[真夜中、イルムが寝入ったころにベッドから抜け出した。 水を持ってくる様に使用人を呼ぶと、水と共に一通の手紙と包みを持ってきた。そしてその差出人の名を聞いて男は薄笑みを浮かべた。 男は知っている。 かつての親友がとうに死んだことを。 復讐に囚われ自分すらも見失うほどの怒りと憎しみを携えていたことも。 いつかその炎が己を焼き尽くしにくるのだと予感していたが。 どうやらその予感は外れたらしい。 男はランプに火を灯すと、その炎で手紙を焼いた。 たったの一文字も目を通すことなく。 本当は生きていたのか、それとも偽物か、男にはどちらでもいいことだった。そしてこの手紙が本物なのかそうではないのかも。] (71) 2022/11/30(Wed) 22:44:09 |
【人】 大富豪 シメオン……過去の亡霊に用はない。 [そう口にした言葉とは裏腹に、男は一抹の寂しさを感じてながら、灰となって消えるそれをただじっと見つめていた。*] (72) 2022/11/30(Wed) 22:44:54 |
【人】 人造生物 ユスターシュ―― 後日譚/街の何処か ―― [主様の親友に手紙を渡した日の夕暮れ時。 この数日間ですっかり好きになった馴染みの宿屋の屋根の上。 陽が傾き始めて遠くの海が柑橘類の色に染まるのを見つめていた。] …。 [――歌いたければ、またいつでも呼ぶといい>>0:225 あの日、彼はそう言っていたけれど。 今は、大丈夫だろうか? 今は歌いたいというのとは少し違うし、もしかしたら忙しいかもしれないけれど。 ただ、彼にお願いしたいことがあったから] (74) 2022/11/30(Wed) 23:50:13 |
【人】 人造生物 ユスターシュ――…ファントム。 聞いてほしいことがあるんです。 [この街の神出鬼没な彼の名を呼んだ。] [果たして、彼は現れてくれただろうか。 もし、姿を見せてくれたならば] 今晩は。突然呼び出してごめんなさい。 それと、来てくれてありがとうございます。 [嬉しいけれど、それと同時に少しだけ胸が痛くて 浮かべた笑い顔ははにかむような、微苦笑めいたもの。] (75) 2022/11/30(Wed) 23:51:08 |
【人】 人造生物 ユスターシュえっと、今日はお願いがあって貴方を呼んだのですが どこから話せばいいのか。 えっと……僕、人間じゃないんです。 [そこから話すのは自分が何者であるかと、この街にやってきた理由。 残りの寿命も恐らくあと幾日もないだろうこと。 そして。] あのとき、話しかけてもらえて嬉しかったです。 一緒に歌を歌えたこと、忘れられない思い出になりました。 本当に、ありがとうございました。 [この街で優しくして貰えてうれしかったことへの感謝。 一通り前提を話し終えれば既に日は沈みかけていて。 橙から深い藍へと空は目まぐるしく色を変えていく] (76) 2022/11/30(Wed) 23:52:58 |
【人】 人造生物 ユスターシュそれで、お願いなんですが。 …僕が持っている賢者の石と魔法具を 貴方に受け取ってほしいんです。 [言いながら、自分の左腕を胸へと添えると そのまま徐に身体の中へと腕を沈ませる。 まるで水の中に潜るように左腕は身体の中へ入り込み、 そうして次に腕を取り出したときには、 心臓ほどの大きさの赤く輝く石が左腕に握られていた。] (77) 2022/11/30(Wed) 23:55:04 |
【人】 人造生物 ユスターシュ僕は…、この石の力も、主様がくれた力も うまく使いこなせなかったけれども。 貴方なら、この力を街の人たちのために 使ってくれるんじゃないかって、 そう、思ったから…。 [勿論、賢者の石や魔法具たちをどう使うかは譲った彼次第。 だけど、彼はこの力を決して悪いようにはしないだろうと 短い時間なりに彼と接してそう、思ったから。 このまま自分の命が尽きて、主様が遺した物が 見知らぬ誰かに渡ってしまうよりも、誰かに託したい。 叶うなら、僕が信頼できる人に。]* (78) 2022/11/30(Wed) 23:55:27 |
【人】 「怪人」 ファントム―― 後日譚/街の何処か ―― 「――いつ呼んでくれるかとわくわくしていたよ。」 彼の呼びかけに応じて、その背から声を掛ける。 礼を告げる声には、「なんの」とだけ片手を振り応じた。 (79) 2022/12/01(Thu) 0:25:19 |
【人】 画術師 リュディガー[目を覚ましたのはどれくらいだったか。けっこう長い間、こうしていた気がする。起きあがろうとしたが強い倦怠感と異物感によって阻まれたので、そのまま横たわっている事にする。] …………すっごかった………… [芸術家として貴重な経験であったし、「女」としてもなんだか沢山階段を登ってしまった。 それに、やっと。 探し求めていたものが見つかったのだ。 空虚な自分に足りなかった、「美しいもの」を手に入れる事ができた。 これからけして離さない様にしようと、静かに決意する。] (80) 2022/12/01(Thu) 0:25:43 |
【人】 「怪人」 ファントム―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※― 「なるほど、事情は把握したよ。 ――だが、その頼みは聞けないね。」 彼の左腕を、彼の胸の中へと押し戻す。 自分は自由を愛し、迷える魂にのみ味方する。 自分のやりたいように振舞う。 誰かを救って回るなど、まっぴらごめんだ。 「それはそれとして、私も君に相談があってだね。 私の屋敷には働き手がいなくてね。 『彼女』はよくやってくれているが、ブラック領主だパワハラ仮面だなどと、心にもない事を言われてね。 私もなんとかせねばならんという訳だ。 ――それに、君とならリリーも打ち解けてくれるだろう。」 元々、自分と契約して働ている魂たちには必要最小限の労働を申し付けているだけだ。 彼らが心残りに決着をつけ、主の御許と昇るまで。 その間を取り持っているだけにすぎない。 そのせいでイルムヒルトの母には、随分無茶をさせてしまっている。 (81) 2022/12/01(Thu) 0:26:08 |
【人】 画術師 リュディガー[暫くして店の主人の姿を見かけた。流石に気恥ずかしくて、目を合わせる事は出来なかったけど。] お、おはよう〜……色々と、ありがとう…… 好き。 [もっと色々言いたい事はあるはずなのに、最初に出た言葉はこれだった。 それから寝ている間に画材道具の所在をどうしたか、着替えはどうするのか質問したのち、魔女が今どうしているかを尋ねるだろう。]* (82) 2022/12/01(Thu) 0:26:36 |
【人】 「怪人」 ファントム「――君には身体を捨て、魂となって私の元で働いて貰いたい。 労働条件は…そうだな、 『その石と魔道具をより多くの人の為に使う事』 嫌とは言うまいね?嫌と言っても連れて行く気まんまんだが。 安心しなさい、君は私と初めて出会った時から立派に 『人間』 であったよ。――早いところ、私の屋敷に帰ろう。 リリーにも、『彼女』にも君を紹介しなくては。」 くるりと踵を返して、自らの屋敷へと歩み出す。 彼がどのように選択するかはわからないが、もしついて来てくれるなら、屋敷の住人が1人増えた事だろう。* (83) 2022/12/01(Thu) 0:26:47 |
【人】 「怪人」 ファントム―それからの話― 彼女が「私だけの舞姫」となってから、随分と経つ。 彼女が舞うたび、私は舞の虜となる。 そして、私は彼女の舞に負けぬよう、声を響かせる。 立派な劇場でも豪華なステージでもない、ただの街中の路地や少し開けたスペース、そこで私達には十分だった。 ――今宵もまた、街のどこかで怪人の声が響く。 彼だけの舞姫の為に、強く、のびやかに歌い続ける。 (84) 2022/12/01(Thu) 2:35:51 |
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