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【人】 陰陽師 讃岐 氐宿■2d 秘密取得 誘蛾>>2:50 百継邸の前にて、優美な音楽が流れくる。 夜を賑わすその旋律は、世界の色を塗り替えるようで。 知らず、脚どりはそちらへと呼ばれていた。 「…………このような夜更けに、美しい音がすると思えば」 ふ、と眦を下げてその音楽家の前に立つ。 「その曲はどちらへ捧げるものでありますか?」 問い掛けて、答えるものがあるならば。そうか、と頷く。 満点の星々が、その音1つ鳴るたびにちかりちかりと瞬くだろう。 「誘蛾さま。やがて夜行がまいりまする」 「最早これは止められぬでしょう。問題は、その後、でございまする」 陰と陽、世界は流転し、地獄の蓋が開かれるのもある種自然の摂理であり。 故に人はどれほど先に手を打っても開くことそのものを止められはしなかったのだ。 「やつがれは都の方々が平穏であれと願っております。しかし、巡りを止めれば世の血も止まり、死に至る」 「誘蛾さまは、訪れる夜を明けぬ朝としますか。それとも、ひと時の朝としますか」 問答に意味は、大してない。 ただの確認、検めであった。 宮中に潜む闇の気配は、とうに漏れ出て溢れている。 鬼一も気付いて動き出していることだろう。 (19) mile_hitugi 2021/04/24(Sat) 7:37:38 |
【人】 陰陽師 讃岐 氐宿問い掛けに対して、細めた目が見つめるは、問うてきた本人である鬼一ではなく、この場に鎮座する”かなめ石”そのものであった。 「──占い、でありますか」 一歩踏み出せば石と石とが足の裏で噛み合って音を鳴らす。 簡易なものであれば、星を読めば伝える事は出来るであろう。 明日の天候の向きであるとか、向こう一週間の運の流れであるとか。 しかし、今求められているのはそれではあるまい。 「式盤がございませぬし、天地盤を作るための材木もありませぬから、簡素なものとはなりましょうが、望まれるのでありますれば」 そう告げて、近くにあった古木に手を合わせると、まだ青々しい枝の一本を折り取った。 咎める声があれば、それにはほんのりと笑って見せる。 「本来、讃岐が行う式占には楓の瘤と、雷で撃たれた棗の木で作った天地盤が欠かせませぬ。今は蓄えも邸に少々あるばかりですし、ここで木を削り始めるには少々お時間を頂きすぎるかと」 故に、と続けて樹液の滲みだす枝を地に向ける。 「古き木の生命を持って代わり、といたします。痛みの陰を持って地を、青々しい葉の命を持って天を描いて御覧に入れましょう」 時折天を見上げて星を読んでは、地に区切った天地盤の図を修正していく。 今は亥の刻、月南天にあり。北斗より巡る月将の位置を知識とも照らし合わせながら。 (21) mile_hitugi 2021/04/24(Sat) 7:38:26 |
【人】 陰陽師 讃岐 氐宿「何でもよい、と仰られましたね」 今、鬼一の心中にあるは百鬼夜行の事柄であるはずだ。それ以外など眼中にもないだろう。 それでもそう問うということは、占いにさしたる意味はないのだ。 測られている。何を占うよう選ぶのか、どう告げるのか、果たしてそれは正しいのか。 「やつがれの執り行う六壬神課は特に「もの」と「もの」の間柄の吉凶象意を事細かに記す事を得手といたします。失せ物探しなどは特によく用いられるのですよ」 書き込む手は留まらない。天地盤の枠の外にも四課三伝の読み解きを記していく。 既に式占は始まっていた。 「目下、鬼一さまのご心労は何れ来る夜行に掛かっておりましょう。ですがそれを直接お伺いにならなかった、抑々が鬼一さまは大変に信念のお強いお方ですから、自らがそれを遂げると決めている事柄に占いなど些事でしかないのでありましょうね」 1つ目に置く基盤は鬼一そのもの。基本に忠実に占いを求めた男の十二天将は──白虎。 「で、ありますから、やつがれをお知りになられたい。ひいては、陰陽という理の異なるものへのご興味でありましょうか? なれば占うべきものはおのずと絞れてきましょう」 一課、二課は問い掛けてきた者の司る天命の調べ。 三課、四課は問いの中身そのものの司る天命の調べ。 一伝は過去、二伝は現在、三伝は結末。 即席の天地盤から読み解いて、一つ一つ地に記していく。 (22) mile_hitugi 2021/04/24(Sat) 7:39:01 |
【人】 陰陽師 讃岐 氐宿「鬼一さまは白虎の加護を享けておられる。剛き星ですが、血を多く流す。御覚悟の強さの余り、不和を余分に引き起こしてしまう”タチ”であるご様子。故に」 三課に記された天空の名を、とん、と叩く。 「やつがれのような、天空の加護を享ける者が、遠く見られるのでしょう。初伝にも同じく天空が出ておりますれば、……そうですね、噛み砕きますと『掴み所、捉え所がない』と不安になられておりますか」 語り乍ら書いていたのは半刻程はどうしても作成に必要だったからだ。 しかし、読み解きに支障はない。どうせ、これらも補助に近しい。 「──やつがれは既に滅びゆく家の末裔でしかありませぬ。鬼一さまのように期待されるようなお役目も持たず、守るべき家もなく、故になにも囚われるモノがないと悟ったのでありますよ」 全てを書き終え、枝を手放す。天地を示し、定めを示す盤を見下ろす。 そこにあるのは紛れもなく、────。 「で、ありますから、物珍しくも見えるのやもしれませぬ。都は俗人が多う御座いますし、このように何も持たぬ者が宮中に近しくあるというのも、そうはないのでありましょう」 (23) mile_hitugi 2021/04/24(Sat) 7:39:35 |
【人】 陰陽師 讃岐 氐宿「やつがれには鬼一さまは眩しゅう御座います。やるべきことを見据え、愚直に邁進する貴方様は、やつがれと同じく家の者を失ってもなお、誇り高くあらせられる。こうしてお声をおかけいただくまで、やつがれはあの夜行を根元から防ぐなどという考えも浮かびませなんだ」 目を細め、柔らかく笑む。その笑みの裏には何もない。 霧の如く、風に吹かれる砂塵の如く、掴みようのない虚ろだけがある。 「平穏を齎したいというお考えはようく分かります、が──やつがれにとって其れは、鬼一さまのような強きこころより齎される責務ではなく、ただ、穏やかに暮らしたいという単なる諦観のようなものでも御座います」 ことり、と折れるように首を傾げる。 虫の声が遠く響いている。 「それでもよろしければ、お力添え致しましょう。やつがれも、かの夜行の被害を抑えられるように願う気持ちそのものに、虚実はありませぬ」 このようなもので、よろしいか。 最後にそう問いかけて──どのような答えが返ったとしても。 一つ、会釈し。地に掛かれた天地盤は足で払って潰してしまう。 「よい夜を」 最後に1つ、そう告げれば、陰陽の道に取り残された者は、闇へと消えていった。 ◆劣等感(−)取得 (24) mile_hitugi 2021/04/24(Sat) 7:39:57 |
(a10) mile_hitugi 2021/04/24(Sat) 7:45:43 |
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