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【人】 楯山 一利『ちょっと、カズ。待ちなさいよ!』 「うっせ、バーカ。 良いだろ別に。 俺が何をしよーと、お前には関係ねーじゃん?」 腕を掴んでくるその手は、容易に振り解くことが出来た。 非力なアイツには、俺を引き留めることは叶わない。 「もう、ガキの頃とは違うんだよ。 いつまでもお節介焼いてくんじゃねーよ。」 吐き捨てるように言った後、アイツの表情はすぐに歪んだ。 眉間に皺を寄せ、悔しさを馴染ませている。 今にも泣きそうなのを、懸命に堪えるかのような顔だ。 (23) 2022/10/13(Thu) 14:06:49 |
【人】 楯山 一利一瞬、胸が痛くなった。 だが俺は、素直に謝れなかった。 憎まれ口を叩いてしまうのも、 意地悪したくなるのも、 態度が悪くなるのも、 心にもない事を言ってしまうのも……。 アイツのことが、"好き"だから───。 (24) 2022/10/13(Thu) 14:08:38 |
【人】 楯山 一利『……そう。分かった』 それきり、アイツは俺を引き留めることも 何か言葉を掛けて来ることもなかった。 俯いて肩を震わせながら、その場に立ち尽くしているだけ。 また、心が痛くなった。 今なら、まだ謝って済むんじゃないか。 ……だけど俺は。 「分かれば良いんだよ。バーカ。」 最後まで憎まれ口を叩き、嘲笑するように舌を出したなら すぐに踵を返して、アイツの前から去った。 (25) 2022/10/13(Thu) 14:15:21 |
【人】 楯山 一利「チッ! ほんっとお節介なヤツ。 俺に構うなっつーんだよ。」 アイツと別れてからも俺の心は落ち着かない。 むしゃくしゃして、その辺に置いてあるゴミ箱を蹴飛ばした。 それは鬱憤を晴らすためなのか、 自己嫌悪に因る八つ当たりなのか……。 もうよく分からなくなっていた。 (26) 2022/10/13(Thu) 14:28:32 |
【人】 楯山 一利アイツのお節介は今に始まった事じゃない。 ガキの頃からずっとだ。 同い年にもかかわらず、お姉さん気取りのアイツは いつも俺のする事なす事に口を出して来たし、 何処へ行くにも一緒で、いつも手を引かれていた。 ガキの頃はそれが当たり前な事だと思っていたし アイツのことを姉のように慕ってもいた。 だがその考えは、歳を重ねる毎に変わっていった。 俺の身長が伸びて来て、アイツの背を追い越した頃。 アイツは女で、俺が男であることを理解した。 そして……アイツは綺麗な女になっていった。 (27) 2022/10/13(Thu) 14:30:49 |
【人】 楯山 一利姉としてではなく、一人の女性として アイツを"好き"になってしまった。 だが、もう今更そんなこと言えない。 さっきだってそうだ。 アイツにとって、俺はいつまでも弟なんだ。 だからお節介を焼いて来る。 それは昔と何も変わらない。 この先も、この関係が変わる事なんてない。 叶わない恋だと、分かってる。 分かっているのに、この気持ちを上手く抑えられなくて 叶わないことへのもどかしさに辟易して。 俺は、アイツに酷い事ばかり言ってしまう。 素直になれない。 俺はいつまで経っても、中身はガキのままなんだ。* (28) 2022/10/13(Thu) 14:51:53 |
(a6) 2022/10/13(Thu) 15:19:27 |
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