人狼物語 三日月国


202 【ペアRP】踊る星影、夢現【R18/R18G】

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【人】 黒崎柚樹


["全部好きなやつ" >>333 ?だろうね。
ぶり大根と塩辛は、武藤のリクエストで作った酒のアテだもの。

最初は……なんだっけ、酒盗食べたいとか言い出したから作り方調べたんだけど、あれは発酵食品でマグロの内臓を1ヶ月塩漬けにして……みたいな品だったから「それは無理」ってなって。

塩辛なら作った翌日には食べられるからそれでいい?とこちらから言ったんだった。

材料からよく解ってなかったらしい武藤は、目の前でイカ捌いて見せたらやたら感心してたっけ。]

 いや、別にチョコだけでもいいし……。
 お邪魔する時には、何かアテ、持ってくし。

[実際、持って行ったし……と思いながら、開けられた麦チョコの袋と、流れるように手酌で注がれてるリキュールのおかわりをちら、と見やる。

ついでにとこちらにも注いでくれてるけど、明らか、武藤のグラスのは色が濃くなりつつあって。

そっと引き寄せて確認したラベルに記されたアルコール度数は、日本酒より少し強いくらいの値だったからいくらか安堵したものの、でも一瓶空ける勢いで飲んでいたら、さすがに酔うんじゃなかろうか。]
(343) 2023/03/03(Fri) 15:00:50

【人】 黒崎柚樹


[だから、頬に伸びてきた手に、"やばい"、と思った。
それこそ、宅飲みの時がやばかったんだ。

2人で一升瓶+αくらい飲み干して、べろんべろんになって。
その時、酔った武藤はやたら触ってきたがるということを知った。

その後、うちの自宅で飲んだ時も、武藤の実家で飲んだ時も、まあまあそんな感じになって。

いやでも、武藤が、研究室の飲み会とか、サークル飲みや友人飲みで触り魔になっているという話は聞いたことはないから、私限定なのだろうとは思ってた……けど。

────男でもいいのかよ。


イラァとした気持ちが沸いてきたとしても、仕方がないと思う。

実際のところは、記憶が無くとも、身体が覚えている感覚が武藤をそうさせていたのかもしれないけれど、そのあたりまで私が察することは難しく。

沸き上がった怒りにまかせ、むに、と武藤へ伸ばしてしまった手は、それでもなんだか嬉しそうにされてしまった。

ばーか。武藤のばーか。]
(345) 2023/03/03(Fri) 15:01:22

【人】 黒崎柚樹


 そう?
 なんか、ごめん。

[温泉は、自分自身が大好きなだけに、"やめとく"とさらりと告げられた声 >>335 には申し訳なくなる。

確かに、人と顔を合わせたくないということでなら、早朝に行ってみれば良いことだし、幸い、自分は相当な早起き体質ではあるし。
"朝行ってみたら"の提案には素直に頷いたし、正直、嬉しそうな顔にもなってしまっていたと思う。

そうしているうちに、武藤のグラスにはまた新たな酒が注がれていて。
この程度で泥酔に至る彼ではないと知ってるから、特段口も出さなかったけれど。]

 …………ッ……!?

 !?!?!?!?!?!?

[でも何の脈絡もなく、スティック野菜に伸ばしかけた手を取られ、肘の上あたりをぺたぺたと触られた。

いや、他意が無いのは解るよ?解るけど。
他意ある時の触り方を、私は嫌というほど良く知って────。]
(346) 2023/03/03(Fri) 15:02:09

【人】 黒崎柚樹

 ────……ッ。

[ああ、私も酔ってるのかな。酔ってるんだな。きっと。
触られた拍子、引きずられるように色々記憶が蘇って、頬がぶわりと熱くなる。]

 な、んか……あ、つく、ない……?

[立ち上がりながら慌てたように告げるも、熱くも寒くもないよね快適だよね知ってるよ。おろ、と周囲を見渡して。]

 お、言葉に甘えて。
 先、お風呂使う…………。
 なんか、汗かいた、し……。

[言い訳にも説明にもなってない気がするけれど、どうしようもなく居たたまれない気持ちになって。
一人になれるところと言ったらバスルームくらいしかないわけで。

寝室に置いたドラムバッグから着替えを適当に取り出しひっつかんで、私はバスルームへと消えたのだった。

なんなんだよ、もう。
ほんと、もう、なんなんだよ……!*]
(347) 2023/03/03(Fri) 15:03:51

【人】 黒崎柚樹


[結果的に、後片付けを全部任せてしまったのは申し訳ないと思う。

武藤がきゅうり好きなのは知ってたから、野菜は人参とセロリを多めに口にしていたけど、でもいくらかまだ残ってたし……まあ、ナッツとチョコは湿気ないようにだけして片付ければ良いだけの話だけれど。]

 …………しっかりしようよ、私……。

[水浴びをができるほどの気温ではないけれど、体温以下くらいのぬるま湯を頭から浴びながら独りごちる。

私を男と思っている武藤を、困らせるようなことはするまい、言うまい、と思っていた。

この状況は、武藤が望んだことかもしれなくて。

つまり、彼の表の言動がどうであれ、深層心理では、私を好きにはなりたくなかった、恋人同士になったことを後悔していた、そも、女と知りたくはなかった────みたいなことではなかったのでは、と。

この"キャンプ"が何日続くかは解らないけれど、この場に居る間に決着つけろということなんだろうなとは、思っていた。

それが人ならざるものの仕組んだことか、武藤本人が仕組んだことかはわからねど。]
(362) 2023/03/03(Fri) 17:20:31

【人】 黒崎柚樹


[ともあれバスルームに入った以上、全身を洗って、頭が冷えたらさっさと出よう、とは。

自慢じゃない(全くもって自慢じゃない)けれど、ほぼ真っ平らな胸にスポブラつければ、寝間着のジャージ上下姿でも体型から女と解る人はそうそういない。

半年前の武藤は私が告白する前に私が女だと知ったけど、それは見た目からじゃなく、私が「私」と口にしてしまったからだ。

一人だけ、研究室が同じゲイの先輩に、見た目だけで女と看破されたことはあるけれど、見た目で解った人は、本当、そのくらいしか存在しない。]

 ………………。

[こういうのも"半年前の"なんだな、と小さく溜息を吐く。

水着に似た素材のスポブラと、綿のショーツは当然ながら"上下お揃い"なものではなくて、それはそういったものに頓着しなかった──する必要があるとは思っていなかった──半年前に私がしていただろう選択、そのままの旅行荷物。

最近は、武藤のためにも女の子を頑張ろうって、"寄せて上げる"系のとか、お揃いのショーツとかを身につけるのが常になっていたから、いっそ懐かしい気持ちで足を通す。

浴槽から出てバスマットに足を下ろし、バスタオルは洗面台の縁に引っかけて。

そして、スポブラに首を通そうと両腕上げた最悪のタイミングでガチャリとバスルームの扉が開けられたのだった。]
(363) 2023/03/03(Fri) 17:20:55

【人】 黒崎柚樹


[うん。
鍵なんか、かけてないよ当然。

そういうところの警戒心が足りないのだと、武藤には幾度も幾度も言われ続けていたことだけど、武藤相手に警戒心を抱けというのも無理なお話で。]

 ………………ぁ……、

[視線がいくらか下を彷徨った武藤と、かちりと目と目が噛み合って。

私ときたら、絹を裂くような悲鳴が出ることもなく、硬直したまま、晒した肢体を隠すこともなかった。
やかましいのは、"見られた"とばくばくし始めた己の心臓くらいのもの。

武藤は何か言ってたのかな。
でもあんまり私の耳には届かないまま、ぱたりと扉が閉められる。

思考も身体の硬直が取れるのに、それから何秒必要だったのかも、判然としない。頭の中がろくに動かないまま、のろのろと無表情で身支度を調えて。

髪からはぽつぽつとまだ滴が落ちてきていたけど、構いやしないと、ジャージの肩にバスタオルを羽織った状態でバスルームを出たのだった。]
(364) 2023/03/03(Fri) 17:23:02

【人】 黒崎柚樹


 ────……武藤。

[武藤、どこに居たんだろ。ベッドルーム?ダイニング?
どこであれ、私は武藤の元に近寄って、囁くように、「ごめん」と告げた。]

 ごめん。黙ってて。

[俯いたら、頬にかかった髪からぽたりと滴が落ちていく。]

 いつか言わなきゃとは、思ってた……んだけど。

[懺悔の言葉は、半年前の武藤へ告げるもの。

あの時は、言う前に武藤には気付かれてしまっていたけれど、でも、仲良くなってからずっと、自分から言わなくちゃとは思っていたんだよ。あの時。]

 私、管理小屋に行って、別のコテージ借りられるか聞いてみる。

[だって武藤、女と一緒の部屋でなんて、眠れないでしょう?
そういうことも、私は良く、知ってるんだから。*]
(365) 2023/03/03(Fri) 17:24:42

【人】 黒崎柚樹


[武藤はずっと私のこと、男だと思っていて。
そして私がそれを知りつつ、訂正してこなかった >>369 理由。

この不思議なキャンプ場に来てからの私の思いは全く別にあるけれど、半年前にそうしていたのは、"一番、何も言われないで済むのがこの形だった"から。

女の子みたいな格好して、女装かと言われるのが面倒臭かった。

自分の身体と顔に似合うのはこういうのだからと、男っぽい格好のまま自分は女だと言えば、LGBTがーとか、ジェンダーがーとか、自分はそうとは思っていないレッテルを貼られてしまう。何枚も。
それをまた否定するのも面倒で。

────色々全部が、面倒だった。

そういうのを気にしない、私を私として見てくれる人を探すのすら面倒と思っていたくらいには。

正直なところ、男の人を怖いと思ったこともなかった。

自分にそういう欲を向けてくる男なんて居るわけないと思っていたし、居たところで、いくらでも抵抗も撃退もできるだろうと。]
(383) 2023/03/03(Fri) 22:03:41

【人】 黒崎柚樹


[バスルームから出て武藤の姿を探すと、ベッドルームの隅で顔を覆っていた。 >>369
困惑極まれり、という時に、彼が時々する仕草。

ごめん、驚かせて。武藤が気付くまでは解らないようにしておくつもりだったんだけどな。]

 …………え……?

[半年前も武藤は言ってた。
黙っててごめん、と言った私に、「何がごめんなんだ…?」って。

今も武藤は同じ風なことを私に真っ直ぐ告げてくる。
記憶が無くても、私のことを好きじゃなくても、武藤は武藤で、そんなことに、私は泣きたくなってしまう。]

 や……そんなのは、

[気にしないでいいよ、と首を横に振る。

ノックしないでドア開けるのは男同士なら不思議でもないことだし、触られるのも嫌なわけではなかった。
でも知ってしまった以上、武藤は私とは居たくないだろうなと思った────のだけど。]
(384) 2023/03/03(Fri) 22:04:15

【人】 黒崎柚樹


 …………?良いの……?

[コミュ強でやたら友人が多い武藤(以前見せてもらったLINEグループは呆れるほどの数があった。未読バッジの数もすごく多かったけれど)は、でも、ある一線以上には人を踏み込ませない人で。

一人暮らししているマンションへ人を呼んだのは、男を含めても私が初めの1人だと言っていた。

言葉を交わせば交わすほど、警戒心の強さが見えてきて、同時に、人に対する臆病さも透けて見え。

なんかね……自分と似てるなと、思ったんだ。

そう気付いた時には、好きになっていた。

その武藤が、"このままでいい"なんて言ってきたから、私は心底驚いた。

今の武藤にとっての私は、まだそこまで深く踏み込み踏み込まれた存在では無いはずなのに。]
(385) 2023/03/03(Fri) 22:04:32

【人】 黒崎柚樹


 ん……私、も。
 武藤とこのまま気まずくなるのは、すごく嫌だ。

[多分、武藤には相当に口にするのが難しい言葉だったと思う。

"気まずくなりたくない"という、自分の弱さを晒すような本音を出すことは、きっと、武藤にはすごく勇気の要ることで。

だから私も本音で返した。
私も武藤と一緒に居たい。武藤が嫌でないのなら。

でもこの男は、その後もこちゃこちゃと陣地とか何とか言い募っているものだから、思わず笑い出してしまった。]

 や、まあ、"陣地"は……そんなに厳密でなくとも……?

[ベッドから出ないとかトイレ行かないとか、そんなことまで考えなくて良いことなので。うん。

いや、この場合、警戒心を持つべきは私の側なのだけど、ていうかこの武藤とえっちすることになったりしたら、それは浮気になるのかな?いや、しないけどね?でもね??貞操観念的には、同じ部屋で並んで寝るのも案外だめだったりするのかな???

武藤の混乱が伝染したのか、私の側もおかしな考えてで頭がぐるぐるし始めてしまったのだけど。]
(386) 2023/03/03(Fri) 22:05:12

【人】 黒崎柚樹


[ああ、でも、伝えたいこと、あったな。
これは言っておかないと。

床にぺたりと座り込んでいる武藤と視線を合わせるように、私もしゃがみ込む。

また前髪から水滴が落ちて、いい加減、私も髪をちゃんと拭くべきだな、どれだけ動揺してバスルームを出てきたんだかと苦笑しながら。]

 これだけ言っておくね。

 私は武藤をキモいとか、思わない。

 何考えても、何言っても、何しても、絶対思わない。

[ああ、やっと武藤の目をちゃんと見られた気がするよ。

男と思われたまま、否定せずに居続けるのはそれなりに辛くはあったものなので。

言いたいこと言ってにっこり笑った後、まだぐしょぐしょなので髪乾かしてくるねと、私は再びバスルームへ消えたのだった。**]
(387) 2023/03/03(Fri) 22:05:38

【人】 黒崎柚樹


[女子高生時代。
陸上大会で何度も顔を合わせていた他校の男の子を、私は好きになった。

週末に一緒にシューズを見に行ったり、デートとも言えないような他愛ない外出を何度かして、でも好意を口にすることはなく。

そんな時、制服のセーラー服を着ている姿の私を初めて見たその人から言われたんだ。
「女装似合わねーなー!」って。

ああそうか、私のスカート姿は女装なんだ、って。

その呪いは、ずっとずっと根深く私に刺さり続けてた。]
(413) 2023/03/04(Sat) 4:58:16

【人】 黒崎柚樹


[武藤とお付き合いするようになって、私は"女の子"を頑張るようになった。

そういう偏見はタブーとされる世の中になりつつあるとはいえ、武藤が男を恋人にしたとか、恋人は"ジェンダーちゃん"だとか、武藤が変に思われたり笑われたりするようなことには、なりたくなくて。

私自身、スカートは履けなくなっただけで、履きたくなくなったわけじゃなかった。
いつかまた、履いてみたいと思っていた。踏み出す切っ掛けが欲しかった。

恋人なんて私に出来るはずないとずっと思ってたけれど、もし出来ることがあったなら、一緒に喫茶店でケーキ食べたりパフェつついたりしてみたいな……って。

そんな願いは全部武藤が叶えてくれた。

けど、それでも、自分に女としての魅力があるとは、未だに思えてないんだと思う。]
(414) 2023/03/04(Sat) 4:59:48

【人】 黒崎柚樹


 …………?

[そんなの、ではないだろ、と。>>403
なんで武藤の方が傷ついてるみたいな顔になるのかなと、私は首を傾げてしまう。

だって実際、"そんなの"だし。

私が気にしていたのはひたすらに、"武藤に、自分が女であることの証左を晒してしまった"申し訳なさばかりで、そこには、見られてしまった恥ずかしさはほとんど含まれていなかった。

今、目の前に居る武藤は、私がよく知る"半年後の武藤"と綺麗に地続きになっていることは頭では理解しつつ。

それでも、この武藤が今の私に性的魅力を感じて云々みたいなことはありえないのだと、頑なに思っていた。

武藤曰くの"やましい気持ち" >>404 なんて、沸くも何も、最初から存在しないに違いない、と。

それは武藤を信頼しているとかとは、全く別の次元のお話で。

そして私は、何をそこまで否定したいのかという自覚もないまま。]
(415) 2023/03/04(Sat) 5:00:58

【人】 黒崎柚樹


 …………?……そう?

 …………そっか。

[私は、"私"が一番違和感ない、>>407 んだって。

性別誤認されているのを正しはしなかったものの、あえて"僕"とか"俺"とかを使うことは、今までに一度だってなかった。
聞き咎められるのを避けようと、ひたすらに"私"を口にはしないようにするだけで。

それは端から見ればけっこうな労力に思えたかもしれないけれど、当たり前に備わった癖のようになってしまっていた。]

 "私"って、言わないようにしてた。
 武藤が知ったら、絶対困らせる、って。

 でも、言ってしまいそうになって、ちょっと、ヤバかった。

[なんでそこまで言わないようにしてたのかを告げるつもりはないけれど。

そして、頬に伸ばされかけた手に気付いても、もう身体をあえて遠ざけることもしなかったけど。]
(416) 2023/03/04(Sat) 5:02:20

【人】 黒崎柚樹


[そして私と入れ替わりで武藤がバスルームへ消えていき >>408 、目の前にはどうにもアンバランスに、左右の壁にへばりつくように動かされたシングルベッドがあった。

ベッドの間の空間でスクワットでもしたいのかな。
スクワットどころかダンスもできそうな広さだけど。

で、勿論、次からは鍵をかけておけという助言?注意喚起?には、一応、こくこくと頷いてはおいたけど。

相手が武藤だから緩んでいるのか、武藤なのに緩んでいるのか。
そのあたりの自覚も薄いまま、私はキッチンへと戻った。

ここは夢の世界で、あの美術館と同じ現象が起きているのではと察すれば、"欲しいものは大概手に入るようになっている"ことに想像は難くなく。

食料棚に、先には無かったはずのココアを認めて、小さく笑った。]
(417) 2023/03/04(Sat) 5:03:29

【人】 黒崎柚樹


 ────おかえり。

 ココア、飲む?

[最初に粉を練る時も、水やお湯じゃなく牛乳を使ったココア。
武藤家のココアはそうしてるのだと、1月にご実家訪問した時に、お母様が教えてくれた作り方。
砂糖の量も、御馳走になったあの感じを再現した。

リキュールを割って牛乳はさんざん飲んだ気もするけれど、あったかい牛乳は安眠効果があると言うしね。

風呂上がりの武藤──やっぱりいくらか挙動不審なのかもしれないけれど、私は見て見ぬ振りをする──に、これで飲んで寝よう、と告げたら、実家と同じ味に驚かれてしまうだろうか。

種明かしはせず、黒崎家のココアもこんな感じなんだよと、私は小さな嘘を吐いておいた。*]
(418) 2023/03/04(Sat) 5:03:56

【人】 黒崎柚樹


[武藤は、半年前だろうが半年経っていようが、二言目にはすぐ"警戒心"と言う。

私、そんなにぼやっとしてるかな?してないよ?と思うのだけど、武藤に言わせるとガバガバなのであるらしい。]

 …………う?…………うん。

[「もう少し警戒心を持った方がいい」 >>421 と、この武藤にまで言われてしまい、釈然としないまま、頷いた。

うっかりドアを開けたのが武藤ではない誰か……ということは、そもそも、そんな事象はあり得ないとは思うのだけど。

そこまで仲良くない男の人がいるところでシャワーを浴びようという事にはならないし、仮にそんな事態になったらさすがに鍵はしっかりかけるし。

万が一、億が一、見られて、身に危険が迫ったら反撃もするし。

それに、今のこの武藤が、そこまで私を心配してくるのもなんだか不思議な気もしていて、それが私の不思議顔に拍車をかける。]
(427) 2023/03/04(Sat) 11:06:53

【人】 黒崎柚樹

[  だって、今の武藤は、私のこと。
  恋情的に"好き"なわけではないでしょう?


吊り橋効果で片付けたくはないけれど、私たちの仲を急速に深めたのは、あの美術館の一件があったのは否定できない。

美術館に着いて一緒にランチを摂ったところで記憶が切れている今の武藤は、
「黒崎柚樹のことが好きなんだが?!」
と屋上で雄叫びを上げ、「置いてきたくない」と抱き締めてきた、あの熱とは遠いところにあるわけで。良くも悪くも。

でも、言ってることは、やっぱり武藤で。

「くっきーはくっきーなんだし」 >>422 もね、既に言ってもらっていた言葉なんだよ。

自分でも、自分の思ってることや、感じていることが、よくわからないんだ。

私はなんだか必死で、"この武藤と私の知る武藤は別の人"だと思いたがっているみたい。

私の知る武藤は、私の、女としては貧相な身体も好きだと言う。
────でも、"貴方は違うでしょう?"
そう思いたがっている風で。]
(428) 2023/03/04(Sat) 11:07:28

【人】 黒崎柚樹


[そんな思いは胸の中、形にならずに漠然ともやもやするばかり。
自分の心を落ち着けたいというのもあって、私はココアを支度したのかもしれなかった。

ココアを美味しそうに飲んでる武藤の顔は、私のよく知る顔で、私は何を否定したいのかも、よく解らなくなってしまうのだけど。]

 …………?宅飲み?

[……そっか、私が"話したかったこと"は話してしまったわけなので。

私の側に宅飲みの約束を保つ理由は無くなってしまったんだな……と、武藤に言われて思い至った。]

 うん。武藤と宅飲み、したいよ?

[だってまだ、"貴方"のお話は、聞いてないし。
勿論ノーカンで、と微笑んだ。]
(429) 2023/03/04(Sat) 11:08:00

【人】 黒崎柚樹


 また"警戒心"って言う。

 …………"いや、来てほしくないとかではなく"。

[まるで同じことを言われたなと思い出し、武藤っぽい口調で諳んじてみれば、まんま同じタイミングで同じことを告げられて。]

 ふっ…………、ははっ。

 ほんと……変わらないよね。武藤は。

[泣きはしなかったけれど、複雑な表情で笑いつつ、不思議な事を告げる私に、武藤はどんな顔をしたんだろう。

ああもう、ほんと、武藤は武藤。悲しいほどに。

でもね、私の武藤は、あの事故の苦くて辛い記憶を抱えて半年の時を重ねてきた武藤なんだよ。

────あの武藤に、逢いたいよ。*]
(430) 2023/03/04(Sat) 11:09:18

【人】 黒崎柚樹


[この武藤も、あの武藤も、全部武藤だよ。
繋がってるよ。

自分でもそれは解ってるのに、"この武藤は違うから"と必死に否定して、否定の否定を目の前に突きつけられて、その度、泣きそうになってる。

だって。
だって、否定せず、受け入れてしまったら、私はもう二度と、"あの武藤"には会えなくなってしまう気がするんだもの。

ハロウィン当日に初めてのテーマパークに行ってゾンビに追いかけられたり、クリスマスイブに一緒に港町に遊びに行ったり。年越し、実家帰らないならうち来る?と誘って、二年参りを一緒にしておせち食べたり。

買って貰った指輪。開けて貰ったピアス。
たくさんの写真、たくさんの思い出。

そういうのが全部消えてしまう気がして、だからきっと、私は今の武藤を否定したかった。否定しなきゃいけなかった。

なのに……武藤は、やっぱり武藤なんだよ。

言ってることも考えてることも、全部、愛しい人、そのままで。]
(438) 2023/03/04(Sat) 13:12:32

【人】 黒崎柚樹

[微かに聞こえた。"ごめん"って。
囁くような真剣な声音に背がひくりと震えてしまって、視線で何をと問うても、いつもは雄弁な口も瞳も、何も答えてはくれなくて。

────そして、今度こそ、心臓が止まってしまうかと思った。

"くっきーは、笑ってるとかわいいと思うよ。"

今の武藤は、それを自覚してるのかな。してないのかもしれない。

それは美術館で言われた言葉。
私は文字通りにしか受け取らなくて、受け取れなくて、「おそれいります……?」みたいな微妙な返事しかできなかった。

両思いになってからの武藤は、呆れるほどに"かわいい"を量産し続け、私も呆れながら否定するのに疲れてしまって。

そしてある日、唐突に気がついた。

武藤は美術館で言葉を交わしたあの日から、私以外の女の子には、絶対に"かわいい"を言わなくなっていたということに。
武藤の言う"かわいい"は、そのまま"好き"に直結してるということに。

自分の思いを口にすることは苦手な武藤が、一日に何遍も言ってくる"かわいい"は、全部、"好き"と同義だった。]
(439) 2023/03/04(Sat) 13:12:54

【人】 黒崎柚樹


 ………………っ、な、んで……。


["かわいい"の返しが"なんで"なんて、"おそれいります"よりも酷いものだったろうとは思う。
でも、掠れ気味の声で呟いた私は、落ちそうになる涙を堪えるので必死だった。

なんで、そんなこと、言うの。

なんで、私の好きな武藤と、まんま同じこと言うの。

囁くような「なんで」は、武藤に届かなかったのかもしれない。
そろそろ寝るかと立ち上がった武藤とは視線を合わせないようにしながら、私も共に寝室へと移動した。]

 ……ん、あんまり起きないようなら蹴り飛ばす。

[私は早起きに慣れてるし勝手に目が覚めるから……と、ぎりぎり、普通の声音で言えたと思う。

おやすみなさい、と私も武藤に背を向けて。]
(440) 2023/03/04(Sat) 13:13:25

【人】 黒崎柚樹


[ばか武藤。
ベッド、壁にぴーったりつける必要も無いのに。

なんだか、すごく変な感じだよ。

……ばか。

必死に脳内、他愛のない悪態で埋め尽くそうとしても、涙の方がよっぽどに正直だった。

堪えきれなかった滴がぽろぽろと落ち始めてしまったら、もう、止めようがなくて。]

 …………っ……ッ。

[喉が変に軋みそうになるのを、寝間着の袖を口元に当て、吸い込ませる。

どうか気付かないで欲しい。
どうした?なんて、聞いてこないでほしい。

そうされてしまったら、今度こそ私は、武藤に抱きついて泣きじゃくってしまいそうだから。*]
(441) 2023/03/04(Sat) 13:14:05

【人】 黒崎柚樹

[千々に乱れた心より何より、思っていたのは、"武藤に気付かれたらいけない"ということ。

涙は全然止まりそうになくて。

でもそれを止めようとするよりも、吐息や引き攣るような喉の音を止めるのを優先している自分は、やっぱり相当に混乱はしていたんだと思う。]

 ………………っ……ぅ、

[それでも時折、どうしても漏れてしまう吐息はあって、どうぞ気付いてくれるなと。

そう、思ってたのに。]

 !?…………ぇ…………、

[思っていたよりずっと近くから、"くっきー?"と名を呼ぶ声 >>460 が聞こえて、その呼び名にもまた涙が溢れてしまう。
ここに、私を"柚樹"と呼んでくれる武藤は居ない。

なのに、ベッドの軋む音が。手の熱が。声にならない、戸惑うような吐息が。

全部に突き動かされるように、私は武藤に抱きついていた。]
(471) 2023/03/04(Sat) 20:51:24

【人】 黒崎柚樹


 …………ぅ……、……ふ、ぇ……っ、

[ああもう。
知ってるにおいがするよ。武藤のにおい。
私の大好きな。

この武藤は私の好きな武藤じゃない。
抱き締めていい武藤じゃない。
好きと囁いていい武藤じゃない。

全部解ってるのに、しがみつこうとする手の力は全然緩んでくれなくて。

そして抱き留めてくれている武藤の手も、緩ませよう、突き放そうとかの色もなく。

嗚咽の合間、「ばか」と「ごめん」という、武藤にはきっと全く意味のわからない、そのくせ強い意味を持つ言葉を漏らし続けていたように思う。]
(472) 2023/03/04(Sat) 20:52:16

【人】 黒崎柚樹


[いつの間にか、私は泣き疲れて眠ってしまっていたらしい。

夢をみたような気がするけれど、どんな夢だったのかは覚えていない。

でも、ひどく悲しくて、ひどく幸せな夢だった気はしてる。*]
(473) 2023/03/04(Sat) 20:53:22
 




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