【墓】 1年生 工藤美郷──回想・夢の中── [工藤は夢と現実の間を行き来した。 とろとろとまどろむ中で、悲痛な叫びを聞いた>>5:20。] ………………。 [工藤は夢の中に立つと、倒れこんだ松本先輩を見下ろしていた。 虫のように縮こまったまま、死のうにも死にきれず、殺してくれと繰り返している。>>5:32 あたりにはむせかえるような林檎の匂いが漂って、どろりと濡れたナイフが落ちていた。] ……………………。 [工藤はかがみこんでナイフを拾う。それは手に取ることができた。 ナイフは二つに分裂する。床に落ちたままのものと、工藤の手におさまるものと。 そうして、彼の頭の傍にかがみこむと、喉元に刃を押し当て、引いた。] (+42) 2022/09/12(Mon) 20:58:46 |
【墓】 1年生 工藤美郷[くぱ、と皮膚が裂けて、断面が露になる。深く血管と筋肉を傷つけて、命の管を絶つ。 体液が勢いよく噴き出して、工藤の顔を、スーツを汚す。 そのまま気道を確保するように、顎を持ち上げた。 より多くの体液を外に逃がそうと。 だが、すぐに傷は塞がった。 工藤はもう一度喉を切りつけると、今度は頭を抱え込む。幼子をあやす様に。 心臓の鼓動に合わせて、びゅくびゅくと体液が吹きだす様を、瞬きもせずに見つめていた。 やがて小泉先輩たちが駆けつけて、必死に介抱を始めた。 工藤にも首の傷にはまったく頓着することなく、ただ腹の傷だけを癒している。 彼らが必死に手当てをして、励まし続けている横で、工藤は何度も喉を切りつける。 何度も、何度も、切りつけていた。]* (+43) 2022/09/12(Mon) 20:59:43 |
【墓】 1年生 工藤美郷──また夢の中── [次に気が付いた時には、厨房に立っていた>>107。手には、武藤先輩からもらったお見舞い品を持っていた。 小泉先輩がいた。何かを作ろうとしているのか、粉を計量している。 工藤は秤の目盛を見た。それからもらったレポート用紙を広げると、何やら書き込み始めようとして、] …………………………。 [一瞬、じっとレポート用紙と筆記具を見つめた。無表情のまま紙面を何度かさすり、] …………………………………。 [また黙ってメモを取り始めた。 部屋の温度計を見た。湿度を見た。オーブンの温度を見た。 生地に触れて弾力を確かめた。 何も言わぬまま、ただ小泉先輩の手元を、環境を観察していた。]* (+45) 2022/09/12(Mon) 21:31:44 |
1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (c10) 2022/09/12(Mon) 21:42:39 |
【墓】 1年生 工藤美郷──病院・いつか目覚めた時にうろうろ── ………………。 [工藤はよろよろと起き上がると、寝台から足を下ろした。 服装は普段来ているパジャマ姿だった。家族が持ってきてくれたのだろう。 大きく痛む場所は無いが、病室から出る時にやっぱりおもいっきり脛をぶつけた。] ……………………。 [しゃがみこんでしばらく脛をおさえる。 それから、パジャマ越しに足を数度撫でると、少し荒々しくパジャマの裾をめくった。] ………………………………。 [美術館に入った時にできたでっかい痣は、湿布に守られることなく、むき出しになっていた。 工藤は長いこと、自分の足を見つめていた。]* (+47) 2022/09/12(Mon) 21:58:14 |
【墓】 1年生 工藤美郷……………………。 [小泉先輩の悲観的な独白>>5:118。彼が特別展の絵に愚痴を吐きに行っても、もはやその絵は意思を宿さない。だからその場所にいる人が掬えばいい。 存在しない工藤は一言も発することなく、じっと林檎を見つめ続けた。その間も喋っていたならば、幾度も”普通”と繰り返す林檎を。 その林檎が誰の意思を表しているのか、工藤には知る由も無い。 小泉先輩が出て行っても、工藤はそこに留まった。喚く林檎と二人であり続けた。 そうして、数分後。右足を振り上げると、勢い良く踏みつぶした。 林檎は跡形も無く消える>>5:123。辺りには濃厚な林檎の香りが立ち込める。] ……とても臭いです。 [全くすっきりしなかった。]* (+53) 2022/09/13(Tue) 6:30:21 |
【墓】 ??? 工藤美郷──閑話・工藤‘── [特別展の絵は最早しゃべることは無い。 朝霞の生み出した絵も、動き出さない。>>5:+30 けれど朝霞には彼女の声が聞こえるのだろう>>5:+40。絵そのものが独自の自我をもって動き出すことは無くとも。 朝霞の中の女は、朝霞の理想が投影されて、少しずつ変容していく。 彼女が最も欲する言葉を、違うことなく口になる。自我を持つ生者の身では叶わぬこと。 朝霞は自らの本音を、彼女の口を借りて探しているのだ。 女は何も答えることなく、ただ朝霞の絵の中に在る。 だから、見栄も建前も虚勢も、何もかもを取っ払って話しかけられる。 それが、死者の持つ力だった。]* (+54) 2022/09/13(Tue) 6:42:34 |
1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (c13) 2022/09/13(Tue) 6:46:51 |
1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (c14) 2022/09/13(Tue) 6:47:29 |
1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (c17) 2022/09/13(Tue) 19:59:08 |
【墓】 1年生 工藤美郷誰かが私のために何かをした時。 なんか落としたものを拾ったとか、こけたときに支えてくれたとか、そういうことしてくれた相手には「ありがとう」って言うと言い。 私が嬉しかった時か、自分に利があったと感じれば。>>4:68 [看護師にはおそらく怪訝な顔をされただろうか。工藤は気にするそぶりも見せず、看護師とじっと見つめ、「ありがとう。」と言った。それから武藤先輩のことも見上げると、] 武藤先輩が看護師を連れてきました。ありがとう。 [黒目を動かすことなく言った。 それから、しばらくの間黙り込んだ。 LINEの件を言われて>>+61、こう答えた。] 小泉先輩が私に利があることをしたので、今ここに居るのは私です。 小泉先輩にはお礼を言いませんでした。そしてもう会わないかもしれません。 [抑揚無く、事実をなぞらえた。会話のテンポを掴むのが遅く、移り変わった話題についていけない。自然と流れを掴むことができる武藤先輩には、一瞬理解できなかったかもしれない。] (+76) 2022/09/13(Tue) 20:39:13 |
【墓】 1年生 工藤美郷[特に小泉先輩の話題を続けるわけでもなく、LINEの話題に追いつく。] 他に怪我とかないか。 ありません。 [LINEには確かに連絡が来ていたが、返事はしていなかった。 それからなぜかどや顔の先輩を見上げて] どうだろう。 [言いながらもLINEを開いた。] 『武藤先輩が「脛が痛いですね」って返すのはどうだろうと言いました。 松本先輩は以前、親父ギャグのことを「年老いたおっさんは思ったことを無意識に口にしちまうらしい。それがオモロでもおもろくなくても」と言っていました。』 [悪意はない。]* (+77) 2022/09/13(Tue) 20:40:03 |
【墓】 1年生 工藤美郷[それをじっと見つめると、大きく口を開けてかぶりついた。] ………………………………。 [まだ熱い、ゆるいカスタードクリームが、断面から溢れそうになる。 工藤は無言で咀嚼しながら、立ち上がる湯気を見つめた。 その香気を嗅いだ。 パンを半分に割って、生地のちぎれる弾力を感じた。 冷めていくにつれて硬くなるクリームの流動性を確かめた。 咀嚼して唾液と混ぜ合わせ、パン生地がまとまっていく速度を数えた。 呼吸と共に鼻腔を抜ける香りを確かめた。 鋭敏な五感を全て使って、小泉先輩の作ったクリームパンを観察した。 一つを食べ終わると、もう一度手に取った。 そして同じことを繰り返した。 同じクリームパンでも、今度はもっと冷めていたから、一度目とは全く違う味だった。 食べるたびに違う味になった。 その記憶を体に刻み込んだ。] (+86) 2022/09/13(Tue) 21:43:47 |
【墓】 1年生 工藤美郷[やがてパンはレストランに運ばれて、お絵かき大会が始まる。 チョコペンで個性豊かなネコチャンが出来上がっていくのを、じっと見つめていた。 ちなみにこの作業は工藤もやったことがある>>5:172、数少ない特技だ。 規定量ぴったりで顔を描くのが得意だった、だがあまりにも判で押したように同じ顔に仕立てるので、面白みに欠けるネコチャンズだと不気味がれらることもあった。 しばらくは和気あいあいとお絵かき教室をしていたが、やがて沈鬱な空気になる。 黒崎先輩が、工藤には無い魔法を使って、松本先輩の心を言い当てた。>>204 いつからか、朝霞さんや武藤先輩も集まっていただろうか。もしかしたら夢から弾かれた生者たちは、幾重にも夢の境界にはまりこんで、姿が見えないかもしれなかった。 工藤はじっと松本先輩を見つめていた>>5:210。] ……………………。 [何も言わずに、ただ真っ黒な目で見つめ続けていた。]* (+87) 2022/09/13(Tue) 21:44:19 |
工藤美郷は、レストランに留まった。 (c19) 2022/09/13(Tue) 21:56:10 |
【墓】 1年生 工藤美郷──病院・病室に朝霞さんが来た>>+72── [工藤の怪我はせいぜい痣ぐらいで、それも事故由来ではなく事故前にコケたあれだ。 LINEでは病室を訪れるという連絡は事前に来ていたから、行違うことはなく。 ちなみに完全に後出しだが、工藤も目覚めてから朝霞さんの病室を訪れていただろう、おそらく朝霞さんは寝ている頃だっただろうし、親戚だか従業員だかに阻まれて病室には入れなかった。 入り口で『朝霞さんには夢の中で記憶の混濁が見られました。頭の精密検査を受けることをお勧めします』とウダウダ主張していたら追い返された、頭の検査は工藤がやられた。 話を戻そう。] はい。まずはお怪我、大丈夫です。 [それから工藤はじっと朝霞さんの目を見つめ、黙って彼女の話>>5:+73を聞いていた。 体の向きを、朝霞さんが話しやすいように変えることも無く。 穏やかな眼差しで話を促すことも無く。 ただ、観察しているようにしか見えない瞳を、絵の中の女と同じ顔で向け続けた。] (+101) 2022/09/13(Tue) 22:41:58 |
【墓】 1年生 工藤美郷…………………。 [人が死ぬということ。それに涙を流せないこと。 いくら痛みが胸を突き刺そうとも、それが表面を揺らすことは無く。顔の下には膜があって、感情が表面化するのを阻んでいるかのよう。 朝霞さんとも、きっと共感はできないのだろう。 けれど、微動だにしない表情の、その下の心を慮る魔法を、彼女は持っている。] 私の人生に、朝霞さんは付き合いたいと思っている。 [工藤は繰り返した。そしてもう一度言った。「私の人生に、朝霞さんは付き合いたいと思っている。」 それは工藤にとって、全く理解ができない時にする癖のようなものだった。] (+102) 2022/09/13(Tue) 22:43:18 |
【墓】 1年生 工藤美郷私は絵の女ではありません。 彼女のような言動を期待されてもできませんが、そのことを分かっていますか。 [工藤は朝霞さんの目を見つめたまま確認した。 入れ替わっていた間も、意識はあった。 自分よりも絵の方が優れているとは、最早思わない。彼女には彼女の、自分には自分の魔法があると知った。そして自分の魔法を使って生きていくと決めた。 しかしコミュニケーション能力に関しては、間違いなく絵の中の女の方が上だった。朝霞さんの相談に乗るなど、工藤には決してできなかったこと。 朝霞さんが寄り添うのに適しているのは、不器用な自分ではなく、絵の中の彼女ではないかと疑問に思った。]* (+103) 2022/09/13(Tue) 22:43:38 |
【墓】 1年生 工藤美郷──病院・武藤先輩と会話── [LINEをしゅぽしゅぽ打っていると、何やらわちゃわちゃと言われた>>5:+81が特に気にしなかった。 そのLINEの難易度に朝霞さんが首をかしげることになる>>5:+89、当然だ。自分が知ってることはみんな知っているという前提に立って話すからこうなる。 話題はどんどん移り変わる。いったん過ぎ去った会話が再び戻ってきたり、横道にそれたり。 だから工藤は雑談が苦手だった。] ……はい。先輩にも還ってきたらお礼言います。 ……………………。 [還ってきたらお礼を言えばいい。思いつかなくても、時間が伸びたのだからなんとでもなる。 今考えるべきことは、還ってこなかった時のことだ。その時はもうやり直せないのだから。 津崎先輩か小泉先輩か、どちらかは死ぬ。どれだけ祈っていても。 だからどちらになっても、死を受け入れる準備を進めていく。 工藤はドライに現実を受け止めていた。]* (+114) 2022/09/13(Tue) 23:22:11 |
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